「なぁ、ジローは好きな奴おらんの?」
電気を消して真っ暗になってる俺の部屋で、いきなり侑ちゃんがそんな事を言いだした。
俺はベッドで、侑ちゃんは布団で寝てて。
侑ちゃんが泊まりに来た時の、いつも状況。
俺としては正直…布団でもベッドでもどっちでもいいから、一緒に寝たいんだけど。
だけどやっぱり、これはまだ本人には言えない、よね。
「…なんで?」
「いつも俺の話ばっかで、ジローのそういう話聞いた事ないんやもん」
…だって、話せないじゃん。
他の人を好きな侑ちゃんに、そんな話したって、しょうがないじゃん。
「修学旅行の夜みたい」
「俺も思った」
小学校の修学旅行も、去年行ったオリエンテーションでも、こんな感じだった。
消灯してからが、話の本番。
「なぁ、いてへんの?」
話逸らして誤魔化しちゃおうと思ったのに、侑ちゃんは意外としつこくて、だんだん俺はむかついてきた。
俺がホントの事言ったら、困るのは侑ちゃんだよ?
「いるよ」
何て答えようか迷ってたはずなのに、気が付いたら口が勝手に喋ってた。
「なんや、やっぱいてるんかー」
何でか知らないけど、侑ちゃんは少し嬉しそう。
楽しそうな声で色々聞いてくる。
「どうなん、うまくいっとんの?」
「全然。だって俺、まだ告ってもないもん」
「そうなんか…どんな奴?」
「うーん…可愛い、かな」
ちらっと侑ちゃんの方を見たら、俯せて顔だけをこっちに向けてた。
…うん。可愛いで合ってる。と思う。
「へぇ、可愛い、なぁ…芸能人で言うたら誰?」
「え〜…わかんない」
これはホントにわかんない。
ていうか、もし思いついても、言っちゃったらバレちゃうでしょ。
少なくとも、男だって事はバレるよね…。
「そや、そいつといつどこで知り合うたん?」
「中1の時、学校で」
「うそっ、ほんまに?て事はもしかして、俺も知っとる奴?」
知ってるどころの騒ぎじゃないんだけどね。
俺の気も知らないで色々聞いて来る侑ちゃんに急におかしくなって、俺は少しだけ笑いながら答えた。
「うん」
「ちょお、ほんまに?全然わからんかったわ」
当たり前じゃん。
わかんないようにするの、ホントは結構大変なんだよ?
「なぁ、ぶっちゃけ、誰?」
「秘密」
「なんでー?教えぇや」
「こういうのは人に言わない方が叶うって、何かで聞いたから」
「…ジロはロマンチストなんやなぁ」
「そうでもないよ」
ロマンチストは侑ちゃんの方だよ。
こんな嘘を簡単に信じちゃうんだから。
「じゃあ、うまくいったら教えたげるね」
「おぉ。…つーかその、何や…」
侑ちゃんはそこで口ごもって、それから少しだけ照れたみたいな声で
「もし、何か話したくなったら言うてや。俺じゃ相談相手にならんと思うけど…愚痴くらいやったら、聞けるから」
そう言って、恥ずかしそうに寝返りを打って向こうを向いた。
それから独り言みたいに、俺になんか話したないかも知れんけど!とか、いつも俺ばっか話してて悪いし、何か俺がアホみたいやんか、とか言って。
相当照れてるらしい。
言っちゃおうか、と思ったんだけど。
次の瞬間、侑ちゃんが
「俺は一応自分の事…『親友』やと思うてるんやから。何かあったら、ちゃんと話しぃや」
なんて言うもんだから、結局言いそびれた。
しょうがないから俺は、ちょっと笑いながら、ありがとうって言った。
読みづらくてごめんなさい。
「すべて選択」にすると読みやすいよ!(直せ)(しかももう遅い)