休憩時間の事だった。

「松田さん、お姉さんいるでしょう」

紅茶を運んで来た男へ竜崎は、振り返りもせずそう言った。
言われた方はふいを突かれて立ち止まる。

「え、す…すごい!なんでわかったんですか!?」 

彼の洞察力はこんな所にまで及ぶのか、そう感心する松田。
しかし竜崎は事もなげに言い放った。

「調べたから知ってるだけですよ」 

相変わらず振り返らない。
松田は別の意味で、止まった足を動かせなくなった。

「え…」 

竜崎は気にしない。

「松田さん」 
「はい、」
「怪しげな壺など買わされないよう気をつけた方が良いですよ」

漸く振り返ったかと思うと催促するように手を伸ばされた。
慌てて紅茶をソーサーごと渡した松田は、数秒遅れで竜崎の台詞の意味を理解する。

―もしかして今のは馬鹿にされたのだろうか…―。

「ケーキも出してきてもらえますか」

やはり竜崎は気に留めない。