「はい、いつもご苦労さん。明日もよろしく頼むよ」
「オルソンちゃん、また明日おばあちゃんと遊びましょうねぇ」

 老夫婦から手渡された手作りパンと、少しのお金。私はそれらを受け取り頭を下げる。

「はい!こちらこそよろしくお願いします!さ、オルソン、お家に帰りましょうね?」

 おばあさんから、まだ生まれて半年の愛する息子を受け取り、
再度頭を下げて老夫婦の家を後にする。
ふぅ、畑仕事は疲れるわね。けど、今の私には、ここしか働ける場所がない。
お給金を貯金していたから生活には困らないけど、この子の将来のため、
お金はいくらあっても足らないくらい。
そう、この子には立派な大人になってもらわなくてはいけない。
いい教育を受けさせて、立派な大人になってもらわなきゃいけない。
なぜならこの子には、あの方の血が流れているのだから。
そう、この子は、あのお方の……

 私の名はナルディア。
以前はこの国有数の名家、ラインフォード家でメイド長として働いていた。
けど妊娠をしてしまい、自ら職を辞して生まれ故郷に帰ってきたの。
父は幼いころに亡くなっており、母も数年前に他界した。
元から体は強くない母だった。
私がラインフォード家で勤めていることを、誇りに思ってくれていたわ。
貴女だけが私の自慢。私が唯一この世に誇れる、自慢の娘よ、と。
私がメイド長になった時は、凄く喜んでくれた。
……その後すぐに倒れ、そのまま死んでしまったの。
私は親孝行できたのかしら?母にはもっと長生きしてほしかった。
……いえ、今の私を見たら、嘆き悲しむかしらね?
私はラインフォード家を出てすぐに、両親の残してくれた家へと帰ってきた。
狭い、質素なつくりの家。この家で私は生まれ、育っていった。
懐かしい生まれ故郷。私はここでなら一人でも子供を育てることが出来ると考えていたわ。
……でもそれはとても安易な考えだったの。世間の目というものは冷たいわ。
生まれ故郷に帰ってきた私の耳に入ったのは、数々の陰口。

『行きずりの男の子供を身ごもったらしいぞ』
『クビになった理由、男をとっかえひっかえしてたかららしいわよ?』
『あんな暴力女がラインフォード家で勤まる訳ないと思ってたんだ』
『スレイン様の幼馴染ということを利用して、無理に雇ってもらってたんだろ?』
『なんでもスレイン様の弱みを握り、無理やり雇ってもらったらしいわね』
『最低な女だな。あんな奴、この町の恥さらしだな』

 陰に隠れて言うだけでなく、時には家のドアに張り紙をされたりもしたわ。
『恥さらしな売春婦は出て行け!』と。
けど私はへこたれなかった。私には落ち込んだりしている暇はなかったから。
何故なら私のお腹の中には、愛するあの人にいただいた命が宿っているのだから。

 故郷に帰ってからしばらくして、私はオルソンを産んだの。
あの人の顔に似た、とても元気な男の子。私は心に誓ったわ。この子を立派に育てよう。
最後まで仕えることが出来なかった、
ニース様とあの人の変わりに、この子を立派に育てよう、と。
私にはもうそれしかない。もう私にはあの人からいただいた、この子しかないのだから。
……ニース様は私のことを裏切り者と罵り、怒りに狂っていると聞いたわ。
その怒りのせいで、カシュー様を当主の座から蹴り落とし、
自らがラインフォード家当主の座についたと。
……私のせいであの子が歪んでしまった。
リクによって、素直な子になったあの子が……私が歪めてしまった。
少し我儘だけど素直で可愛くて、
目が見えるようになってこれでリクに会えると喜んでいたあの子を私が歪めてしまった。 
私の考え無しの、一時の快楽に溺れた結果が、ラインフォード家をも歪めてしまったんだと。
……死んでしまおうと思ったわ。私なんか死ななきゃいけないと思った。
私のせいで、ニース様が歪んでしまい、カシュー様が当主の座から追い落とされてしまったの
だから。
でも、死ぬことは出来なかった。
何故なら今の私には、小さな命を守り、育てる義務があるから。
そう……このカシュー様の血を受け継いでいるオルソンを育てる義務があるから。
私はそう決意をし、必死に働こうとしたわ。
けど、悪評にまみれている私を雇ってくれるところなんてなかった。
普通なら、ラインフォード家で働いていた者は、次の働き口に困ることはない。
何故なら、ラインフォード家で働いていた、ただそれだけでその人物が非常に有能であるという
ことの証明なのだから。
けど私には働き口がなかった。
新当主になったニース様が、私を裏切り者と罵っているという噂が広まっているから。
ラインフォード家の当主が怒り狂っている……そんな人物を雇うほどバカな経営者はいない。
この国では、ラインフォード家を敵に回してしまったら、
それはその人の人生の終わりを意味することだから。
そんな私に救いの手を差し出してくれたのが、小さいころからの知り合いの老夫婦。
少しのお金しか出せないが、畑仕事を手伝ってくれないか?と言ってくれたの。
……私は泣いてしまったわ。
もうこの生まれ故郷には、味方はいないと思っていたのに、私の救いの手を差し伸べてくれる
人もいるんだ、と。

 それから毎日必死で働いた。来る日も来る日も働いた。
手には畑でクワを使うために豆ができ、以前よりも力もついたみたい。
私が畑で働いている間、おばあさんがオルソンの相手をしてくれている。
それがものすごく助かっているの。私には赤ちゃんを育てた経験はないわ。
知識としてはあるけど、所詮は本で得た知識。実際に育てた人には敵わない。
おばあさんが、オルソンの相手をしてくれているからこそ、安心して働ける。
母親としては失格かもしれない。けど、今の私は誰かの助けが必要なの。
誰かに助けてもらわなければ、オルソンを育てながら働くことなんて出来ないわ。
仕事を与えてくれたおじいさんと、オルソンを育てる手伝いをしてくれるおばあさんに、
感謝をしながら家路につく。
早く帰って、オルソンに母乳を飲ませて、
シャワーを浴びてオルソンの体を綺麗にしてあげなきゃね。
仕事が終わっての、オルソンとのひと時。幸せなひと時。
けど、ここにあの人がいれば、もっと幸せなはず。……でも、それは叶わぬ願い。
そう、もはや私がカシュー様を会うことなど一生ないのだろうから。
悲しい現実に肩を落としながら家へ帰ってくると、玄関扉の前に誰かが立っていた。
あら?来客なんて珍しいわね。私に何か用でもあるのかしら?
そう思い、その人物の顔をよく見てみると……懐かしい顔がそこにいた。

「ああ!あなたは……リク!こんな田舎に来るなんて、いったいどうしたの?」

 ワガママで、手の付けれなかったニース様を、
素直なとても優しい女の子にして去って行ったニッポンジン、藤原理来がそこにいた。
私は驚きと戸惑いで頭が真っ白になり、思わず大きな声を出してしまった。

「おぎゃあ!おぎゃあ!」
「あぁ、ゴメンね、オルソン。驚いたわね?急に大声を出したママを許してね」

 声に驚き泣き出したオルソンをよしよしとあやす。その様子を嬉しそうに眺めるリク。
あなたが急に来るから大声を出してしまったのよ?
けどリク来るなんていったいどうしたのかしらね?



「はい、コーヒーよ。あなたが尋ねてくるなんてビックリしたわ。いつニッポンから戻ったの?」

 おじいさんに貰った、インスタントの安物のコーヒーを作り、リクに出す。
お屋敷で働いていた頃は、こんなものを飲むなんて思いもしなかったわ。

「ついこの間戻ってきました。ニース様が日本にまで迎えに来てくれたんですよ」
「ええ?ニース様が遠い異国のニッポンまであなたを迎えに?」

 リクの言葉に驚きを隠せない。
まさかあの子が遠い異国までリクを迎えに行くとは。
目が見えなかった頃は、出かけるのをあんなにも嫌がっていたのに……成長したのね。

「ニース様は言われました。私に右腕になってほしい、と」
「……そうね、あなたならニース様を支えることが出来そうね。
私がこんなことをお願いするのは筋違いだけど、あの子を……ニース様をお願い」

 これからはリクがあの子の側にいてくれるのね。……よかったわ。
リクはニース様のことを誰よりも真剣に考えて、とても大切に思っていた。
長年側にいた私よりも、ずっと真剣に考えていた。
……うん、安心ね。もうニース様に、私は必要ないわね。

「そのことなんですが……断りました」
「……なん、ですって?」
「私ではニース様の右腕にはなれないと断ったんです。
ニース様を支える右腕には、ナルディアさんしか……はががッガがあっがががっぎゃっがっが
がっががぁぁ〜〜!」

 怒りが湧いてくる。沸々と怒りが湧き出てくる。
きっとあの子はものすごく勇気を振り絞り、ニッポンまでリクを迎えに行ったはず。
そして、さらに勇気を振り絞り、リクに右腕になってほしいと申し出たはずよ。
それを……断った?リク!あなたいったい何を考えているの!

「せっかくの申し出を……断ったの?」
「はが!はがが!あぎゃぎゃぎゃ!」

 怒りで右腕に力が入る。力が入る度、指がリクの喉元にめり込んでいく。

「あの子に迎えに来てもらいながら……断った?」
「は、がはぁ……し、しぬ、いき、できな……い」

 両手で首をつかみ、ギリギリと締め上げ持ち上げる。
何故断ったの!つまらない理由だと、一生後悔させてあげるわ!

「あの子の誘いを断るなんて……許せないわ!
あの子がどれだけ勇気を振り絞ってあなたの元に行ったのか、考えたことがあるの?
小さなあの子が振り絞った、精一杯の大きな勇気……それを断るなんて!
分かってるの、リク!何とか言いなさい!」
「あぐ、あぐふぅ……かふ!」

 宙吊りのまま、動かなくなったリク。黙ってないで、何か言いなさい!

「聞いたわよ!今、この耳で確かに聞いたわ!」

 動かないリクにさらに問いただそうと、床に叩きつけたところで突然女の子の声が。
え?誰?リクは一人じゃなかったの?いったい誰を連れてきたのかしら?

「今、リクに言った事、嘘じゃないでしょうね?ねぇナルディア?」

 玄関のドアがいつの間にか開いており、その先には、見覚えのある人物が立っていた。
私の記憶よりも少し背が伸びており、顔も少し大人っぽく成長をしていた。
ほとんどなかった胸は、わずかながらに膨らんできている。
その顔には、不釣合いなほど大きなメガネがかけられており、その少女の目がかなり悪いこと
を表している。
まさか……何故あなたがここにいるの?どうしてあなたがこんな田舎に?
気が動転している私の耳に、もう一人の人物の声も聞こえる。

「相変わらずじゃなぁナルディアよ。それ以上踏みつけると、リクが死んでしまうぞい?」

 優しい響きを持つ懐かしい声。
その声の主を見て、涙が溢れ、止まらなくなる。
まさか……まさか、何故あなた達がここにいるのですか?

 今、私の目の前には、以前勤めていた屋敷の今の主、ニース・E・ラインフォード様と、
そのニース様に当主の座を明け渡し、引退したはずのカシュー様……
カシュー・B・ラインフォード様がいた。



「狭いわねぇ。こんな狭いところによく二人も住んでるわね。
あ!これがおじい様との子供ね?確か名前はオルソンだったわね?」

 ベッドで寝ているオルソンの頬をツンツンとつつくニース様。

「おおお!これが可愛い我が息子か!……鼻立ちがワシに似ておるのぉ」

 同じく頬をつつくカシュー様。
何故こんなことになっているの?いったい何が起きているの?
目の前で起こっている現実に、訳が分からず戸惑う私。
だって、こんな片田舎の小さな家に、ニース様とカシュー様がお尋ねになられてきたのよ?
これはいったいどういうことなの?仕事で疲れて夢でも見ているのかしら?

「で、アンタ、今の仕事、続けていくつもりなの?いくらアンタでもそのうち体壊すわよ?」

 そうだわ、これはきっと夢なのよ。夢でなければこんなことありえないわ。
私のことを裏切り者と罵り、怒り狂っているという噂だったニース様が、
まるで私がお屋敷に勤めていた頃のように、優しく話しかけてくださるなんて。

「産後の体で畑仕事など、もっての外じゃ!お主を貶した輩がおるとも聞いておる。
誰の種とも知れぬ子を産んだ、売春婦と言われておったらしいではないか!
リクよ!今すぐ村人全員を集めよ!このオルソンはワシの子じゃと教えてやるわ!」

 オルソンの頭を撫でながら、陰口を叩かれた私のためにお怒り下さる優しいカシュー様。
あぁ……私はこの優しさに惹かれてしまったんだったわ。
このカシュー様の全てを包んでくださるような優しさに惹かれて……オルソンはワシの子供?

「カ、カシュー様!ワシの子供とはいったいどういうことですか!
この子は私が行きずりの恋で作った子供。あなたとは何の関係もありません!」

 オルソンを自分の子供と認めてくださるのですか?……嬉しいですが、それはいけません。
オルソンが貴方の子供だと分かれば、ニース様の立場はどうなるのです?
ラインフォード家の内紛の種になるかもしれません。
私の過ちからそのようなことにはさせません。この子は私が育てます。
私一人で立派に育てて見せます!

「アンタねぇ、そんなバレバレなウソ、吐かなくてもいいのよ。
おじい様に責任取らせて上げなさいよね」

 オルソンの頬をツンツンしながら、小さな手を触るニース様。
オルソンの指をおっかなびっくり触るその仕草は可愛くてたまらない。
……けど、やけにリアルな夢ね。いつまで見続けれるのかしら?

「ワ、ワシは行きずりの恋じゃったのか……ワシは本気じゃったのに」

 がっくりと膝を突き、落ち込むカシュー様。
ウフフフ、貴方のそういうお茶目なところも好きでした。

「ねぇナルディア。今の仕事、お給料少ないんでしょ?だったらね、その、あれなのよ!」

 ホントにリアルな夢。今手を伸ばせばニース様に触れそう。……ちょっと触ってみようかな?
懐かしい夢に、思わず手が伸びてしまう。……ええ?凄くリアルな夢なのね?
頭を撫でてる感触まであるなんて……本当に触っているようだわ。

「ナ、ナルディア?急に撫でてくるなんていったいどうし……ヒィ!
キ、キツク抱きしめるのはナシ!ナシだからね!」

 触った感触も感じることの出来る夢だと知り、つい抱きしめてしまう。
前までは感じることのなかった、胸のふくらみ。
体も少し大きく成長しており、女の子らしく柔らかい体に育っている。
前までは小さな子供の体だったのに、しばらく見ないうちに女の子の体になったんだ。
……ウフフフ、やっぱりニース様を抱きしめるのは気持ちいいなぁ。
 
「キ、キツクはダメ!アタシ、まだじにだぐぅ〜!
あ、あががががががやぎゃぎゃぎゃ……かふ!」

 懐かしさのあまり、思わずギュッと強く抱きしめる。
あぁ、この匂い。懐かしいニース様の匂いがするわ。……夢って匂いまで再現できたかしら?
夢の不思議に頭を捻る私の肩を叩く人が。
その人を見てみると、困り顔のカシュー様。
床に倒れて痙攣しているリクを指差し首を振っている。
……どういうことかしら?何故リクは床で寝ているの?
時折痙攣をしているし……リクは夢の中でも訳の分からない動きをするのね。
  
「ナルディアよ。そろそろニースを離してはくれんかのぉ。
そのまま抱きしめておると、リクのようになってしまいそうじゃ」

 ……は?カシュー様はいったい何をおっしゃっているのかしら?
不思議に思い、腕の中のニース様を見てみる。
……女の子らしくなったと思っても、こういうところは変わらないのね。
腕の中には何故か白目をむいて、動かないニース様が。
昔も時折こういう顔を見せてくれたわ。……きっと私を驚かせようとしているのね。
少しは大人になったと思っていたけど、ニース様はまだまだ子供なのね。

「いえ、もう少し抱かせていただきます。
せっかく懐かしい夢を見ているのですから、もう少しだけ……」

 そう、もうこんな懐かしい夢は見れないかもしれない。
だったらもう少しだけニース様の感触を楽しませてほしいわ。

「夢、じゃと?わっはははははは!そうかそうか!
ナルディアはワシらが夢じゃと思っておるのか!なら、これも夢かの?」

 大きな声で笑われたかと思うと、真剣な顔になり、私をじっと見つめる。
その表情を見た瞬間、胸がドキリ反応する。
夢の中でもこんな反応してしまうなんて……え?えええ?
真剣な眼差しのまま顔を近づけてきたカシュー様。
そして、そのまま私は……唇を奪われた。

「んな?な?ななななな?何をなさいます!」

 急に奪われた唇。奪った本人はニヤニヤといやらしい満足げな笑みを浮かべている。
もう!いきなり破廉恥なことはしないで下さい!

「わっはははは!慌てふためくナルディアは可愛いのぉ。惚れ直してしまったぞい」
「か、からかわないでください!」
「わっははははは!どうじゃ?今のキスで夢は覚めたかの?王子様のキスじゃ。
眠れる姫様は、王子のキスで目が覚めるらしいからの。
この歳で王子様をするとは思いもせなんだ。わっはははは!」

 え?夢が覚めたかですって?
た、確かに今のキスは夢じゃない……唇から広がる甘い波動。
その波動が全身を駆け巡り、私をトロトロに溶かしてしまう。
こんな幸せな感触が夢で味わえる訳ないわ。ということは、本当にキスをされた?
そっか、私、またカシュー様にキスをしてもらえたんだ。
カシュー様にキスを……あれ?
ということは、私の家にカシュー様が来られているってことなの?
えええ?ということは、これは……現実?

「え?えええええええ〜!な、何故カシュー様がこのような狭い家にお尋ねになられて来たので
すか!その、あのですね……コ、コーヒーをお淹れいたします!」

 腕の中でぐったりとしたニース様を投げ捨て、コーヒーを作りに走る。
もう!何故こんな大事な時にニース様はふざけているんですか!
しっかりしていただかないと、怒りますよ!
……ああああ〜!どうしよう?家には安物のインスタントコーヒーしか置いてないんだった!
こんな安物をお出ししたら、失礼よね?
でも今の時間空いているお店はないし……そもそもいいコーヒー豆を置いているお店なんてこ
の町にはないわ。
いったいどうすれば?ああああ、どうしようどうしよう?

 突然のカシュー様たちの来訪で、慌てふためく私。もう!どうして急に訪ねてくるんですか!



「……うん、やっぱりナルディアの淹れてくれた飲み物が一番美味しいわね。
殺されかけた体全体に、行き渡るようだわ」

 安物のコーヒーをどうやって出そうかと、散々迷った挙句、もらい物の牛乳を入れたカフェオ
レで出してみた。
ニース様には思いのほか好評だったみたい。……ほっ、よかったわ。

「うむ、やはり美味いの。この味の決め手は、ワシへの愛情じゃな」

 コーヒーを一口口に含み、ニヤリと笑みを浮かべるカシュー様。
な、なにを言っているのです!そんなものはあまり入れていません!
……た、確かにカシュー様の分には、少し手間をかけましたけどね。  

「そうですよね。やはりこういう飲み物はナルディアさんに淹れてもらわなければ」

 リクもコーヒーを口に含み頷いている。
残念だけど、あなたの分は適当に作ったわ。
美味しく感じるのならば、それはあなたの舌がおかしいだけよ。

「お褒めいただき、ありがとうございます。
またお二方に、私が作ったお飲み物を召し上がっていただける日が来るなんて、思いもしませ
んでした。
ところで……このような辺鄙な田舎に来られるなんて、今日はいったいどうなされたのです
か?」

 目の前で私が作ったコーヒーに舌鼓を打たれているお二方を見て、少し感動してしまった私。
……いけないわ、感動なんかしている場合じゃないわ。
2人は私に何かの用があって来られたはず。いったい何の用なのかしら?

「ふむ、それなんじゃがな……ニースや、今はおぬしが当主じゃ。お主から話すがよい」
「えぇ、分かってるわ、おじい様。ナルディア……あのね、今日アタシ達がここに来たのはね…
…え〜っとね」

 真っ赤な顔でうつむき、モジモジとしだしたニース様。
うふふふ、こういう可愛いところは変わっていないのね。
……これからも変わらないでほしいなぁ。

「あのね、その……か、帰ってきてもいいのよ?」
「……は?帰ってきてもいい、とはいったい?」
「だ、だからね、その……」

 目をギュッと瞑り、両手をギュッと強く握ったニース様。
その様子が可愛くて可愛くて……あぁ、ギュッと強く抱きしめたいわ。

「ア、アンタがいないとね、イヤなの。ナルディアがいないと……寂しいの。
アンタじゃなきゃイヤなの。ナルディアが側にいてくれなきゃイヤなの!
ナルディア、アンタが屋敷にいないと、寂しくて寂しくて……イヤなの!
だから……帰ってきてよ。またアタシと一緒に暮らしてよ。
もう大事な人が側にいないのはイヤなの。
もうアンタが側にいないのは、寂しくてイヤなの。
……ヒック、ナルディア、ゴメンなさい。悪口言ってゴメンなざいぃぃ〜」

 俯いたまま肩を震わせ、ポロポロと涙をこぼすニース様。
まさか……まさか私を迎えに来てくださったの?この私を?この……私なんかを?
まさかの出来事に、私も涙が零れそうになる。
けど……私は屋敷にいてはいけない。そう、今の私には、オルソンがいる。
この子を立派に育て上げることが私の仕事。
ニース様の誘いは涙が出るほど嬉しいけど……断るしかないわ。

「ニース様……私などに、そのようなありがたいお言葉、身に余る光栄です。
しかし、私は帰るつもりはありません。今のニース様にはリクがいます。
リクさえいれば私などがお仕えしなくても……」

 そう、いまの私にはオルソンがいる。……カシュー様の血を引くオルソンが。
世間にカシュー様の血を引いていると判明してしまったら、きっと大変な騒ぎになる。
そうなれば、ニース様もどうなるか……ニース様は強引な手法で当主の座に着いたと聞いてい
るわ。
ニース様のことをよく思っていない親族の方に、オルソンを利用されるかもしれない。
……ニース様に迷惑はかけたくない。
私のワガママで産んだオルソンのせいで、迷惑はかけることは出来ない。

「ニース様、こんな私などのためにわざわざ足をお運びいただき、ありがとうございます。
ですが……私があのお屋敷に戻ることは、二度とありません」

 ……ありがとうございます。
私などのために、涙を流してもらえるなんて……ニース様、本当にありがとう。
ナルディアは、このことを一生忘れません。
ニース様や屋敷の皆、それに……カシュー様にいただいた思い出を胸に、精一杯生きていき
ます!

「……ナルディア、アンタ、さっきアンタ自身がリクに言った言葉、もう忘れたの?」

 私のために涙を流してくださったニース様に頭を下げ、涙を堪えていると、
ニース様がさっきの言葉を忘れたのかと問いただしてきた。
さきほどの言葉?いったいなんのことかしら?

「アンタはさっき、リクにこう言ったのよ。
『あの子がどれだけ勇気を振り絞ってあなたの元に行ったのか、考えたことがあるの?』って
ね。
『小さなあの子が振り絞った、精一杯の大きな勇気……それを断るなんて』とも言っていたわ
ね」
「い、いや、それは確かにそう言いましたが……」
「アンタも考えたことあるの?アタシがここに来るのがどれだけ怖かったか。
アタシね、昨日眠れなかったのよ。『ナルディアに嫌われてたらどうしよう?』って考えるだけで
怖くて……寂しくて」
「ニース様……私はニース様のことを嫌ったりはいたしません」
「ならなんで……ひっく、なんで戻ってきてくれないのよぉ……ワガママはもう言わないから!
アタシ、いい子になるから!だから……だから戻ってきてよぉ〜!」

 大きな口をあけ、ワンワンと泣き出したニース様。
それにつられ、私も涙を零してしまう。ニース様……私も、ニース様のお側にいたいです。
お仕えしたいです!
ですが……オルソンがいることで、あなたに迷惑がかかるかもしれない。
私の我儘で産んだオルソンのせいで、あなたに迷惑はかけられないんです!

「申し訳、ありません。グス、私などのために、涙を流してくださったこと……一生忘れません。
本当に申し訳ないのですが、私は、お屋敷に戻ることは……」
「まぁまぁ、二人とも、そう焦って結論を出さなくてもいいじゃないですか。
久しぶりに会ったんです、積もる話もあるでしょう。今夜はゆっくりと話しましょうよ。
だから、ニース様、そんなに泣かないでください」

 泣きじゃくるニース様をギュッと抱きしめ、なだめるリク。
以前は私の役目だったのに……もう私はいなくても大丈夫ね。

「だ、だったら、ひくっ、ナルディア、ヒッ、帰ってきて……うわぁぁぁ〜ん!」
「あらららら……これは少し時間を置いたほうがいいかもしれませんね。
ナルディアさん、空いている部屋を貸してもらってもかまいませんか?
そこでニース様が落ち着くのを待ちますので」

 ニース様が私なんかのために泣いてくださってる。ワンワンと声を上げ、号泣してくださってい
る。

「グスッ、では、隣の部屋に……グス、案内します」
「隣の部屋ですね?私が連れて行きますので、ナルディアさんはカシュー様と積もる話でもして
いてください。さ、ニース様、隣に行きましょうね」
「ヒッグ、ナルディアのばかぁ〜、なんで、ひっく、イジワル言うのよお〜」

 泣きじゃくるニース様の肩を抱き、隣の部屋へと連れて行くリク。
リク、ごめんなさいね。ニース様を慰めてあげてね。
もうその役目は私ではなく、あなたの役目なのだから……



「さて、と。リクのおかげでやっと二人きりになれたの。ナルディアよ……会いたかったぞ」

 肩を抱かれて連れて行かれるニース様の後姿を見ていたら、後ろからそっと抱きしめられ
た。
このぬくもり……忘れもしない、私に新しい命を下さったお方。
私のとても大切な……愛するお方。
カシュー様が私を抱きしめてくれている。嬉しさのあまり、涙が溢れてくる。

「もっと早くに迎えに来たかったんじゃが、ニースに止められておっての。
すまなんだな、相当苦労をかけたようじゃな。じゃが安心せい。これからはワシがお主達を守っ
てやる!」

 ギュッと抱きしめられ、耳元で囁かれる力強い言葉。
私を抱きしめる力強い腕と、耳元で囁かれる夢にまで見た甘い言葉。
カシュー様……ありがとうございます。ですが、やはり私は……

「カシュー様……私などにもったいなきお言葉、ありがとうございます。
カシュー様やニース様を裏切り出て行った私などには、本当にもったいないお言葉です。
ですが……今さら屋敷には戻れません。私は行きずりの恋で身ごもった子を産んだ、まるで売
春婦のような女です。その私が再度ラインフォード家に仕えるなど、できません。
わざわざこのような辺鄙なところまで足をお運びいただきながら……申し訳ありません」
「ワシの前でウソは吐かんでもいい。ワシ以外に誰がお主を抱いたりするものか。
そのような命知らずはワシしかおらんよ」

 ギュッと強く抱きしめながら囁いてくださるカシュー様。
あぁ、カシュー様……命知らずってどういう意味なのかしら?
 
「嘘ではありません。あの子は……オルソンは私が見知らぬ相手と寝たために出来た可哀想
な子。私はこの子を産んだ責任を果たすため、ここで働き、立派に育てるつもりです」
「ナルディアよ、ワシのことが嫌いなのか?」
「まさか!カシュー様のことはお慕いしております!」
「……それは、ワシのことを愛していると捉えてもいいのかの?」
「え?い、いや、それは……その……」

 抱きしめてくれていた大きな手が、私の胸に回される。
そして胸を優しく包み、ゆっくりと揉み解す。

「あ、んん……ダ、ダメです、カシュー様、ダメ」
「おお、さすがに子供を産んだだけはあるの。少し大きくなっておるな」

 興奮した声で、囁くカシュー様。ダメだと言っているのに……あん!

「ワシはの、お主とこうして愛し合うことを、ずっと待っておったんじゃ。
今日はその想い、果たさせてもらうぞ?」
「や、止めてください、カシュー様、ダメ……い、痛い!」

 胸を強く揉まれた瞬間、痛みが走る。これは……母乳で胸が張っているからね。  
痛がった私に驚き、手を離すカシュー様。……少し残念に感じている私に驚きだわ。

「す、すまぬ、そんなに強く揉んだつもりはなかったのじゃが。大丈夫かの?」
「え、えぇ、申し訳ありません。
母乳で少し胸が張っておりまして、あまり強くもまれると痛みが走り……カ、カシュー様?」

 何故かハァハァと息荒く、少し目が怖くなったカシュー様。
えっと……これは興奮してるのかな?何故急に興奮してしまわれたのかしら?

「そ、そうか、母乳か……ナルディアや、その母乳をワシにも少し飲ませてくれんかの?」
「は?はぁぁ?カ、カシュー様が飲まれるのですか?」

 大きくコクリと頷くカシュー様。な、何故そんなに嬉しそうに頷くんですか!

「ダ、ダメです!これはオルソンのご飯なんです!なんでそんなものを飲みたいなんて言うんで
すか!」
「どうしてもダメかの?」

 少し拗ねた様な表情で私を見つめる。そんな顔をしても、ダ・メ・で・す!

「ダメなものはダメです!」
「しかし胸が張っておるんじゃろ?」
「そ、それは確かに張っていますけど……それとこれとは関係ありません!ダメなものはダメで
す!」
「お主は相変わらず真面目じゃの。……それでこそ、ワシが惚れた女子じゃ」

 拗ねた表情から一変し、優しい顔になる。
そして私に手を伸ばし、その大きな胸にそっと抱き寄せてくれる。
大きな、暖かい胸に抱かれる私。
大きな胸に顔を埋め、目を閉じる。……あぁ、カシュー様の匂いがする。

「ナルディアよ、ワシはお主を心の底から愛しておるんじゃ。ワシが果てるまで、側にい続けて
ほしい」
「果てるなどと……そのような縁起でもないことは言わないでくださいませ。
そんな悲しいこと、もう二度と言わないでください」

 カシュー様が口にした、『果てる』という言葉。
そう、カシュー様は私よりもずっと年上のお方。いつか必ず天に召される時が来る。
愛する人が、私よりも先に天に召されるのは……もういや。
もうあんな悲しい思いは、スレインの時だけで十分。
もう二度と愛する人に先立たれたくない。だから、カシュー様。私よりも長く生きてくださいませ。

「……すまぬな。お主を泣かすつもりなどなかったんじゃ。
ワシはお主に迷惑をかけてばかりじゃな。
……ワシに出来ることは、お主の流した涙を拭うことくらいじゃ」

 カシュー様がいなくなる。死んでしまう……悲しい考えが頭の中でグルグルと回る。
悲しさのあまり、涙がポロポロとこぼれ、カシュー様の大きな胸をぬらしてしまう。
そんな泣きじゃくる私の顔を少し持ち上げ、流れる涙をそっと唇で拭ってくださるカシュー様。
カシュー様の唇が涙を拭うたび、唇が触れるたびに体中が熱くなり、私の中の女が疼いてく
る。
そんな私の変化に気づいたのか、キスで涙を拭いながら、背中の手を回し、ブラのホックを器
用に外すカシュー様。

「あ、んん……ダ、ダメ、ダメです。隣の部屋にはニース様たちがいます。
声を、あん!声を聞かれてしまいます……お願い、止めて」

 私の言葉を無視し、頬、耳、首筋、胸元と、キスの雨を降らすカシュー様。
その甘いキスの雨に打たれ、抵抗できなくなってしまった私。
カシュー様は私の膝元にしゃがみこみ、スカートを持ち上げようとする。
あぁ、次は下着を剥がされるのね?そしてそのまま押し倒されて……下着?
そういえば私、畑仕事から帰ってきて、シャワーを浴びていないわ。
下着も汗で汚れて……今日の下着、5枚一組の安物だった。
しかも、少し擦り切れてて……イ、イヤァァァァァ〜〜〜!

「ダメェェェェェェェ〜!」
「へ?……ほっぐおおおぉぉおぉおおぉ〜〜〜!」

 めくられ様としていたスカートを、寸前のところで押さえつける。
その際、なにか『ボキッ』という、鈍い音がした気がする。何の音かしらね?
それにしても、危なかったわ。こんな下着を身に着けているなんて知られたら、恥ずかしくて生
きていけない。
どうにか見られなくてすんだとホッとしていると、なにやらうめき声が聞こえてきた。
何故うめき声が聞こえるの?誰の声かしら?
不思議に想い、部屋の中を見渡してみる。……カシュー様が呻きながら壁とキスしてるわね。
いったいどうなされたのかしら?

「こ、これが噂の…ナルディアの……怪………力、がはぁ!」

 壁にキスをしていたカシュー様は、ばたりとお倒れになられたわ。
いったいどうしたのかしら?何故急に壁とキスなんて……不思議なこともあるものね。



「じゃ、行ってくるわ、留守はお願いね。おじい様の世話をしっかりと頼むわよ?
さ、リク、行くわよ!」
「では行ってまいります。カシュー様をよろしくお願いしますね」

 ニース様の今日ご予定は、この国の財界人たちとの会合。
本来ならカシュー様も付き添われるはずだったんだけど……肋骨を骨折されて、お屋敷で療
養しなければいけないの。
ニース様とリクに、ニヤニヤした顔でカシュー様のお世話を頼まれる。
ぐっ、ニース様はまだしも、リクにまであんな顔をされるなんて……屈辱だわ。
怒りを堪え、カシュー様にお飲み物を用意するために部屋へと向かう。

「失礼します。ニース様たちは会合へと向かわれました」
「そうか、もちろんリクも一緒に行きよったんじゃな?」
「はい、仲良く手をつなぎ、出て行かれましたよ」

 あの後、私は再びラインフォード家にご奉公することになった。
正確には、カシュー様にご奉公することになったの。

「そうかそうか、出て行ったか。では、今日も治療をお願いしようかの?」
「きょ、今日も、ですか?」
「おお、今日も、じゃぞ。ではよろしくお願いしようかの。
……リクから聞いた、ニッポン流の治療法を」

 ニコニコとほほ笑みながら立ち上がり、何故かズボンを下ろすカシュー様。
いつものように私はその足元に跪き、下からカシュー様を見上げる。

「ほ、本当にこのような方法で骨折が治るのでしょうか?」
「治るとも治るとも。ニッポンでは怪我は唾をつけて治すらしいからのぉ。
治療を終えた後は、いつものように母乳で喉を潤わせてもらおうかの?」
「ぐ、ぐぅぅ……で、では失礼します」

 ニコニコとほほ笑んでいるカシュー様の下着を下ろし、カシュー様のペニスを手に取り、キス
をする。
唾液をペニスに塗るように、舌を這わす。
唾液を満遍なく塗り終わると、口に含み、口でご奉仕をする。

「ん、ちゅ、ちゅちゅ……はむ、んっく、んくんく……じゅぶ、じゅぽ、ずずずずず」
「ん、おお……気持ちいいのぉ、ナルディア、お主は口技が上手いのぉ」
「んん……かはぁ!はぁはぁはぁ、い、言わないでくださいませ」

 昼間からカシュー様のペニスを口に含み、ご奉仕する。
何故このようなことになったかというと……私が怪我をさせてしまったみたいなの。
下着を見られるのを阻止しようとした時に、ついカシュー様を蹴飛ばしてしまったの。
その時にカシュー様の肋骨が……ポッキリと折れちゃったみたいなの。
……カシュー様に大怪我を負わせるなんて、死のうと考えたわ。
でも、リクに言われたの。
『死ぬことは責任逃れですよ。それに、オルソン君はどうするんですか』と。
……オルソンを残して死ねない。
けど、カシュー様に大怪我を負わせてしまった責任を取らなければ。
私は一体どうすればいいの?
パニックに陥った私に、少し悪い顔をしたニース様がこう言ったわ。

『アララララ……責任、おじい様に怪我を負わせるなんて……責任、取ってもらうわよ?』

 その責任の取り方が……カシュー様付きのメイドとして働くということだった。
お給金は以前と変わらず、仕事はカシュー様の身の回りの世話だけ。
私は断ろうとしたわ。でも、断ろうとする度にカシュー様が胸を押さえ、『ほ、骨が!骨がぁ
〜!』って大げさに痛がるの。
断ろうにも断りきれず、私は再びラインフォード家にお仕えすることになったわ。
いや、違うわね。正確にはカシュー様にお仕えする、ね。
私がカシュー様にお使えしたその日から、カシュー様にエッチなご奉公を命令されている。
……カシュー様ってすごくエッチなお人だったのね。
今気が付いたけど、肋骨とペニスって関係ないのでは?
何故ペニスを舐めなければいけないのかしら?
それにリクが余計なことを教えているみたいだし……一度問いたださなきゃいけないわね。
今日にでも問いただしてみようかしら?あなたはいったい何を教えているの?ってね。
でも、その前に……

「カシュー様……今日はお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」

  口から吐き出したペニスを手で扱きながら、カシュー様を見上げる。
毎日毎日カシュー様に口でご奉公する。
肋骨が折れているから無理は出来ないのはわかっているわ。
でもね……もう限界!

「ナ、ナルディア?少し目が怖いぞ?いったいワシに何をさせるつもりじゃ?」
「何を、ですって?ウフフフフ、言わなくても分かっていますでしょ?」

 用意しておいた避妊具の封をあけ、大きくなっているカシュー様のペニスに被せる。

「ナ、ナルディア?ワシは肋骨が折れておるんじゃが?」
「大丈夫です。また折れても私が看病いたします」

 下着を下ろし、下半身裸になる。下着の中心は、濡れて色が変わっていた。

「お、落ち着け、落ち着かんかナルディア!」
「毎日毎日お口でご奉仕して……何故私にはしてくださらないのです?もう我慢の限界です!」
「わ、分かった!ワシも口でしてやるから!だから、落ち着……おわ!」

 慌てふためくカシュー様を押し倒し、唇を奪う。
舌をねじ込みながら、大きくなっているペニスを私へと導く。

「カシュー様、愛しています。あぁ、カシュー様ぁ……ん、ああん!」
「ひぐ!ナ、ナルディア落ち着……」
「ん、んん!ん、んん!ん、んん!あ、ああん!ん、んんん!」
 
 カシュー様の上に馬乗りになり、一心不乱に腰を振る。
自ら胸を揉み解し、母乳を撒き散らしながら腰を振る。
私の中にある、カシュー様を感じながら私は腰を振り続けた。
あぁ……私、幸せね。
愛する人の子を生むことが出来て、その愛する人と、こうして愛し合うことが出来るんだから。

 私は愛する人と愛し合える幸せに浸りながら、一心不乱に腰を振り続けたわ。




「……れ、連続3回は無理……死んでしまうぅぅぅ〜」



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