「どうしたんじゃ?何故泣いておる?」
「カ、カシュー様?……何でもありません、失礼します」
ニース様に拒絶され、部屋から逃げ出した私。
そんな私に気づいてくれたのはカシュー様だった。
いけない!泣いているところをカシュー様に見られた!
このままではニース様が叱られてしまう、すぐにここを去らなければ。
「そんなに目を腫らして泣いていては、何でもないとは到底思えんのぉ。
……お主が泣いているのを見たのは、これで三度目じゃな」
「本当に何でもありません。気を使っていただきありがとうございま……三度目?」
「そうじゃ、三度目じゃ。息子が死んだと知った時、お主は泣いておったであろう?」
「あ、あの時は確かに泣きました。ですがそれは当たり前の事です。
雇い主とはいえ、私の幼馴染だったのですから」
そう、家族揃って劇場へ向かう途中の事故。
あの人と奥様は即死。幼いニース様のみ奇跡的に助かったの。
でも目が傷ついていて……ニース様は幼くして視力を失ったわ。
「そうじゃったな。息子からお主の話はよく聞いていたぞ。
『女の子が男数人に襲われてたから助けようとしたら、女の子が全員を倒した』とな」
「そ、それは……襲われたと言っても、幼い頃の子供のケンカですよ」
「わっははは!こうとも言っておったぞ?
『あまりにビックリしたから思わず『君は男なのかい?』と聞いたら僕まで殴られた』とな!」
わははは!と、大きな口を開け、嬉しそうに笑うカシュー様。
く、くぅぅ〜!あの人はカシュー様に何を教えてるのよ!
女の子にそんな口の効きかたをすれば、殴られるのは当たり前でしょ?
あの人が悪いのよ!私を男だと思ったんだから!
「そうじゃそうじゃ、思い出したぞ!
次の日に昨日の事が本当だったのか確かめに行ったら、
昨日よりも大人数を倒してたらしいの。
で、もう一度『やはり君は男なのか?』と尋ねたら、
今度はグゥの音も出ないほど叩きのめされたと言っておったぞ!」
嬉しそうに喋るカシュー様の話に、顔が真っ赤に染まってるのが分るわ。
あの人はいったいどこまで教えてるのよ!あのバカ!
「懐かしいのぉ……息子の紹介でお主がここで働くと聞いた時は、
どんな大女が来るのかと、屋敷中がビクビクしておったわ」
もはや耳まで真っ赤なのが分るわ。だからあの人はどんな話をしてたのよ!
「そんなお主の涙を初めて見たのが、息子、スレインの結婚が決まった時じゃったな」
カシュー様の言葉に声が出ない。
あ、あれを見られてたの?隠れて、声を殺して泣いたはずなのに……
あの人を、スレインを忘れるために、声を殺して泣いたのに……
「すまんかったの。あれの結婚相手を決めたのはワシじゃ。
お主の気持ちはまったく考えもせなんだ。
そうと知っておれば、好きな者同士、結婚させてやったのかもしれんのぉ」
……え?好きな者同士?ど、どういうことなの?
「カシュー様!す、好きな者同士とはいったいどういうことでしょうか?」
「……言葉の通りじゃよ。息子、スレインもお主を好いておった。
じゃからお主をこの屋敷で働けるようにと、ワシに頼んできたんじゃよ」
ウ、ウソ?まさかあの人が……スレインが私を好きだったなんて……ウソよね?
「そ、それは本当なのですか?あの人が、スレインが私を……好きだったというのは」
「うむ、本当じゃよ。でなければ用も無いのに、お主の所に頻繁に遊びには行かんよ。
お主が家計を助けるために遠くへ働きに出ると聞いて、
必死の形相でワシに言って来おったわ。
『ナルディアと離れるのは嫌だ!父上、ナルディアをこの屋敷で雇うことをお許しください!』
とな」
カシュー様の口から、今まで想像すらしなかった事実を聞き、涙が溢れ出る。
何故今さら?あの人はもういないのに、声すら思い出せなくなってきたのに!
……あの人の側に、私の居場所は無いと痛感した今日になって、何故教えるのですか!
「そ、そんな……何故そんなことを……何故今さらそんな事を言うのです?
あの人を忘れようと……あの人の事を思い出すのを辞めようと……
あの人の思い出が残る、このお屋敷から去ろうと決心したのに!
何故今さらになってそんな事を言うのですか!何故そんな残酷なことをするのですか!」
両手で顔を抑え、溢れる涙と嗚咽を押さえようとしたわ。でも無理だった。
私が素直に自分の気持ちを言っておけば、身分が違うと諦めていなければ!
……あの写真には私の居場所があったのかもしれない。
そんな後悔しか思い浮かばず、泣く事しかできない私。
そんな私を優しく、そして温かく包んでくれる人がいた。
カシュー様……抱きしめてくださったのですね?……温かい。
まるであの人と一緒にいた時のよう。……そう、まるであの人に抱きしめてもらってるみたい。
あの人の温もりを感じて、段々と落ち着いてきた私。
いいえ、落ち着いてなんかなかったわ。
もっと……もっと強い温もりが欲しくなったの。
あの人の……あの人の変わりでもいい、誰かの温もりが欲しくなったの。
「カシュー様……お願いがございます。私を……抱いてくださいませ」
カシュー様の手を離れ、上着を脱ぎ始める。
「……それはダメじゃ。今のお前は人の温もりを欲しがっておるだけじゃ。
自分を安く扱うな。お主はワシの自慢の息子が惚れた女なんじゃぞ?しっかりせんか!」
「……もう、ダメなんです。暖めて欲しいんです!
誰でもいい!私を抱いて暖めて欲しいんです!……いいえ、誰でもいいなんて事はないわ。
あの人と同じ……スレインと同じ匂いを持つ、カシュー様に抱いて欲しいんです!」
服を全て脱ぎ捨てて、下着姿になる。
そしてそのままカシュー様の胸に飛び込んで肌に直接温もりを感じる。
……温かい。まるで身体全身が……心の中まで温まるようだわ。
「お願いでございます。一度だけ、一度だけでいいんです。
どうか私に情けをかけると思い……抱いてください。
あの人の温もりを私の身体に刻んでください!」
「ナルディアよ……ワシのような年寄りでいいんじゃな?
ワシも男じゃ。お主の様な美人にこうまで迫られては我慢が出来んぞ?」
「構いません。貴方からはあの人と同じ温もりを感じます。
あの人の温もりが欲しいんです!例え偽者でもいい!温もりが欲しいんです!」
「……分った。じゃがまずは服を着なさい」
腕の中から私を突き放し、服を着るように促すカシュー様。
何故ですか?私を抱いてくださらないのですか?
「何故ですか?何故温もりを与えてくださらないのですか!」
「ナルディアよ、落ち着きなさい。さすがに廊下でお前を抱くというのは出来ん。
ワシの部屋に来なさい。そこで望みどおりに、お主を抱こう」
……廊下?
そういえばニース様の部屋を出て、泣いているところをカシュー様に……しまった!
慌てて脱ぎ捨てた服を着込む。カシュー様はその様子を微笑みながら見ていたわ。
服を着込んだ真っ赤な顔の私は、逃がさないようにカシュー様の手をギュッと握り締め、
部屋へと歩き出す。
カシュー様、ワガママを言って申し訳ありません。
ですが、温もりが無いと、これからの人生を生きていく自信がないのです。
……一度だけでいい。温もりを、あの人の温もりを、私に分けてください。
「ん、んん!リクぅ、リクぅ〜!」
「ん、ちゅ、じゅじゅ……どうしたのですか?お尻をヒクヒクさせて」
「リクぅ、まだ終わらないの?アタシ、頭がおかしくなっちゃうよぉ〜」
四つんばいのまま、オレに尻を舐め回されるニース。
オレの舌が、可愛い尻の中心を這う度に背中を反らし、甘い声を上げる。
その中心は舌が這う度に、ヒクヒクと何かを求めるように、蠢きだす。
なんだ?舐められるだけじゃ不満なのか?まったくイヤらしいお尻だな!
オレは期待の答えるように、舌先を尖らせて進入を試みる。
昨日散々弄ってやったのが効いているのか、思いのほかすんなりと入っていく。
舌を挿入した瞬間、一段と背中を反らし、大声で喘ぎだしたニース。
「ふあぁ〜!リク!ヤメテ!もうヤメてぇ〜!おかしい!おかしいのよ!
頭が真っ白に……きゃああ〜!」
ビクンビクン!……身体全体が痙攣し、ぐったりと倒れこんだニース。
おいおい、舌を入れただけで派手にイッたな。昨日の開発が効き過ぎたのか?
……前もヌレヌレになってるじゃねぇか。仕方がない、綺麗にしてあげなきゃな!
「ニース様、そろそろ仕上げに入りますね?ちょっとキツくなりますけど、我慢してくださいね?」
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜……はぁぁ〜」
ぐったりと前のめりに倒れこみ、荒い息しか出来ないニース。
隊長!前のめりになってくれてるおかげで、非常に舐めやすくなっております!
綺麗な縦筋が、濡れて光ってるのが丸見えであります!
その縦筋にちょこんと付き添うように付いている小さな突起。
まだ皮を被ったままだけど、今日初めて剥けちゃうんだね。
……このオレがクリっと剥いてやるよぉぉ〜!
まずは軽く縦筋を舐めとる。
……おお!こんな小さな縦筋でも、しっかりと女の味がするんだな!
「イッ、きゃう!やぁぁ〜!もうヤダァ!ひい!んああ!ふあぁぁ〜!」
ニースは舐める度にビクビクと痙攣をする。
感じすぎているためか、声にならない声をあげている。
オイオイ、少し感じすぎじゃねぇのか?もっと感じさせちゃうぞ?
小さな突起に狙いを定め、唇を尖らせて吸い付く。
吸引力で皮を剥いてやる!チュウチュウ吸ってやるぜ!
「んっきゃう!ヒィ!な、なにこれ?なによこれぇぇ〜!いやぁぁぁ〜〜!」
ニースはオレの吸引力に負けたのか、床を掻き毟って背中を反らし、
喉が枯れるんじゃないかという位の大声でイッてしまった。
イッてしまってもオレの口の中では、ひょっこりと顔を出したクリちゃんが、
舌で転がされ続けている。
舌が触れる度、転がす度に、頭を振り乱し、泣きそうな声で喘ぐニース。
その乱れる金髪があまりにも綺麗な為、ついつい調子に乗って吸い続けてしまった。
……動かなくなった。どうしよう?って、おいおい!こんなところで漏らすんじゃねぇよ!
オレの激しい攻めで、失神、そして失禁してしまったニース。
うわぁ、下着が小便でグショグショだ。どうしよう?とりあえずは……後片付けしなきゃな。
小便で濡れた下着を脱がし、トイレへと駆け込む。
後片付けはオレの下半身の後片付けをした後だ。どうせ起きるまで時間がかかるだろ?
ニースを舐め回し、いきり立った下半身に濡れた下着を被せ、シコシコと擦る。
うぉぉ……気持ちいいじゃねぇか、癖になるぞ!っていうか、もう癖になっちゃったな。
(次はナルディアさんの下着でヤリたいな)
オレはそんな事を考えながら、ニースの下着の中にドクドクと発射した。
「ナルディアよ、本当にいいのか?ワシのような年寄りに抱かれて、本当にいいのか?」
カシュー様の部屋に入り、ギュッと抱きしめてもらう。
あぁ……あの人と同じ匂いがするわ。フフフ、さすがは親子ね。
ちょっとした仕草もそっくりだしね。
そう考えると、まるであの人に……スレインに抱きしめてもらってるみたいに思えてきた。
スレインに抱きしめてもらってる……そう考えただけで、お腹の中が熱くなってくる。
「これ以上すると、もう止めれんぞ?それでもよいのか?」
耳元で囁く優しい声。あの人と同じ、スレインと同じ心に響く優しい声。
あぁ……スレイン、好き。大好きよ、愛してるわ。
「お願い、愛してると言って。……一度でいいから、私にも愛してると言って」
「……ナルディア、愛してる。お前が好きだ」
「ああ!スレイン!私も愛してるわ!ずっと……ずっとずっと好きだった!愛してたわ!」
身体の隅々まで染み込むような、スレインの優しい声。
『愛してる』その短い言葉だけで、私の身体はおかしくなってしまった。
まるで宙に浮いているようにふわふわとして、自分の足で立っていられない。
スレインに身体を預け、瞳を閉じる。
……夢みたい。スレインに愛してると言ってもらえるなんて。
「ナルディア、脱がすぞ?」
「……うん、脱がせていいよ。私、あなたとこうなるのをずっと待ってたの。
早く……早く抱いて。早く私をあなたの物にして!」
背中に回された手が、服のボタンを外す。
愛を囁いてくれた唇が、首筋を這う。ウフフフ、少しくすぐったいかな?
首筋から耳、そして再び首筋へと。まるで別の生き物のように、私を這うスレインの唇。
その動きに身体を熱くさせられていたら、いつの間にか下着姿になっていた。
「あぁ、スレイン……好きぃ、好きなの!愛してる!」
「ナルディア……ワシ…いや、俺もお前が好きだ。愛してる」
「スレイン……ん!んん!」
耳元で甘い囁きをされたと思うと、口を何かでふさがれた。
いったいなに?そう思った瞬間、唇を割り込み、滑ったものが口内に入ってきた。
ひっ、ひっく……スレインが……スレインがキスしてくれた。
う、うれし……愛してる!スレイン愛してるわ!
「ん、んん……ちゅ、んぁ、んぁぁ……すきぃ、愛してるぅ……ん、ちゅ、あん!」
舌を絡め合い、お互いを抱きしめあう。
口の中に広がるスレインの味。あぁ、こういう味をしていたんだ。
もっとスレインを味わいたくなり、激しく舌を絡める。
スレインも私を味わいたいのか、お返しとばかりに私の舌を絡めとる。
お互いを求め合うキス……あなたとこんなキスが出来るなんて夢みたいだわ。
「ナルディア、ベッドに行こう。俺、もう我慢できそうにないよ」
「うん、いいよぉ……あん!そんなに揉んじゃやだぁ」
「ナルディア、すっごい気持ちいい。お前の胸、最高だよ」
「えへへへ……嬉しいなぁ。もっと触ってもいいよ。この胸も全部、スレインの物だから」
「ナルディア……ナルディアァァ〜!」
「きゃん!」
胸を揉んでいたスレインに、急にベッドに押し倒された私。
あぁ、スレイン……私で興奮したのね?……嬉しい。もっと私で興奮してぇ!
「ナルディア……ナルディア好きだ!」
「ひっ、スレイ……んあ!そんな強く吸わないで……きゃう!」
ブラを外すのももどかしいのか、ブラをズリ上げ、私の胸に顔を埋めるスレイン。
チュウチュウと、まるで赤ちゃんのように胸に吸いつき、そして舌で転がされる。
私はそんなスレインの顔を抱きしめ声を上げる。
胸を吸われるのってこんなに気持ちいいんだ。スレインだから気持ちいいのかな?
そんな事を考えていると、いつの間にかショーツの中に入っていたスレインの指が蠢きだした。
「や、やぁぁ〜!ダメそれ!おかしくなる!スレイン、ヤメて……胸噛まないでぇ〜!」
ショーツの中で蠢く指が、的確に私の一番弱い突起を弄る。
刺激に耐え切れずに声を上げたら、胸を噛まれて更に大きな声を上げてしまう。
もう何が何だか分らない。ただ分る事は、私を狂わせているのはスレインだということだけ。
「スレイン!スレイン!好き、愛してる!スレイ……んあああ!」
突然下半身を走る、鋭い痛み。
あぁ……ついに、ついにスレインが私に……入ってきたのね?
ズブズブと私を貫くスレイン。
初めて他人を受け入れた私は、あまりの痛さにうめき声を上げる。
「う、うぅぅ……ひぎ!スレイン好きぃ、愛してる!」
「ナ、ナルディア?もしかしてお主、初めてなのか?」
「あ、当たり前でしょ?くぅ!ず、ずっと、前から……んん!
初めては、痛ぁ……あなたにあげるって、んぁ、決めてたんだから!
だから、しっかりと受け取って。……途中で止めるなんて許さないわよ」
「ナルディア……すまん!もう我慢できん!激しく行くぞ!」
グッチュグッチュグッチュ……ゆっくりと突き進んでいたスレインが、いきなり激しく私を犯す。
貫かれる度に、引き抜かれる度に体中を駆け巡る激痛。
私はスレインの肩に噛み付きながらそれに耐える。
「ナルディア、凄いぞ、胸が激しく揺れてるぞ!」
「ひぃ!んん!痛ぅ……ああ!ひぎぃ!んああ〜!」
首筋に痛いほど吸い付き、胸を痛いほど噛み付いてきたスレイン。
激痛に耐えながら、そんなスレインをギュッと抱きしめ、歯を食いしばる。
激痛に耐え、お腹の中のスレインを感じていると、温かい物がお腹の中に広がった気がした。
その瞬間、スレインが低く唸って私に倒れこんできた。
お互い荒い息遣いで抱きしめあう。……そして唇を合わせ、お互いを求め合うキスをした。
あぁ……愛してる。スレイン、愛してるわ!
スレインに強く抱きしめられながら私は意識を失ったわ。
……スレインに抱いてもらえた幸運を神に感謝して。
「冷たい飲み物でいいかの?
確かミネラルウォーターがあったはずじゃが……おお、あったあった」
備え付けの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、カップに注いでくださるカシュー様。
上半身裸のカシュー様。その背中には私がつけた爪痕が。
肩には噛み付いた場所から薄っすらと血がにじんでいる。
「あ、ありがとうございます。では頂きます」
身体を隠しているシースがずり落ちないように右手でしっかりと握り締め、
ベッドの中からカップを受け取り口をつける。
……あぁ、美味しい。乾いた身体が潤う気がするわ。
「カシュー様、その……申し訳ございませんでした!
私のワガママに付き合わせてしまい、申し訳ありません!」
「わっははは!いいんじゃよ、気にするでない。
こんなワガママならいつでも聞いてやるからの。
じゃがナルディアが、まさかあそこまで積極的だとは思いもしなんだがの。
この歳で連続2回戦は拷問じゃぞ?」
「……い、言わないでください。自分でも何故あそこまでなったのか分からないのですから」
初めてを奪ってもらい、意識を失った私は、
カシュー様に起こされた後、また温もりを求めてしまった。
……でもそれに答えるカシュー様もカシュー様よね?何故断わってくれなかったのかしら?
「わっははは!顔を真っ赤に染めとるお主は可愛いのぉ。
いつでも付き合うでな、遠慮せずに言ってくるがいい」
「そ、それは……もうしません!」
からかうような笑顔で微笑むカシュー様。
もう!やっぱり親子ね!そんな表情がスレインにそっくりだわ!
「それは困るのぉ。今度は息子、スレインの代わりではなく、カシュー・B・ラインフォードとして、
一人の男としてお主を抱きたいと思っておったのにの。
では自分の力でお主と抱き合えるように努力しようかの?」
「……は?カシュー様、いったいなにをおっしゃられるのです?」
カシュー様の言葉に頭が回らない。
あの人の代わりじゃなく、一人の男として私を抱きたい?いったい何のこと?
混乱してる私に、一枚のチケットを差し出すカシュー様。
なんなの?これはいったいなんなのかしら?
「お主は確か、劇場などよりもスポーツ観戦のほうがよかったんじゃったな?
今度の日曜日、一緒にサッカーを見に行かんか?ほれ、特別席の招待状じゃ」
「……は?カ、カシュ−さま?いったいどういうことでしょうか?」
「いやの、これはリクに褒美としてやろうかと考えておったものなんじゃが、
やはりワシが見に行こうとおもってな。……惚れた女との」
私の横に腰をかけ、サッカーの特別席のチケットを私の胸に挟んできた。
え?えええ?惚れた女?ええええ?な、何を言っているのですか?
「カ、カシュー様?いったいなにをおっしゃられてるのです?」
「なにを言っているのかじゃと?
……この歳で告白するのは恥ずかしいんじゃ、何度も言わせんでくれんかの。
ナルディアよ、お主を好いておるんじゃ。
息子の代わりではなく、カシューとしてお主を抱きたい。
返事は急がんでいい、お主の気持ちが最優先じゃ。落ち着いて、ゆっくりと考えてくれぃ。
……ワシは本気じゃ。年甲斐もなく、お前を好きになってしまった」
……ボン!
一瞬で真っ赤に染まった顔から、そんな音が聞こえた気がしたわ。
ウ、ウソよね?カシュー様が私を……好き?
……ボン!
真っ赤な顔のままベッドに倒れこむ。
頭の中でグルグルとカシュー様が言われた『お前を好きになってしまった』という言葉がループ
する。
私を……好き?
……ボン!
カシュー様が……私を好き?
……ボボボン!
突然の愛の告白に、頭がショートする。
ぐるぐると回る視界のなか、サッカーのチケットを握り締め、天井を見つめることしか出来なか
ったわ。
「まったくニース様は……お漏らしをするなんて、淑女のする事ではありませんね」
「うぅぅ……そんな大声で言わないでよ。
だいたいアンタがしつこく舐めるからいけないんでしょ?」
「人のせいにするのはもっといけません!で、お尻は痛くなくなったでしょうか?」
「あれ?そういえば痛くないわ。ツバをつけると治るって言うのは、ホントだったんだ」
リクにツバをつけてもらったおかげでお尻が痛いのは治ったわ。
でも心に傷が出来てしまったわ。どうしてくれんのよ!
お漏らししたなんておじい様やナルディアにバレたら……絶対に秘密にしなきゃいけないわ!
「リク!今日の事は絶対に秘密よ?分ったわね!」
「今日の事とは、ニース様がお漏らしをして下着をビショビショにしたことでしょうか?」
「バカァ!なんでそんな恥ずかしい事言うのよ!リクのイジワル!」
「はははは!分りました、誰にも秘密ですね?」
「ホントに秘密だからね?絶対だからね?約束だからね?」
「はいはい、分りました。……では、日本流の約束の誓いを立てましょうか?」
「ニッポン流の約束の誓い?それって何よ?」
「簡単ですから実際にやってみましょうか?まずはですね、お互いの小指を絡めます」
フムフム、小指を絡めればいいのね?リクに手を取ってもらい、小指を絡めてみる。
「で、次はですね、軽く腕を振りながら約束の言葉を言うんですよ。
では練習しましょうか?私の言う事を後から付いてきて言ってくださいね」
「リクの言ったことを言えばいいのね?」
「ではいきます。ゆ〜びきりげんまん」「ゆ〜びきりげんまん」
ブンブンと腕を振り、リクが言ったセリフを繰り返す。
なんだか楽しい約束の仕方ね。やっぱりニッポンジンって変わってるわ。
「う〜そついたら」「う〜そついたら」
「直径4センチ、長さ14センチ程の棒状の物をお尻につ〜っこむ!指きった!」
「直径4セン……うえええ〜〜?ちょっとリク!アンタ何言ってるの?バッカじゃないの!」
慌てて小指を離し、リクに抗議する。
なによそれ!お、お尻に棒を入れちゃうの?約束を破ったらそんなことされちゃうの?
こ、こわいよ〜!ニッポンジンは恐ろしいよぉ〜!
「大丈夫ですよ、約束を破らなければいいんです。ウソをつかないという約束をね。
簡単でしょ?」
「そ、それはそうだけど……え?ウソをつかない?あれ?ちょっとおかしくない?」
「なにがおかしいのでしょうか?」
「アンタが今日の事を秘密にするって約束じゃなかった?
なんでアタシがウソをつかないって約束になってるの?」
いつのまにか変わっていた約束に首を傾げる。なんかアタシ、騙されてないかな?
「何を言ってるんですか?私にだけ約束をさせるおつもりですか?
それではフェアじゃありません。
ですからニース様にも私と約束をしていただかなければならないのです。
……お互いにウソをつかないという約束をね。その方がフェアでしょ?」
「そ、それはそうだけどぉ……なんか違うような気がするわよ?」
「いいから本番をしますよ。本番では先ほどの誓いの言葉を一緒に言うのです。
ではいきますよ?」
強引にアタシの手を取り、小指を絡めてきたリク。
全然納得できないんだけど、お漏らししたことをバラされたくないし……仕方ない、のかな?
「「ゆ〜びきりげんまんう〜そついたら」」
リクと一緒に腕を振り、約束を交わす。
あ、よく考えたらこういう約束って初めてかも?エヘヘヘ……ちょっと嬉しいかな?
「「直径4センチ、長さ14センチ程の棒状の物をお尻につ〜っこむ!指きった!」」
……いや、全然嬉しくないわ。他人との初めての約束がなんでこんなヘンな約束なの?
結局その日はリクと約束を交わした後、疲れていたので眠ったわ。
ナルディアには謝れなかったなぁ。ナルディア、怒ってるのかな?嫌われたりしてないかな?
明日の朝、ナルディアが起こしに来たら謝ろう。素直に頭を下げて、謝ろう。
……でも、手術はイヤ。怖いからイヤ。
いくらおじい様やナルディアが言ってきても絶対に受けないわ。
だって目が治ったら……みんながアタシに優しくしてくれなくなるかもしれない。
きっとおじい様やナルディア、リクでさえアタシの目が見えないと知っているから優しいんだ。
そう思うととても怖くて……手術を受けれないわ。
治ったらきっとアタシの事なんか……そんなのイヤ。絶対にイヤ!
アタシは一生目が見えなくてもいいわ。
アタシの手足にはナルディアを。目にはリクを使ってあげる。
だからアタシに視力なんて必要ないわ。だから絶対に手術なんか受けないわ!
アタシはナルディアとリクの2人が、一生アタシの側にいるものと思いながら眠りに付いたわ。
……しばらくして、その考えは間違っていたんだと思い知る事になったわ。
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