「お帰り、修太。さっさと着替えてアンタも配送を手伝って……おや?その子は誰なんだい?
……アンタ、まさか何かやったのかい!」

 何かやった?何かやったとは、なんのことだろうか?
お米屋さんの店番をしている人の良さそうなおばさん。この人がバカの母親なのだろうか?

「別になにもやってないって!コイツにはちょっと勉強を教えてもらおうと思ってさ。
オレ、これから勉強するから店の手伝いはできないぞ」
「……は?ア、アンタが勉強?…………あ、あなた〜!修太が!修太がぁぁ〜!」
「……お前が勉強すると天変地異でも起こるのか?それほどの驚きと衝撃を受けていたな」

 学校帰り、約束通りにバカの家へと来た。
さっさと長宗我部元親について教えて、ゲーム機を借りなければ。
……弟達の喜ぶ顔が目に浮かぶようだ。フフフフ、私はとてもいい姉をしているな。
そのバカはお米屋さんの店番をしていたおばさんに、
これから勉強をすると言って驚かせている。
わが子が勉強をするのを驚く母親とは……お前は親からも認められているバカなのか?

「まったく何だってんだよ……かわいい息子が勉強するって言ったくらいで、なんで大騒ぎする
んだ?」
「それはお前がバカだからだろう」
「うるせえ!バカがどうした!あぁ、そうさ!オレはバカだ!バカで悪いか!」

 開き直ったのか、堂々と胸を張り、誇らしげな顔をするバカ。
お前はやはりバカだ。バカといわれて胸を張れるのはバカしかいないだろう。

「胸を張って言う事ではないと思うのだが?まぁいい。さっさと用件を済ませ、ゲーム機を貸す
んだ」
「分かったよ!勉強場所はオレの部屋でいいか?」
「ああ、かまわない。……ところでお前の家というのはここでいいのか?
まさかとは思うが、家を間違ってたりはしないのか?」
「家を間違うって……お前、オレの事をどんだけバカだと思ってるんだ?」

 バカの家を見上げてみる。
壁には少しくすんだ看板が張り出しており、『結城米穀店』と書かれている。
先ほど、バカの勉強発言に驚いたおばさんが、
車体に『結城米穀店』と書かれた軽トラックへお米を積んでいるおじさんのところで騒いでい
る。 
なるほど。あれがこの店の主人か。……ということはこのバカの父親という訳だな?

「お前の家はお米屋さんだったのか」
「そうだ、オレは未来の米屋の社長なんだぜ!」

  新鮮な驚きでバカを見る。どうだ、恐れ入ったかと言いたげな誇らしげな顔をしている。
私にそのような顔をされても困るのだが?

「そうか、ならこの店も長くは続かないな」
「それってどういう意味だよ!」
「こら!修太!お前、勉強するなんてウソをついてなにするつもりだ!
父さんはな、お前がウソをつかない素直な子に育ってる事だけが自慢だったんだ!
それをこんなに綺麗な子を騙して……お前を殺して父さんも死ぬ!」
「ちょ、オヤジ!勘違い……ぐは!」

 『ゴキン!』とバカの顎に入る見事なパンチ。
倒れこんだバカをトドメとばかりに踏みつけるおじさん。
……これはいったいなんなんだろう?
何故勉強をするというだけで、殺人事件が起こりそうになっているんだ?

「アンタ達だけを死なせやしないよ!3人仲良くあの世で暮らすのよ〜!」

 顎にパンチを受け、ピクピクと痙攣しているバカに追い打ちをかけるおばさん。
……何故一家心中に巻き込まれなければいけないのだろうか? 



「いやぁ〜、お恥ずかしいところを見せてしまって申し訳ない。島津さん、でしたっけ?
わざわざ勉強を教えに来てくれるなんて……どうもありがとう!」

 大きくてゴツゴツした手で私の手を掴み、ブンブンと握手をしてくるおじさん。
その手はとても大きくて、力仕事をしている男といった手をしている。

「……グスッ。人間頑張って生きてるもんだねぇ。
あの修太が……自分から物を教えてくれなんて言い出すんだからねぇ。……グスッ」

 大きな目いっぱいに涙を溜めて、ひたすら頭を下げるおばさん。
こ、こうまで感謝されると少し悪い気がする。
勉強といえば勉強なのだろうが、学校の授業とは何の関係もない、戦国時代の武将の話をし
に来ただけだ。
それもゲーム機目当てで教えるだけなのに……なんだか申し訳ないな。

「このバカ息子が勉強するなんて……まるで夢みたいだ」
「あんたぁ、今までコツコツと真面目に働いててよかったね。
きっと神様がくれたご褒美なんだよ」
「あぁ、本当だな。……人間、一生懸命額に汗掻いて働くもんだな。
こんなにも嬉しい事があるなんて……生きててよかった」
「その、大変言いづらいのですが……当の結城君が気絶をしていて、勉強を教えるも何も出来
ないのだが?」

 感動に浸っているおじさんとおばさんの隣で寝かされたまま、ピクリともしないバカ。
おじさん達、もしかしたら本気で殺すつもりだったのではないか?

「……このバカ息子が!肝心な時にいつもこれだ!」
「ホントにねぇ、いっつもこんなで困ってるんですよ。学校でもこうなんでしょ?ねぇ島津さん?」
「いや、それはまぁ、なんと言うか……」

 こういう時はどう答えればいいのだ?
まさか『貴方達の息子は学校でもこうです』とでも言えとでもいうのか?
さすがに実の親に対してそんな事は言えない、言えるわけがない。
いったいどうすればいいのだろう?

「おっと、こうしてる場合じゃなかった。母さん、ちょっと配達に行ってくるから店を頼むな」
「あなた、事故だけはしないように気をつけてね」
「おう!安全運転でいくから心配すんな!
じゃあ島津さん、バカ息子ですがよろしくお願いします」

 おじさんは私にそう言い残し、頭を下げて出て行った。
先ほどの軽トラックでお米の配達に行くのだろう。
……お米屋さんのお米というのは、やはりスーパーで買うよりも高いのだろうか?
美味しさは変わらないのだろうか?気になるな、いったいどうなんだろう?
 
「じゃあ島津さん、おばさんは店番するからゆっくりとしててね」
「いや、ゆっくりも何も……私も店番を手伝います。
このままでいても何もすることがなさそうですので」
「あら、そう?悪いわねぇ。じゃあ今日はバイトってことでお願いしようかしらねぇ。
少ないけど、お給料も出させてもらうわね」

 お、お給料?まさかお金をもらえるのか?
ということは、夕飯のおかずを一品増やせるのではないか?

「よ、よろしくお願いします!」
「こちらこそよろしくね?島津さん」

 よし!今夜の御飯は鳥のから揚げを追加だ!
弟達の大好物だからな、喜ぶ顔が目に浮かぶ。……本当に私はいい姉だな。



「ねぇ島津さん。昨日結城の家に行ったんでしょ?ヘンな事されなかった?」
「ねぇねぇ島津っち。昨日は大丈夫だった?イタズラされたりしなかった?」

 朝、登校すると、クラスメートに囲まれた。
最近は毎日囲まれているような気がする……何故私を囲むのだろうか?
もしかして皆、ヒマなのか?

「ヘンな事とはいったい何のことだろうか?
昨日はアクシデントがあり、バカは気絶したままだったんだ。
だからバカの家でアルバイトというものを初めてすることになった。
働いて得たお金は、有難みが違うのだな。夕御飯のおかずを増やすつもりだったのだが、使う
ことが出来なかった」
「イタズラ?先ほども言ったように、バカはアクシデントで気絶したままだった。
だからアイツは何もしてないし、おかげで私は何も教えることが出来なかった。
しかしアルバイトでお金ももらえたし、おじさんが目的の物を譲ってくれたしで結果としては大満
足だったな」

 そう、バカから借りる予定だったゲーム機をおじさんが譲ってくれた。
お金の出入りの計算をしただけなのに、すごく感謝された。
おまけに『お米はウチの店で買いなさい。島津さんには儲け度外視で売ってあげるよ』とまで言
ってくれた。……なんていい人なんだ。

「島津っち、目的の物って?なに貰ったの?もしかしてブランド物のバッグとか?
わわ!いいなぁ島津っち。アタシもバッグがほし〜い!」
「アクシデントって……島津っち。女の子がキックとかするのってあまりよくないんだよ?」

 何かを勘違いしているクラスメート達。
ブランド物のバッグなど、欲しいと思ったことは一度もない。
持っていたとしても値段が高すぎて緊張して使えないのではないか?
……何故私が蹴り飛ばしたと思われているのだろう? 

「ブランド物のバッグは欲しいとは思わない。
そんなお金があるのなら、パパやママに弟達、家族みんなで美味しいものを食べたいものだ」
「わ、私が気絶させたのではない!おじさんが気絶させたんだ!
……何故そうしたのだろう?原因はよく分からないな」

 そういえばおじさんは何故殺そうとしたのだろう?
各家庭には色々な事情があるものだ。昨日の一件もその家庭の事情の為なのだろうか?
自分の子供を殺そうとするとは、よほどの事情なのだろうな。

「島津っちっていい子だねぇ。いいお母さんになりそうだねぇ」
「ホントだねぇ。アタシが男だったら結婚したい女子NO,1だね!」
「そそ、料理は出来るし、頭もいいし。性格も素直でいい子だし……美味しそうないい身体をし
てるしね」

 身体が美味しそう?どういう意味なんだ?
ま、まさか……今朝作ったお弁当のおかずの匂いが染み付いているのか?
制服を着たまま調理したからついてしまったのか?
クラスメートからの指摘が気になって、クンクンと制服の匂いを嗅いでみる。
……微かにから揚げのいい匂いがする気がする。
しかしこんなに微かな匂いに気づくとは……やはりみんなもから揚げが大好きなんだな。

「……ぷっ!あはははは!やっぱり島津っちってサイコーだよ!」
「そうかそうか、島津さんからは美味しい匂いがするんだ?アタシ達にも嗅がせてよ!」

 そう言って抱きついてきたクラスメート達。
髪の匂いを嗅いだり、腕の匂いをかいだり好き勝手にされている。
好き勝手にされているのだが……そんなに嫌な気はしない。何故だ?

「島津はいるかぁ〜!オレのゲーム返せ〜!……ってお前ら何してるんだ?」
「あ、結城おはよ〜。島津さんからは美味しい匂いが出てるという仮説が発表されたんで、調
べてるの」
「へぇ〜、そうなのか?どうせカレーの匂いじゃないのか?どれ、オレにも嗅がせてくれよ」

 騒がしく教室に入ってきたバカは、クラスメートの言葉を真に受けて、私の髪を持ち、匂いを
嗅ごうとしている。
その瞬間、胸がドキリとした。な、なんだ?この感覚はなんなのだ?
……に、匂いを嗅ぐだと?キサマ、勝手に触るな!何をする〜!

 ヒュン!グチャ!……ドサッ。

「あ、あのさぁ島津っち。さっきも言ったけど、女の子がキックを使うのってとってもまずいと思う
よ?」
「そ、そうだね。同級生が泡を吹いて倒れるくらいのキックを蹴れるのはすごいけど、ダメだと
思うよ?」
「それよりさ、今日の下着はピンクなんだね。カワイイ色もなかなか似合ってるね」

 ……しまった!また下着を見られてしまった!
キックはやめてパンチにしようと決めていたのに……反省しなければいけないな。

「そ、その……下着の事はあまり口外しないでほしい。その……とても恥ずかしいんだ」
「……カワイイ!照れて真っ赤な顔してる島津っち、カワイイ!」
「島津っち、ちょっと食べてもいい?もう食べちゃいたい!」

 うわ!何故噛み付くんだ?ちょっとみんな、噛まないで!私は食べても美味しくない!



「で、なんでお前がまた家に来るんだ?」
「昨日は勉強を教える事ができなかった。
それなのにゲーム機を貰ったら約束を違える事になってしまう。
だから今日教えに来たんだ。……それにそろそろ米びつの中も少なくなってきた。
なのでお米も買わなくてはいけないのでな」

 授業も終わり、学校からの帰り道。
バカの隣を歩きながら会話する。……バカに勉強を教えるのはどうでもいい。
目的はお米だ。お米を安く売ってくれるという、おじさんの言葉に甘えさせてもらおう。

「ゲーム機を貰った?……思い出した!お前、勝手にオレのゲームを持って帰っただろ!」
「おじさんとおばさんが私にくれると言った。何台も持っているから一台くらいは大丈夫、と。
強く勧めてくれたから貰ってしまったのだが……もしかして、ダメなのか?」

 だとしたら残念だ。せっかく四国統一したのにな。
弟達が自分達にも貸してほしいとうるさいから、早く全国統一したかったのだが……
そうか、返さなければいけないのか。

「そ、そうか、返さなければいけないのか。……すまなかったな、持ち出したりして」

 こんな事になるのなら、私が遊ばずに弟達にさせてあげればよかった。
……何がいい姉だ。自分が楽しむ為に弟達を後回しにしておいて……何がいい姉だ!

「お、おい、そんな落ち込むなよ。お前が落ち込んだら調子が狂うんだよ」

 そういえば以前、新聞チラシでゲーム機の値段を見たことがある。
確か、数万円の値段がする物もある、高額な品物だった。
おじさんがゲーム機をあげると言ってくれて、簡単に喜んでしまった私が悪いんだ。
バカも……結城もゲーム機を買うために努力してお金を貯めたんだろう。
そんな事も考えずにタダでもらえると喜んでしまうとは……私はバカだ。
結城をバカなどと言えないくらいにバカだ。どうしようもないバカなんだ。
……謝ろう。家に帰ったら弟達に頭を下げよう。頭を下げて許してもらおう。
2人とも、嬉しそうな顔をしていたのに……ダメな姉で悪かった、バカな姉で悪かった。
ぬか喜びなどをさせてしまって……バカな姉を、ダメな姉を許してほしい。

「……だぁぁ〜!分かったよ!やるよ!やればいいんだろ?だからそんな落ち込むなって
の!」
「……い、いいのか?あのゲーム機は高いのだろう?そんな物を貰ってもいいのか?」
「いいよ、くれてやるよ。お前が落ち込んでたら、なんでか知らないけどオレまで嫌な気分にな
るんだよ」
「……い、いいのか?だってゲーム機というものは、高いのだろう?」
「いいよ。オレ、家の手伝いでそれなりにお金貰ってるし、他にも持ってるしな」
「お、お前……いいヤツだったんだな!ありがとう、弟達も喜ぶ。
今まではバカだとしか思っていなかったが、考えを改めることにするよ」
「バ、バカだとしか思っていなかったって……お前、酷いヤツだな」

 弟達に遊ばせてやる為にも早く全国統一をしなければ。
となればこのバカに……いや、結城に早く勉強させて、家に帰らなければいけない。

「よし、結城!早く勉強するぞ!長宗我部元親について知りたいのだったな?
長宗我部元親について私が知っている知識を全てお前に叩き込む。それでいいな?」
「え?いや、叩き込むとかじゃなくて、どんなことをしたのか教えてほしいだけなんだけどな」
「善は急げ、だ。早く結城の家に行き、素早く勉強を終えるぞ!」

 私は結城の手を取り、結城米穀店へと走り出す。
その瞬間、胸がドキリとする。
まただ……確か今日学校でもあった。これはいったいなんだ?

「お、おい、手を掴むなって!走るなって!」
「ウルサイ!私は忙しいんだ!早く全国統一をして、ゲームを終えねばならないのだ!」

 ……何だ?結城の手を持ったら、何故か鼓動が早くなった。これはいったい何なんだ?  



「ね、ねぇ島津っち、いったいどうしたの?
朝から机に突っ伏して、どうしたの?なんかヘンだよ?」
「昨日も結城の家に行ったんだよね?もしかして結城のバカにヘンな事されたの?」

 ……眠い。物凄く眠い。この眠さだと、また授業中に寝てしまいそうだ。
これも全ては……織田信長のせいだ。何故鉄砲隊というものはあそこまで強いのだ?
三段打ちなどというのは反則ではないのか?

「おはよ〜っす。島津はいるか〜?お袋がまたバイトをお願いしたいって言ってるんだけど」
「ああ〜!結城!アンタ島津っちに何したのよ!」
「へ?何したって……何が?」
「島津っちの様子がヘンなのよ!アンタがヘンなイタズラしたんでしょうが!警察に突き出して
やるわ!」
「オレ知らねぇよ!」

 門を壊している間に打たれて部隊は全滅。
再度兵を集めて攻め込んでも同じことの繰り返し。……どうすればいいのだ?
やはり四国しか統一できないのか?長宗我部では全国統一は無理なのか?

「言い訳はいいからさっさと来な!先生にチカンしたって突き出してやる!」
「だ、だから知らねぇって!オレ、関係ねぇって!」
「ウルサイ!じゃあなんで島津っちがあんなになってるのよ!
ほら!見てごらんよ!机に突っ伏したまま動かないのよ?
島津っちの綺麗な顔に、消しゴムがめり込んでるのよ?
それでも動かないなんて、よっぽど酷い事があったのよ!アンタがしたんでしょうが!」
「だからオレ知らねぇって!勘違いだって!」

 いったいどうすればこの窮地を脱出できるのだ?
人材も織田方が有利。物資でも負けている。どうすれば勝てるのだ?
結城は昨日、何度も全国統一を果たしたと言っていた。
結城に出来て私に出来ないとは……やはり私はバカなのか? 
……結城?そうだ!結城にアドバイスをもらえばいいんだ!

「おい!島津!お前からもこいつ等に言ってやれ!オレはヘンな事してないって!」

 この声は結城?なんだ、私のクラスに来ていたのか、ちょうどよかった。
我が長宗我部家の困難な状況の、打開策を教えてもらうとしよう。

「結城、織田を攻め落とすのにはどうすればいいのだ?いつも鉄砲隊にやられてしまうんだ。
このままでは全国統一など無理だ。いったいどうすれば織田を攻め滅ぼす事が出来るのだ?
織田を攻め滅ぼす事ができず、昨日は一睡も出来なかった。このままでは今日も眠れそうに
ない。どう攻めればいいのかを教えてほしい。結城、教えてくれないか?」

 ママに知られない様にゲームをするというのは難しい。
今日も寝ていないことをすぐに指摘されてしまった。……このままでは取り上げられてしまう!
早く統一をして、次は伊達で統一を目指さねば!

「……えっとぉ、島津っち?
もしかして様子がヘンだったのは……一晩中ゲームして、寝てなかったから?」
「……島津っち、顔に消しゴムめり込んだままだよ?
とりあえずねぇ……ほっぺたつねっていいかな?」
「アタシもつねりた〜い!結城、アンタもつねれば?」

 な、なんだ?何故みんな私の頬を抓りたがるんだ?……いひゃい。

「あはははは……アタシ達ね、島津っちの様子がヘンだったから、本気で心配してたんだよね
ぇ〜」
「そうそう、結城が何かしたんじゃないかと疑っちゃったしね。結城、ゴメンね?」

 ええ?わ、私を心配してくれていたのか?……みんな、ありがとう。
だが、頬を抓るのはもう止めてくれないか?本気で痛いんだ。

「いひゃいいひゃい。ひょうひゃめへひょひぃいんひゃは」
「あははははは!島津っちカワイイ〜!ずっとつねってたいね」
「島津っちのほっぺ、柔らかくていい触り心地だねぇ」
「ひょうひゃめへくへひゃいか?」

 クラスメートに頬を抓られている私を見て、結城が口を開く。
結城、もしや助け舟を出してくれるのか?お前、やっぱりいい奴だな。

「お前らもそろそろ気がついただろうけど、オレが言うぞ?
なぁ島津。お前……やっぱりバカだろ?」

 …………誰がバカだぁ〜!
 
 ヒュン!ドゴ!……ドサッ。

「き、今日は白に戻ったんだね。やはり島津っちには白色が似合ってるねぇ」
「アタシさ、一日に一度、島津っちのキックを見ないと落ち着かなくなっちゃったんだよねぇ」
「でもさ、ただの寝不足でよかったよ。……結城はご愁傷様だけどね」
「はぁはぁはぁはぁ……ゆ、結城?すまない!ついクセでやってしまった!」

 足元でピクピクと痙攣している結城。これは……死んだかな?


 生還した結城から、おばさんがまたお店の手伝いをしてほしいと言ってきていると聞いた。
なんでも伝票整理や会計を頼みたいんだそうだ。
週に2日ほどでいいと言ってくれているし……お金ももらえてお米も安く買える。
ふむ、断わる理由はないな。
結城米穀店で買ったお米は新米で美味しく、家族みんなも大満足した美味しいお米だった。
断わる理由もなく、私は結城米穀店でアルバイトをすることになった。
そして、この結城米穀店は……私の人生にとってかけがいのない居場所になっていった。



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