「ふんふふ〜ん、白滝は軽く湯でてっと……うん、こんなものでいいかな?
お湯からあげて、食べやすい大きさに切っておく、っと。おし、白滝の準備完了!」

 静馬君の部屋で白いエプロンを身に纏い、小さいコンロを使っての夕御飯作りで悪戦苦闘す
る。
やっとガスコンロを買ってくれたのはいいけど、料理するには小さすぎるわね。
大きなコンロのついているもっと広い部屋に引っ越せなんて言えないし、こればかりは仕方な
いかな?

「じゃがいもと人参は乱切りで、切ったじゃがいもは水にさらしておくっと。
おし、あとはたまねぎも乱切りにしてっと」
「麗菜さん、今日は何を作ってくれるんですか?オレ、もう腹が減っちゃってたまんないっすよ」

 包丁片手に格闘するアタシの後ろに立つ静馬君。
まだ5時過ぎだよ?もうおなか空いちゃったの?

「今日は美味しい肉じゃがよ。あと40分もすれば出来るから、もうちょっと待っててね」
「ええ〜?40分も待つんですか?オレ、我慢出来そうにありませんよ」

 温泉旅行以降、休日は静馬君の部屋で過ごすことが多くなった。
で、今日もこのままお泊りする予定なの。
美味しいご飯を食べた後、2人でのんびりとプロレスのビデオを見て、ゆっくりとした時間を過ご
す。
休日に好きな人と何をする訳でもなく、ゆっくりとした同じ時を過ごす。
いいねぇ、和んじゃうねぇ。……こういうことを幸せって言うのかな?
……プロレスビデオってのが、ちょっとアレなんだけどね。 

「出来上がるまで我慢しなさい!
……愛情こめて美味しく作ってあげてるんだから、もうちょっと待っててね」
「いや、待てません!だから美味しくいただいちゃいます!」

 待てないと言いながら、後ろからギュッと抱きしめてくる静馬君。
え?待てないってそっちの意味だったの?

「ちょっと静馬君!今は包丁を使ってるから危ないって!」
「じゃあ包丁は置いてください。今週はオレ、今日の為にずっと我慢してたんですから」

 逞しい腕で後ろからアタシをギュッと抱きしめながら、その大きな手はアタシの胸の上で蠢い
ている。
まったくこの子は……生意気にも上手くなってきたのよね。
上手くなったのはいいけど、ご飯を食べるまで我慢しなさいっての!

「まったく君はがっつくねぇ。昔のウブな君はどこに行っちゃったんだろうね?」

 最近はいつもこうなの。温泉旅行まで、えっちするのをずっと我慢してた男と同じとは思えな
いわね。
静馬君とは温泉旅行以来、会う度にえっちしてる。
会う度にアタシを求めてくれて、アタシも静馬君を求めてしまう。
最近じゃ一方的に攻めてくるようになったし……う〜ん、なんか悔しいけど、気持ちいいから、
まぁいいかな?
アタシの胸で器用に蠢く静馬君の手。その動きに段々と身体が高まってくる。
せっかく君の為にお料理してるってのにどうしてくれるのよ!
……収まりがつかなくなってきたじゃないの。

「ウブなオレは麗菜さんに食われちゃいましたよ」
「食うとか言うな!あん!だから危ないって!……んん!こ、こらぁ!下着に手を入れちゃダメ
だって!」

 耳元で囁く静馬君。囁きながら胸で蠢いていた手はブラの中に入り込んできて、アタシの胸を
揉み解す。
揉まれる度に力が抜けて、先端を摘まれる度に声が出てしまう。
このままでは包丁で怪我をしそうだから包丁を離し、静馬君との行為に集中する事にする。

「いいじゃないですか。麗菜さん、乳首立ってきてるよ?」
「んん!そ、そんな恥ずかしいこと言わないで……あん!汗かいてるから舐めちゃダメェ〜!」

 首筋に舌を這わされながら胸を直接揉まれる。
そしてその手はブラから出て行ったかと思うと、スカートを捲り上げ、ショーツの上からアタシを
撫でる。

「んん!し、静馬君、ベッドで……んあ!こ、こんなところでするつもりなの?」

 軽く数回ショーツの上からアタシを撫でたかと思うと、
その指はショーツの中に入って来て、クチュクチュとアタシを犯しだす。
その指が動く度に身体は高まり、首筋を舐められる度に心が高まる。
クチュクチュと指がアタシを犯すたびに膝が震えてしまい、舌が首筋を舐める度に心が震えて
しまう。

「麗菜さん、もうこんなになっちゃってますよ?」

 アタシを犯すのを止めて、抜き取ったその指をアタシの目の前に差し出す。
その指は少し濡れて光っていた。

「もう、バカ!……こんなにした責任、取ってくれるんでしょ?……ん、ちゅぶ、んん」

 その濡れた中指と人差し指を口に含み、丁寧にしゃぶる。
そして今度は唾液で濡らしてあげる。……静馬君、ホントにえっちが上手くなったわね。

「もちろん責任取りますよ!……麗菜さんもオレのがこうなった責任、取ってくれるんでしょ?」

 静馬君は耳元でそう囁いたかと思うと、アタシの口から指を抜き取った。
そして、その唾液まみれになった手で、アタシの手を取り静馬君の股間へと持っていく。
うふふふふ、凄いわねぇ。ズボンの上からでも分かるわ。
興奮してとても大きくなっている静馬君。
アタシにこんなにも興奮してくれているかと思うと嬉しくなって、さらに興奮しちゃう。
静馬君の攻めで興奮してたまらなくなったアタシは、
濡れて汚れたショーツを下ろし、自ら壁に手をつきお尻を持ち上げた。

「……来て。今日は危ない日だからゴム着けてよね?」
「そこら辺はぬかりありません!今日の為に1箱買ってきてます!」
「ひ、一箱?一箱分もするつもりなの?……そんなに何回も君に出来るのかな?」
「お?挑発ですね?一晩かけてじっくりとやって見せますよ!」 

 壁に手をついたままのアタシの後ろで、ガサゴソとコンドームの箱を開ける静馬君。
ゴムをつけるのも手馴れてきたわね。
えっちしだした頃は、アタシが着けてあげたんだけどね。
何度着けてる途中でイッちゃった事か。……あの時の静馬君の情けない顔、可愛かったなぁ。

「装着完了っす!じゃあ麗菜さん……好きです、愛してます!」

 クチュ……静馬君がアタシに重なった瞬間、イヤらしい滑った音がしたような気がした。
ズ、ズズズ……ズブ!最初はゆっくりと、そして一気にアタシの中に突き進んできた静馬君。
静馬君がアタシの一番奥をコツンと叩いた瞬間、頭の中に電気が流れる。
ガッシリと両手でアタシの腰を掴み、最初はゆっくりと、そして段々と力強くアタシを突き上げる
静馬君。
静馬君が突き進んできて奥に当たる度に電気が走り、アタシから引き抜くたびに声が出てしま
う。
アタシの中から静馬君を出し入れするという単調な作業が、アタシを上り詰めさせてアタシを狂
わせる。

「ん、あ、あ、ああ!い、いい!静馬君、スゴクいい!感じちゃう!んああ〜!」

 パン!パン!パン!

 アタシを力強く犯す静馬君の腰使い。
腰を動かす度にアタシのお尻とぶつかって『パン!』と音を出す。
その音がする度に、無意識で声が出てしまう。

「あ、あん!い、いい!スゴイ!んん!あん!んああ〜!」 

 まるで身体ごとぶつかって来るような激しい動きに、『アタシは今、犯されているんだ』と思い
知らされる。
そして、愛する人に犯される喜びで心が高ぶり、激しく動く静馬君の攻めで、身体が高まってい
く。
突き入れられる度にグチュグチュと感じてしまい、アタシと静馬君の結合部から水滴が落ち、
床を汚してしまう。

「麗菜さん!すっごく気持ちいいっす!ゴムの上からでも麗菜さんが蠢いているのが分かりま
す!」
「あ、あ、んん!は、激し!アタ、アタシ……も、もう!もうダメェ〜!」

 グチュ!グチュ!グチュ!

 一段と激しく突き上げてくる静馬君。
もうこれ以上されたら頭の中が真っ白になる!もうイッちゃう!イカされちゃう!
そう思った瞬間、焦らすかのように動きが止まった。

「はぁはぁはぁ……静馬君?なんで止めちゃったの?あと少しだったのに……急に止まってど
うしたの?」
「う、うぁぁ……き、気持ちよかったぁ。う、んん……はぁはぁ……はぁぁ〜」

 ゆっくりと、まるでアタシを利用して搾り出すかのような動きをみせる静馬君。
……また1人でイッちゃったのね。はぁぁ〜……3回に1回位かな?2人一緒にイケるのは。
静馬君はそっとアタシから引き抜き、中身が零れないようにゴムを縛ってゴミ箱へ捨てる。
そして小さくなったアソコをティッシュで綺麗に拭き取り、満足げな顔をして床に座り込んだ。
……君ねぇ、えっちしてすぐにそんな事しなくてもいいでしょうが!
えっちした後って普通はギュッと抱きしめたり、甘い囁きをしたりするものよ?
前の旦那はそこら辺はちゃんとしてくれたのに……君はまだまだだね。
仕方ないなぁ、今日はそこら辺をたっぷりと教え込んであげるわね?
ゴムを捨てた後、床にへたり込んで余韻に浸っている静馬君を、ギュッと抱きしめる。
覚悟なさいよ?今夜はアタシが満足するまで寝かせやしないんだからね?


 
「あら?守屋ちゃん、そんなところに絆創膏を張ってどうしたの?変な虫にでも噛まれたのか
い?」
「へ?あははは、噛まれたといえば噛まれたのかな?」

 静馬君との激しい一夜を過ごした次の日、職場で毛利さんに首の絆創膏についてつっこまれ
た。
やっぱり目立っちゃうよね?
まったく静馬君ったら……こんな目立つところにキスマークを付けなくてもいいんじゃないの?

「いいねぇ、順調にいってるんだねぇ。おばさん羨ましいよぉ」
「えへへへ……おかげさまで順調にいってます」
「いいねぇ、直ちゃんは最近お店に来てくれないし、おばさん少し寂しいよぉ」

 そういえばそうね。直樹君、最近見てないわね。
ていうか、アタシ達が付き合いだしてから顔を見ていない。
静馬君に聞いても、職場でも話すらしてくれないって嘆いていたしね。
きっとアタシと静馬君が付き合いだしたことに拗ねてるんだろうね。

「おばさんのテクニックがダメだったのかしらねぇ。
おばさん、頑張ってたくさんイカせてあげたんだけどねぇ。
最後なんて泣きながら喘いでたんだけどねぇ。
……ヤダよぉ!思い出したら濡れてきちゃうよぉ!」

 毛利さん、大きな声でヘンな事言わないで下さい!
ヘンな事言うから、お客さんがジュース吐き出してるじゃないですか!

「でもよかったよぉ、順調にいってて。どうせアレなんだろうねぇ、毎日電話で話してたりしてる
のかい?恋愛してるねぇ。若いっていいねぇ」
「……それなんですけどね、一度も電話してきたことないんですよ。
静馬君、電話で話すよりも直接会いたいと言って、夜遅くでも会いに来てくれるんです」
「やだよぉ〜!あたし相手に惚気ちゃうなんて、幸せなんだねぇ〜。まったく羨ましいよぉ」

 そう、会いに来てくれるの。でもね、毎日ってわけじゃない、3日に一度位の頻度で会いに来
てくれる。
アタシがお休みの日には、静馬君の部屋に泊まりに行っているからけっこうな頻度で会ってい
る。
だから全然寂しくない。でもね……静馬君には毎日電話している相手がいるのよねぇ。

「はぁぁ〜……電話してほしいなぁ」
「なんだい?会うだけじゃダメなのかい?守屋ちゃんは欲張りだよぉ〜。
でもね、おばさんもその気持ち、とっても分かるねぇ。毎日声を聞きたくなるのは仕方ないから
ねぇ」

 電話をしてほしいというアタシの呟きに、ウンウンと頷いている毛利さん。
え?毛利さんにもそんな人がいるの?うわぁ知らなかった!初耳だぁ〜!

「おばさんね、声が聞きたいから毎日電話してるんだよね。
でもねぇ、照れてるんだろうねぇ。直ちゃん恥ずかしがりやさんだから、電話に出てくれないん
だよぉ」
「え?ええ?毛利さんの電話の相手って、もしかして直樹君?」
「そうだよぉ、直ちゃんだよぉ。毎日40回くらい留守電に愛の言葉を入れてるんだけどねぇ。
愛というものはなかなか届かないものなんだねぇ」
「……受け取り拒否してるんじゃないのかなぁ」
「ん?守屋ちゃん、何か言ったかい?おっと、いつまでも無駄話してる場合じゃないよ!
お客様があたし達を待ってるよぉ!守屋ちゃん、気合入れて働くよぉ!」

 あっといけないけない!呼び出しランプが光ってる!
急いでお客様のところへ行かなきゃ!接客はいつもニコニコ爽やかに!

「お待たせしました!お帰りですか?ではドル箱お運びします!」

 ドル箱2つを持ち上げて、ジェットカウンターへと持っていく。
うぅぅ〜、重いよぉ。、腰にくるよぉ〜。……毛利さん、なんで軽々と3箱も持てるの?
やっぱり毛利さんは、『パチンコチャンプ』に巣くう妖怪なのかしらね? 



「いやぁ〜、今日もよく働いたよぉ〜!疲れた疲れたっと」
「ホントに疲れましたねぇ。今日は釘を開けてたのか、出玉が多かったですからね」

 閉店作業も終え、ロッカー室で着替える。
あぁ〜、今日も一生懸命働いたなぁ〜。つっかれたぁぁ〜!
今日は開放日だったのかな?店長、いい事でもあったのかな?

「守屋ちゃん、これからおばさんとご飯食べに行かない?たまには付き合っておくれよぉ」

 着替え終わった毛利さんがアタシの腕に手を回し、飲みに誘ってきた。
あ、いいですね!仕事終わりの冷たいビール、ゴキュゴキュ喉を鳴らしながら飲みた〜い!

「いいですね!冷たいビールで乾杯といきましょ!
今日は静馬君と会う約束はしてないし、アタシも毛利さんと飲みたいですしね」
「あらあら、あたしは静馬ちゃんの代わりなのかい?おばさんちょっとショックだよぉ」

 ガックリと肩を落とし、唇を尖らせ、手の平にのの字を書いている。
毛利さんのこういうところ、かわいくって好きだなぁ。……見た目は妖怪っぽいんだけどね。

「あははは!なにカワイク拗ねてるフリしてるんですか?」
「おばさんをカワイイとか言ってくれるのって、守屋ちゃんだけだよぉ」
「それよりどこに食べに行きます?軽く飲めるところがいいから……いつもの居酒屋ですか
ね?」

 最近は静馬君に酒飲みと言われるのがイヤで、あまり飲んでないんだよね。
だから今日は飲んじゃおう!毛利さんがいれば酔っても大丈夫だしね!

「でもいいのかい?静馬ちゃん、電話してくるかもしれないんじゃないのかい?」
「あぁ、それなら大丈夫ですよ。仕事中も言いましたけど、アタシには電話してこないんですよ
ね」
「あぁ、言っていたねぇ。電話するより会いたいって言われたんだっけ?熱いねぇ、羨ましいね
ぇ」
「えへへへ……会いに来てくれるのは嬉しいんですけど、やっぱり電話もしてほしいじゃないで
すか?」

 そう、電話して欲しいのよね。なんでそれが分からないの?あの鈍感バカ男がぁぁ〜!
毎日実家の隣に住んでいる女の子には電話してるくせに……そんなヒマがあったらアタシに電
話しろっての!
はぁぁ〜……惚れた弱みかな?強く言えないんだよね。

『そんな子なんかよりも、アタシに電話してよ!』

 何度酔った勢いでそう言いそうになったことか。
電話してるって聞いてから、何かモヤモヤしてるんだよねぇ。……その子に嫉妬してるのか
な?
12歳の中学生に嫉妬するなんて、我ながら大人気ないなぁ。
あ、もう13歳になってるのかな?確か静馬君と6歳差って言ってたもんね。

「守屋ちゃん?いったいどうしたんだい?急に暗い顔をして。何かあったのかい?」
「え?何でもないです!……って、何でもないことないかな。
居酒屋で少し相談に乗ってもらってもいいですか?」

 1人で悶々と考えるより、毛利さんに話して気分を変えよう。
毛利さんが何か解決策を教えてくれるかもしれないし、話したら気も紛れるだろうしね!
 


「守屋ちゃんがあたしに相談なんて、久しぶりだねぇ。どんな悩みだい?
……もしかして離婚してたこと、何か言われたのかい?」

 いつもの居酒屋に入り、乾杯用のビールを注文したところで毛利さんが聞いてきた。
そうなのよね、まだ教えてないんだよね。
実はアタシ、離婚経験者で×1でした!……なんて簡単に言えることじゃないわよね。

「え?それは……実は、離婚のことはまだ話していないんです。
知られても大丈夫だとは思うけど、嫌われるかもって考えたら……教えるのが、怖いんです」

 静馬君はアタシの事を大事に思ってくれている、だから教えてもきっと大丈夫だと思う。
……でも、もしダメだったら?もし教えたことが原因で、嫌われたりしたら?
もし、教えたことが原因で別れてほしいなんて言われたら、アタシ、どうしたらいいか分からない
わ。
だから……教えていない。怖くて教えることが出来ないの。
はぁぁ〜……こんなところでもバカ旦那が足を引っ張るなんてねぇ。

「そうかい……確かに怖いよねぇ、怖くて言えないよねぇ。おばさん、その気持ちよく分かるよ
ぉ。
『好きだよ、愛してるよ』って言ってくれてた人が、
離婚経験者と知ったとたんに態度がコロッと変わるなんて、よくある話だからねぇ」
「……毛利さん、経験あるんですか?」
「おばさん、こう見えても人生経験豊富なんだよぉ。長く生きてりゃいろんな事があるもんだよ
ぉ。
でもね、静馬ちゃんは大丈夫だと思うよ?おばさんの女のカンがそう言ってるよぉ」

 少しおどけた表情で、アタシを励ましてくれる毛利さん。
……ありがとうございます!なんだか少し、元気が出てきました!

「あははは、アタシのカンもそう言ってるんですよ。だからいつかは言うつもりです。
でも今はまだ言う勇気がないの。……いい歳して情けないですよね」
「それでいいんだよぉ。恋する女の子ってのはそういうものだよぉ。
おばさん、恋に年齢は関係ないと思ってるからね。……そうよね?直ちゃん?」

 そういって財布の中から写真を取り出し、キスをする毛利さん。
わ!直樹君の写真を財布に入れてるんだ?毛利さん、本気で直樹君を狙ってるんだぁ。
……なんで直樹君が裸で縛られてる写真なのかは聞かないでおこう。
恋愛にもいろんなパターンがあるからね。

「相談したいことって、このことだったのかい?なら問題解決だねぇ。
悩みも解決したことだし、今日はガバガバ飲み倒すとしようかねぇ」
「いえ、このことは相談したいこととは違うんですよ。
相談というか、愚痴というか……毛利さんに聞いてほしい事があるんですけど、いいですか?」
「なんだい、そこまで聞いたらダメだなんて言えやしないよぉ。
いいよぉ、今日は守屋ちゃんのお話を聞いてあげるわよぉ。惚気でもなんでもおばさんに言っ
ちゃいなよ」
「あははは、ありがとうございます!
じゃあ早速なんですけど、話したいう事って言うのは、静馬君についてなんですよ」
「なんだい?やっぱり惚気なのかい?いいねぇ、ラブラブだねぇ」

 うん、毛利さんに話してスッキリしよう。静馬君がアタシに電話してこないのも、仕方ないこと
だからね。
アタシとはいつでも会えるけど、その子とは電話でしか話せないんだもんね。
……13歳も年下の女の子に嫉妬するなんて、アタシってダメな大人だったのね。



「すみませ〜ん、生中お代わりくださ〜い!あと、ホッケと出汁巻き玉子と大根サラダもお願い
しま〜す!」
「こっちは冷酒をお願いねぇ〜。あ・と・は……お兄さんがお酌をしてくれたら大満足だよぉ」

 乾杯の生ビールを一気に飲んで、追加注文をしたアタシ達。
毛利さん、注文を取りにきた店員さんにちょっかい出すのは止めてあげましょうよ。
店員さん、鳥肌まみれですよ?まったく、毛利さんっていつでもどこでもマイペースなんだからな
ぁ。
でも毛利さんのそういうとこ、アタシも見習わなきゃいけないわよね。

「で、守屋ちゃん。相談ってなんだい?……静馬ちゃんが早漏とかそういう話かい?」
「違います!」

 そりゃ少し早いかな?って思うこともあるけど、最初の頃よりは持つようになってきたんだか
ら!

「なら短小なのかい?いくらおばさんでも短小を治す方法は知らないよぉ」
「ち・が・い・ま・す!満足できる、いいサイズをしてますよ!」
「あら?そうなのかい?静馬ちゃんはなかなかのイチモツを持っているんだねぇ。
……おばさんなんだか興奮してきたよぉ〜!」
「人の男に興奮しないで下さい!」
「守屋ちゃん、おばさんからのアドバイスだけど、イチモツの大きさとかは大声で話すもんじゃな
いよぉ」

 してやったりといった顔で、ニヤニヤと笑っている毛利さん。
くっそ〜、また毛利さんにからかわれちゃったわ!
ニヤニヤとアタシを見ている毛利さんを見て、やっぱり敵わないなぁ、と思ってしまう。
さすがは毛利さんよね、アタシなんかよりも全然役者が上ね。

「で、あたしに聞いてほしい話って何なんだい?」

 妙なところで感心しているアタシに、毛利さんが本題を切り込んできた。   
そうだった。感心している場合じゃないんだ、毛利さんにアドバイスをもらわなきゃ!
どうすればアタシにも毎日電話をしてくれるようになるのか。……他の女に電話をしなくなるの
か、を。
はぁぁ〜……アタシ、26だよ?結婚経験者だよ?……離婚も経験してるんだよ?
なんで13歳の子相手にモヤモヤとして、嫉妬してるんだろうね?情けないなぁ。

「実はですね……静馬君に毎日電話してほしいんですよ」
「はぁ?そんな簡単なことなのかい?ならあたしじゃなくて、静馬ちゃんに直接言いなよ?」

 アタシの相談に呆れ顔の毛利さん。……やっぱりそう思うわよね?
電話してほしくて悶々とするくらいなら、電話してって静馬君に直接言った方が早いわよね?
でもねぇ、13歳の子に電話してるのが悔しいからだなんて知られたくないし……だってカッコ悪
いじゃない。

「そんなの……恥ずかしくて言えないじゃないですか。……嫉妬してるとか思われたくないし」
「恥ずかしいも何も、もっと恥ずかしいことをズッポズッポとしたりされたりしているのにねぇ。
……嫉妬してるってなんだい?」
「あ、そうか、毛利さんは知らないんでしたね?
静馬君、実家の隣に住んでいる13歳の女の子に毎日電話してるそうなんですよ。
なんでも静馬君が実家を出た後、仲がよかったその子が落ち込んで、元気を失くしちゃったそ
うなんです。
そんな事があったから心配して、毎日電話してるそうなんですよね。
静馬君、優しいお兄さんしてるでしょ?」

 そうなのよね。優しいお兄さんしてるから、文句も言えないのよね。
知り合いの13歳の子供に電話するだけなんだから、
好きにさせてあげなきゃいけないってのは、分かってるつもりなんだけど……モヤモヤしちゃう
のよねぇ。
静馬君が電話しているという13歳の女の子の事を考えると、モヤモヤしちゃう。
はぁぁ、情けないなぁ。大人の女なんだから、大きな心で電話くらい好きにさせてあげなきゃい
けないのにね。
モヤモヤを吹き飛ばす為に運ばれてきた生ビールを一気に煽る。
そんなアタシを驚きの表情で見ている毛利さん。
……え?毛利さん、そんな驚いた顔してどうしたんですか?
 


「いやぁ〜、このシリーズの試合はどれも最高だったんですよ!麗菜さんにも一度、生で見ても
らいたいですね」

 満面の笑みの静馬君の手には『チャンピオンカーニバル』と書かれたビデオテープが。
はぁぁ〜……今日はそれを見るつもりなんだ。恋愛映画って選択肢はないのかな?
たまには恋愛映画を見ようよ。喉元まで出掛かっているその言葉を、グッと堪えて微笑んでみ
せる。
こんなことなんかで嫌われたくないもんね。

「へぇ〜、そうなんだ?やっぱりビデオで見るよりも試合会場で見たほうが面白いの?」
「ええ!プロレスは会場で見てこそ、最高なんですよ!」
「そうなんだぁ〜。じゃあさ、今度一緒に見に行かない?アタシを連れて行ってよ」
「いいですね!是非一緒に行きましょう!」
 
 静馬君はアタシとプロレスを見に行けることがよほど嬉しいのか、満面の笑みを見せている。
その顔を複雑な思いで見つめるアタシ。……毛利さんが言った事、本当なのかな?
昨日仕事終わりの居酒屋で、静馬君が実家の隣に住んでいる13歳の女の子に毎日電話をし
ていることを相談した。
アタシはそんなに深い考えもなく、ただアタシにも電話してほしい……そんな気持ちで相談した
だけだった。
相談というか、軽い愚痴のつもりで毛利さんに話したの。
でも、あたしの話を聞いた毛利さんが言った言葉で、頭の中が真っ白になった。

『その隣の女の子、静馬ちゃんの事を好きなんだねぇ。好きだからこそ落ち込んだんだよ』

 それだけならまだよかった。でも、毛利さんが言った次の言葉にアタシは動揺し、グラスを倒
してしまった。

『守屋ちゃん、落ち着いて聞きなさいよ?
男っていう生き物はね、その気がない子に毎日マメに電話なんか出来ないもんだよ。
もしかしたら静馬ちゃん、その女の子のこと……悪く思ってないかもしれないねぇ』

 悪く思っていない。……言葉を濁した、大人のずるい言い方。
でも、それなりの人生を送ってきているアタシには、毛利さんが本当は何を言いたいのかが分
かる。
……好きなのかも知れない。静馬君、その女の子を好きなのかもしれない。
毛利さん、きっとそう言いたかったんだ。

「けど珍しいですね。初めてじゃないのかな?麗菜さんがプロレスに興味を示してくれたのは」
「あははは、アタシは君の大事な彼女だからねぇ。彼氏の趣味に合わせるのも彼女の努めな
のよ」

 アタシはすぐに反論したわ。その女の子、まだ13歳ですよ?静馬君よりも6つも年下なんです
よ?ってね。

「か、彼女の努め、ですか?」
「そ、彼女の努め。で、彼氏の努めは彼女を満足させることよ」

 毛利さん、そんなアタシにこう言ったわ。

『6歳差って……守屋ちゃん、分かってるのかい?あんたと静馬ちゃんは7歳差なんだよ?』

 その言葉を聞いた時、アタシは分かったの。
毎日電話をしていると聞いた日から感じていた心のモヤモヤは、嫉妬じゃなかったんだって。
心のモヤモヤが嫉妬ではなく……静馬君を取られるかもしれないという、不安だったんだって
気がついたの。

「満足、ですか?」
「そ、満足よ。……今夜もたっぷりと満足させてね?」

 心の中ではきっと分かってたんだと思う。静馬君の本当に好きな人は、その女の子なんだっ
て。
静馬君って鈍感だから、自分の気持ちに気づいてないだけなんだって。
……好きな子じゃないと、律儀に毎日電話なんかしないわよ。
そう気づいたアタシは、分かっちゃったの。アタシ、いつも静馬君を見ているから、分かっちゃっ
たんだ。
……静馬君がアタシに抱いている感情は、恋人に対するものじゃなく、憧れの人に対する感情
なんだって。  
そう、年上のお姉さんに憧れる感情なんだって。
そう考えたら全てに納得がいっちゃった。
静馬君がなかなかアタシを求めてこなかったのも、本当に好きじゃなかったからなんだ。
いつまでたってもアタシに敬語で話すのも、いつまでたってもアタシに気を使って話してくるの
も、
全部憧れの人に対する態度だったんだ。全てがそうだったんだって分かっちゃったの。

「ま、満足させます!たっぷりとしてもらいます!」
「あははは、静馬君はいつも餓えてるねぇ。……でもね、アタシも餓えてるの」

 全てを悟り、落ち込んで涙を零すアタシに毛利さんは教えてくれた。
……恋愛は奪い合う、女の戦いなんだって。そして、女には女だけの武器があるんだって。
その言葉でアタシは腹をくくったわ。13歳の子供には出来ない、女の武器を使わせてもらうっ
て。

「だから、ね?君にこの飢えを満たして欲しいの。この飢えを君で満たして欲しいのよ」

 確か……あやちゃんだったっけ?
ゴメンね?あなたがいない場所で身体を使って静馬君を物にしようとして。悪いお姉さんを許し
てね?
でもね……恋愛は戦争なのよ?女の武器を使えない、幼いあなたが悪いの。

「麗菜さん……オレ、もう我慢できません!」
「ん、アタシもよ。君を感じたいの。ギュッと……強く抱きしめて!」

 あやちゃん、恨むのならあなたを遅く産んだ親を恨みなさいね?
残念だけど、静馬君はアタシの物。あなたみたいな子供なんかには負けないわ。

 アタシは静馬君に犯されながら、顔も知らないライバルに宣戦布告をしたわ。 
静馬君はアタシの物。13歳の小娘なんかには負けないわ!



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