「…ええ、分かりましたわ、ご苦労様。引き続き監視し、場所を移動されたのなら報告してくださ
いな」
うふふふふふふ…ついに愛しの健一様と会える日が来ましたわ!
シーリス姉さまとマヤお姉さまについて来ての来日。
そう、私は1年と半年ぶりに日本へやってきましたの。
1年と半年…それは私と健一様が引き裂かれた時間。
あぁ、何故私達の愛には障害が多いんですの?
けどそれもあと1年の辛抱。1年後にはレイリアは健一様のお側に参りますわ!
それまでの間、寂しいでしょうけど許してくださいませ。
その寂しさを今日、このレイリアで発散させてくださいませ!
あぁ健一さまぁ…レイリアは一刻も早くお会いしたいですわ。
「ちょっとレイリア、いつまでトイレに入ってんのよ!さっさと行くわよ!」
空港のトイレで榊からの報告を受けていた私を呼びに来てくれたシーリス姉さま。
やさしいお姉さま、大好きですわ!
「まったく長い事トイレにこもって…お腹でも壊したの?」
…こういうところはちょっとイヤですわ。
「もうお姉さま、私は鏡を見てただけですわ!
せっかく愛しの健一様とお会いできるのに、ヘンな顔だとイヤですからね」
「大丈夫よ、レイリアは今日もカワイイって。今日こそはきっと相川もアンタに惚れちゃうんじゃ
ないの?」
私の言葉にほっぺを突いてくるお姉さま。私がかわいいって…そんなの当たり前ですわ!
「もうお姉さまったら!健一様はとっくの昔に私のものですわ。私だけの物なのですわ!
健一様はただ御自分のお気持ちに気づいてないだけですわ。
真実の愛は一つだけ。そう、レイリアだけに向けられるんですの!
そしてレイリアは健一様だけの物ですわ。
うふふふ、もしかしたら今日、レイリアは健一さまに奪われてしまうかもしれませんわ。
今日の為に避妊薬も飲んでますし、いつでも健一様に抱かれる準備は出来てますわ!」
うふふふふふふ…勝負下着も榊の目立てで良い物を仕入れることが出来ましたわ。
あとはこの下着を健一様に剥ぎ取っていただき…
あぁ、レイリアは健一様が望む事なら何でもいたしますわ!
「あ、あははは…そ、それよりマヤが待ってるから行くわよ!
アンタも早く相川と会いたいんでしょ?
だったらこんなとこで時間潰してる場合じゃないわ。レイリア、さっさと行くわよ!」
もうお姉さま、そんなに手を引っ張らないで下さいませ!
…そんなに慌てなくても健一様の潜伏場所は分かってますわ。
「アンタが遅いってマヤが怒ってんのよ。…どんな目に会ってもアタシ知らないからね」
え?マヤお姉さまが怒ってる?……お、お姉さま遅いですわよ!早く行きましょう!

お姉さまの手を取りダッシュで走る私。も、もうあんな目に会うのはゴメンこうむりますわ!
マヤお姉さま、怖いですわ。恐ろしいですわ。オニですわ。悪魔ですわ!



「江口さん、たまには釣堀で釣りってのもいいでしょ?今度またバス釣り行きましょうよ」
おれは今、江口さんを誘って近くの釣堀に来ている。俊たちにも秘密のおれの憩いの場所だ。
俊からの情報によると、今日、シーリス達が帰ってくるらしい。…レイリアを連れてな。
部屋にいたらレイリアが遊びに来て、何されるか分からないから逃げているって訳だ。
「おおバス釣りかぁ…いいなそれ。お前も運転上手くなってきたしオレの車、運転させてやるよ」
江口さんとは時々一緒に釣りに行く仲だ。まぁ最近は神楽もくっついてくるけどね。
今日神楽は、シーリス達が帰ってくるからって部屋でお留守番だ。
おれが江口さんを釣堀へ行こうと誘ったら物凄い顔で睨まれた。
ちょっとでも江口さんと離れたくなかったんだな。…いいよなぁ、ラブラブで。
「なんすかそれ?おれに運転させて江口さんは寝るつもりっすね?交代で行きましょうよ」
「バカヤロウ、オレは酒飲んで寝るからお前が運転しろ!
じゃないとお前に女が出来ても車貸さねぇぞ?
ま、お前に女が出来るなんて天変地異が起こる分けないか?はっはっは!」
「大丈夫ですわ。運転手は私が用意しますから、安心して釣りデートに行けますわ」
天変地異って…江口さん相変わらずヒドイよなぁ。
けど最近運転するのが楽しくなってきたしいいかな?
「場所は前にお前等と遊びに行ったあの湖がいいな。
あそこはオレと桃子が付き合うきっかけになった思い出の場所だからな」
「ははは、江口さん感謝してくださいよ?
おれのおかげっすからね、神楽と付き合えるようになったのは」
「まあこの方が神楽姉さまの彼氏ですの?
…ふ〜ん、神楽姉さまってヘンな趣味してますのね、ねぇ健一様?」
そうなんだよ、おれが江口さんを遊びに誘ったから神楽と出会えたんだよ。
もっと感謝されてもいいんじゃないのか?
「はいはい、確かにお前のおかげだよ。
お前に誘われたから桃子に出会えたし、ここにいれる。感謝してるよ。
ところで健一。さっきからオレ達の後ろに立っている外人さんは誰だ?
なんかシーリスを小さくしたような顔してるんだがな」
…なんでここが分かったんだよぉぉ。
「初めまして。私はシーリス姉さまの妹で、レイリアと申しますわ。健一様の彼女をしてますの。
噂には聞いてましたが、あなたが神楽姉さまの彼氏さんですの?…おじさんですわね」
ど、どうする?どこか逃げ道はないのか?
「ははは、おじさんか…おい健一、この子、面白い冗談を言うな?
面白い冗談を聞けたお礼に魚を食わせてやる。
釣りたてだから美味いと思うぞ?おら!口開けんかいワレェ!だれがクソジジイだゴラァ〜!」
「ちょ、ちょっと何をなさいますの!くそじじなんて言ってませんわ!
け、健一様ぁ助けてくださ…いやぁぁぁ〜!」
おじさんと言われ切れた江口さんが、レイリアに釣りたてのフナを食べさせようとしている。
この人怖いもの無しなんだな。あ、レイリアが怖いやつだって知らないだけか?
「アタシの妹に何してるのよ!このヘンタイがぁぁぁ〜〜!」
グチャ!っていう鈍い音と共に江口さんが膝から崩れ落ちた。
相変わらずシーリスの蹴りはすごいな。っていうか、なんかますます威力増してないか?
「健一さまぁ、レイリアは怖かったですぅ。
この腐ったヘンなおじさんに犯されるかと思いましたわ!
私が犯されていいのは健一様ただお一人…んふぅ〜!んふぅ〜!んふぅ〜!健一様あ〜!」
江口さんにフナを口に詰め込まれそうになっていたところを、シーリスに助けられたレイリア。
恐怖のあまりにおれに抱きついてきたレイリアは鼻息荒く、唇を尖らせて襲い掛かってきた!
ひい!や、止めろ!キスしようとするな!
「ふぅ〜、レイリアちゃんいい加減にしてね。
じゃないとお姉さん…ねぇレイリアちゃん、喉渇いたんじゃないのかな?
ここにはたくさんお水があるし、お姉さんがイヤというほど飲ませてあげるわ。うふふふふふ」
いつのまにか後ろからレイリアの首を掴んでいる本条。本条も来てたのか!た、助かった!
「お、おほほほほ、冗談ですわ、マヤお姉さま。
マ、マヤお姉さまも冗談…ですわよね?ね?ねね?」
無言でレイリアの頭を釣堀につけようと押し付ける本条。
「お、お姉さま?お姉さまぁぁ〜!じょ、冗談です!許してください!
もうしませんからぁぁぁ〜!」
視線を逸らすシーリス、おれもそれに倣った。
『ゴボゴボゴボゴボ』という、何かが沈むような音が聞こえたが気にしない。
それより江口さん、口から血が出てるけど大丈夫なのか?
江口さんに何かあったらおれが神楽に恨まれちまうよ。



結局レイリアはあの後シーリスに連れられてシーリスの部屋に行く事になった。
魚臭い顔と頭を洗いたいんだそうだ。…本条、容赦ないな。
「それにしてもマヤちゃん達、何でここに来たの?お前等釣りしたっけ?」
顎をさすりながら話す江口さん。シーリスに蹴られ慣れたのか、平気な顔をしてる。
蹴られ慣れるってのもイヤだよな。
「それがね、レイリアちゃんがここに来たいって言ってきたのよ。
なんでもこっちの方向から相川君の愛の波動を感じるって言ってね。
…相川君、間違いなく監視がつけられてるわね。
はぁぁ〜、まったくあの姉妹は…考える事まで一緒なんだから。困ったものよね?」
…監視?ウソ、マジで?おれに監視なんてつけてんの?
「ちょっと待て。あのレイリアって子、健一が好きなのか?」
レイリアのことを知らない江口さんが驚きの声をあげる。
「そうなんですよ。趣味が悪いとは思うんですけど、恋愛は人それぞれですからね。
レイリアちゃん、かれこれ6年は相川君一筋でやってますよ。ホント趣味が悪いですよね」
「なるほど、だからなのか。健一からロリコンのオーラが滲み出てるのは」
「そうなんですよ。いくら恋愛は自由といっても、これを好きになるなんて考えられませんよ
ね?」
「…何なんだよ二人とも。おれをそこまでいじって楽しいのかよ!チクショウ!
いつかは見返してやるぅ!」
冗談にしてもそこまで言う事ないだろ?いくら冗談でも傷ついちまうよ。…冗談、だよね?
「にしてもあれだな。シーリスの蹴りはますます威力が上がってきたな。
顎がガクガクしてんぞ。お〜イテェ」
平気な顔しててもやはり効いてたのか。そりゃあんなのをまともに食らったんだもんな。
「そうなんですよ。シーリスったら最近師匠の影響で、キックボクシングのジムに通おうとしたん
ですよ。山薙君が止めたから止めましたけど、困った子ですよ」
お、おいおい、シーリスは何を目指そうとしてんだよ!それより師匠ってなに?
「なあ本条、シーリスの師匠って?もしかしてあいつ、誰かにキック習ってんの?」
「あ、そうか、男性陣は知らなかったのよね。
そうなのよね、実は大学に入ってからシーリスに格闘技を教えてくれてる人がいるのよ。
フィットネスジムで知り合った人なの。シーリス、その人みたいになりたいって頑張ってるのよ」
「…じゃ、なにか?シーリスは格闘家にでもなろうとしてるのか?」
江口さんが驚きの声をあげた。おれも初耳でビックリだ!
「江口さん、そんな訳ないじゃないですか、違いますよ。
その師匠って人は格闘技だけでなく、料理も上手な女性ですよ。
しかも一児の母とは思えないほどのスレンダーな超美人なんです。
髪も腰まである綺麗な黒髪で、モデルなんじゃないかってぐらいに綺麗な人なんですよ!
シーリス、料理も教えてもらっててメキメキ腕を上げてますよ。
師匠はシーリスの憧れなんですよ」
へぇ〜、シーリスが料理ねぇ。
中学時代に俊に作ってきた弁当は、おかず全てが卵料理だったのにな。
「料理だけど、レイリアちゃんもシーリスから教えてもらってたわよ。
うふふふ、相川君よかったわね。
レイリアちゃん、きっと美味しい手料理を食べさせてくれるわよ?」
レイリアが料理?ウソだろ?だってアイツは昔、
『私が愛をこめて作った手料理ですわ!ささ、お食べくださいませ!』
と言って、一流フランス料理店のフルコースを持ってきたぐらいだからな。
あんなの100%ウソだってバレるっての。
あの時ぐらいまではまだ可愛げがあってよかったよなぁ。
「ふぅん、シーリスが手料理ねぇ…桃子にも教えてやってくれないかな?
桃子の作ってくれる料理って美味いことは美味いんだけど…さすがに毎日焼きそばってのは、
ちょっときついわ」
「ま、毎日焼きそばっすか?それはちょっとキツイっすね。
まぁ神楽らしいといえば神楽らしいっすけどね。
そういえば冷蔵庫にもカリカリ君が常備されてましたよね?
もしかして江口さん、神楽の尻に敷かれてるんすか?」
「バカヤロウ!桃子のケツはな、触り心地がよくて最高なんだよ!
まだオレの上に乗って動くのを恥ずかしがってるけど…ってお前なに言わせんねん!」
さすがは江口さん、ノリがいい!
江口さんの冗談に、本条は顔を真っ赤にして照れている。いつまで経ってもウブだよなぁ。
「も、もう江口さん!ヘンな冗談は止めて下さい!
それよりそろそろシーリス達が戻ってくると思いますよ。
相川君、私たちは桃子の部屋に遊びに行くからレイリアちゃんのことお願いね?」
え?おれがレイリアの相手するの?ウソだろ?
「ちょ、ちょっと待ってくれ!おれ一人でレイリアの相手をするの?無理無理無理!
ぜっったいに無・理!」
「そんなこと言わないでよ。レイリアちゃん、ずっと相川君と会うのを楽しみにしてたのよ?
今日着てきた服だって何時間もかけて選んでたんだから。髪型だって気にしてたのよ?
レイリアちゃん、真剣なんだから少しは気持ちを考えてあげてね?」
本条…そんなに気合を入れてきたレイリアを釣堀に沈めるのはいいのか?
「ま、お前も女いないんだからいいんじゃないのか?
それに数年後にはシーリスみたいに美人に成長するのは確実だろ?
今のうちから唾付けとけばいいんじゃねぇの?」
なんすか?その鼻をほじりながらの適当な言い方は。
「そうなんですよ。レイリアちゃん、シーリスそっくりに成長してるんですよ!私も驚きましたし
ね。今のレイリアちゃんってまるで中学時代のシーリスみたいでビックリしたんです!」
「へぇ〜、レイリアってシーリスそっくりになってるのか。けど性格まで似てたらダメじゃん」
「ほ〜、相川のくせにアタシに文句を言ってるのね?アンタ一度死んでみる?
師匠に教わって試してみたい技があるのよねぇ〜」
…なんなんだよ、今は気づかれないように背後に立つのが流行ってるのか?
「あ、あはははは…じょ、冗談だっての。シーリスは今のままが一番いいって。
俊だって今のシーリスが一番好きなはずだしな」
シーリスが怒ったら俊の名前を出すのが一番効果的だ。
「な、ナニ言ってんのよ!そんなの当たり前でしょ?」
ほらな、真っ赤な顔して照れてやがる。
こういうところは中学時代から変わらず、コイツの可愛いところだ。
「健一様ぁ…お久しゅうございます。レイリアはずっとお会いしたかったですわ」
俊の事を言われてデレデレになっているシーリスの隣に小さいシーリスが。
あれ?なんでシーリスが二人もいるんだ?
「うふふふ…驚いたでしょ?中学時代のシーリスそっくりでしょ?」
「へ?…ええ!こ、これがレイリア?おっどろいたぁ、シーリスが二人いるかと思ったよ!」
さっきも一応見たんだけど、ゴタゴタしてたからまともに顔を見れてないんだよな。
改めて見てみると、おれは久しぶりに見る成長したレイリアに驚いた。
だって中学時代に急におれ達の前に現れて、俊を巡って神楽とバトルしたシーリスそっくりなん
だからな。
…そしておれの心を鷲づかみした、中学生のシーリスに瓜二つなんだ。
「おやおやぁ〜?相川いったいどうしたのかな〜?
レイリア見て固まってるけど…もしかして惚れちゃった?」
「バ、バカ言うなよ!お前が可愛かった頃とそっくりだなって驚いただけだ!
懐かしいよなぁ。中学時代のお前は、考えてる事がすぐ顔に出てホント可愛かったんだよな。
今とは大違いだよ」
そうなんだよな。強気の性格のくせに、考えてる事がすぐに顔に出て、
それでいて結構寂しがり屋だったんだ。
俊に相手にされないって落ち込んでるのを、おれと本条でよく慰めたよなぁ。懐かしいな。
今思えばおれがシーリスを好きになったのは、
外見もそうだけど一番の理由はその性格だったんだよな。
「今と違ってあの頃のシーリスはホント可愛かったよな。本条もそう思うだろ?
…あれ?本条どうしたんだ?」
本条は何故か手を合わせておれを拝んでる。なんでだ?
「なるほどねぇ…相川はアタシのこと可愛くないと思ってるんだ。
中学時代から比べるとブサイクになったと。くっくっくっくっ…覚悟はいいわよね?」
は、はわわわわわ…し、しまった、やっちまった!
綺麗になったレイリアに驚いて、つい余計なことをベラベラと喋っちまった!
「お、落ち着けシーリス。今のお前は可愛いんじゃなくて…ええっと〜、そうだ!綺麗なんだよ!
そう!お前は綺麗な大人の女性に成長したん…こふっ!」
的確に顎を捉えた右フック。あぁ、脳みそが揺れるなぁ…
「ちょ、ちょっと姉さま何をなさいますの!
いくらシーリス姉さまといえ健一様に暴力を振るうなど…許しませんわ!」
「レイリア落ち着きなさいよ、ちょっと想像してみなさいな。
怪我して動けない相川をアンタが看病する。…どう?やってみたくない?」
ドスドスとおれの腹に蹴りを入れながら話すシーリス。も、もう許して…
「け、健一様を看病?……ゴクリ。ね、姉さま、両手を折ってくださいませ!
レイリアが健一様の手となり看病いたしますわ!」
無茶言うなよぉぉ、おれそんなのイヤだよぉぉぉ。
「お前等いい加減にしろ!こんなとこで騒ぐなよ、他の人に迷惑だろ?
ほら、健一もいつまで倒れてんだ?サッサと起きろっての」
ゴツンとシーリスの頭に拳骨を落とし、シーリスの暴走を止めてくれた江口さん。
シーリスは涙目で頭を抑えている。た、助かった!さすがは心のアニキ!
「シーリスとマヤちゃんはオレ達の部屋に来てくれるんだろ?桃子が寂しがっててな、少し元気
がないんだよ。今日だってお前等が帰ってくるって、楽しみにしてるんだ。
オレ、車で来てるから一緒に行こうや」
「そ、そうですね、桃子にお土産も買ってきてるんですよ。
ほらシーリス!いつまで頭押さえてるの?早く桃子のとこに行こうよ。
ほら、そんな江口さんを睨まないの!せっかくの綺麗な顔が台無しよ?」
シーリスの手を引っ張り釣堀を出て行く本条。助かったぁ、殺されるかと思ったぞ。
「じゃ、オレも行くわ。レイリアちゃんだっけ?ちなみに何歳なの?」
「12歳ですわ。今年で13になりますの。それがどうかしましたか?」
「そ、そうか。オレと20も違うのか。
そりゃおじさんって言っちまうわなぁ…は、ははは、はぁぁぁ〜」
ガックリと肩を落とし、釣堀から出て行った江口さん。
おじさんと言われたのがよっぽどショックだったのか、かなり落ち込んでいる。
ショックのあまり、今夜あたり神楽に甘えるんじゃないのか?
………あれ?みんな出て行ったのか?これってまさか?
「うふふふふふ…皆さん気が利きますわね?これでここには私達恋人同士しかいませんわ。
健一さまぁ、レイリアはずっと、ずっっとお会いしたかったですわ!あぁ、健一さまぁ」
う、うわ!こら、腕に抱きつくな!…あれ?なんでこんなにドキドキしてるんだ?
おれ、ロリコンじゃないはずだぞ?なんでこんなにドキドキするんだ?
不思議に思い、レイリアの顔をじっと見てみる。
綺麗な金色の髪に大きい瞳。整った顔。見れば見るほどシーリスに似てきたな。
あぁ、そうか。そうだったのか。レイリアがシーリスそっくりに成長してきたからか。
…え?シーリスそっくりだとなんでドキドキしてしまうんだ?
シーリスがおれの初恋の相手だったからか?けどそれはとっくの昔に吹っ切れただろ?
シーリスの目にはおれなんて映ってなかったから諦めたろ?
それなのに今さらなんだ?何なんだよ!
「け、健一様?そんなに見つめられると恥ずかしいですわ。
ここじゃなんですから、ホテルの部屋を取らせますわ。
ベッドの上で、レイリアの体の全てを見つめてくださいませ!」
お、おいおい、おれ、まさかまだシーリスのことを…ウソだろ?
「…健一様?いったいどうなされたのです?」
もう一度レイリアを見てみる。…ヤバイ、ドキドキが止らない!これはやはりシーリスのことを?

目の前でおれの顔を不思議そうに覗くレイリア。
おれはその顔から視線を逸らす事ができなかった。



(おかしいですわ。こんな健一様初めてですわ。いったいどうなされたのかしら?)
せっかくの二人きりでの公園デートなのに、私の顔を見てため息を吐く健一様。
私の顔に見惚れているのかと思いきや、私につれない態度は変わりませんわ。
…これはいったいなんですの?
「ねぇ健一様ぁ、いったいどうなされたんですの?
せっかくお会いできたのに…少しつまらないですわ」
「へ?あ、ああ、ゴメンゴメン、ちょっと考え事しててな。
しかしお前もシーリスにそっくりになったな」
「そうですの?シーリス姉さまと似ていると言ってもらえて嬉しいですわ!」
うふふふふ、大好きな姉さまと似てるなんて嬉しいですわ。
私もいつかは姉さまみたいに綺麗な大人になって、愛する人と生活をするんですの。
愛する健一様と、ラブラブでイチャイチャでちゅっちゅちゅっちゅな日々を過ごしますわ!
「ホントにそっくりだな。そうだ!シーリスが昔は神楽と仲が悪かったって知ってるか?」
「え?神楽お姉さまと?それは知りませんでしたわ。健一様、レイリアに教えてくださいませ!」
確か俊お兄様を巡って対立されてたんですわね?
知ってますけどここは知らないフリをして、健一様とのお話を弾ませますわ!
「あの時は驚いたぞ?転校してきた綺麗な外人がいきなり『俊は私のものよ!』って宣言したん
だからな」
「まあ!そうでしたの?けどシーリス姉さまらしいですわ」
「そうだろ?他にもいろいろとあったぞ?あれは俊が風邪を引いて学校を休んだときだ…」
嬉しそうにシーリス姉さまの事をお話になる健一様。
あぁ、なんて素晴らしい顔をして話されているんでしょう!こんな素敵なお顔は初めてですわ!
…え?初めて?
そうですわ、健一様が私の前でこのようなお顔で話されるのは初めてですわ。
何故急にこのようなうれしそうなお顔でお話になられたんでしょう?
不思議に思い、健一様の観察をする。……なるほど、分かりましたわ。
シーリス姉さまのことを話しているときにうれしそうなお顔をされてますわ。
何故ですの?何故シーリス姉さまのお話をされるのが嬉しいんですの?
う〜ん、よく分かりませんわ。こういう時は自分に置き換えて考えるといいんですの。
私が他人と話すときにしていて楽しいお話は…健一様!
そうですわ、やはり愛する健一様のお話をすると、それが長尾であれ楽しいものですわ。
あとは、そうですわね…やはりシーリス姉さまのお話ですわね。
私、お姉さまが大好きですから、お姉さまのお話はとっても楽しいんですの!
いつも私と遊んでくれた優しいお姉さま。
姉さまが日本へ行くと言い出したときはとても悲しかったですわ。
けどそのおかげでレイリアにも運命の人が現れましたの!
お姉さまのところへ遊びに来て、迷子になって泣いていた私を助けてくれた私のナイト様!
お姉さまには『日本にはピンチを救ってくれるナイトがいる』と聞いていましたの。
私もナイト様とお会いしたくて、すっごく楽しみにしてましたの。
久しぶりの日本で、はしゃぎ過ぎてしまい長尾とはぐれてしまいましたの。
寂しくて、怖くて、公園で泣いているところにナイト様が現れて、私を救ってくれましたの!
あぁ健一様ぁ、私の心はあの時からあなたのものですわ。早く体も奪ってくださいませ…
ってこんなこと考えてる場合じゃないですわ。
問題は何故健一様がシーリス姉さまのお話しをしたら嬉しそうなお顔になるのか、ということで
すわ。
う〜ん、何故なんでしょう?分かりませんわ、振り出しに戻りましたわ。
けど健一様のこの表情は、まるで好きな人の事を話しているみたいですわね。
……え?好きな人?
ま、まさか…まさか健一様はシーリス姉さまの事を?
改めて健一様のお顔を観察してみる。…ウ、ウソですわよね?
そんなことウソですわ!ありえないですわ!

そう、私は気がついてしまったのですわ。健一様の心を掴んでいる女が誰なのか。
まさか…お姉さま、シーリス姉さまだったなんて。
どうすればいいんですの?いったいどうすればいいんですの!



「失礼致します。レイリア様お呼びでしょうか?」
朝は機嫌よくなされていたのにホテルにお帰りになられてからは死にそうなお顔をされている。
いったいどうしたんだ?それに今日はシーリス様の部屋にお泊りになられるはずじゃなかった
のか?
「…長尾。あなたは私に大きな恩がありましたわよね?
ヤクザに追われて死ぬ寸前だったあなたを拾ってあげたという大きな恩が」
そう、俺はレイリア様に拾われる前、殺そうとしたヤクザに殺されかけた。
俺は昔、ヒットマンをしていたんだ。
ま、ドンくさい俺だから、仕事に失敗し、逆に殺される寸前まで追い込まれたんだけどな。
しかしあのボディーガードの空手使いのおっさんは何だったんだ?
一緒にいた俺の仲間2人を難なく潰し、
それを見た俺は恐怖のあまり逃げ出してしまったんだ。
で、追いかけられて撃たれて殺されかけた。
どうにか逃げ延びたんだが動けなくなってしまい、見つかるのは時間の問題だった。
そこに日本の父方の祖父の下に遊びに来ていたレイリア様が偶然現れて、拾われたんだ。
「は、レイリア様に助けていただいた命です。なんなりと御命令ください」
俺の言葉に肩を震わせながら俯いている。なんだ?いったい何を命令するつもりだ?
「…そ、では命令しますわ。今の私に一番邪魔な女を消して欲しいんですの」
「…は?『消す』という事は『殺せ』という事ですか?」
「……そ、そうですわ。あの女がいる限り、私に勝ち目はございませんの。
今のままだと健一様はあの女に取られてしまいますわ。
ですからあいつを……シーリス姉さまを殺しなさい!」
は?はあああ?シーリス様だと?な、なにを言い出すんだこの子は!
「レ、レイリア様?何を言っているのですか!
いくらレイリア様といえどこのような冗談、怒りますよ!」
「冗談なんかではありませんわ!けど、けどこうしないと健一様が姉さまに取られてしまうんで
すの!今の健一様の心を掴んで離さないのはシーリス姉さまなのですわ!
私ごときが姉さまに勝てるわけありませんわ。
けど幸いなことに、私は姉さまそっくりに成長しているらしいのです。
姉さまさえ消えてくだされば、健一様は…私に寄って来るはずですわ!」
ちょ、ちょっと待ってくれ!いくらなんでも血を分けた姉妹だろ?
それにあんなにシーリス様のことが大好きだったじゃないか!
「レイリア様。どうしてもシーリス様を消せと、そう仰るのですね?
よろしいのですか?あなたの大好きなシーリス様なんですよ?
消すという事はもう二度と会えなくなるということなんですよ?
もう二度とシーリス様と楽しい時間を過ごす事が…」
「長尾ぉぉぉ〜!出来るのか出来ないのかそれだけを言いなさい!
あなたがダメなら他を雇ってでも必ず消しますわ!
ひっ、じゃないと…グス、け、健一様がぁ、ヒック、私を見てくださらな…
ヒック、ヒック、消してきなさいぃぃ!」
綺麗な大きな瞳に涙をいっぱいに溜めての命令。
俺はその命令を拒否できず、7年ぶりに愛用のナイフを懐に忍ばせた。

「響子か?俺だ、お前にしか出来ない頼みがある。…いいから俺の話を聞いてくれ!
…よく聞け、レイリア様が俺にある人物を消せと命令された。
俺ではレイリア様を諌めることが出来なかった。
…ああ、そうだ。俺は命令に従うつもりだ。…分かってるよ、俺だってもう殺しはしたくない。
…ああ、だからお前にレイリア様を諌めてもらいたい。
…違うよ、俺が拒否しても他を雇うつもりだ。
レイリア様のことだ、もしかしたらすでに雇っているのかもしれん。
…ああ、頼む。今夜10時まで俺はターゲットに接触しないつもりだ。
それまでにどうにかレイリア様を説得してくれ。
…すまんな。お前にはいつも迷惑を掛けてばかりだな。
ふふふ、今度は俺の精子をたっぷりとかけてやるよ。
…うを!だから電話で叫ぶなって!耳がいかれちまうだろ?
…ああ、すまんが頼んだぞ。じゃあな、愛してるぞ」



「すんませんね、こんな時間に呼び出したりして。
ちょっと相談に乗ってほしいことがあるんすよ」
「お前が相談?珍しいな。俊や正吾じゃダメな話なんだな?…分かった、相談に乗ってやるよ。
そのかわり今度なんかいいDVDをオレにも回せよ?」
レイリアと一緒にいても頭に浮かぶのはシーリスの顔だけだった。
間違いない。おれ、今だにシーリスの事が…どうすりゃいいんだ?
おれはどうしたらいいのか分からず、江口さんに相談する事にした。
こんなこと、俊や正吾に話せねぇよ。
「実はおれ…好きな子がいるんすよ。その子は明るくて美人で、けどすっごく強気で、
でも時々弱い所を見せるんです。おれ、そんなアイツに惚れちゃってたみたいなんですよ。
そいつには相思相愛のお似合いの男もいるんですよ。
その二人はおれから見てもお似合いだなって思ってるんす。
情けない事におれ、つい最近まで自分がそいつの事を好きだって事に気がつかなくて…どうし
たらいいんすかね?おれ、このままじゃあいつ等と普通に会うことが出来ないっすよ…」
頭を抱え、うずくまる。なんでこんな気持ちに気づいちまったんだよ?
気づきさえしなけりゃあのまま付き合えたのに…チクショウ!
「…なるほどな。お前、そういうことだったのか。どおりでお前に女が出来ないはずだ。
お前はそいつ以外に本気で女を好きになったことがないんだな。
好きでもない女に付き合ってくれと言っても、相手も馬鹿じゃない。
そんな中途半端な気持ちのヤツと付き合うなんてしないだろうしな」
江口さんの言うことに思い当たる節はある。
おれ、今まで振られ続けてきたけど全然平気だったもんな。
そりゃ俊や正吾の前では落ち込んだフリしてたけど、
内心は次行けばいいやって思ってたもん。
そりゃこんな気持ちのヤツとは誰も付き合ってくれないよなぁ。
「健一、オレとお前の仲だ、グダグダいらん事は言わない。結論から言うぞ?…諦めろ。
お前にはあの二人の間に入り込むなんて事は絶対に出来ん。
辛いだろうが諦めるのが一番いい選択だ」
「…ふ、ふ、ふふふ、ふぁっはっははははっはあ!やっぱそうっすよね?
おれなんかがシーリスに恋すること自体が間違いっすよね?はぁぁぁ〜、悩んで損したっすわ。
すんませんね、こんな馬鹿みたいな相談に乗ってもらって。
いやぁ、おれって馬鹿だよなぁ!救いようのない大馬鹿だよな!はっはっははは!」
腹を抱えて大笑いするおれ。ホントに馬鹿だ。大馬鹿ヤロウだ!
「…おい健一。オレ、車でここまで来たんだけど、
酒飲んで帰りたいからお前運転して持って帰ってくれ。
車返すのは明日でいいぞ?傷つけんなよ?」
車のキーを投げて、おれに手を上げ歩き去っていく江口さん。
なんなんだよ?急に酒飲みに行くって。普通おれも連れてってくれるだろ?まあいいや。
いや〜、それより笑いすぎて涙が出てきて止らないぞ。
夜はまだ少し冷えるな。車で少し温まるとするかな?
江口さんの車に乗り込み、ラジオをかける。音量を最大にして座席を倒す。
「ほんっとおれって馬鹿だよなぁ!
おれみたいなザコがシーリスを好きになるなんて身の程を知れってんだよな!
わはっははははは…は、はは、ひ、くぅ…、うぅぅ…ちく、しょう…くっそおおぉお!」

おれは一生このラジオから流れてるBGMを忘れる事はない。
何年経ってもこの曲を聴くと、おれの初恋が無残にも散ったことを思い出すだろう。
さよならだ、おれが好きだったシーリス!ありがとうな!
明日からはお前の友人として付き合っていくよ。



「レイリア様、失礼いたします。少しお話があるのですがよろしいでしょうか?」
「…あらあらあら、持ち場を離れて何をお話したいというんですの?
あなたまで使えない人でしたのね。
はぁぁ〜、がっかりですわ。長尾とお付き合いするのは考え直したほうがいいですわよ?」
…長尾のやつ、榊にばらしたんですわね?もう許せませんわ、
今回の仕事が終わったらクビですわ。
「レイリア様、何故私がここに来たかお分かりになられているでしょうから、単刀直入に言いま
す。長尾への命令、考え直して下さい。誰かを殺せと命令なされるなんていけません!
そのような事、決して許されることではありません!」
…長尾だけに任せたのは失敗かしら?念のためにもう2,3人、追加した方がいいかしら?
「レイリア様、考え直してください!何故そのような事をお考えなさるのです?
相川様絡みなのでしょうが、そんな方法で手に入れても決して幸せにはなれませんよ!」
「…うるさいですわね。あなたのことを随分と評価していたつもりでしたけど、もういいですわ。
さっさと私の前から消えなさい。それともあれかしら?
あなたもお姉さまのようにこの世から消えたいんですの?」
やはり長尾では不安ですわ。さっそく他の者を手配しないといけませんわね。
「な?今、お姉さまとおっしゃりましたか?
ま、まさか長尾に消せと命令されたのは…シーリス様を?」
「あらあら、知りませんでしたの?そうですわ、あの女は健一様をたぶらかすいけない女。
私と健一様の愛には邪魔ですの。ですから消えて…パァン!」
んな?なんですの?なんなんですの!
右の頬に走る衝撃。口の中にヘンな味が広がる。こ、このわたくしを…叩いたんですの?
「さ、さかきぃぃ〜!自分が何をしたか分かっ…イタイ!」
パン!パン!と両頬に榊のビンタが当たる。こ、この…榊のくせになにをするんですの!
「レイリア様!御自分がいったい何をされようとしているのか分かっているのですか!
シーリス様を殺す?血を分けた姉を殺して相川様が手に入るとでも御思いですか!
今のあなたでは決して相川様は手に入りません!
いいえ、それどころか他の誰も手に入れることはできません!
分かってるんですか?死ぬという事はもう二度と会えないということなんですよ?
もう二度とシーリス様とお話も出来なくなり、遊んでもらえなくなるんですよ?」
う、うる、さい…うるさいうるさいうるさい〜!!
「そ、そんなこと分かってますわ!言われなくとも分かってますわよ!
けど…ひっく、こうでもしないと健一様が、ひっく、わたくしを見てくれ…ひっく、う、うええ〜ん!」
榊に叩かれたおかげで押さえつけていた想いが爆発しましたわ。
私は榊の胸に顔を埋めて泣きじゃくってしまいましたの。
「イヤですわ!シーリス姉さまがいなくなるなんて絶対にイヤなんですわ!
けど、健一様は姉さまを見てて私を見てくれない!どうすればいいんですの?
いったいどうすれば健一様が私を女として見てくれますの!
何故私は8年も遅く生まれたんですの…そのせいで健一様と、ひっ、う、うえぇ、ひっく」
どのくらいの時間泣いていたのかしら?
気がつくと榊の胸に抱かれ、頭を撫でられてあやされてましたの。
…なんなんですのこの胸は?ムカつきますわね!
「…レイリア様、落ち着かれましたか?レイリア様は別に焦る事はございません。
8歳の年の差がなんですか!レイリア様が二十歳になられるときにはシーリス様は28歳。
どう考えてもレイリア様のほうがいいに決まってます。
どんな勝負でもそうですが、最後に勝っていればいいのです。
レイリア様、今は負けていても、最後に勝つのはレイリア様です。
ですから今は御自分に磨きをかけることをお考えになられていれば、それでいいのです。
焦る必要はございません。この榊がいい女に仕立ててご覧に入れます」
「……本当でしょうね?あなたの言う事を聞いていればこのような胸になれるのでしょうね?」
ムニムニと揉んでみる。な、なんですの、このクセになりそうな感触は!
「そ、それは…なんとも申し上げられません」
榊の言葉で何故か胸がすっと軽くなりましたの。
…そうですわ、焦る事はありませんわ。最後に笑えればそれでいいんですわ!
「…ま、いいですわ。今回はあなたの口車に乗ってあげますわ。
ただし!健一様にヘンな虫がつかないように監視は続けますわ!」
「分かりました。ではさっそく長尾に命令の中止を…
レイリア様、本条様より携帯にお電話が入っておりますが」
あら?電話が鳴ってましたの?榊と話していて気がつきませんでしたわね。
マ、マヤお姉さま?…長尾のヤツ、まさかマヤお姉さまにもバラしたんですの?
こ、殺されますわ。わ、私が殺されてしまいますわ!
「どういたしましょう?私が変わりに連絡しましょうか?」
「お、お願いしますわ!榊、私は手が離せないと言いなさいな、分かってますわよね?」
溺死は苦しくてイヤですわ。まだ死にたくありませんわ。
「かしこまりました。…もしもし、本条様でしょうか?
私、レイリア様の使用人をしております榊と申しますが…」
なんなんですの?榊のくせにその勝ち誇ったような顔で私を見るのは?…ムカつきますわね!
「…ええ!わ、分かりました!急いで病院へと参ります!では失礼いたします!
レイリア様!シーリス様が怪我をなされて病院に運ばれたと…」
……え?ま、まさか長尾がしたんですの?そ、そんな…ね、姉さまが…う、そですわよね?

目の前が真っ暗になる。私の愚かさを呪いましたわ。
シーリス姉さま…死なないで下さいませ!レイリアが悪うございました!




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