「ねぇかなちゃん。一緒についてきてよぉ〜。私一人じゃ不安だよぉ」
「でも先輩は果歩だけを呼んだんでしょ?
勝手についていったら怒られちゃうんじゃないのかなぁ?」
「確かにそうだけどぉ…一人じゃ不安だよ」
「大丈夫だって!いくらラインフォード先輩でもそんな無茶な事はしないでしょ?」
「…かなちゃんは知らないだけなんだよ。はぁぁ、憂鬱だよぉ」

 三本目の指を折られて2日目、まだズキズキと痛い。
今日は美里さんに告白して6日目の朝。単純計算で2日に一本折られてことになる。
…おかしいよね?これって絶対におかしいよね?
なんで恋人の指を平気で折らせるんだ?もしかして美里さんって…超ドS?
けど練習の時とかはすっごく優しいんだよね。
…指を折れと命令する時は冷たい笑顔だけどね。
Sなのかなぁ?…僕はMなんかじゃないぞ!痛いのはイヤだよぉ。

 そんなことを考えながら教室へ入ると、池田さんが綾崎さんと話しながらため息を吐いてい
た。
いつも元気な池田さんにしては珍しいな、どうしたんだろ?

「はぁぁ、行きたくないよぉ…あ!青葉くん、いいとこに来たね!
お願いがあるんだけどいいかな?」

 僕の顔を見るなり元気になる池田さん。
なんだ?落ち込んでたんじゃないの?ホントどうしたんだろ?…お願いってなんだろ?

「委員長、いったいどうしたの?さっきまでため息はいてたのに…お願いって何?」
「それがね…先輩が今日一緒にお昼食べましょうって誘ってきたの。
私いつも友達と食べてますからって断ったんだけど…」
「断わりきれなかったんだ?」
「うん、そうなんだ。先輩、『じゃあその友達という人がいなくなればいいんですわね?
簡単ですわ』ってニコリと微笑むんだもん。行かなきゃかなちゃん、殺されちゃうよぉ」

 流石ラインフォード先輩!…すっごくメチャクチャだ。
何も知らないのに巻き添えを食らいそうな綾崎さんが可哀想だよ。
綾崎さんを見ると真っ青な顔で驚いている。
そりゃそうだよね、知らないうちにとんでもないことに巻き込まれてるんだもん。

「ええええ!そ、そんな話になってたの?果歩!絶対に先輩のとこに行きなさいよ!絶対だか
らね!」
「ええ〜?どうしよっかなぁ?かなちゃん私と一緒に来てくれないしぃ」
「なっ?…そう来るわけね、分かったわ。そもそもあたし達って友達じゃないし。
…ていうかアンタ誰?青葉くん、このクラスにこんな人いたっけ?」
「さぁ?転校生じゃない?」
「あああ〜!ひっどぉ〜い、二人して私を苛める!学級崩壊だ!これは学級崩壊だよ!」

 僕と綾崎さんの冗談に慌てる池田さん。
ははは、いつもの池田さんに戻った。これでこそ、このクラスの委員長だよね!

「…うるさい転校生ねぇ」

 ボソッと呟く綾崎さん。…そんなに先輩との関係に巻き込まれたくないんだ。



 僕は池田さんの「先輩と一緒にご飯を食べよ?」というお願いを断り、
美里さんとお昼を食べるために屋上へ来ている。
きっと僕も先輩と先生の秘密を知っているから誘ったんだろうけど、
残念ながら僕には美里さんの先約があるんだよね。
池田さんは肩をガックリと落とし、生徒会室へと歩いていった。
トボトボと歩く池田さんの背中が哀れでならない。…巻き込まれなくてよかったぁ。

「…ということがあったんだよ。委員長、今頃何されてるんだろうね?」
「あらあら、そうなんですの?可哀想な池田さん、あの変な外人に捕まってしまったんですの
ね」

 屋上のベンチに腰をかけ、箸でから揚げを摘み、あ〜んと食べさせてくれる美里さん。
今、屋上には僕達しかいない。なぜなら入り口のドアの前で、秋山さんが仁王立ちしているか
らだ。
…ここって学校だよね?なんで部外者の秋山さんが堂々といるんだ?
そういえばラインフォード先輩のお付の人も何食わぬ顔でいるし…こんなのでいいのかな?

 そんなことに頭を捻りながら、美里さんの手作り弁当を食べさせてもらう。
…美味い!これは美味だ!
さすがに食べさせてもらうのは恥ずかしいけど、美里さんがどうしてもしたいってきかないんだ。
『折れた指では食べづらいでしょ?食べさせてあげますから、あ〜んしてくださいな』
って嬉しそうに箸を持つんだよ。あなたが折れと命令したんですよね?
…まさかこの為に僕の指を折らせたのかな?そ、それは無いよね?
そんな事はないはずだぁ〜!

「暗い顔していったいどうしたんですの?せっかく二人きりでのお食事なのに…
やーくん、食後に練習しましょうね?元気にしてあげますわ」
「へ?れ、練習って?みーちゃん、学校で練習はダメだよ。
もし誰かに見られたら、ただじゃすまないよ」
「あらあら、いくらかかるんでしょうね?500万ほどなら即金でいけますわ」
「…お金のことじゃないんだけどね」

 僕の言葉に「そうなんですの?」と首をかしげ、おにぎりを食べさせてくれる。
…やっぱりみーちゃん、少しズレてるよ。はぁぁ、と少しため息を吐き、おにぎりをパクつく。

「きゃ!やーくん、指まで食べちゃダメですわ」
「んぐ?…みーちゃんゴメンね?別に悪気があったわけじゃないからね?」
「もう、落ち着いて食べてくださいな。たくさん作ってあるから落ち着いて食べてくださ…
なるほど、こういうパターンもあるんですわね。ねぇやーくん、今度はやーくんが食べさせてくだ
さいな?」

 頷きながらそう言って、嬉しそうに小さく口を開けた美里さん。
食べさせるのは別にいいけど、急にどうしたんだろ?



 どうしたんだろ?急に頷いたかと思えば、僕に食べさせて欲しいって言い出すし。
…こういうパターンってなんなんだろ?美里さんはなにを思いついたんだろ?
まぁいいや。おにぎりを食べさせるだけだし、酷い目には会わないだろうしね。

 美里さん特製の、手作り鮭おにぎりを一つ摘み、あ〜んと口を開け待っている美里さんの口
元へと運ぶ。こ、これは可愛いぞ?美里さん、すっごく可愛い!いいな、これ!

 おにぎりをパクリ、パクリと小さくかじる美里さん。
ホントに可愛いよ、まるで小動物に餌付けをしてるみたいだ。
こんな事考えているのがばれたら、怒られちゃうかな?
最後の一口を口に入れた美里さ…わ、わああ!指まで食べないで!

「み、みーちゃん!指まで食べない…ゴクリ」
「ん、ちゅば…んん、おいひいでふわ。やーくんの指…ちゅぱ、ちゅる…ちゅちゅっ」

 う、うおぉぉ…美里さんが僕の人差し指を咥え、チュパチュパとしゃぶっている。
まるで僕のあそこをしゃぶるように、丁寧に舌を這わせ…僕を見つめながらしゃぶっている。
潤んだ瞳で僕の手を持ち、人差し指だけじゃなく、全ての指を丁寧に一本ずつ口に含み…これ
はエロイ!

 小さくて、綺麗な舌が僕の指をペロペロと舐め、瞳を瞑り、口に含んで丁寧にしゃぶる。
そんな一生懸命な美里さんを見ていたら…ズボンに当たり、痛いぐらいに立ってきた。

「やーくん、そろそろこっちを舐めたいですわ。やーくんも我慢出来ないでしょ?
あぁ、学校でやーくんを口に含むなんて…うふふふ、えっちなやーくん。
そんなやーくんは大好きですわ」
「ちょ、ちょっとみーちゃん、さすがにそれはマズイって!学校でそんなこと…あ、うぅぅ」

 サワサワと、優しくズボンの上から僕を撫でる美里さん。
痛いぐらいに立っている僕に、その優しい愛撫はもどかしい。
僕は無意識のうちに、美里さんの手に押し付けるように腰を浮かせてしまっていた。

「あらあら、やーくんは口ではイヤだイヤだと言っているのに…えっちなやーくんは大好きです
わ」
「いや、これはその…み、みーちゃん?ちょ、ちょっとダメだって!みーちゃ…お、うおぉぉ」

 耳元で囁く美里さんの声が脳を痺れさせる。下半身を優しく撫でる、細い指が体を熱くする。
その指がチャックを下ろし、ズボンの中に入ってきた。
パンツの上から触られるだけで、もう爆発してしまいそうだ。

「み、みーちゃん、だらかダメだって…うぅ、学校でこんなことはいけな…うくぅ」
「うふふふ…強情なやーくんにはお仕置きですわ。
ちゅ…あらあら、とても元気なやーくんは大好きですわ」

 ズボンから出され、直接触られる僕の元気な下半身。
学校の屋上で、耳を舐められながら擦られるなんて…気持ちよすぎるぞ?
耳たぶをパクリと咥え、口の中でレロレロと細かく舌を使い愛撫される。
その間も下半身は擦り続ける。    
みーちゃん、練習熱心だからすっごく上手くなってるよ。
こんな事されちゃもう我慢が出来そうにないよ。

「んん…やーくん、今日は大サービスですわ。横になってくださいます?」
「ふぇ?サービスってなに?横になるって…うわあ!」

 ドン!っとベンチに突き倒され、仰向けにされる。
美里さんは怪しい笑みを浮かべ、僕の頭を跨ぐようにして…えええええ〜!

 目の前には美里さんの下半身が。スカートの中も丸見えだ。
黒い厚手の下着を穿いているのも全部丸見えになっている。
きゅ、急にこんな事してくれるなんて、いったいどうしたんだ?
柔らかそうな滑らかな太ももに思わず手が伸びる。
黒い下着に顔を近づける。おおお、これっていわゆる…シックスナイン?



「こら!触るのはダメですわ。やーくんは見るだけ。お触りしちゃいけません」

 ペシ!っと太ももを障る僕の手を叩く美里さん。
目の前にこんな美味しそうな太ももがあるのに…触らないなんて出来るかぁ!
滑らかでいて、しっとりと吸い付くような美肌を堪能する。
太ももを触りながら舌を這わし、お尻も触る。
厚めの下着の上からとはいえ、ついに美里さんのお尻を…やったぞ!
僕はついにやったんだ〜〜!!

「こ、こらぁ!ですから触っちゃダメですの!えっちなやーくんはダイッきらいですわ!」

 カリッ!…ゴメンなさい。調子に乗りすぎました。謝ります、謝りますから…

「イ、イタタタタ!ゴメンみーちゃん!もうしないから噛まないでぇ!」
「もうひまへんっへ誓いまふか?」
「しない!しない!絶対にしないから!」
「…分かりましたわ。お触りしてくるえっちなやーくんは、大きらいですわ」
「うぅぅ…歯型がついてるんじゃないの?みーちゃん強く噛みすぎだよぉ」
「当然の報いですわ。お尻を触るなんて、なんていやらしい…えっちすぎますわ」

 …僕はお尻の穴まで舐められてるんだけどね。

「だってみーちゃんが目の前で下着を見せるんだもん。
好きな子の下着を見たら我慢できないよ」
「うふふふ…やっぱり騙されましたわね?これは下着ではありませんわ」

 バサッ!っとスカートを捲り、下着を見せる美里さん。
おおお!今日はいつになく大胆だ!いったいどうしたんだろ?

「これは昔の体操着、『ブルマー』ですわ。えっちなやーくんの為に穿いてきたんですの」
「へ〜、これがブルマーなんだ。…ヘタな下着よりもいやらしいね」

 ブルマーから伸びる綺麗なスラッとした生足、キュッと締まったお尻が見事に強調されていて
る。こ、こんなえっちな物が昔は体操着だったのか…凄いよ、凄すぎるよ!

 スカートを捲り上げ、僕にブルマーを見せている美里さん。
目の前でそんな光景を見せられたら、正常な思春期の男子ならどうするか…分かるよね?
さっき大事な所を噛まれたばかりなのに、それを忘れるくらいに興奮しちゃったんだ。
興奮したら、目の前にある美味しそうな獲物に食らいつきたくなるのが野生の本能。
で、本能には逆らえない。という訳で、気がついたら美里さんを押し倒してた。

「キャッ?ちょ、ちょっとやーくん!えっちなことはもうしないと約束したばかり…やん!」
「じゅる、ぺろ、れろれろ…はぁはぁはぁ、みーちゃんの匂い…いやらしい匂いがするよ」
「こ、こらぁ!そんなとこ嗅がないで…んあ!」
「はぁぁ、みーちゃん…みーちゃん!みーちゃん!」
「あ、んん!や、ダメぇ…こんなところで、そんなイヤらしい…秋山、やっちゃいなさい」

 はぁぁ…美里さんの股間を舐めているんだ。
僕は今、美里さんを押し倒し、股間に顔を埋めている。夢にまで見たことが現実になっている
んだ。アソコに顔を埋めて、お尻を撫で回している。あぁ…夢なら覚めないでほしいなぁ。
ブルマー越しとはいえ、ついにみーちゃんにえっちなことを…秋山さん?

 冷静になって周りを見てみる。ドアの外にいるはずの秋山さんが、すぐそこに立っていた。
で、僕に手を伸ばし、人差し指を掴んだ。ははあ…さてはポッキリと折るつもりだな?
…なんで秋山さんがいるの?ドアの向こうで待っていたはずじゃないの?
そうか、これは夢だ。きっと悪い夢なんだ!夢なら早く覚めてくれぇぇぇぇ〜〜!

 ポキンッ!


 うっぎゃぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜!



「青葉君おはよ。昨日どうしたの?お昼に早退するなんて…あれ?指折れてるのって4本だっ
け?」
「綾崎さんおはよう。…昨日4本になったんだよ。訳は聞かないで」
「はぁ?訳は聞かないでってなんなの?…ま、いいけどね。
あ、そうそう、聞かないでで思い出したんだけど、果歩の様子が変なのよね。
何を聞いても答えてくれないの。暗い顔して様子も変だし…どうしたんだろ?
やっぱり昨日、ラインフォード先輩に変なことされたのかなぁ?大丈夫かな?」

 池田さんの様子が変?池田さんの席を見てみると…机に突っ伏してブツブツ言っている。
昨日先輩に何をされたか知らないけど、僕は他人のことを心配できるような状況じゃないんだ
よね。

 はぁぁ…なんで一週間で4本も指を折られなきゃいけないんだ?これって絶対におかしいよ。
美里さんは僕に好きなことを好きなだけしてさ、なんで僕には触らせようとしないんだ?
これって僕が弄ばれてるだけじゃないのか?…僕は美里さんのオモチャなんかじゃないぞ!
なんかだんだん腹が立ってきた。
そりゃ気持ちいいことしてもらえるからって、されるがままにしてた僕も悪い。
けど好き勝手しながら、自分が触られるのを嫌がる美里さんも悪いだろ?
今度1回ガツンと文句を言ってやろう。僕は美里さんのオモチャなんかじゃないって。
…けど、美里さんって怒ると怖いんだよなぁ。
で、でもここは一度ガツンと言わなきゃいつまで経っても…あれ?池田さん、どうしたの?

 考え事をしていたら、いつの間にか僕の席の前に立っていた池田さん。
虚ろな表情で、手には歴史の教科書を持っている。
なんで教科書持ってるの?一時限目って歴史じゃないよ?

「…ど、どうしたの委員長、顔色悪いよ?あれ?なんで僕の足を隣の席の椅子にかけるの?
ねぇなんで僕のズボンの裾を捲るの?な、なんで歴史の分厚い教科書を振り上げるの?」

 無言で僕の足を持ち上げて、隣の席の椅子に橋を架けさせる。
さらにズボンの裾を捲り、すねを丸見えにした。すねを出されるのって少し恥ずかしいんだね。
で、委員長はその手に持った分厚い教科書を縦に持ち直し、
閉じてある方を僕の足に向かって勢いよく振り下ろした!ってなんでぇぇぇ〜?

 ゴスンッ!

「うっぎゃぁぁ〜!」
「ちょ、ちょっと果歩!あんたいったい何やってるのよ!」
「はぁはぁはぁ…コイツのせいで私は…わたしはぁぁぁ〜!」

 ゴスン!ゴスン!ゴスンッ!

 あぁ…訳も分からずこんなとこで死んじゃうのかな?
一度でいいからSEXしてみたかったなぁ…
一心不乱に僕のすねに教科書を振り下ろす池田さん。痛さのあまりに意識が遠くなってきた。
すねを殴られての撲殺。嫌な死に方だなぁ…ってなんで叩くんだよぉ〜!



「はぁぁ〜すっきりしたぁ。かなちゃん、心配かけてゴメンね?」
「まぁ、あたしはいいけど…青葉君が死にそうな顔で睨んでるよ?いったい何があったの?」
「…委員長、いきなり何をするんだよ!僕がいったい何をしたってんだよ!」
「ああん?何をしたかだと?てめぇがところ構わずいちゃつくから…先輩が我慢できなくなった
の!どうしてくれんのよ!私、お昼休みの間中ずっと写真集見せられてたんだよ?
先輩、今日も見せてあげるって言ってたから…どうしてくれんのよ!」

 大声で叫ぶ池田さん。…は?先輩が我慢できなくなったって…なにを?
綾崎さんも疑問に感じたのか池田さんに質問をする。

「ねぇ果歩、先輩なにを我慢できなくなったの?写真集ってなに?」
「はぁはぁはぁ…先輩、青葉くんが西園寺先輩といちゃついてるのが羨ましいのよ。
先輩も人前で好きな人といちゃいちゃしたいの、でも学校では出来ないの。
だから誰かに自慢だけでもしたがってるの。で、その相手に私が選ばれちゃったんだよ〜。
もうイヤだよ〜、写真集なんて昨日だけで3冊だよ?
先輩の好きな人の写真集を見せられて、思い出を話されるのって苦痛以外の何物でもないっ
ての!」

 池田さんの説明に、綾崎さんは訳が分からずキョトンとしてる。けど、僕には分かった。
そうだったのか…先輩、僕達が学校で婚約者だと騒がれたから、悔しくなっちゃったんだろう
な。先輩の好きな人って相川先生だもんね。そりゃ学校ではいちゃつけないよね。
だから僕達を使って、相川先生と先輩が恋人だって話を広めようと考えたんだ。
けどその企みも先生にばれて怒られた。企みは失敗に終わったんでよね。
で、せめて誰かに惚気話をしたくて、先生との関係を知っている池田さんに白羽の矢が立った
のか。僕じゃなくてよかったよ。池田さん、頑張って先輩の相手をしてあげてね?

 そんな落ち込んでる池田さんを慰める綾崎さん。
結局、綾崎さんが池田さんと一緒に先輩のところに行き、惚気を聞くことになった。
親友っていざというときに頼りになるよね!よかったね、池田さん!
…地獄への道連れができて。

 で、お昼休みに二人は緊張した面持ちで、生徒会室へと向かっていった。
生きて帰って来いよ。
僕はというと、朝、池田さんに殴られた足を引きずり、屋上へと向かった。
今日も美里さんが『屋上でご飯を食べましょうね』って言ってきてるんだ。
けど、今日の僕はいつもとは少し違う。今日はガツンと言ってやるつもりだ。
僕は美里さんのオモチャじゃない、いつまでも僕をオモチャみたいに扱わないで。
こんな変な形じゃなく、ちゃんとした恋人同士になろうよ。って言うつもりだ。
こんなこと言って、美里さん怒ったりしないかな?…不安だ。

 屋上の扉の前での待ち合わせ。美里さんはまだ来ていない。
一緒に来ればいいと思うんだけど、美里さん、待ち合わせするのが好きなんだって。
好きな人が待っていてくれてるって考えるだけで、幸せになるって言ってた。
美里さんも女の子なんだね、カワイイよなぁ。
そんなことを考えながら待つこと5分、秋山さんを引き連れて美里さんがやってきた。
よ、よし、ガツンと言ってやる!ここで言わなきゃいつまで経っても僕はオモチャのままだ!



「お待たせしてごめんなさいね?今日のお昼は、やーくんの好きなカレイの煮付を作りました
の」
「…みーちゃん、話があるんだ」

 嬉しそうな顔で、お弁当が入っているであろう鞄を見せる美里さん。
僕はそんな美里さんを制し、話し出す。

「なんですの?急にカッコいい顔になって…凛々しいやーくん、カッコいいですわ」
「みーちゃん、真剣な話なんだ、茶化さないで。…僕達って今のままの関係じゃ、いけないと思
うんだ」
「…は?いきなり何を言い出すんですの?」
「みーちゃんはおかしいと思わないの?みーちゃん、僕をまるでオモチャのように見てるよね?
僕はみーちゃんが大好きだ。愛してるんだよ!
けどね、その愛する人からオモチャのように扱われるなんて…これ以上耐えれそうにないよ」

 僕の真剣な話に驚き、声も出ない美里さん。僕はそんな美里さんを無視して話し出す。

「みーちゃん…僕達ホントの恋人同士になろうよ。いつまでも練習とかヘンな事してないでさ」
「…ヘンな事?ヘンなのはやーくんですわ。いったいどうしたんです?
急にこんなことを言い出すなんて…あらあら、そうでしたのね?
やーくん、いくらえっちがしたいからって、ヘンな理屈を語るのはよしてくださいね?」
「…みーちゃん、僕は本気で話してるんだよ?おかしいと思わないの?
いくら恋人でも体中を舐め回すなんておかしいよね?
そのくせ自分は触らせようともしない。触ったりしたら指を折らせる。絶対にヘンだよ!」
「はぁぁ…そこまでしておさわりしたいんですの?やっぱりやーくんはヘンタイさんですわ。
そんなヘンタイさんにはお仕置きが必要ですわね…今日こそは屋上での練習、しましょうね?」
「…僕の話を聞いてくれないんだね?もういいよ!しばらくみーちゃんとは話さない!」

 アッタマきた!やっぱり美里さんは僕をオモチャだと思ってるんだ!
僕だって男だ!…情けないけどね。けど少しは男の意地ってものもあるんだ!
いつまでもオモチャにされてる訳にはいかないよ!

 怒りに震え、そんなことを考えながら階段を下りる。くそ、足が痛んで降りずらいな。
池田さん、容赦なく殴ったな。歴史の教科書って凶器になるんだ、知らなかったよ。

「や、やーくん?ちょ、ちょっと待って…」

 階段を下りる僕に焦ったのか、美里さんが僕の背中に手を伸ばした。…どん!
 
「ええ?ちょっとみーちゃ…」

 背中を押され、体が前のめりになる。まずい!このままじゃ階段を転がげ落ちてしまう!
慌てて踏ん張ろうとするも、足に痛みが走り、その一歩が出なかった。
手すりを掴もうにも運悪く、手すりは左側のにしか手が届かなかったんだ。
で、僕の左手はこの一週間で4本の指が折られていたわけで…掴めなかった。

「う、うわああああ〜!」
「きゃぁぁぁ〜!やーくん…やーくん!いやぁぁぁ〜〜」

 階段から転がり落ち、頭に衝撃が走る。

 みーちゃん……突き落とすなんて…酷すぎ…るよ… 

 
 最愛の人に階段から突き落とされた現実が僕の心を打ちのめし、
 
 コンクリートの床に頭を強く打った衝撃が、僕の意識を断ち切った。



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