「さ、榊、お姉さまは…お姉さまはやはり長尾に?
わ、私が命じたから…ひっく、おねえさまぁぁ〜」
マヤお姉さまから連絡のあった病院へ駆けつけるため、リムジンに飛び乗った私と榊。
シーリス姉さま…死なないで下さい!姉さまが死んだら私…私どうすればいいんですの?
「レイリア様、泣くのは早いです。まだはっきりとした状況が分かりません。落ち着いて…」
「わ、私が長尾に殺せなどと命令したからこうなった…ひっく、おねえさまぁぁ〜」
榊の胸に顔を埋め涙を流す私。お姉さま…お姉さまお姉さまお姉さま!ごめんなさいぃぃ〜!
私の頭を優しく撫でてくれる榊。私はそんな榊の胸で泣きじゃくりましたの。
私が榊の胸で泣いているうちにリムジンは病院に着きましたわ。
慌ててリムジンを降りる私。そんな私の前にお姉さまを殺した長尾が!
「レイリア様、シーリス様は…」
「ながおぉぉぉ!あなたは何故もう少し待てなかったのです!
わ、私はお姉さまに死んでほしくなかった!確かにあなたにお姉さまを殺せと命じましたわ!
けどあれは一時の気の迷いでしたの!それをあなたは…よくもお姉さまを!
絶対に許しませんわ!」
許さない…あなただけは絶対に許しませんわ!
「レ、レイリア様?あの、少し落ち着かれて周りを…」
「黙りなさい!お姉さまを殺したあなたを許すほど私は寛大ではありませんわ!
あなたには…いいえ、あなたの家族、親族、友人に至るまで全ての人間をゴミのようにこの世
から消してあげますわ!」
「…ねぇ、アタシが殺されたってなに?」
頭にアイスノンを乗せたお姉さまが不思議そうな顔で私を見る。
お姉さまは黙っててくださいな!
「うるっさいですわ!姉さまは黙ってなさい!
ながおぉぉぉ…あなたを生かしておいた自分の愚かさを呪いますわ!
あの時命を助けたりせず、あのまま見殺しにしなかった自分に殺意を抱きますわ!」
「…だから殺されたってなによ?それにアンタが殺せと命じたって言ったわね?
それってなによ?」
私の肩に乗せられた姉さまの手を払い除け、榊に指示を出す。
「榊、今すぐ手配しなさい!このクズが逃げ出さないうちに…さっさと手配するのです!」
「…レイリア様、まずは落ち着きましょう。落ち着いて周りをよく見ましょう」
はあ?榊、あなたまで何を言っているのです!
いくらあなたの恋人といえ私は絶対に許さな…お、お姉さま?
驚いて固まる私に、お姉さまがアイスノンを顔に付けてきましたわ。つ、冷たいですわ!
「お、お姉さま?い、生きて?…お、おねえさまぁぁ〜!
よかった、よかったですわぁぁ〜!うわぁぁぁ〜ん!」
お姉さまに抱きついて泣きじゃくる私。よ、よかったですわ!お姉さまが生きてるんですわ!
「お、おねえ…ひっく、ゴ、ゴメンナサイ、わ、わた…くしが、ながおに…ひっく、おねえさまぁぁ
〜!」
泣きじゃくる私を優しく抱きしめてくれるお姉さま。優しいお姉さま大好きですわ!
「落ち着いた?まったくアンタは…どうせアンタの事だからなんかヘンな事企んだんでしょ?」
しばらくお姉さまの胸で泣いていた私。お姉さま、意外と胸が小さいんですわね。
「…ゴメンなさい。私が長尾に命じてお姉さまを…ひっく、ゴ、ゴメ…ゴメンなさい!
お姉さまゴメンなさいぃ〜」
泣きじゃくる私をそっと抱きしめて…グ、グェェ、く、苦し、首が折れますわ!
お姉さまいったい何を?
私の首をギリギリと締め付けてきたお姉さま。く、首が!首がぁぁぁ!
「ふふふふ…さぁ、何をしようとしたか吐きなさい!レイリア!さっさと吐くのよ!」
き、厳しいお姉さまも大好きですわ。言いますからもう止めて…ゴ、ゴメンなさいぃぃぃ!

私はお姉さまに健一様がシーリス姉さまのことを好きなんだと話しましたの。
…私が何故長尾に命じたのか訳を話さないと首を折られてしまいますわ。
私の話を聞き終えたお姉さまは「相川がアタシを好き?…きもちわるぅ〜」と言いましたわ。
……殺意が芽生えてしまいましたわ。いくらお姉さまでも健一様を気持ち悪いとは!
「ま、アンタがアタシを殺したくなったってのはなんとなく分かるわ。
アタシも桃子を殺したかったからね。…まぁ、実際は一度殺されかけたんだけどね。
ふふふ、あの時はマヤが乱入してくれなかったらアタシ、桃子に殺られてたかもしれないしね。
ね、マヤ?」
嬉しそうに微笑むシーリス姉さま。殺されかけてなんで嬉しいんですの?
それよりあのお優しい神楽姉さまがそんな凶暴な訳ありませんわ。
お姉さま、きっとわたしをからかってるんですわ。
「…そうね。あの時の桃子、怖かったわよね。
けどそろそろ桃子もこっちに来るんじゃないのかな?
シーリス、桃子が来たらすぐに謝るのよ?じゃないとあの子…あなた殺されるわよ?」
青い顔して頷くシーリス姉さま。何故姉さまが謝らなければなりませんの?
「お姉さま、話が見えませんわ。何故神楽姉さまがそこまで怒ってるんですの?
それよりお姉さま、怪我をしたと聞いていたんですが大丈夫なんですの?」
私の問いかけにシーリス姉さまは今日あったことを話してくれましたわ。
…シーリス姉さま、オニですわ。



「桃子か?オレだけど、部屋に帰るの少し遅くなるわ。
…おお、健一に車貸してな、歩きで帰るわ。30分ぐらいかな?
…お土産?ははは、じゃあ肉まん買って帰るからな。風呂は先に入っとけよ?
…二人には部屋まで送れないって謝っててくれよ。
…はいはい、今度埋め合わせするって言っとけ。
…オレが帰るまで戸締り忘れんなよ?おお、急いで帰るわ。じゃあな」
桃子への電話を終え家路を急ぐ。しかし健一も不器用なヤツだったんだな。
俊や正吾とつるんでいるから不器用が移ったんじゃねぇのか?
今頃は車の中で号泣してるんだろうな。好きな人は親友の恋人か…きっついなぁ。
しゃーねぇなぁ、元気付けるためにいいところに連れてってやるか?
アイツ、まだ童貞だったよな?なら高級お風呂がいいかな?
それともデリバリーしてもらうか?…オレも久しぶりに付き合ってやるか?
けど桃子にばれたら泣かれるだろうしな…やっぱ止めとこう。健一だけでいいや。
そんなことを考えながらの部屋への帰り道、気がつくと部屋の近くまでたどり着いていた。
(あ、桃子へのお土産買うの忘れてた。コンビニに寄らなあかんな…おや?
あれはシーリスとマヤちゃんだな)
駅前のコンビニに向かう途中、オレ達の部屋から駅へと向かう二人を発見!
女二人でこんな暗い道を歩くとは少し無用心だな。いっちょ驚かせてやるか?
オレは前を歩く二人を驚かせるために先回りをし、突然目の前に飛び出し大声で叫ぶ。
「オドレ等パンツよこせ〜!一発ヤラせ…おごほ!」
突然目の前に現れたオレに驚いたのか、シーリスの蹴りが鳩尾に入る!い、息が出来ねえ…
「このヘンタイがぁぁ〜!死ねぇぇぇ〜!」
腹を押さえ、前かがみになっているオレの脇に回りこむシーリス。
脇に回りこんで、両手でオレをガッチリと抱きしめる。いや、これはクラッチしてるのか?
何をされるんだ?そう思った瞬間、体が中に浮く。
オレの目には地面が頭の上に迫ってくるのが見えた。何故頭の上に地面が?
そう思った瞬間、『ゴスン!』という音と共に、頭に衝撃が走り、意識が暗くなっていく。
こ、これは…バックドロップ、か?
シ、シーリス…アスファルトの上で…それは…ない……だ………ろう?

グチャ!…薄れいく意識の中、鬼の形相をしたマヤちゃんがオレの顔面を踏み潰した。
潰されるのってメチャクチャ痛いんだな。オレ、これからゴキブリに優しくなれそうだよ…がふ!



「ふぅ〜!ふぅ〜!ふぅ〜!…動かなくなったわね、もう大丈夫ね。
シーリス、あなたも頭を強く打ったみたいだけど、大丈夫?」
シーリスに投げられてピクピクと痙攣しているチカンに止めを刺す。
この近くってチカンが出るんだ。桃子に気をつけるように言わなきゃね。
「い、痛い!頭が痛いよぉ〜!マヤぁ〜いたいよぉ〜、たすけてよぉ〜」
チカンを投げた時に自分も頭を打ったシーリス。頭を押さえて泣いているわ。
師匠に教わった投げ技ってきっとこれね。
どうみても自爆技みたいだけど…これでいいのかな?
「それよりこのチカンを警察に……え、江口さん?」
私の足の下にはピクピクと痙攣してる江口さんが。…こんなところで何してるんです?
「マヤぁ〜、頭が割れたよぉ〜。痛いよぉ〜…血、出てない?」
涙を流しながら頭を見せてくるシーリス。頭のてっぺんがぽっこりと膨らんでるわ。
これは見事なタンコブね。
「はいはい、血は出てないわよ。ちょっとタンコブが出来てるだけよ。
それよりこれ、どうしよう?」
足元を指差しシーリスにも教える。
江口さんがチカンだったなんて…そんな訳ないわよね、きっと悪ふざけしただけよ。
「このチカンがどうした…江口さん?ど、どうしよ?
マヤ、このこと桃子にバレたらアタシ達…逃げよっか?」
江口さんだと気づいたシーリスが怯えだした。
確かにまずいわね、こんなの見たら桃子、怒っちゃうわね。
「そうよね、いくら悪ふざけでチカンのマネされたからって、ここまでしちゃいけないわよね。
シーリス、私が一緒に謝ってあげるから桃子に謝りなさいね?
いくら驚いたからって、これはやりすぎだと思うわ。
可哀想に…投げられた勢いで、顔まで打ちつけたみたいね。鼻、折れてるかもね」
ピクピクと痙攣しながら鼻血を流す江口さん。
シーリス、なにもここまでする事ないんじゃないの?
「えええ〜!アタシそんなに酷くやっちゃたの?どうしよ…桃子、絶対に怒るわよね?
ってそれより頭が痛いよぉ〜。ホントに血、出てない?すっごく痛いんだけど」
う〜ん、どうしよう?とりあえず江口さんは病院に連れて行ったほうがいいわよね?
シーリスも凄く痛がってるし、一応見てもらったほうが…
「シーリスお嬢様!一体どうなされたのですか?大丈夫ですか?」
救急車を呼んだほうがいいのか悩んでいた私たちの所へ走ってくる人が。この人って確か…
「確か…レイリアちゃんのお付の人ですよね?どうしてここに?」
そう、確か長尾さんっていう人だわ。よくレイリアちゃんに怒られてた人ね。
「は、レイリア様にシーリス様のお帰りが遅いと言われ、お迎えに…
それよりこれはいったい?」
痙攣してる江口さんと、頭を抑え涙目のシーリスを見て戸惑っている長尾さん。
「これなんですけど、実は……」
長尾さんに今までの状況を説明する。
「ははぁ…ではこの悪ふざけでチカンのフリをした、江口というお知り合いの方をシーリス様が
ここまでやられたと。う〜ん、これは病院で手当されたほうがいいですね。
頭も強く打っているようですし…車を手配いたします」
江口さんを見た長尾さんがタクシーを捕まえに走る。
桃子に連絡するのは病院についてからでいいかな?
あと山薙君とレイリアちゃんにも教えたほうがいいのかな?
一応シーリスも怪我(たんこぶだけど)をしたんだし、教えなきゃね。



「…ってことなのよ。投げた時に頭をガツンと打っちゃって痛いのなんのって…
ほら、すっごく腫れてるでしょ?」
アイスノンで冷やしている頭を触らせてもらう。わ!すっごく腫れてますわ!痛そうですわ!
「お姉さま痛そうですわ…大丈夫ですの?それより俊お兄様も来てるんですの?
私まだ挨拶をしていないので挨拶したいですわ」
「山薙君は江口さんに謝りに言ってるわ。
はぁ、シーリスの攻撃的過ぎる性格、直したほうがいいわね」
「ちょ、ちょっとマヤ!江口さんが悪ふざけしたからこうなったんじゃないの!
アタシは身の危険を感じたからしただけ…と、桃子?」
いつのまにか私たちの側に来ていた神楽姉さま。その顔は冷たい表情でなんか怖いですわ。
「ゴ、ゴメンね?ア、アタシもワザとしたんじゃないのよ?江口さんが悪ふざ…ふわあ!」
ひぃ!い、いきなり殴りつけましたわ!シーリス姉さまに殴りかかる神楽姉さま。
無表情で殴るのはとても怖いですわ!
「…何故避けるの?シーリス、避けちゃダメ」
そう言ってまた殴りかかる神楽姉さま。こ、こんなに怖い人でしたの?
「お、落ち着いて!ア、アタシが悪かったわ!謝るから!」
シーリス姉さまは神楽姉さまのパンチをどうにか避けながら謝る。
よく反応できますわね。さすがはお姉さまですわ!
「…謝らなくていいわ。私は江口さんを苛めたシーリスを許さない。決して許さないわ」
ブン!…スゴイ音をさせシーリス姉さまに殴りかかる神楽姉さま。
…無表情でとても怖いですわ。
「ちょ、ちょっと謝ってるでしょ!いくら桃子でもこれ以上…いった〜い!
な、殴ったわね!よくも…死ねぇ!」
ヒ、ヒィ!おなかを殴られたシーリス姉さまが蹴り返しましたわ!
ドスン!お姉さまが本気で蹴ったら怪我を…えええ?な、なんで平気なんですの?
「…痛いわ。お腹を蹴られてとても痛いの。
シーリス、こんなに痛いことを江口さんにしたのね?」
「やったが何よ!あの馬鹿が悪いんでしょ?あんな馬鹿蹴られて当然よ!
…いい機会だわ。中学時代の決着を今つけて……と、桃子、やっぱりケンカはよくないわ。
アタシ達親友だし仲直りしましょ?ね、ねね?」
いったいどうしたんですの?私のほうを見て震えだしたシーリス姉さま。
視線の先を見てみる。…私の後ろにはパイプ椅子を持ったマヤ姉さまが立っていましたの。
何故パイプ椅子を持たれているんですの?何故背筋が寒くなるんですの?
マヤお姉さまを見たら何故か動けなくなりましたの。何故体が震えて動けないんですの?
「レイリアちゃん…邪魔」
ゴスン!頭に走る衝撃!な、何故私が殴られ…マヤ姉さまオニですわ。
床に倒れ意識が徐々に薄れていく。
榊と長尾が慌てて走り寄って来るのが見えますわ。
二人はなにか私に話し掛けていますの。けどだんだんと視界がぼやけて来ましたわ。
そんな私の耳に姉さまたちの会話が聞こえてきましたの。

「…そう、シーリスの言うとおり私達は親友。
これはちょっとした悪ふざけ…私、椅子で殴られるのね?」
「ええ、そうよ。さすがは桃子、物分りがいいわね」
「…殴られるのはイヤ。どうしても殴…ゴスン!」
「ひ、ヒィィ〜!こ、殺され…ゴメン、マヤ!アタシが悪かったわ!だから許して…」
「ねぇシーリス。病院で騒ぐのはいけないことだってあなたも知ってるでしょ?
よかったわね、ここが病院で。救急車を呼ぶ手間が省けたわ」
「イ、イヤァァァ〜!ア、アタシ死にたくな…ゴキン!」

……マヤお姉さま、オニですわ。悪魔ですわ。無慈悲ですわ。…ガフ!



「なあ俊よ、いったい何があったんだろうな。なんなんだこの惨状は?」
シーリスとマヤちゃんにやられた怪我の治療を終え、謝りにきた俊と皆の下に戻ってきたら…
エライ事になっている。
シーリスは床に突っ伏して倒れているし、レイリアちゃんは椅子に横たわり介抱されている。
桃子は倒れてシクシク泣いているし、マヤちゃんは変に歪んだパイプ椅子に座りその惨状を眺
めている。
これはオレの怪我より酷いんじゃないのか?
「…本条、またやったのか」
この惨状を見た俊がボソッと呟いた。
なんだ?マヤちゃんが何をしたんだ?またやったのかってなんだ?
「あ、江口さん、もう大丈夫なんですか?桃子が心配してましたよ?」
オニのような顔で床に倒れてる二人を見ていたマヤちゃんがオレ達を見て微笑んだ。
なんなんだ?この変わりようは?
「まぁオレはそんな酷い怪我じゃないんだけど…オレは桃子のほうが心配だよ。
何があったんだ?」
床に倒れたままシクシクと泣いている桃子を抱き起こす。大丈夫か?
「桃子がシーリスとちょっとケンカしちゃったんですよ。
『私は江口さんを苛めたシーリスを許さない』ってね。
うふふふふ、江口さん、愛されてるんですね」
桃子…お前はなんて可愛いんだ!チクショウ!抱きしめてやる!
「…本条、ちょっとやりすぎじゃないの?シーリスは生きてるの?
あれ?レイリアちゃんも来てたんだ。
可哀想に…巻き添え食っちゃったのか。シーリス、シーリス大丈夫?」
巻き添えって何だ?よく分からんな…ま、いいや。とりあえずは桃子に怪我がないか心配だ。
「おい桃子、大丈夫か?病院に来て怪我をするなんて…お前は漫才みたいなヤツだな。
大丈夫か?」
クスンクスンと泣いている桃子の頭を優しく撫でる。
可哀想に…ガタガタ震えてるじゃないか。シーリスめ、オレの女に何したんだ!
かなりムカついたんでシーリスを睨む。…何故かシーリスも俊に抱きついて震えてる。
なんだ?何がどうなってるんだ?訳分からんぞ?
「私とシーリスは親友。私とシーリスは親友。私とシーリスは…」
なんだ?なんなんだ?桃子が壊れたスピーカーのように同じことを繰り返し言っている。
ホント訳分からんぞ?
「そ、それより江口さん、相川君に呼び出されて会いに行ったんでしたよね?彼、どうでした?」
何かを誤魔化そうとするようなマヤちゃんの問いかけ。
なんだ?ここでいったい何があったんだ?
「ん?健一が何かあったのか?アイツには車を貸しただけだぞ?」
まさか健一がシーリスを好きだったとは教えられないな。ここは黙っとかないとな。
「レイリアちゃんが相川君の好きな人はシーリスだって落ち込んでたんですよ。
それでとんでもないことしようとしたんでちょっとお仕置きしちゃったんです。
江口さん、相川君がシーリスを好きだったって知ってましたか?」
レイリアちゃん?…今椅子に寝転んで、空中にある何かを掴もうとしているあの子だよな?
マヤちゃん、お仕置きっていったい何をしたんだ?
「へ〜、そうだったんだ、知らなかったな。
ま、それがホントならそのうち健一が行動起こすんじゃないのか?
ははは、シーリスを巡って俊と修羅場だな。そりゃ楽しみだ、はっはっは!」
ま、アイツの事だ、そんなことをしやしないよ。今頃は車の中で泣き疲れて寝てるだろうよ。
健一…さっさと立ち直れよ。お前が落ち込んでたら面白くないんだよ。
オレを不審な眼差しで見るマヤちゃんを無視して桃子を背負う。
「じゃ、オレ等は帰るわ。お前らもこんなとこで遊んでないでさっさと帰れよ」
オレはマヤちゃんにこれ以上突っ込まれないうちに、桃子を連れて帰ることにした。



「う〜、ヒドイ目に会ったわ。レイリア、アンタもやられたんでしょ?大丈夫?」
頭が割れたかと思ったわ。
パイプ椅子で躊躇なく殴るなんて…マヤを怒らせるとやっぱり怖いわね。
桃子も久しぶりにやられたみたいだし…マヤ、少しは手加減してよね。
そのうちアタシ達死んじゃうよ?
アタシとレイリアはアタシの部屋に戻ってきた。
お互い頭に大きなこぶが出来てるけど、どうにか生きてるわ。
「だ、大丈夫…でもないですけど、どうにかいけますわ」
まだクラクラしてるのか頭が左右に揺れているレイリア。
「そ、ならいいわ。…で、レイリア。なんでアタシを殺そうと考えたの?
アタシが相川なんて相手にしてないって分かってるわよね?
あんなのを相手にするのってアンタぐらいなもんよ?」
まさか実の妹に命を狙われるなんて思いもしなかったわ。
ま、病院に来た時アタシが死んだと思い、長尾って大男にあんなに怒ってくれたのは嬉しかっ
たわ。けど殺せと命令するのはちょっとおかしいでしょ?
「…ぐすん。私が悪いんですの。健一様がお姉さまのことばかりお話になられたんですの。
とても嬉しそうなお顔でシーリス姉さまのお話ばかり…嫉妬したんですの。
お姉さまがいなくなれば私に靡いてくれると思ったんですの。
私はお姉さまそっくりに成長してると言ってくださいましたし…健一様に女として見てほしかった
んですの」
大きくて綺麗な瞳いっぱいに涙を溜めて話すレイリア。我が妹ながらカワイイじゃないの。
「女として見てもらえない?そんなことないと思うわよ?
だってレイリアはこんなにカワイイじゃないの。
あんな馬鹿でもそのうち気づくって!今はアンタに目が向いてないだけよ。
そう思い詰めなくてもいいわよ」
アタシの言葉に俯きながらブンブンと首を振るレイリア。
「いつになったら見てくれますの?
…6年ですわ。健一様の事だけを想い、もう6年も経ちましたわ。
けど健一様は私のことを女として見てくださらない…辛いんですの。
レイリアは何故健一様と同い年に生まれることが出来なかったの?
最近は毎日そんなことを考えていますわ。
もし私が大人になるまでに健一さまに想い人ができたらどうすれば…怖いんですの。
毎晩そんなことを考えて震えてるんですの。
健一様が私以外の人を選んだらどうすれば…そんなことを考えたら夜も眠れませんの。
けどそれが今回現実になったんですの。健一様はお姉さまを想っていたんですの。
私はそれを知ってお姉さまが憎くて憎くて…だから長尾に命じてお姉さまを…
ひっく、ゴメンなさい」
涙を流しながら心のうちを話してくれたレイリア。
レイリアとこんな話をしたのは初めてね。
「そっか…レイリアは不安なんだ。ゴメン、アタシじゃアンタの役に立てないわ。
けどね、アンタよりもっと不利な状況から男を物にした子がいるわ。
一度その子に相談してみなさい。アタシから頼んであげるから」
そう、多分あの子ならレイリアの気持ちが分かってくれるはず。
「…え?そんな人がいらっしゃるんですの?誰ですの、その人は?」
「あの子と相手の年齢差は12歳!一回りも違うのよ?しかも最初は娘ぐらいに思われてたの。
けどあの子はそのハンディを跳ね返して男を手に入れた。一度相談してみなさい。
…桃子ならきっとアンタの気持ちを分かってくれるわ」
「…桃子?ええ?桃子って神楽姉さまですわよね?
相談に乗ってくれるような人とは思えませ…12歳差?
そ、そんなに歳が離れてるんですの?
そういえばあのおじさんは私と20違うと言ってましたわ。
ど、どうやって口説いたんですの?お姉さま!どうすれば歳の差を克服出来るんですの!」
お?やっと元気になったわね。やっぱりレイリアは元気なのが一番よ。
「そんなのアタシに聞かないでよ。
桃子には連絡しててあげるから、明日にでも聞きに行きなさいね。
それよりもう寝よっか?…はぁぁ〜、アンタのせいで俊との甘い夜がパーよ。
どうしてくれんのよ!」
「い、痛いですわ!お姉さま痛いです!」
ふ〜ん、師匠に習ったこのフェースロック?っていう技、結構痛いんだ。
次はロメロスペシャルだったかな?をやってみよっと。

アタシは元気になったレイリアと楽しい夜を過ごしたわ。
桃子、レイリアをよろしくね。アンタならレイリアの気持ち、分かるでしょ?





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