(ここは…いったい何処ですの?何故私は一人でこんなところを歩いているんですの?)
気がつくと周りには誰もいなくて薄暗く、寂しい広場のような場所にいましたわ。
おかしいですわ。何故かこの場所には見覚えが…ああ!ここはまさか?
慌てて周りをよく見てみる。
やっぱりそうですわ。ここは私が健一様と初めて出会った、思い出の公園。
ほら、あそこに大きな土管が置いてありますわ。
うふふふ、思い出しますわね。
久しぶりの日本、姉さまと会えるとはしゃいでしまい、長尾とはぐれてしまったんですわ。
怖くて、寂しくて、あの土管の中で泣いていたんですわね。
『お姉さま助けて!』って泣きじゃくっていたんですわ。
そこに現れたんですわ!私の救世主、愛する健一様が!
あぁ、懐かしいですわね、思い出しますわぁ。
泣きじゃくる私を優しく慰めてくれる健一様。
私を元気付けるために、いろいろな楽しいお話をしてくださいましたわ。
私、健一様の楽しいお話のおかげで寂しい事も忘れ、すっかり元気になったんですの。
けどそんな楽しい時間も、長くは続きませんでしたわ。
ノロマな長尾が私を探しに来たんですの。
別れは辛いものでしたわ。私、落ち込んでしまいましたもの。
けど、そんな落ち込む私に、健一様は優しく頭を撫でてくれながらこう言いましたの。
『そんなに落ち込まなくていいよ、そのうちまた会えるって。そうだ!また会うって約束しよう!』
小指を差し出しながらの約束。私、初めて指きりというものをしましたわ。
私は内心(もう二度と会えない)と思っていましたわ。
だって私はたまたま日本に遊びに来ていただけ。
今日会えたのだって、私が迷子になったからで普通なら会うことすらなかった、と。
別れてから気づきましたの。お互い名前を名乗っていないことを。
私は諦めましたわ。名前も知らない、あの優しいお兄さんとはもう二度と会う事もないだろうと。
けど、運命の女神は二人を導いたんですの!運命的な再会は次の日に訪れたんですわ!
まさかあの優しいお人が姉さまのお友達だったとは…まさしく運命の出会いでしたの!
私は悟りましたの。この人こそ私の運命の人だと。私だけのナイト様だと。
あぁ…いい思い出ですわぁ。全てはこの土管の中で始まった…け、健一様!何故ここに?
土管の中を覗くとそこには愛する健一様が!
あぁ、やはり私達は運命に導かれているんですわ!
健一様も私に気づき、微笑みながら口を開きましたわ。
『レイリア…おれ、お前の事がキライなんだよ。だからもうつきまとうのやめてくれる?』
光り輝く笑顔の健一様が、話しかてくださいましたわ。
あぁ、なんて素敵な笑顔なんで…嫌いですって?
そ、そんな、何故ですの?レイリアのどこがいけないんですの?
健一様!レイリアを嫌いにならないでくださいませ!
『キライなところ?いっぱいあるぞ?まずはその小さい胸。おれは大きいほうが好きなんだよ』
そ、そんな!でしたら手術でもして大きくしますわ!だ、だから見捨てないで…
『次は、人を道具としか見ないその腐った性格。おれ、そんなクズは許せないんだよ』
そ、それは…でも全ては健一様と結ばれるための努力ですわ!レイリアは健一様のために…
『ほら、やっぱり腐ってるじゃねぇか。自分のした事を人のせいにするなんて、本物のクズだな』
け、健一様ぁ…な、治しますわ!
レイリアは、真面目ないい子に生まれ変わりますわ!ですから嫌いにならないで…
『なにが一番キライかといったら、その顔だよ。
おれの愛するシーリスに、お前ごときが似るなんて絶対に許せない!
お前、さっさと整形してどっかに行っちゃえよ。お前が生きているだけでムカつくんだよ』
け、健一さまぁ…嫌ですわぁ、レイリアを嫌いなんて言っちゃ嫌ですわぁ。
『ははは、泣き顔までムカつくな。お前、どっか行けよ。お前がいると気分が悪くなる』
け、健一さまぁ…ゴ、ゴメンなさい、わ、わたくしを嫌いにならないで…
泣きじゃくる私を見捨てて歩き出す健一様。
…嫌。いやぁぁぁ〜!けんいちさまぁぁ〜!

(レイリアちゃん、もう朝よ。起きて…)
絶望に打ちひしがれる私の体を、誰かが揺する。
(レイリアちゃん、もう起きるの。やきそばが冷めてしまうわ)
け、健一様ぁ…見捨てないで、行かないでくださいませ!
(やきそばは冷めても美味しいわ。けど、出来立てが一番美味しいの。
朝よ、レイリアちゃん起きて)
「健一様!行かないでくださいませ!…あ、あら?健一様は?」
周りを見てみる。ここは…ベッドの上?もしかして…夢?よ、よかったですわ、夢でしたのね。
ホッと胸を撫で下ろす私。そんな私を不思議そうに見つめる桃子お姉さま。
ホントによかったですわ。
私、健一様に嫌われたのかと…ウプ、き、気持ちが悪いですわ。何故ですの?
あ、頭も痛いし…うぅ、気持ち悪いですわぁ。
「う、うぅ…気持ち悪いぃ。うぅ〜、あ、頭が割れますわぁぁ」
さ、最悪な目覚めですわ。うぅぅ〜、何故こんなに気持ち悪いんですの?
「…レイリアちゃん、起きた?おはよう、朝ごはんはパンでいいの?」
「い、いいですわ、こんな状態では食べれませんわ」
「…ダメ。しっかり食べないと体に悪いわ。レイリアちゃんは成長期。
しっかりと食べて体を作らないとダメ」
うぅぅ…桃子お姉さまちょっと黙っててくださらない?あ、頭が割れそうでおかしいんですの。
……って何故桃子お姉さまがいるんですの?そもそもここは何処ですの?
昨日は確か桃子お姉さまに呼び出されて大衆レストランに行ったんですわ。
そこには健一様もいてシーリス姉さまも来たんですわ。それで…どうなったんですの?
おかしいですわ、記憶が無いですわ?
「…おかずはやきそば。パンに挟むとやきそばパン。やきそばパンはとても美味しいわ」
「桃子お姉さま、ここは何処ですの?レイリアは何故ここに?」
「…レイリアちゃんは昨日、相川君の飲んでいたお酒を盗み飲みしたの。
間接キス、それはとても嬉しい事。私もよく江口さんとキスをしたくてしたわ。
お酒を飲んで酔ってしまった相川君とレイリアちゃん。
江口さんが二人を泊めようと、私たちの部屋に運んできたの」
間接キス?…ああ!思い出しましたわ!
昨晩健一様のグラスに注がれた飲み物を頂いたんですわ。
グラス越しのキス…あぁ、レイリアはそれだけで幸せですわぁ。…うぅ、それより気持ち悪いぃ。
「…レイリアちゃん、早くご飯を食べてお風呂に入るの。相川君はまだ寝ているわ。
だから今のうちに入るの」
頭を抑え呻いている私の手を引っ張る桃子お姉さま。ええ?健一様もいらっしゃるんですの?
ということは…昨夜一晩一つ屋根の下に健一様と?く、くぅぅぅ〜、レイリア一生の不覚!
こんなチャンスを逃すとは…きぃぃ〜!悔しいです…わ?
桃子お姉さまに連れられた先には、テーブルいっぱいに置かれたお皿が。
なぜかそれには大量の…これはパスタですの?が、盛られていましたわ。
「…パンがいいの?やきそばパン、作ってあげるわ」
そう言って6枚切りの食パン2枚に、パスタを大量に挟む桃子お姉さま。
「…はい、レイリアちゃん。とても美味しいわよ」
…こ、これは何かの罰ゲームですの?
何故朝からこんな大量に、お食事を食べなくちゃいけないんですの?
「と、桃子お姉さま、さすがにこの量は食べれませんわ」
「…遠慮してはダメ。せっかくレイリアちゃんの為に作ったのだから、全部食べて」
…へ?ま、まさかここにある全てのお皿の料理は…私の為に?
というか私が食べなくてはいけないんですの?
「…いただきます。レイリアちゃんも食べて」
桃子お姉さまの手にはご飯山盛りのお椀が。
私の目の前でパスタをズルズルとすすりながら、そのご飯を食べていく。
ど、どこに消えているんですの?そんな細い体の何処に入ってるんですの?
「…レイリアちゃんも食べて。とても美味しいわよ」
私のことを澄んだ瞳で真っ直ぐに見る桃子お姉さま。
こ、これを私一人で食べるんですの?
二皿目のパスタに手を伸ばす桃子お姉さまを見て絶望する。
…シーリス姉さまの友達はヘンな人ばかりですわ。



あぁ…なんか体がフワフワしてる感じがするなぁ。
周りもヘンにぼやけてるし…うん、これはきっと夢だな。
(アンタ、アタシが好きだったの?はん!今さらなに言ってんのよ!
今までアタシの気持ちに気づかなかったくせに…もう遅いわよ!)
目の前に突然現れた金髪で制服姿の女の子。
ははは、やっぱり夢だ。これって中学時代のシーリスじゃないか。
しかももう遅いって…さすがは夢だな。シーリスもおれの事を好きだったって設定か?
(ねぇアンタ、アタシがなんで日本に来たか知ってるの?アンタに会うために来たのよ。
アンタがアタシを助けてくれた運命の人だから会いに来たのよ)
おいおい、いくら夢でも都合がよすぎるぞ?それは俊だろうが。
俊が苛められていたシーリスを助けたんだよ。
(覚えてないの?相変わらずくさった頭してんのねぇ〜。
私が公園で迷子になっていたのを助けてくれたのが健一様だったんですわ)
そうだったな。あれがおれ達の初めての出会いだったんだよな。
(ねぇ健一様。レイリアはあの運命の出会いから健一様の物なんですの。
健一様ぁ…早くレイリアを健一様だけの物にしてくださいませ!)
レイリア、ゴメンな。おれ、お前に黙ってる事があるんだ。
いい加減本当の事教えなきゃいけないよな?
実はおれが公園で泣いていたお前の相手をしたのは…あれ?
なんでレイリアが出てきてるんだ?
目の前では目を瞑り、唇を尖らせているレイリアが。
さっきまではシーリスだったのに…ホントいい加減な夢だな。
(健一様ぁ…レイリアを奪ってくださいませ!レイリアは健一様に奪われとうございますわ!)
か、かわいいなぁ。さすがにおれが好きな女だけあって、レイリアも相当な美人だ。
おれはレイリアのカワイイ顎に手をかけて顔を寄せていく。
『レイリア…おれもお前が好きだ。愛しているよ』
(…はん!やっぱりアンタはアタシじゃなくてレイリアが好きなんじゃないの。
こんな子のどこがいいのよ、この変態ロリコンが!)
顎を持ったおれの手を払うシーリス。
おい!いくらシーリスでもレイリアをバカにするなんて許さないぞ!
(はん!こんなムネペタのお子ちゃまなんかよりアタシのほうが上手いわよ?
どう?アタシがアンタのその汚い性器を舐めてあげるわ。
さっさと出しなさいよ、舐めてほしいんでしょ?)
(お姉さま!健一様の物は私の物ですわ!私だけが舐めれるんですの。
ねぇ健一様、私とお姉さま、どちらにしてほしいんですの?)
な、舐めてもらえるのか?それっていわゆるフェラチオ?
『おれがしてもらいたい人、そんなの決まってるじゃないか。
もちろんおれが好きなお前だよ、レイリア』
おれはレイリアをギュッと強く抱きしめる。
(…嬉しいぞ、お前がオレを選んでくれて。よし、しゃぶってやるからさっさとチンポ出せよ)
腕の中に抱いているはずのレイリアから野太い声が。へ?この声は…
『う、うわぁぁぁ〜!え、江口さんなにしてるんすか!』
(はっはっは、照れるな照れるな。オレも前からお前の尻に興味があってな。
しゃぶってやるから尻貸せや)
ランランとした目でおれを押し倒す江口さん。ヒィ!イヤだぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!

な、舐めるな!触るな!おれはレイリアがいいんだよぉぉぉぉ〜〜〜!!
ヒィ!きゃぁぁぁぁ〜〜〜!!



「うわああああ!!はぁはぁはぁはぁ!…ゆ、夢だよな?」
慌てて周りを見てみる。江口さんはいない、おれも服を着ている。尻も痛くない。よし、夢だ!
「はぁぁぁぁ〜、よかったぁぁ、夢かぁぁ。死ぬかと思ったぞ」
くっそ〜、せっかくレイリアにフェラしてもらえるところだったのに邪魔しやがって…
江口のやろう!
「あ〜、最悪な目覚めだ。江口のヤロウ…夢の中まで嫌がらせをするとは。
せっかくレイリアに…あれ?」
ちょっと待て、おかしいぞおれ!なんでレイリアにされることを喜んでるんだ?
おれ、レイリアのとこはなんとも思ってないはずだろ?
ならなんであんな夢を見たんだ?欲求不満だからか?
そうだ、きっと欲求不満だからあんな夢を見たんだ。
じゃないとおれがレイリアを好きだなんて思うはずがない!
「そうだよな、きっとそうだ。はぁぁ〜、ビックリさせんな…ま、待てよ?
ならなんで江口さんが夢に出てきたんだ?
おれ、まさか江口さんを?…い、いやだぁぁぁぁぁ〜〜!!」
頭をかきむしり叫ぶおれ。おれはホモじゃない!断じて違う!
「健一うるせぇぞ!起きたんならさっさとこっちに来い、昼メシ出来てるぞ」
隣の部屋から江口さんの声が。あれ?なんで江口さんがおれの部屋に?
…ってここは江口さん達の部屋じゃね〜か。なんでおれがここにいるんだ?
訳が分からないままとりあえずは江口さんの所へと行ってみる。
「おう、もう大丈夫か?お前、昨日はしこたま飲んだからな。二日酔いにはなってないのか?」
二日酔い?そういえば少し気持ち悪いな。…あぁ、そうだった、思い出した。
おれ、シーリスのこと忘れるために、江口さん達に付き合ってもらって自棄酒飲んだんだった。
それでかぁ、おれ、メチャクチャ酔っ払ったんだろうな。
江口さん、酔ったおれを部屋に泊めてくれたのか。さすがはおれの兄貴分だ!
…ま、まさか何もされてないよな?正夢なんてシャレにならないぞ?
「…お前、ケツを触ってなにしてんだ?まさか漏らしたのか?」
「な、なんでもないっすよ!漏らしてなんてないっすから!」
あぶねぇあぶねぇ、まさかアンタに襲われる夢を見たなんて言えないからな。
「なんだ?よく分からんが…まぁいいや。とりあえずメシを食えや。桃子特製やきそばだぞ!」
「…またっすか?神楽に違う料理仕込んだほうがよくないっすか?」
神楽のやきそば食うの、これで何回目だ?
そりゃ初めて食った時は感動したさ。なんせあの神楽が飯を作ってくれたんだからな。
けどそれも最初だけだ。遊びに来るたびにやきそばを食わされるってのはあまりうれしくない。
っていうか江口さん、いつもやきそば食ってるのか?この人も大変だな。
「徐々に仕込んでいくさ。ところでお前、もう酒は抜けたのか?」
「は?そりゃ昼過ぎまで寝てたら抜けますよ。
スンマセンでしたね、おれ、酔っ払ったみたいで部屋に泊めてもらって」
出されたやきそばをずるずる啜る。食い飽きたけど、美味い事は美味いんだよなぁ。
「そうか、もう抜けたか、なら安心だな。
お前、飯を食ったらレイリアちゃんを送ってってやれや。
帰りにガソリン満タンにして来いよ」
一万円を手渡され、車の鍵も渡される。
おいおい、昨日湖までいった所だぞ?またパシリかよ!
「おれが行くんすか?勘弁してくださ…え?レイリアがここにいるんすか?」
「おう、今は二日酔いで寝てるぞ。お前の酒を飲んでこうなったんだから送って行ってやれや」
あんな夢を見た後に会うのはちょっと気まずいな。
「ははは、カワイイ子じゃねぇか。お前と間接キスをしたくてお前の酒を飲んだんだからな。
あの子、もう何年もお前の事を好きでいるんだろ?そろそろ真剣に考えてやったらどうだ?」
「…けど、おれとは8つも違うんすよ。あいつ、まだ12ですよ?
江口さんと神楽が12離れてるといっても、神楽は20歳です。
レイリアはまだ12歳なんですよ?そんなの無理に決まってるじゃないっすか」
そうだよ、おれ達は江口さん達とは違うんだよ。
「…健一よ、たとえオレと桃子がもっと早くに出会っていてもオレは必ず桃子を口説いていた。
そう言い切れる。むしろもっと早くに出会いたかったよ。
そうしたらもっとたくさんの時間を一緒に過ごせたんだからな」
な…チクショウ、江口さんが少しカッコよく見えてしまったじゃねぇか!
「…ま、焦って結論を出す事はないさ。ただな、自分の気持ちにはウソをつくなよ?
シーリスの時みたいに、もうお前が遠慮しなくちゃいけないヤツなんていないんだ。
お前の心の赴くままにしたらいいさ。…無理やりはダメだぞ?最初は優しくしてやれよ?」
「…なんでおれにこんな話をするか、分かんないんすけど?
まぁいいっすわ、とりあえずレイリアを送りますよ」
江口さんに言われるまでもない。おれは自分にウソなんてついていない。
レイリアの事なんてなんとも思ってないさ。…ならなんであんな夢を見たんだ?
なんで送っていけと言われて嬉しいんだ?おれ、まさかホントにレイリアのことを?
違うよな?あいつがシーリスに似てるからだよな?きっとそうだよ、そうに決まってる。

おれは自分にそう言い聞かせながらやきそばをズルズルと啜った。



はぁはぁはぁはぁ…もう無理ですわぁ。桃子姉さま、もう許して…
(…何故食べれないの?やきそばは、とても美味しいわ。
ほら、レイリアちゃんの為にこんなに作ったの)
桃子姉さまが指を差した先には、大きなお皿に盛られたやきそばが大量に。
その横には食パンも置かれていますわ。
うっぷぅ…な、何故桃子姉さまは加減というものを知らないのですの?
こんなに大量のやきそばは食べれませんわ。もう無理ですわ、イヤなんですわぁぁ!
(…レイリアちゃんは食べ物を残すの?とても悪い子なのね)
悪い子でいいですわ!レイリアはこれ以上食べませんわ!
(うふふふふ…ねぇレイリアちゃん、せっかく桃子が作ってくれたのに残しちゃうんだ?)
当たり前ですわ!こんな馬鹿みたいに作って…マ、ママママ、マヤ姉さま?
ななな何故ここに?
(…マヤ、私の料理は何故食べてもらえないの?せっかく作ったのに…悲しいわ)
(桃子、そんなに悲しまないで。私がどんな手を使ってでも食べさせるから)
ど、どどど、どんな手って何ですの?何なんですの!
(ねぇレイリアちゃん?私の手作り雑草サラダと桃子のやきそば、どっちを食べたい?)
マヤお姉さまの手には、ボールいっぱいに盛られたサラダらしき物体が。
ヤ、ヤですわ。もうイヤですわ、この人たちおかしいですわ!
(…おかしいのはレイリアちゃん、あなたよ。
こんなに大量のご飯を残さずに食べてしまうんだから)
はぁ?なにを言ってるんですの?私は絶対に食べませんわ!誰が食べるもんですか!
(うふふふふ…自分で食べるのと、無理やりねじ込まれるのはどっちがいいのかな?
お姉さんね、ワガママな子に人権なんていらないって前から思ってたんだ)
ふ、ふがぁ!もうねじ込んでまふわぁ!ゴメンなさい!ホメンはさい!
はべまふ!フェイリアがはべまふからぁ!
(…何を言っているのか分からないわ。こんな時はどうしたらいいの?)
(あら、そんなの簡単よ。全てを飲み込ませてあげればいいのよ)
ふがふがふがふがふが…死にまふ、もう許ひて。
(…謝ればすむと思うのは、世の中をよく知らない証拠。
レイリアちゃん、世の中の厳しさを味わうのよ)
(うふふふふふ…この雑草サラダを食べたら、次は天ぷらよ?残さず食べてね?
残したら…うふふふふ、残させるわけないから、いっか)
助けてシーリス姉さま!助けて健一様!レイリアは殺されますわぁぁぁ!
(…人を殺人者みたいに言うレイリアちゃん。おかわりができたわ)
(こっちも雑草天ぷらが出来たわ。桃子、もうメンドクサイから流し込んじゃいましょ?)
(…そうね、そのほうが早いわね)
ひぃ!いやぁぁぁぁぁ〜〜!

『起きろレイリア!大丈夫だ、おれはここにいるから安心しろ!』

体を強く揺すられて目が覚める。
「…け、健一様?ひっく、健一さまぁ〜!怖かったですわ!殺されるかと思いましたわぁぁ〜!」
悪夢から目覚めると、そこには私を心配そうに見つめる健一様が!
怖かったですわ!恐ろしかったですわ!あんな怖い夢、もうイヤですわ!
健一様の胸で泣きじゃくる私。そんな私を優しく抱きしめてくださる健一様。
あぁ、なんてお優しいんですの?
私のピンチを助けてくださる健一様。やっぱり私の運命のナイト様ですわ!



午後も3時を回ろうとしている、そろそろレイリアを送っていかなきゃダメだろうな。
おれはそう思い、まだ寝ているレイリアを起しに寝室へと向かう。
な、なんでドキドキしてるんだ?や、やっぱりおれはレイリアのことを?
レイリアが寝ている寝室に入ると、うめき声が聞こえてきた。
「う、うぅぅ…やきそばはもういやぁ…雑草はむりぃ…もう許してぇ…」
カワイイ顔を歪ませて、うんうん唸っているレイリア。やきそばに雑草?どんな夢見てるんだ?
「たすけ…リス姉さま…健一様助け…」

…ドクン!ドクン!ドックン!

レイリアが顔を歪ませながらおれを呼んでいる。おれに助けを求めている!
その声に鼓動が早くなり、レイリアの体を強く揺する。
「起きろレイリア!大丈夫だ、おれはここにいるから安心しろ!」
レイリアはおれの声に目を開けて、ガタガタ震えながら周りを見渡す。
「…け、健一様?ひっく、健一さまぁ〜!怖かったですわ!殺されるかと思いましたわぁぁ〜!」
おれの胸に飛び込んできたレイリア。
まだ震えてる。よっぽど怖い夢を見たんだろうな。
けどやきそばと雑草で怖い夢ってどんな夢なんだ?
「大丈夫だ、落ち着いて。おれがいるから安心しろ、レイリア。もう大丈夫だ」
「ひっく、ひっく…健一様、ありがとうございます。
健一様に助けていただいて、レイリアは嬉しゅうございますわ」
「おおげさだな、おれはただうなされてるお前を起こしただけ…ゴクリ」
腕の中で震えているレイリアを見てみる。胸が弾けそうなくらいドキドキしだした。
な、なんでだ?なんでドキドキが止らない?そういや昨日からずっとこんな感じだったよな?
昨日はシーリスに似てるからだと思ってたけど…やっぱりおれ、そうなのか?
「…健一様?いったいどうなされたんですの?レイリアを見つめて…少し恥ずかしいですわ」
「お?おお、ゴメンゴメン。いやな、いったいどんな夢見てたんだろうって思ってな」
おれの問いかけに、レイリアは周りをキョロキョロと気にしながら話してくれた。

レイリアが話した悪夢の内容…はははは!それでやきそばに雑草か!
「はははは!本条も神楽もお前に恐れられてるんだな。
本条は仕方ないにしても、神楽は悪気がないだけに少し可哀想だな。
けどあいつの胃袋に付き合ってたら、そりゃやきそば恐怖症になるよ。はっはははは!」
江口さんに借りた車でレイリアを部屋へと送る。
それにしてもあの二人、相当恐れられてるな。
「もう!笑い事じゃありませんわ!レイリアはとっても恐ろしい思いをしたんですのよ?」
頬を膨らませ文句を言うレイリア。か、かわいいなぁ。
「健一様、少しドライブに行きません?
せっかく車を借りたんですし、また二人でドライブに行って写真を…
あ、そうでしたわ!昨日の写真が現像出来たんですわ!」
鞄から嬉しそうに写真を取り出すレイリア。え?もう出来たの?
「もう出来たのか?めちゃくちゃ早いな」
「写真屋を急かせたんですの。お金を積んだらすぐに出来ましたわ」
「そ、そうか。けどそこまでしなくてもいいだろ?
たかが写真のために大金を出すなんて、バカらしくないか?」
「何を言ってるんですの?二人での写真なんて初めてですわ!
合成した写真ならありますけど、このような写真はありませんでしたの。嬉しいですわぁ。
健一写真集、記念すべき200冊目を飾るいい写真を手に入れることが出来ましたわぁ」
な、なんかいろいろ気になることを言っているが、気にしない。
こんなことを気にしていたら、こいつの相手は出来ないからな。…200冊はやりすぎだろ?
「こんな素敵な写真を撮れるなんて、日本に遊びに来てホントによかったですわ!
私のピンチをまた救っていただけたし…やっぱり健一様は私のナイト様ですわ!」
目をキラキラさせながら話すレイリア。…まだそんなこと言っているのか。
おれがお前を救ったナイト?公園で泣いていた迷子のお前を相手しただけだぞ?
それにあの時にお前を相手にした理由はだな…
「なぁレイリア。お前、まだおれをそんな風に思っているのか?」
「当たり前ですわ!健一様がいなければ、私は寂しくて死んでましたわ!」
目をウルウルさせながら、おれを見つめるレイリア。
「…ははは!お前は頭が良さそうなのに意外と馬鹿なんだな。
おれがなんの考えもなしに、迷子だったお前の相手をすると思うか?
おれがお前に話しかけた理由は…泣いていたお前のためじゃない。
お前を出汁に使って、シーリスの気を引こうと考えたんだよ。
あんな公園に金髪の子がいたら、シーリスの身内だと思うだろ?
シーリスからも妹が遊びに来るって聞いていたしな。
おれはお前が泣いているのを利用して、シーリスの気を引こうとした卑怯な男なんだよ。
だからおれは、お前が考えているような立派な男じゃない、お前の思い込みだ」
ついに言ってしまった。今まで言う事ができなかった真実を。
レイリアはおれを見て、目をパチクリさせて驚いている。
そりゃそうだよな。今まで何年もの間、おれの事を自分を救ってくれたヒーローだと思い込んで
いたんだからな。
あ〜あ、これでこいつにも嫌われたな。けど仕方ないよな?
今まで黙っていたおれが悪いんだ。
…ふ、ふふふ、はははは!そうか、そうだったんだな!
今までこのことをなんで言わなかったのかやっと分かったよ。嫌われたくなかったんだ。
やっぱりおれ、レイリアのことが…好きだったんだな。
「それがどうしたんですの?そんなことはどうでもいい些細なことですわ。
きっかけは何であれ、健一様は私を助けてくださいましたわ。
いろいろと優しくしてくださりましたわ。
健一様はお優しい人、私がシーリス姉さまの妹じゃなくても助けてくださるに決まってますわ!
私が何年健一様を見つめていると思っているんですの?
私は知っていますわ。健一様は、困っている人を見捨てることが出来ない、とてもお優しい人。
私はそんな相川健一というお人が、大好きなんですわ!」
キラキラと輝く綺麗な瞳で、おれを見つめるレイリア。
あぁ、もうダメだ。完全にやられてしまった。
江口さんもこうだったのかな?今度聞いてみるか?

「…レイリア、お前に言いたいことが3つあるんだけど、いいか?」
おれは車を脇に止め、レイリアに話しかける。
「突然何ですの?真剣な顔で少し怖いですわ」
おれの態度が変わったことに驚き、首を傾げるレイリア。
「まず一つ!これからは盗聴とか無茶はしないでくれ。かなり怖いから」
おれはそんなレイリアを無視して話し出す。一気に言わなきゃ言えそうにない。
「な、ななななにを言っているんですの?わ、わわ私が盗聴などと…言いがかりですわ!」
思い当たる事があるのか、どもりだしたレイリア。もしかしておれ、まだ盗聴されてるのか?
「ならなんでどもるんだ?まぁいいや。2つ目はだな、暴走はするな!
お前は人前でもすぐに暴走してしまう。あれは止めてくれ」
人前でいきなり抱きつかれても困る。
抱きつくだけならまだしも、キスをしようとするのは止めてくれ。
「ぼ、暴走なんてしていませんわ!
あれは健一様を思う気持ちが自然と前面に押し出てきて体が…」
「それを暴走というんだよ!もう止めろよ?分かったな。でだ。3つ目なんだがな…」
レイリアは、まだダメ出しされるのかと少し落ち込んだ顔になる。
ははは、そんな顔も綺麗だぞ。
「まだあるんですの?レイリアは、そんなにヘンな事ばかりしていましたの?」
「…お前、自覚無かったのか?まぁいいや。
で、3つ目はだな…レイリア、おれはお前が好きだ」
「………はい?な、なんですの?なんなんですの?今のは幻聴ですの?
頭がやきそばに犯されてるんですの?」
両拳で頭をガンガンと叩き出したレイリア。カワイイなぁ、そんなお前も好きなんだ。
「レイリア、おれはお前が好きだ。信じられないのか?」
「きゅ、急に言われても困りますわ!いくら健一様でも悪ふざけに程がありますわ!
ほ、本気なら…証拠を見せてほしい…んんん!」
真っ赤な顔で視線を逸らしているレイリアを抱き寄せ、唇を奪う。
ゴメンな、我慢出来ないんだよ!
最初は驚き固まっていたレイリアも、おれの首に手を回しおれを求めだした。
柔らかい…これが女の子の、レイリアの唇なんだ。
おれは初めてのキスに夢中になる。
レイリアもおれを求めだし、いつしかお互いに舌を絡ませ始めた。
レイリアの小さい舌を絡め取る。レイリアも負けじとおれを攻めてくる。
おれ達の口の中でお互いの唾液が交じり合う。
レイリアは喉を鳴らしておれの唾液を飲み込んで、おれもレイリアの唾液を飲み込んだ。
これがレイリアの味なのか…おれはもっと味わいたくなり、さらに舌を絡ませた。
どのくらいの間キスをしていたんだろう?
唇を離した時には、レイリアは涙を流しながらおれを見つめていた。
「んはぁ…はぁはぁはぁ、健一さまぁ、レイリアは嬉しゅうございま…ひっ、う、嬉しい、ですわぁ」
おれは思わず抱きしめた。強く、力いっぱいに抱きしめた。
「今まで待たせてゴメンな。おれ、お前が大好きだ。
やっと自分の気持ちに素直になれた。愛してるよレイリア」
「あぁ健一さまぁ、レイリアをもっと強く抱きしめてくださ…ちょ、ちょっと待って!は、放してぇ!」
おれの胸の中で突然放せと暴れだしたレイリア。ええ?おれ、なんかヘンなことしたの?
「レイリア、おれなんかやっちゃったのか?
ゴメン、おれこんなこと初めてで、つい思うがままにやっちゃって…」
「ち、違いますわ!その、抱きしめてもらうのは嬉しいんですが…今はダメなんですわ!
…シャワー浴びればよかったですわ」
クスンクスンと涙を流し落ち込むレイリア。シャワー?風呂に入りたいってか?なんでだ?
「シャワーって…あぁ、そうか。昨日、お前も酔っ払って風呂に入ってないのか?
あっはははは!そうかそうか、どうりでレイリアは汗臭いと思ったよ!」
「もう!健一様のイジワル!
せっかくのファーストキスでしたのに…ひっく、私は大馬鹿ですわぁ」
ひっくひっくと涙を流し、落ち込むレイリア。
おれはそんなレイリアを見ていたら、自然ととんでもないことを口走ってしまった。
「悪い悪い、そんなに落ち込むなって。
汗の臭いなんてしなかったし、おれも風呂に入ってないから気にするな。
そんなに気になるのなら…今からおれの部屋に風呂入りに来るか?」
自分でもビックリだ。おれ、童貞なのに、なんでこんなにスムーズに誘ってるんだ?
今までの自主トレの成果なのか?
「え?…け、健一様の、お部屋に?………はい」
おれの誘いに小さく頷いたレイリア。これってあれだよな?
告白した日に部屋に来いと誘うなんて…早すぎやしないか?

おれは頭ではダメじゃないかと思いながらも車を走らせ部屋へと向かった。


トップへ
トップへ
戻る
戻る