「麗菜さん、オレ、肉が喰いたいです」

 精肉コーナーで立ち止まり、1パック1000円の焼肉用お肉をジッと見つめる静馬君。
1パック1000円?ダメダメ!高い高い!高すぎるわよ!

「んん〜?お肉かぁ……う〜ん、まだ高いわね。タイムセールまで待ちなさいね」
「いやいや、金はオレが出しますから、いい肉食いましょうよ。
っていうか、焼き肉屋に行きませんか?奢りますよ?」

 静馬君との交際をスタートさせてから2週間。
初めて2人の休みが合った2連休の初日、アタシ達は夕御飯のおかずを買いにスーパーに来
ている。
う〜ん、このスーパーはあまり安くないわね、タイムセールまで我慢かなぁ?

「焼き肉屋さん?う〜ん……却下ね」
「ええ〜!なんでですか?せっかく2人でゆっくりとメシを喰えるんだから、豪勢に行きましょう
よ!」
「焼き肉なんてスーパーでお肉を買えば安く済むわよ。
ほら、もう少ししたらタイムセールだからお肉も安くなるって」
「えええ〜!焼き肉屋、なんでダメなんですか?
せっかく明日の事を気にせずにのんびりできる夜なんですから、肉食って、お酒飲んで楽しみ
ましょうよ」
「はぁぁ〜、静馬君、君ねぇ分かってるの?のんびり出来る夜だからこそ、外食はダメなのよ。
……初めて君の部屋に泊まるんだよ?夕御飯くらい作らせてよ」

 そう、今夜は初めて静馬君の部屋に泊まるの。
まぁ厳密に言えば初めてじゃないんだけどね。
前の時は酔って寝てたアタシを保護してくれただけだしね。
……静馬君、アタシが部屋に泊まるって意味が分かってるのかな?
静馬君って真面目でいい子なんだけど、少し……かなり鈍感なのよねぇ。
付き合いだして2週間、いまだに静馬君からのそういうアプローチはナシ。
初めて手を繋いだのもアタシからだったし、二人きりになっても、キスをしてくる素振りもない。
だから少し不安になって毛利さんに相談したの。
静馬君、本当はアタシのこと、好きじゃないんじゃないかって。
直樹君とアタシと落とす事を競ってたから、好きになったつもりだったんじゃないかって。
毛利さん、不安になってたアタシにこう言ってくれたわ。

『確かに守屋ちゃんの言うとおりかもしれないねぇ。
守屋ちゃんみたいなカワイイ子を前に、手を出さないなんて普通じゃ考えられないからねぇ。
でもそれがどうしたの?守屋ちゃんが静馬ちゃんを好きになった気持ちはウソなのかい?
静馬君のことが好きなら、体でも何でも使って気持ちを奪っちゃいなよぉ、虜にしちゃいなよぉ。
おばさん、そういうことから始まる恋もあると思うよ?……そうよね、直ちゃん?』

 毛利さんの言葉でアタシは決心した。
今夜、静馬君に抱かれよう。そして、アタシの物にしようって。
……もう一人で暮らすのはイヤなの。もう一人での寂しい生活には戻りたくないの。
そのために、静馬君は絶対に物にして見せるわ!
……直ちゃんって言葉は聞こえなかった事にしよう。

 はぁぁ〜、まさか短時間でここまで好きになっちゃうなんてねぇ。
アタシ、結構いい年なのに、まだまだ若いわね。恋する気持ちはまだまだ10代ね!
……やっぱり静馬君って初めてなんだよね?うぅぅ〜、緊張しちゃうなぁ。
毛利さんに急かされて、少し焦っちゃったかな?
やっぱりこういう事はゆっくりとしたほうがよかったかな?
勝負下着は黒でよかったかな?セクシーに決めたつもりだけど、引いたりしないよね?
奮発して買ったんだから、引かれたらちょっとショックだなぁ。
……コンドーム一箱持って来たのはやりすぎたかな?
……一箱で足りるのかな?静馬君、体力ありそうだからなぁ。



「麗菜さん?顔、少し赤いですけど、どうしたんですか?」
「……へ?な、なんでもない!それよりこのスーパー、あまり安いものがない……あああ!
もやしが安い!これはお買い得ね!一人2袋までかぁ……静馬君と2人で4袋買える訳ね。
おし!買っちゃおう!」

 もやし一袋10円!これは安いわ!安いのよ!こういうのを見たら血が騒ぐってものよね〜。

「4袋も買うんですか?もやしなんかそんなに買ってどうするんです?」
「もやしはねぇ、安くて美味しくて、お金を節約するのにいい食材なのよ。
静馬君、お金はなければ困ることがたくさんあるけど、あって困る事はないわ。
だから君も将来に備えて、たくさん貯金しときなさいね?」

 そう、貯金は大事なのよね。あの浮気者と離婚して、一番苦労したのがお金だったからね。
……まだ苦労してるのよねぇ。慰謝料ふんだくっとけばよかったかな?
そんな事を考えているアタシを見つめる静馬君。
なに?そんな見つめられたら少し恥ずかしい……なんでクスクス笑ってるの?

「ははは、なんか麗菜さん、主婦って感じがするなぁ」
「へ?な、ななななんで主婦なの?アタシのどこが主婦なのよ!」

 まさか気づいたの?アタシが結婚してた事があるって気がついたの?
ウソでしょ?だって静馬君、あなたすっごく鈍感じゃないの。
なんでこういうことだけ気づくのよ!

「へ?なに慌ててるんですか?いや、金銭感覚がしっかりしてるのが主婦っぽいなぁって。
自分の母親もしっかりしてたから、主婦みたいだなぁって思っただけですよ。
安売りのもやしを見つけた表情なんて、母親そっくりでしたよ」

 ……ほっ。アタシが結婚してた事があるって気がついたわけじゃないのね?
まったく、驚かせないでよ!×1だってばれちゃったかと思ったじゃないの!
……そうよね、いつかは話さなきゃいけないのよね。
静馬君、アタシの話を聞いても怒らないかな?嫌いにならないでいてくれるかな?
……母親そっくりってなによ?

「ちょっと静馬君!母親そっくりってなによ!アタシ、まだそこまで年取ってないわよ!」
「はははは!怒らないでくださいよ。ちょっとした冗談ですよ、冗談」
「女性に年齢を感じさせる話は厳禁なの!覚えときなさい!」
「ははは、分かりました。でも麗菜さんって主婦が似合いそうですよね」

 まだ言うかぁ!……え?主婦が似合う?そ、それってもしかして?
……そういうことなの?主婦になってほしいってことなの?そ、それはまだ早くない?



「もやしは4袋でいいんですよね?もやしよりも肉食いたいんですけど……麗菜さん?
ジッとこっち見てどうしたんですか?」
「……へ?な、なんでもない!それよりお肉は商店街のお肉屋さんで買おうね!
グラム売りしてくれるし、おまけもしてくれるしね!」

 う〜ん、主婦が似合うってセリフは、アレを意図して言ったんじゃないみたいね。
そりゃそうよね。いくらなんでも、付き合いだして2週間で、プ、プロポーズはないわよね?
……ないのかぁ。はぁぁぁ〜。

「麗菜さん?どうしたんですか?」
「……へ?な、なんでもないってば!そ、それよりさ、さっきから君は、アタシの顔色ばかり気に
してるね」
「そりゃそうでしょ?だって麗菜さんが一緒に買い物してくれてるんですよ?
嬉しくてつい横顔を見ちゃいますよ」

 ニッコリと微笑み、アタシを見る静馬君。その真っ直ぐな視線に、ドキドキと鼓動が早くなる。
ぐぅ……こういうことを意識せず、サラッと言っちゃうのが静馬君なのよねぇ。
はぁぁ〜……その顔でこんな事をサラッと言われ続けたら、そりゃますます好きになっちゃうわ
よねぇ。
静馬君……天然の女たらしね。

「な、なんですか?なんでそんな目で睨むんですか?」
「ん?なんでもないよ?それよりさ、商店街の方に行こ?
お肉食べたいんでしょ?せっかくだから、いいお肉食べちゃおうね」
「おお!麗菜さんもやる気になりましたね?オレ、レバーも食いたいです!生レバ生レバ!」

 ええ?レ、レバー?レバーかぁ……せ、精力つけるにはもってこいのお肉ね。
……ゴクリ。もしかして静馬君も今夜そのつもりなんじゃ?

「やっぱり焼き肉は心躍りますよね?好きなだけ肉を食えるって最高ですよ!
社会人になってよかったぁ〜って心から思う瞬間っすね!」

 ……すっごい無邪気に笑ってるわね。
はぁぁ〜、単純にお肉を食べられるのを喜んでいるだけかぁ。
……男として、それってどうなのよ?
カワイイ彼女が自分の部屋に泊まりに来るんだよ?
それなのに、お肉を食べれるからって、そんなに嬉しそうな顔をして!
そんな顔嬉しそうな顔、今までアタシに見せたことないでしょ!……あれ?嬉しそうな顔?
あ、あれれ?アタシが泊まるって言った時より、嬉しそうな顔をしてない?
もしかしてアタシ、お、お肉に負けてるの?

「麗菜さん?急に暗い顔になってどうしたんですか?」

 そ、そうかぁ……アタシ、お肉に負けちゃってるんだぁ。

「れ、麗菜さん?オレ、なんか変なこと言いましたか?」
「……な、なんでもないよ!それよりさ、あまりお肉ばかり食べてちゃダメだよ?
しっかりとお野菜も取って、栄養のバランスを考えなきゃ。
という訳で、今日はお野菜もたっくさん食べてもらいま〜す」

 買い物籠にキャベツやたまねぎ、ピーマンに茄子を次々と入れる。 
……お肉になんか負けないわよ!
にっくきお肉なんか、いっぱい食べさせてあげないんだから! 



 『ジュー…ジュジュー……ジュージュジュー』

 小さな電気コンロでフライパン使い、たくさん買ってきたお肉を焼く。
う〜ん、ちょっと火力が弱いわね。やっぱり料理するなら大きなガスコンロがいいなぁ。
……静馬君、買ってくれたりしないかな?
目の前のフライパンから聞こえる、ジュージューというお肉が焼けるいい音。
いい音ね、そろそろ焼けたかな?

「静馬く〜ん、お肉焼けたから、お皿持ってきて〜」

 料理の邪魔だからと、テレビの前に座らせておいた静馬君にお皿を用意してもらう。 
ん〜、いいにお〜い。よく考えたらアタシもお肉、久しぶりなのよね〜。
カルビにハラミにホルモン。レバーも買って来たし……2人で食べるにはちょっと買いすぎたか
な?
いい匂いを嗅いで、お腹が自己主張を始めそうになった時、静馬君がお皿を持ってきてくれ
た。
うふふふふ、こういうのってなんだかいいわね、新婚時代を思い出すわ。
……ってあんな浮気者との生活を思い出すって何考えてるのよ!

「麗菜さん、この皿でいいですか?」
「ん?ちょっと小さいけど、仕方ないかな?普通、男の一人暮らしじゃ大きな皿なんてないだろ
うしね」
「ぐっ……大きな皿、用意してなくてすみません。今度、買って来ます!」
「あははは、わざわざ買わなくてもいいわよ。小さくても何皿も使えばそれで済む話なんだか
ら。それより、次はお野菜を焼くわね?すぐ焼くからタレの用意をして待っててね」

 お肉の後は、お野菜を焼く。
キャベツは生で食べるからいいとして、たまねぎとピーマン、茄子は焼かなきゃね。

「麗菜さん、オレ、たまねぎはあまり得意じゃないんですよ」
「ダメよ!好き嫌いは許しませ〜ん!という訳で、静馬君には特別に買ってきたたまねぎ全部
食べさせちゃう!」
「ひ、ひでえ!そんなたまねぎばっかり食えないっすよ!」

 アタシの冗談に、真っ赤な顔で抗議して来る静馬君。
……ぷっ!あっははは!冗談を本気にしてるんだ?ホント静馬君ってカワイイなぁ。

「あははは!冗談よ、冗談。静馬君ってからかうとカワイイ反応するからつい、からかいたくな
っちゃうのよね」
「ひ、ひでえ!ホントに全部食わされるのかと思いましたよ!」
「はいはい、お野菜も焼けたから、食べるわよ。お肉、冷めちゃうからね」

 小さなお皿に焼けたお野菜を盛り付けて、準備完了!
両手にお皿を持ち、小さなテーブルに運ぶ。

「じゃあ頂きましょうか?」
「うおおお!美味そうだ……頂きます!」

 ガツガツとお肉を口に運ぶ静馬君。
ホント、美味しそうに食べるわね。見てるだけでお腹が一杯になっちゃいそうだわ。

「静馬君、お肉ばかりじゃなく、お野菜も食べなきゃ。はい、たまねぎ取ってあげるね」

 たまねぎを静馬君のお皿に持って行くとヘンな顔をされた。
あははは!たまねぎ、そんなにキライなんだ?顔、ヘンな感じになってるよ?

「れ、麗菜さん、たまねぎにはちょっと嫌な思い出があって……」
「たまねぎに嫌な思い出って珍しいね?興味あるなぁ、どんな事があったの?」

 興味あるなぁ……君の昔の話。君がどんな子だったのか、知りたいなぁ。



「昔、隣に住んでる子にお料理作ってあげるって、ハンバーグ食わされたんですよ。
……火がちっとも通ってない、厚切りたまねぎたっぷりの生焼け手作りハンバーグをね。
おかげで腹壊してしばらく寝込んでしまったんですよ。
たまねぎと聞いたら、あの生焼けのハンバーグを思い出して……
シャリシャリとした、生焼けたまねぎの食感を思い出して……苦手なんですよねぇ」

 生焼けのハンバーグ?それがたまねぎが苦手になったトラウマだって言うの?そんなこと
で?
……隣の子?それって誰よ?もしかして昔に付き合ってた女の子なの?

「だったら今度、手作りハンバーグを作ってあげるわよ。それでたまねぎ嫌いも治るでしょ?」
「ええ?い、いいんですか?」
「いいもなにも……君ねぇ、アタシは君の彼女なんだよ?
彼氏に手料理を作ってあげたいって思うのは当たり前じゃないの」
「あ、ありがとうございます!」
「きゃ!ちょっと急に大声出さないでよ!ビックリしちゃうじゃないの!
ところでさ……その隣の子ってのはどんな子だったの?」

 感動したのか、頬を赤く染め、大声でお礼を言う静馬君。
ちょっと!声大きすぎるわよ!……そこまで喜んでくれるんだぁ、嬉しいなぁ。
ところでその隣の子っていうのが気になるわね。どんな子なの?

「へ?彩ですか?そうですねぇ……ちょっと素直じゃないけど、いい子ですよ」

 彩?それが静馬君の昔の彼女な訳ね?
……あれ?確か静馬君って今まで誰とも付き合ったことがなかったよね?

「ふ、ふぅ〜ん……その幼馴染に手料理作ってもらえるような関係だったんだ?」
「あれは手料理というか、実験台にされたようなものですよ。
今ではオレのおふくろに料理を習ってるとか言ってましたけど、上達してるのかも妖しいです
ね」

 んな!お、親公認なわけ?静馬君にそんな女の子がいるの?
じゃあアタシは一体なんなのよ!

「そ、その彩って子、静馬君とどういう関係なのかな?お姉さん、ちょっと気になっちゃうなぁ?」

 怒りで震える手を押さえつけ、冷静なフリして聞いてみる。
もし彼女だったりしたら、ぶっ殺すからね!……本気でね。

「どういう関係もなにも、オレが中3の時、隣に彩が引越して来たんですよ。
で、引っ越して来たばかりで友達がいなかった彩の遊び相手になってやってたんです。
今では友達も増えて明るくなったんですけど、昔は引っ込み思案で暗くて、大変だったんです
よ」
「ふ、ふぅ〜ん、そうなんだぁ?で、そんな彩って子のことが今でも気になると?」
「そうなんですよねぇ。心配だから毎日電話してるんですよ」

 で、電話?毎日してるの?ちょっと静馬君!アタシにはしないくせに、なんでその女にはする
のよ!

「アイツ、今年から中学に通ってるんですけど、同級生を怪我させてないか心配なんですよ」
「な、なんで毎日電話するの?ちょっとヘンじゃないかなぁ?お姉さん、ヘンだと思うなぁ?
……今年から中学生?ええ?じゃあその彩って子、今は……12歳なの?」
「そうですよ、オレより6つ下ですからね。もうすぐ13になるかな?でもそれがどうしたんです
か?」

 はぁぁ〜、なぁんだ、アタシの勘違いかぁ。
てっきり同い年くらいの女の子が静馬君の地元で待ってるのかと思ったわ。
6つも年下だったら、妹みたいなものね。はぁぁぁ〜、驚いたなぁ。

「そ、そうかぁ……そうなんだぁ。アタシはてっきり静馬君が囲ってる女かと思ったわよ」
「囲うってなんですか!彩は妹みたいなもんですよ」
「はいはい、分かったわよ。それよりさ、早く食べちゃおうよ。お肉、もう冷めちゃってるかもしれ
ないけどね」
「そうっすね、では、いただきます!」
「たくさん食べて、精力つけてね」
「はい!たくさん食います!精力つけます!」

 どうやらアタシの勘違いのようね。
そうよね、静馬君が二股とかそんな器用なこと出来る訳ないわよね?気の回しすぎよね? 
……精力つけての意味、分かってるのかな?



 美味しいお肉を食べた後、後片付けを終え、シャワーを借りる。
いざという時に、髪にお肉の匂いが残ってたらヤダからね。……そろそろ勝負をかけなきゃい
けないわね。
ドキドキしながら今日の為に買ってきた下着を身に着ける。
鏡に映る下着姿の自分をチェックする。……うん、なかなかセクシーね。
こんな下着、初夜の時くらいしか着たことなかったなぁ。
あの時はアイツ、大喜びだったなぁ。静馬君も男だから喜んでくれるよね?
あとは、と。Tシャツとホットパンツを着て、露出を多くして、と。
よし、これでだったらいくら静馬君でもドキドキするでしょ?
この格好でお酒で酔って迫ったら、いくら静馬君でも……ゴクリ。
おし!気合を入れて、静馬君を誘惑するぞ!
……気合を入れなきゃいけないってのはどうなんだろうね?

「静馬君、お風呂いただいたわよ〜」

 気合を入れてシャワー室から出て、静馬君に声をかける。
静馬君はテーブルの上にビールやおつまみを並べてアタシが出てくるのを待っていた。
どう?静馬君、アタシのこの姿、グッと来ない?

「麗菜さん風呂上りのビールでもどうぞ」

 缶ビールを手渡しながらも、視線をチラチラ足に向ける静馬君。
んっふっふっふ、どうやら効果はテキメンのようね! 

「ありがと。静馬君、お風呂はこまめに掃除しなきゃダメだよ?カビ、生えてたから掃除してお
いたわよ」
「す、すみません。めんどくさくてついサボっちゃいました」
「まったく……これだから男の一人暮らしの部屋は汚いのよねぇ。
よし!これからは時々掃除しに来てあげるわね?」
「えええ!い、いいんですか?あ、ありがとうございます!」

 おし!これで部屋に来る理由も出来たわ。
あとは、どうえっちな雰囲気に持っていくかなんだけど、どうしよう?
……少しお酒の力、借りちゃおうかな?
いくらアタシが年上でも、自分から誘うってのは恥ずかしいもんね。

「じゃあビール頂きましょか?……2人での初めての夜に、かんぱーい!」

 缶ビールを合わせ、乾杯する。乾杯の後、美味しそうに一気にビールを飲み干す静馬君。
あれ?乾杯の時にアタシ、『2人での初めての夜に』って言ったわよね?
なんで意識しないの?ねぇ静馬君、少しは意識しようよ。

「あ〜、美味い!この間、初めて飲むまではビールがこんなに美味いとは知りませんでしたよ」
「そ、そうね。特にお風呂上りのビールは美味しいわよね」
「あ、そうだ!麗菜さん、オレ、いいビデオ持ってるんですけど、一緒に見ませんか?」

 おお?これは静馬君からのアピールなのかな?
恋愛ビデオを見て、気持ちを盛り上げ、そのままの流れで……うん!
初めてするえっちには申し分のない展開ね!

「うん、いいわね、ゆっくり出来そうだね。さっそく見ようよ」
「これはレアなビデオですよ〜。なんせ田上と川田が前座で戦ってるビデオですから」

 まずは静馬君の横に座って身体を密着させてよう。
で、映画が進んできたら、肩に頭をちょこんと乗せて、ドキドキさせちゃおう。
静馬君、肩を抱いてきたりしないかな?
盛り上がってきたら少し目を潤ませて、下から見つめて……
……田上?川田?戦ってる?え?それって何?
頭が混乱してるアタシに嬉しそうな顔でビデオを見せる静馬君。
それって恋愛映画なんでしょ?そうよね?ねね?

「じゃじゃ〜ん!オレ編集の秘蔵のビデオ!『全日本プロレス中継 ザ・ベスト!第6巻』です!
これを見たら興奮して今夜は眠れなくなりますよ?」

 …………マジで?



「静馬君!君はねぇ、もう少し女の子の気持ちというものをだねぇ、考えなきゃいけないんだよ
ぉ?」
「ちょっと麗菜さん、飲みすぎですよ!おわ!ちょっと重たいって!」
「こらぁ!女の子に重いとか言うのはダメ!年齢と体重の話は絶対禁止ぃ!」
「分かりましたから、乗っからないで下さいっての!」

 晩飯で焼き肉をたらふく食った後、風呂に入り、湯上りの麗菜さんとビールを飲む。
こんな至福の一時を過ごせることができるなんて、思いもしなかった。
あぁ、幸せだ。カワイイ彼女とうまい肉を食ってプロレスビデオを見ながらビールを飲む。
あぁ、ホントに幸せだ。……彼女が酔っ払いになっていなければ、だけどな。
麗菜さんはビールを4本も飲んで、かなり酔っ払っている。
今はオレの背中に乗っかってきて、後ろから首に抱きついてきてる。
こんな麗菜さん、初めてだ。
麗菜さん、オレより年上なのにカワイイよなぁ。……背中に当る胸の感触がたまらんな。
池田と麗菜さんをどっちが口説き落とすか争っている時には、
麗菜さんとこんな風に出来るとは思いもしなかったな。
池田……アイツ、まだオレと口を利いてくれない。
麗菜さんと付き合うことになった時、アイツに報告をしたんだ。
オレが麗菜さんと付き合うことになったと聞いたアイツは、顔を真っ赤に染めてオレを罵りだし
た。

『この裏切り者!俺を生け贄にして麗姉さんを物にしたのか?卑怯者!お前とは絶交だ!』
ってな。

 それ以来アイツとは口を利いていない。職場で話しかけても無視されている。
……キツイよなぁ。せっかくツレになれたと思ったのにな。
でもオレがアイツの立場ならそうしてたかもな。
酒に酔った麗菜さんを連れて帰り、気を引いたんだからな。
……生け贄ってなんなんだろうな?

「だいたいねぇ。初めてねぇ。泊まりにねぇ。来たねぇ。カワイイねぇ。彼女にねぇ……」

 池田の事を考えていたオレを、飲みすぎたせいで眠いのか、フラフラしながら説教する麗菜さ
ん。
時折オレの首筋に噛み付いてきたり、シャツの中に手を入れてくる。
胸が苦しいって言い出して、ブラジャーも脱いじまったし……黒のブラジャーなんてつけてるん
だ。
このブラジャーどうすればいいんだ?とりあえずは……麗菜さんの鞄に入れておくか?
しかし麗菜さん、完璧な酔っ払いだな。いったいどうしたんだ?なんでこんなに飲んじまったん
だ?
……そうか!熱いプロレスビデオが面白くて、ついつい飲んじゃったんだな?
熱い戦いに血が騒ぎ、つい飲みすぎちまったんだな?

「麗菜さん、もう今日は寝ましょうか?ちょっと飲みすぎですよ。
プロレスのビデオなら貸しますから、家でゆっくり見てくださいよ」

 新日でも貸すかな?タイガーマスク特集のほうがいいか?

「……はぁぁぁ〜、もういいわ。なんかやる気が失せちゃった、もう寝るわ」

 首筋にかじりついていた麗菜さん、急に冷めた声でオレから離れた。
あれ?麗菜さん、さっきまで酔っ払ってたよな?
なんでそんな冷静な声で話せるんだ?冷静というか、冷たいというか……怒ってるような気が
する。

「れ、麗菜さん?なんか怒ってませんか?」
「怒ってる?怒ってるわよ!怒ってるに決まってるでしょ!」

 えええ?な、なんで怒ってるんだ?っていうか、麗菜さん、酔っ払ってたんじゃないの? 

「君ねぇ、今夜は2人だけで初めて過ごす、記念すべき日なんだよ?
それを……なんでプロレスなんか見せられて、語られなきゃいけないの?
君がカッコイイのに全然モテなかった理由、やっと分かったわ」
「いや、ちょっと麗菜さん、急にどうしたんですか?」
「アタシがどんな覚悟で今日、泊まりに来たか考えた事あるの?
女の子が男の部屋に泊まりに行くってことは、どういうことか考えた事があるの?」
「い、いや、まったくないです。今まで生きてきて一度もないです」
「なんでないのよ!」
「いや、だって……モテなかったから」

 オレ、なんで説教されてるんだ?オレ、なんで泣きそうになってるんだ?
まさか、麗菜さん……新日派だったのか?猪木信者なのか?
猪木信者じゃないのかと疑っているオレの胸倉を掴み、顔を近づける麗菜さん。
す、すみません!なんでか分からないけど、ゴメンなさい!

「いい!静馬君!女の子が泊まりに来るってことはね……こういうことよ!」

 麗菜さんのあまりの迫力に、『殴られる!』そう思ったオレは、目を瞑り、歯を食いしばった。
しかし、歯を食いしばった瞬間、唇に柔らかい物があたり、オレの口をふさぐ。
なんで手で口を塞ぐんだ?まさか……窒息死させるつもりなのか?
そう思い、慌てて目を開けると、そこには麗菜さんのドアップの顔があった。

「ん……んん。少しは分かった?アタシがどういう覚悟で泊まりに来たか。
本来なら君からしなきゃいけない……静馬君?ねぇ聞いてるの?」

 頬を赤く染めた麗菜さんが、人差し指と中指で唇を触りながらオレを見ている。
い、今のは……今のはまさか……今のはまさか!

「れ、れれ麗菜さん?今のはまさか……その、間違ってたらすいませんけど、まさか……」
「そう、キスよ。今、アタシと静馬君は初めてキスをしたの」
「キ、キス?……お…おわわっわああああっわあ〜!!」

 い、今のがキス?さっきのがキス?あの柔らかい感触が麗菜さんの唇だったのか?

「す、すんませんでした!悪気はなかったんです!許してください!ゴメンなさい!」
「ちょ、ちょっと静馬君?君、なんで土下座してるの?」
「オレ、そんなつもりなかったんです!ワザとじゃないんです!オレ、ワザとじゃないんですぅぅ
〜!」
「こらぁ!静馬君、落ち着けぇ〜!」
「で、でも、でもオレ……麗菜さんにキスしちゃったし」
「君がしたんじゃなくて、アタシがしたの!……キスでこれかぁ。これじゃSEXは当分無理かな
ぁ」

 え?い、今、麗菜さんの口からとんでもない単語が出なかったか?

「れ、れれ、麗菜さん?今なにかとんでもない事を言いませんでしたか?」
「言ったわよ。君とSEXするのは当分無理かなぁってね」
「セ、セセセセ、セックスぅ?そ、それって、アレですか?あのセックスですか!」
「SEXに『あの』も『その』もないでしょ?ねぇ静馬君……アタシとSEXしたい?」

 ……ゴクリ。こ、これは……ドッキリカメラ?いつの間にカメラを仕掛けたんだ?
いや、オレのような小市民にドッキリを仕掛けても意味が無い。
という事は……麗菜さん、本気で言っているのか?

「は、はい!したいです!麗菜さんと……セックスしたいです!」

 お……うおおおおおおお〜〜!!!!
オレにも!オレにもついに卒業の季節が来た!
生まれてからの付き合いだった、ヤツとも今日で卒業なんだぁぁぁ〜!
さらば童貞!さようならチェリーボーイ!

「そう、君もアタシとしたいんだ?そう思ってね、コンドーム、買って来てるの。
君は用意してないと思ってね。ねぇ静馬君、コンドームの使い方、分かる?」
「いえ!全然分かりません!物さえも触った事すらありません!」
「そうなの?さすがは童貞なだけはあるわね。これ、あげるからしっかり勉強してね?」

 麗菜さんは妖しく微笑み、お泊りセットが入っている鞄の中から小さな箱を取り出す。
そしてその小さな箱を、オレに手渡す。
オレはツバを飲み込みながら、箱に書いている説明を見てみる。なになに……


『ダブルゼリー加工!!最終兵器うっすうっす1500!めちゃくちゃ薄い!!
薄いくせに、避妊は確実!老舗メーカーの成せる職人ワザ!

【ここに注目!】

●秘密兵器うっすうっす1000よりも、薄い!! ●すぐれたフィット感のラテックス製 
●分かりやすい表、裏のはっきり表示 ●ラテックスゴムと特殊ゼリー加工 
●ナチュラルタイプ ●ゴム臭もカット! ●ダブルゼリー加工……』


 読んでみても意味はよく分からないが……とりあえず薄いという事は分かった。
やはり薄いと感触が違うのか?……オレ、うまく着けれるのか?

「うふふふふ……ねぇ静馬君、今すぐSEXしたい?」
「は、はい!したいです!今すぐしたいです!」

 胸の前で腕を組み、胸を二の腕で挟み、胸を強調する麗菜さん。
お、おおおお!この胸に顔を埋める事が出来るのか!
チクショウ!最高だ!恋人サイコー!彼女がいるって素晴らしい!

「そう、静馬君、君はアタシとSEXしたいんだ?でもね?……絶対にしないから」
「れ、麗菜さん!オレ、初めてだから何にも分からないんですけど、セックスってどう始めれば
いいんですかね?」
「始めるも何も……今日、君とはしないから」
「やっぱりこう、電気を消して雰囲気を盛り上げて……え?い、今、なんて言いました?」

 興奮してて聞き間違えたのかな?今、君とはしないって言ったような?
いやいやいや!そんな訳ない!あるはずがない!
だって麗菜さん、コンドームまで持ってきてるんだぞ?やる気満々じゃないか!

「聞こえなかったの?じゃあもう一度言ってあげるわね?
今日……君とは……ぜっっったいにSEXをしないって言ったのよ!」

『バチン!』
 
 頬に走る衝撃!え?ええ?なんでビンタされたんだ?
……えええ?絶対にセックスしない?ええええ!な、なんだってぇぇぇ〜?

「な、なんで叩いたんすか?ねぇなんで?」
「君が女の子の気持ち、分かってないからよ!」
「ど、どういうことっすか!」
「どうもこうも……なんで初めて泊まりに来た彼女にプロレスなんて見せるのよ!
そこは恋愛映画でしょうが!」 

 『バシーン!』
 
 二発目のビンタが顎を捉える。
ぐお!脳が揺れるぜ!麗菜さん、いい張り手もってるな。

「抱きつこうが、ブラを外して胸を押し付けようが、なんで誘いに乗らないのよ!」
 
 『バシバシーン!』

 往復ビンタが両顎を的確に捉え、脳を激しく揺する。
うおをを!さすがは麗菜さん!いい打撃だ!程よく脳が揺れるぜ!

「はぁはぁはぁ……ねぇ静馬君。君、アタシのことどう思ってるの?
アタシのこと、好きじゃないの?愛してないの?アタシが……欲しくないの?」
「ほ、欲しいってどういうことですか?」
「アタシとSEXしたくないのかってことよ!で、どうなの?アタシとしたいの?したくないの?」
「し、したいっす!メチャクチャしたいです!」
「そ、したいんだ?君はアタシとSEXしたいんだ?アタシもしたいと思ってた。でもね?
……してあげない」

 胸を揉みながら唇を舐め、オレを見つめる麗菜さん。
す、すげえ色っぽい……普段の麗菜さんからは想像出来ない色っぽさだ。
やっぱりオレより年上なだけはある。……やっぱ色んな経験あるんだろうなぁ。
……なんでダメなんですか!そこまでしといてダメってなんなんすか!

「そこまでしといてダメってなんですか!」
「恋人同士がケンカした時にはね、仲直りするのに一番手っ取り早いのがSEXなの。
アタシと仲直りしたい?静馬君、アタシとSEXしたい?」
「したいっす!メチャクチャしたい!今すぐしたいです!」
「うふふふふ……誰がさせるか!女の子の気持ちが全然分からない君は、一晩中悶々としと
きなさい!」

 アッカンベーっと舌を出し、ベッドにもぐりこむ麗菜さん。
いたいけな童貞をからかうなんてヒドイ!酷すぎるわ!

「ひ、ひでえ!酷すぎる!」
「うるさいなぁ〜。寝れないでしょ?ねぇ静馬君、一緒に寝たい?
アタシと一緒のベッドで寝てみたい?」
「ね、寝たいっす!麗菜さんと一緒に寝たいっす!」
「うふふふふ……誰が寝るか!君は一人で床で寝てなさい!天罰よ!」
「ひでえ!酷すぎる!ヒドイを通り越して残酷すぎる!」
「うるさいなぁ、黙って寝なさい!黙らないと……口を封じるわよ」
「く、口を封じる?な、なんすかそれ!なんでそんなおっかないこと言うんですか!」
「あああ〜!う・る・さ・いぃぃ〜!うるさいのはこの口か!」

 ベッドから飛び起きた麗菜さん、オレの口を両手でグイグイ引っ張る。
痛いっす!麗菜さん、マジで痛いです!

「こんなうるさい口は……塞いであげるわ」

 ちゅ……口から手を離し、オレの首に両手を回して抱きついてきた麗菜さん。
そして、唇に感じる甘い感触。あぁ、キスって気持ちいいんだ、こんなにもいいものだったんだ。

「ねぇ静馬君、アタシとSEXしたい?」
「は、はい!オレ、麗菜さんとしたいです!」

 ちゅ……再度唇に感じる甘い温もり。オレも麗菜さんをギュっと抱きしめる。

「アタシのこと……好き?」
「はい、好きです」

 ちゅ……見つめあい、抱きしめあいながら唇を合わせる。
あぁ、最高だ。麗菜さんとこんなキスが出来るなんて、生きててよかったぁ〜。

「愛してる?」
「愛してます。オレは守屋麗菜を愛してます」 

 ちゅちゅ、ちゅ……ついばむ様なキス。
お互いを強く抱きしめあい、唇を求めあう。……これはかなりいい雰囲気だ。
このままの流れで一気に……卒業かぁ?

「アタシも好きよ、愛してる。アタシも君とSEXしたいわ。
でも今日はね……ぜっったいにさせない!」

 ……ひ、ひでえぇぇぇ〜!
 


「ふんふふふ〜ん」
「どうしたんだい?守屋ちゃん、えらくご機嫌だねぇ。あぁ、そうかいそうかい、うまくいったん
だ?」
「んふふふふ……それは秘密で〜す!」

 連休も終わり、今日からまた休みナシの連勤が始まる。
いつもは憂鬱な気持ちだけど、今日はちょっと違う。
職場で連休中のことを思い出し、少しにやけちゃう。たまにはいいよね?
んふふふふ……静馬君、血の涙を流しそうな顔してたなぁ。ちょっとイジワルしすぎたかな? 
でも、静馬君、鍛えてるだけあってすごい身体してたなぁ。ギュッと抱きしめられちゃったんだよ
ね?
さすがにキスだけってのは可哀想だったかな?
いちおう枕の下にはコンドームを隠しておいたんだけど、静馬君、真面目だから襲ってこなかっ
たんだよね。
まぁたくさんキスできたからいいかな?たくさんキスしたからえっちしなくても満足しちゃったし
ね。
んへへへへ……久しぶりのキスだったなぁ、気持ちよかったなぁ。
静馬君、ビックリしてたなぁ……急に大人の雰囲気で迫ったからビックリしたかな?
でも、ああいう大人の演技は疲れるなぁ。慣れないことはするもんじゃないわね。
でも静馬君、真っ赤な顔でアタシを見てたなぁ……可愛かったなぁ。……デヘヘヘヘ。

「……んへへへへへ」
「あらあら、締まりのない顔しちゃって。守屋ちゃん、仕事中は思い出すのはダメだよぉ。
じゃないとおばさんも直ちゃんとのことを思い出しちゃうじゃないのぉ……ぐへへへへ」

 不気味の笑う毛利さん。……一気に冷めたわ。直樹君、いったい何されたんだろうね?
そんな事より静馬君、今日は来ないのかなぁ?やっぱりちょっと苛めすぎちゃったかな?
静馬君の歳でオアズケ喰らっちゃったらたまらないわよね?
……今度こそ、アタシとSEXしようと誘ってくるかな?
いい雰囲気になったら許しちゃおうかな?
……っていうか、いい雰囲気にしないと引っ叩いてやるわ!

『来たきたキター!578番台!本日16回目のラッキーフィーバー!おめでとうございます!』

 あっといけないいけない!仕事しなきゃ!接客はいつもニコニコ爽やかに!
せっかく打ちに来てくださってるんだから、少しでも楽しんでもらわなきゃね!

「お客様、フィーバースタートおめでとうございます!」

 ニコニコと微笑み、ドル箱を交換する。
あぁ、重いなぁ……静馬君なら軽々持ち上げちゃうだろうなぁ。腕、硬かったなぁ。
静馬君、今日は来てくれないのかな?……会いたいなぁ。顔を見たいなぁ。

 重いドル箱を持ち上げながら思い浮かべる静馬君の顔。
はぁぁ〜。今度2人でゆっくり出来るのは、いつなんだろうね?
……今度こそ、ね。静馬君、今度は期待してるからね?
アタシをその気にさせてよね?……プロレスビデオは許さないからね。





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