午前11時。駅前の日当たりのいいベンチに座り、
暇つぶしで購入した本を読み終えて伸びをする。
なかなか読み応えのある本だった、いい暇つぶしになったな。
さて……と、待ち合わせ時間は確か10時だったはずだな。
天気のいい日曜日。駅前で一時間も待ちぼうけか。
……果歩め、遅刻するにも程があるだろうが!
……まあいい、相手が来ないんだ、このまま帰ってもよかろう。
一時間も待ったのだからな、美里様も許してくれるだろう。
ベンチから腰を上げ、本をゴミ箱に捨てて歩き出す。
今日一日の予定が空いたな、久しぶりに雀荘にでも行くか?

「ああああ〜!秋山さん、なんで文庫本捨ててるの?
古本屋さんに売りに行けばいくらかにはなるよ、もったいないなぁ」

 歩き出した俺の背後から聞こえる騒がしい声。
はぁぁぁ〜…なんだ、来たのか。まったく来なければいいものを。

「俺が買った本だ、どうしようが勝手だろ……おい、ゴミ箱から拾うな!
お前も一応は女のカテゴリーに入る生物だ、恥ずかしいとは思わんのか?」

 遅刻してきたことに文句を言おうと振り返ると、
ゴミ箱に手を突っ込み、俺が捨てた本を拾っている果歩の姿が。
はぁぁぁぁ〜、コイツは……一応は女だろうが!女子高生だろうが!
恥というものを知らんのか?

「秋山さん、物は大事にしなきゃいけないよ?
これってまだ新品じゃない、こんなの捨ててたらもったいないよ。
せっかく作ってくれた本屋さんに申し訳ないとか思わないのかな?
秋山さん、物を作ってくれた人に感謝の気持ちが足りないんじゃないのかな?」

 ゴミ箱から本を拾い上げ、差し出してくる果歩。
若いくせに年寄り染みたことを言ってくる女だ。……だが正論だ。

「……本屋が作っているわけではないのだがな。
だが確かにお前の言う事にも一理ある、ならその本はくれてやる。ありがたく頂戴するんだな」
「おお?いきなりプレゼント?私、こんな本じゃ釣られないよ?
本じゃなくて、貴金属とかそんなのがいいんだけどなぁ?」
「……お前の脳みそはどうなっている!遅刻してきた事を詫びずにそれか!」
「あがががが!イタイイタイ!ふじょぼーこーはんた〜い!」

 少しは見直してやったのに、コイツは!
果歩の顔面を鷲づかみしに、締め上げる。手をバタバタと動かし無駄な抵抗をする果歩。
その動きが面白いのでしばらく離さずにしていたら、周りの視線に気がついた。

「……おい、さっさと行くぞ。今日はお前が行きたいと言っていた遊園地に行くのだろうが」
「ひっく、ふじょぼーこーは犯罪だよ……顔、小さくなってないかな?」
「安心しろ、デカイままだ」
「なな?おっきくなんかないっての!人並みだっての!」
「分かった分かった、いいから行くぞ。
……お前が騒ぐから周りから注目されているではないか」
「……人のせいにするのはいけないと思うよ?」

 コソコソと周りの視線から逃れるよう駅へと逃げ込む。
この俺に恥をかかせるとは……今度の稽古では絞めに絞めまくってやる!


 
「秋山さん、次、あれ行こうよ!」

 俺の手を引っ張り次のアトラクションへと連れて行こうとする果歩。
まったく貴様は元気だな。遊園地に入ってから乗りっぱなしだ、少しは休ませろ!
しかも俺のサイフを当てにしおって……少しは遠慮をしろ!

「少しは遠慮をせんか!金を払うのは俺なんだぞ!」
「ケチだねぇ……秋山さん、ケチな男は女の子にモテナイよ?」

 こ、こいつは……調子に乗りおって!
怒りに任せて顔面を鷲づかみにし、ギリギリと締め付ける。
痛さのあまりに手足をバタバタと振り、逃れようと暴れる果歩。 
さっきも思っていたのだが、こいつの暴れる姿は少し可愛くて、なかなか面白いな。 
バタバタと暴れる姿を可愛いく感じてしまったので、ついつい楽しんでしまった。

「ひっく、ヒドイよ……成人男子による未成年者に対する暴行だよ」
「……そう怒るな。ほら、ソフトクリームだ。これでも食って機嫌を直せ」
「……グス、フランクフルトも食べたい」

 しばらくの間、暴れる果歩の動きを楽しんでいたら、つい泣かしてしまった。
機嫌をとるためにソフトクリームを食べさせる。
一瞬、ニコッっと笑顔を見せたが、すぐに沈んだ顔になる。
コイツ、これを利用して俺にたかるつもりだな?

「グスン、綺麗な服も欲しい。あとアクセサリー……あがががが!」
「そうかそうか、色んな物を買って欲しいか。ならあと一時間は楽しませてもらおうか!」

 ギリギリと顔を掴み、締め付ける。
果歩は慌てて俺の腕をパンパンと叩き、ギブアップの意思表示をする。
ふっはははは、コイツを苛めるとなかなか楽しいな。

「ヒ、ヒドイよ、ホントにふじょぼーこーだよ……秋山さんはドSだよ。
可愛くて可憐な女の子を苛めて喜ぶヘンタイさんなんだよ」
「可愛くて可憐?自分で言ってて恥ずかしくないのか?」
「うっさいよ!次行くよ、次!」

 指摘されたのが恥ずかしかったのか、真っ赤な顔で次のアトラクションを指差した。
はっははは!お前はホントに可愛いヤツだな。
自分で言ってて照れる様なら言うんじゃない、バカなヤツめ。

「はいはい、で、次はどれに行くんだ?……ほう、お化け屋敷か。
ま、絶叫系ばかりで少し疲れていたからちょうどいい。
のんびりとする楽しむ……おい、何をカタカタ震えてる?」
「な、なななななんでもないで御座いますです」
「……まぁ今時こんなお化け屋敷で怖がるヤツなんていないだろうがな」
「そ、そうだよねぇ?こんなの意味ないよねぇ?
じゃあさ、こんなつまんないの止めてもっと派手なの行こうよ!」
「……つまらんかどうかは入ってみんことには分からんぞ?
という訳で入ってみるか。チケットを二枚くれ」
「はわわわわわ!な、なんで買っちゃったの!こんなの喜ぶ人いないって!」
「さ、行こうか。楽しみだな、どんな恐ろしい化け物が現れるのか。
……もしかしたら化け物にさらわれてしまうかもしれんな」
 
 俺の言葉にゴクリと唾を飲み込んでカタカタと歯を鳴らす果歩。
くっくっく……分かりやすいな。そんなにお化け屋敷が怖いのか?
どれ、いい機会だ。散々俺を引きずりまわしてくれたんだ、恐怖に慄いてもらおうか。



「うおををををを〜〜〜!!」
「ひゃあああああああ〜〜〜!!!」

 私達の目の前の何もなかった空間に、当然現れた血だらけのお岩さん。
さすがは最新鋭のお化け屋敷だね、科学の力を使って脅かそうとしているよ。
……こんなとこで科学の力を使わなくていいっての!無駄遣いだよ!
こ、怖いよぉぉぉ……なんでこんな物作っちゃうのかな?
怖さのあまり、秋山さんの腕を抱きしめる。秋山さんも震えてる。
お互いにブルブル振るえて、足がなかなか進まない。
……秋山さん、お化け苦手なんだね。なんだか可愛く感じちゃうよ。

「さ、さささ最近のお化け屋敷というものは、こここここまで恐ろしいものなのか?」
「し、しししし知らないっての!だいたい秋山さんがチケット買っちゃうか……ふぎゃあああ!」
「フォおおおおをおおをおををおお〜〜!!」

 話してた私達の目の前に突然現れた生首。
恐ろしさのあまり、ダッシュで逃げ出す私達。
死んじゃうよ!恐怖で心臓止まっちゃうっての!

「怖い!怖いよぉ〜!秋山さん、早くここから出よう……ふぎゃ!」
「うおををををおおお〜!!……おお?どうした果歩?」

 焦って走ったのが悪かったのか、つまずいて足を『グキッ!』ってやっちゃった。

「いたたた……足、捻っちゃったかも」
「足を挫いたのか?大丈夫か?肩を貸そ……さっさと乗れ!」
「ふぇ?うひゃああああ〜〜!!」
「ええい!さっさとしろ!」
「ちょっと秋山さん、そんな急にしたらあぶな……ふわああああ!!」

 足を痛めた私に肩を貸してくれようとした秋山さん。
お言葉に甘えて借りようとしたんだけど……今度は上半身しかない血だらけの侍が、
ズリズリと這いずりながら追いかけてきた。
それを見た秋山さん、私を無理やり抱き抱えて出口まで一直線に駆け抜けた。
……あれはやりすぎでしょ?あんなの見たらトラウマになっちゃうよ?

 どうにか出口までたどり着いた私達。もうフラフラだよ。
抱き上げられたまま出口を出る。
係員のお姉さんがニコリと微笑みながら何かを2枚渡してきた。
え〜っとこれは何かな?あっ、これは写真だよ!出口付近で撮られちゃったんだね。
……ぷぷっ!ヘンな顔〜!私も必死の形相してるけど、秋山さんも酷い顔してるよ。
お姫様抱っこで私を抱いたまま走っている秋山さん。
あはははは、カッコわる〜い!……でも、私を助けてくれたんだよね。
……秋山さん、ありがとね。

「はぁはぁはぁはぁ……果歩、お前意外と重いんだな。
胸はないくせに何処に肉をつけているんだ?」

 せっかく感動してたのになんでそういうこと言うのかな?
感動がどっかに行っちゃったよ。

 

「おい、何をむくれている?さっきから黙ってどうしたんだ?……やはり足が痛いのか?」
「……足より心が痛いよ。秋山さんのセクハラ発言に、ピュアなハートは傷ついたよ」

 あのふざけたお化け屋敷から脱出し、ベンチでの休憩。
やられたな。たかがお化け屋敷と侮っていた。……まさかあんなに恐ろしいものだったとは。
果歩を抱えて走ったおかげで、かなり汗をかいてしまった。
ふぅ〜、疲れたな。今日はもういいだろう、これで果歩とのデートもお開きだ。

「果歩、足を痛めたままじゃ楽しめんだろ?今日はもう帰るぞ」
「ええええ〜!ヤダよ!せっかく遊園地に来たのにさ、もっと遊びたいっての!」
「お前なぁ、余計に足を痛めるぞ?」
「ぐぅ……じゃあさ、最後に観覧車乗りたい!遊園地の締めといったら観覧車でしょ?」

 観覧車?あんな物、何が面白いんだ?……まぁいい、付き合ってやるか。

「秋山さん、私まだ足痛いからおんぶしてくれるかな?」
「……はぁぁ、また重量挙げをしなくてはいけないのか」
「誰がバーベルだっての!私、そんなに重くないよ……もしかして太ったのかな?」

 お腹の肉を摘む仕草をする果歩。
お前なぁ、一応は女なんだからそういうことは人前ではするな! 

「肩を貸してやる。さっさと行くぞ」
「ええ〜!おんぶじゃないの?秋山さんのケチ!」
「ああ、俺はケチだ。だから観覧車のチケット代は自分で払え」
「秋山さんってシブいよねぇ、大人の渋みが漂ってくるよ。
なんていうか、理想の中年像って感じだよね!」
「……褒めたつもりだろうが、中年といわれて喜ぶ男はいない。
ムカついた、絶対に貴様の分は払わん!」
「わわ!冗談だってば、冗談!奢るなら最後まで奢ってよ!サービスするからさ」

 ギュッ……俺の腕にしがみ付き、胸を押し当ててくる果歩。
かすかに『むにっ』っとした柔らかい感触がする。なるほど、コイツにも胸があったのか。

「果歩、アバラ骨を押し付けるのはよさんか!」
「ほ、ホネ?ちょっと秋山さん!私の胸をなんだと……秋山さん、素直が一番だと思うよ?」
「なにがだ?それよりさっさと腕を離さんか!」
「そんな事言ってさ、顔が赤くなってるよ。秋山さん、照れてるんだ?」

 な、なんだと?この俺が果歩ごときの胸の感触で赤くなっているだと?そ、そんなバカな?

「な、なにを馬鹿なことを……おい、恥ずかしいのなら腕を離せ。
そんなに真っ赤な顔をしてまですることか?」
「へ?真っ赤な顔ってなにかな?」

 果歩は自分では気づいていないようだが、真っ赤な顔で俺の腕をギュッと抱きしめている。
はぁぁぁ〜、コイツは本当にガキだな。少しでもドキドキした自分が情けない。
さっさと観覧車に乗り帰るとするか。
真っ赤な顔で腕を掴んでいる果歩を無理やり剥ぎ取る。

「イダダダダ!秋山さん、なんで顔を鷲づかみにするのかな?
これ以上ちっちゃくなっちゃったら、可愛くなりすぎて世間がほっとかないよ?」
「夢は眠っている時に見るものだ。起きているときに見ればそれはただの妄想だ」
「……秋山さんって可愛くないね」

 確かにコイツはなかなか可愛い顔をしている。
性格も良いし、男がいないのが不思議なくらいだ。
ま、そのおかげでコイツとデートが出来たんだがな。
……俺は何を考えている?そのおかげでコイツとデートが出来た? 
『デートが出来た』とはなんだ?
今回のデートは、美里様の命令により嫌々しているお遊びだ。
それが『デートが出来た』だと?……ふざけるな!

「ど、どうしたのかな?秋山さん、すっごく怖い顔してるよ?」
「うるさい!気分が悪くなった、俺はもう帰る。貴様は好きなようにしておけ!」
「ええええ?急にどうしたの?秋山さん、いったいなにが……キャ!」

 サイフからお金を取り出し果歩の顔面に叩き付け、その場を立ち去る。
後ろで果歩が何かを言っているが、無視をする。
クソが!気分が悪い!これも全て美里様の……いや、裕彦のせいにするか。
屋敷に帰ったらウサ晴らしをしてやる!



 遊園地を出て、人の流れに逆らい駅へと向かう。
まだ15時前だ。これから遊園地で楽しむ人達だろう、のんびりとしたものだな。
せっかく貰った自由時間だ、このまま屋敷に帰るというのは味気ない。……どうするか?
晩飯にするにはまだ早いし、腹も減ってない。弁当を食いすぎたな。
果歩のヤツ、張り切って作りすぎだ。張り切りすぎるから遅刻をする。
遅刻の原因が弁当を作っていたからだとは……ふふっ、可愛いヤツめ。
……可愛いヤツ?俺はさっきからいったい何を考えている?
いかんな……どうも長い間、美里様のお守りをしていた為に、女に対しての免疫が落ちている
ようだ。
そうか、それでか。それで果歩に対してヘンな感情を抱いたのは。
納得がいった。全ては俺が女に対する免疫不足に陥っていたからか。
ふっはははは!百人以上女を抱いた男の言葉とは思えんな……情けない。
そんな事を考えている間に駅へとたどり着いた。
いくらだったかな……300円か。
切符を買い、改札に行こうとした俺の肩を誰かが掴む。

「はぁはぁはぁはぁ……ちょっと待って!
はぁはぁ、私、コホッ、何か悪い事、はぁはぁ、したのかな?」

 振り返ると息荒く、汗をびっしょりと掻いている果歩がいた。
なんだコイツ、追いかけてきたのか。観覧車に乗るのではなかったのか?
肩の置かれた手を払い除け、改札に向かい歩き出す。

「貴様には関係のないことだ。さっさと観覧車にでも乗って……おい、大丈夫か?」

 改札へと歩く俺を、必死な形相で追いかけて来る果歩。
歯を食いしばり、足を引きずっている。お化け屋敷で痛めた箇所か?
顔を歪ませる程、酷い痛みなのか?……そんな足で俺を追いかけてきたのか?何故だ?

「おい、大丈夫か?そんな足で追いかけてきたのか?……馬鹿が!」
「だって……急に秋山さんが怒り出すんだもん。
途中まで楽しそうにしてたのに、私のせいで怒り出したのかなって……ゴメンナサイ」

 涙を瞳いっぱいに浮かべ、シュンとする果歩。
……か、可愛いな。さすがに年頃の娘なだけはある。
こんな風に謝られると、可愛く感じてしまうな。

「……馬鹿が。謝るのなら明日にでも出来るだろうが!
痛めた足で無茶をして……余計に酷くなったのではないのか?どれ、見せてみろ」
「ふえ?わ、わわわ!ちょっと秋山さん!いきなり抱き上げないでっての!危ないってば!」

 果歩を抱き抱え、近くにあったベンチへと座らせる。
耳元で騒ぐ果歩の声がやかましい。……だがイラつかないのは何故だ?
ベンチに座らせ靴を脱がせ靴下も脱がせる。
足首の状態を確認したが……思ったほど酷くはなさそうだな。

「ふむ、あまり腫れてはいないな。だが念のため医者に見てもらえ、分かったな?」
「……うん。秋山さん、アリガト。もう怒ってない?」
「ふんっ……貴様の馬鹿さ加減を見ていたら、怒りもどこかへ飛んで行ったわ」
「よかったぁ〜……秋山さんにまで嫌われたかと思ったよ。はぁぁ〜、ホントによかったよ」

 はぁぁぁ〜、っと盛大なため息を吐き、ホッとした様子の果歩。
……コイツ、なかなか綺麗な足をしているのだな。
指先まで丁寧に手入れをして、肌もスベスベしている。

「前にさ、秋山さんもいたけど、西園寺先輩たちと一緒に、映画のテーマパークに行ったよね?
その時にさ、好きだった橘くんにフラれてさ……それ以来こういうとこに来てなかったんだよ。
今日秋山さんにまで嫌われたら、一生こんなとこに遊びに来れない……秋山さん、どうしたの
かな?なんで足を撫で撫でしてるの?あ、『痛いの痛いの飛んでけ〜』ってしてくれてるんだ?
あはははは!秋山さんって意外と子供みたいな事するんだね」
「う、うるさい!今日はもう帰るぞ!おぶってやるからさっさと乗れ!」

 ば、馬鹿か俺は!果歩の足を撫でるなどと何をしている?
よっぽど欲求不満なのか?クソが!コイツにはペースを狂わせられっぱなしだ!
 
「えええ〜!観覧車は?せっかく遊園地に来たんだから、観覧車に乗りた〜い!」
「我慢せんか!今度いくらでも乗せてやる!だから今日はもう帰るぞ!」

 まったくコイツは自分の体を何だと思っているんだ?
ここで何かあれば足首の故障が癖になって大変だぞ?

「んっへっへっへ……旦那、今、確かに言いましたね?『今度いくらでも乗せてやる!』って」
「言ったがどうした?さっさと帰るぞ」
「秋山さんアリガトね!いや〜、これで遊園地のアトラクション全部制覇できるよ。
小さな夢が一つ叶ったよ。うっれしいなぁ〜」
「はぁ?貴様は何を言って……糞が!失言した!」
「約束は守ってもらいますよ?だって秋山さんのせいで私の体は傷ついたんだからね!
乙女の体を傷ものにしたんだよ?秋山さんって、ひっどいんだぁ〜」

 足首を押さえ、イタイイタイとアピールする果歩。
糞が!いくら可愛い顔してアピールしても……まぁいい。今回は俺が大人気なかったからな。

「分かった分かった、また連れて来てやる。その時までに足をしっかり治せ、分かったな?」

 果歩の頭をグリグリと撫でてやる。こいつの髪、意外にサラサラとしているんだな。
果歩のことだから、安物のシャンプーを使っていると思っていたが、そうではないみたいだな。

「おおお?なんで急に優しくなるの?さては秋山さん、なんかヘンなもの食べた?」

 グリグリと頭を撫でていた手をずらし、顔面を鷲づかみにする。

「次来るまでに、その口の悪さも治しておけ!分かったな!」
「あがががががが!」

 ギリギリと締め付けると両手両足をバタバタと動かす仕草が、とても可愛らしくて楽しい。  
しばらく堪能した俺は手を離し、果歩の分の切符を買って手渡す。 

「ひっく、ヒドイよ……秋山さんはいたいけな女子高生をいたぶって喜ぶ鬼畜さんなんだよ。
私、傷物にされたうえ、いたぶられたんだよ……鬼畜はんた〜い!」
「いいから帰るぞ!さっさと行くぞ!」

 ブツブツ文句を言っている果歩を背負い、改札へと歩く。
背中の感じる微かな胸の感触が気になってしまう。
……世も末だな。果歩ごときに女を感じてしまうとはな。
これは一度風俗にでも行ってスッキリする必要があるな。


 結局この日は家まで送ろうとしたが、『一緒にいたら母親に勘違いされるかも?』と、
最寄の駅で別れることになった。
……なんだ、この失望感は?何故俺が落ち込まなければいけない?……まぁいい。
今日は果歩にペースを狂わされっぱなしだったな。かなり疲れてしまったな。
慣れないことはするもんじゃないな、屋敷に帰ってさっさと寝るか。


 ポケットの中に何かが入っているのに気がついたのは、屋敷に着いてからだった。
……糞が!なんなんだこの写真は?俺はお化け屋敷でこんな顔をしてたのか?
こんな写真、破り捨てて……まぁいい。せっかく貰った写真だ、記念に取っておくか。
何故か写真を破り捨てる事ができず、財布にしまい込む。……札が少なすぎる、何故だ?
……しまった!果歩に金を叩きつけたままだった!
あいつめ……黙っていたな?さすがは金に関してはしっかりした子だ。
今度会うときにでも回収するか。

 俺はベッドに寝転がり、サイフから写真を取り出して眺めてしまう。
……しかし酷い顔をしているな、こいつは本当に女なのか?
背中に感じた胸の感触には女を感じたが……何故今さら女を感じたんだ?
今まで稽古で何度も触った事があるはずだ、その時には一切女なんて感じなかったぞ?
稽古だったからか?そうなのか?……何故俺はこんな事を考えているんだ?
よっぽど疲れているんだな。デートなどと慣れないことはしないほうがいいな。
今日は早いがもう寝るか。どうせ美里様は裕彦に抱かれているのだろう、お盛んな事だ。
……ふぁぁぁ〜、本当に疲れた、果歩め、よくも引きずり回してくれたな?
今度のデートでは…お化け屋敷に……放り込んでやる………


 2人で写っている写真を胸に乗せたまま眠りにつく。
夢の中で何故か果歩が出てきたのは秘密だ。……本当に何故なんだ?




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