君の拙い「アイシテル。」




ぶっちゃけた話、ジローの字は汚いと思う。本人には失礼やけど、これはほんまに。

俺かて別に、人に自慢出来る程字が綺麗って訳でもないけど。そやけどあいつの字はほんまに下手くそや。

これでよくテストとかで注意されへんな?思うくらい。

漢字の書き取りで点取れへんやろ?いうくらい。…いや、あいつはもともと漢字の読み書き自体が苦手やねんけど。








最近ジローは、「寝る」以外に新しく授業中の暇潰しを憶えてもうた。

それは「手紙を書く事」。

女子がやっとんのを見て思い付いたらしいけど、そんなんしとらんで普通に授業聞けっちゅうの。

大体、わざわざ紙に書かんでもメールしたらええやろ。いや、授業中に、いうんは感心せえへんけど。

そう言うたら、


「だって、手書きの方が想いが伝わるーって感じするC」


という答えが返ってきた。

…まあ、女子のリレー式の渡し方は真似せんかったからまだええとすべきなんかも知れん。

休み時間の度に人の席まで飛んできては、授業中に書いた手紙を手渡す。

折角顔突き合わしとんのやから、何か話したらええのに。

せやけどジローの奴、俺が受け取るとめちゃめちゃ嬉しそうな顔しよるから、結局毎回言いそびれてまう。

内容はほんっまにしょーもない事。

昨日観たテレビがどうとか、授業中にセンセが何回かんだとか、そんなんばっか。

紙に書くより口で言う方が早いわ!て、ツッコミたくなる様な。

俺が読んどる間ジローは、前の奴の席に陣取ってじーっと待っとる。

ほんで、手紙の内容に口で答えようとすると怒りよんのや。手紙の返事は手紙でせえ、っちゅう事らしい。

…全く、自分は我儘なお姫様か。

いや立場的に言うと、ジローは王子様やねんけどな。

…って、そしたら俺お姫様かい!

きしょッ!さぶっ!!有り得へん!!!

どこの世界にこないむさくるしいお姫様がおんねん。あぁ、きしょい。








「…なぁジロー」

「なーにー?」

「前から思っとったんやけど」

「うん」

「…自分、字ィ下ッ手くそやなぁ…」

「えー!」

椅子の背もたれを抱えるみとおにして座っとったジローは、いきなりがばっと体を起こした。

「うそ、まじー?…そうかなー??」

…自覚もなかったんかい!

「そうかなってなぁ…漢字テストとかで怒られた事ないんか?採点しにくそーやわー」

「なんも書かないで出して怒られたことならある」

「そら怒られるわ普通!」

「だって全部わかんなかったんだもん」

…アホや。筋金入りのアホがおる…。

よぉ考えたらこいつは、読みやすいようにと思って漢字を手加減して書いた手紙ですら、次の休み時間に「これ何て読むの?」て聞きに来るような奴やった…。

「ったく…小学校からやり直してき。こんなんじゃ百年の恋も冷めるわ」

「えー…冷めた?」

そう聞きながらジローは、そのままキスする勢いで俺の顔を覗き込んでくる。

…て、近い近い!

あほ、恥ずいやろが!

「う…それは……冷めてへんけど…」

「よかったぁ、じゃあいいや」

「ええ事あらへんやろ。今日からみっちり字の練習と漢字の勉強な」

「えー…やだ〜」

「「やだ」やあらへん」

「え〜…いいじゃん、俺が字ィ下手でも侑ちゃん困んないでしょー」

「困るから言うとんのや」

「何で困んの?」

「〜っ!…それは秘密や」

「なにそれ!?なんで!」








手紙の最後に、毎回必ず書いてある言葉。

…実際、読んでて恥ずかしいもんなんやで?

あの下手くそな字で、



「愛してる」



とか書いてあんのって。






甘…い?っていうかバカップル…。 ジロは字ィ下手だと思うのです。 これまた携帯サイトから転載。引き出し少ない!

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