「月くん、林檎はお好きですか」 「…嫌いじゃないけど。どうしたんだよいきなり」 「良かったら食べて下さい」 言うなり流河はガラスの器を月の方へ押しやった。 中には兎に模した形に切られた林檎が2つ。 「嫌いなのか?」 「ええ、あまり」 「意外だな。好きそうなのに」 じゃあ遠慮なく、と器に手を伸ばす。 どうぞ、と流河。 死神は羨ましそうに、所有権の移ったそれを目で追う。 「…加熱してあれば美味しいんですけどねえ」 「甘味が足りないって?」 背後の気配は黙殺し、はは、とからかう口調の月。 流河は相変わらずの無表情で。 「生だと鉄の味するじゃないですか、林檎って」 月のフォークを持つ手が止まった。 それから、心からの呆れ顔で一言。 「歯医者行けよ、流河」
蜜入り林檎はボソボソして美味くないと思う (話逸らして誤魔化してみる) 04.09.20