終電まであと15分。
ここから駅まで、歩いて10分。
あと5分やりすごせばおれの勝ちだ。
早くなくなれ、最終電車
オシタリはさっきドリンクバーから持ってきたばっかりのカップをぐるぐるかきまぜている。
「やっぱ普通のレモンティーが1番うまいわ」
オシタリのまわりには同じカップが3つも並んでいる。
1つはさっきおれがふざけてレモンとミルク入れた紅茶。
中はなんか分離して大変な事になっている。
おいしいよってうそついてオシタリに飲ませたら
「普通にまずい」
と言われた。
もう1つは、フレーバーティー?とかいうやつのパックをいっぱいつっこんだやつ。
ローズなんとかとか、ストロベリーとか、あとなんか忘れたけど4種類ぐらい。
しかもそれにレモンも入れた気がする。
1口飲んだオシタリはものすごくイヤな顔して
「人間の飲みモンと違う」
と言った。
そんで水を一気飲みして、おれの分の水まで全部飲んだ。
最後の1つはジュースとかアイスコーヒーをちょっとずつ混ぜたきもちわるい液体に、
普通の紅茶のパックを入れたやつ。
どんなにすすめてもオシタリは
「紅茶に謝れ」
と言うだけで飲んでくれなかった。
しょうがないから自分で味見したけど、…うん、なんか胃液みたいな味がした。
しかもさっき水全部飲まれたから、おれは走って水取りに行ったんだ。
戻ってきたらオシタリは声出さずに爆笑してた。
なんかちょっとむかついて足をけってやったけど、そしたら余計笑った。
おれもオシタリも、携帯はあんまり鳴らない。
2人ともメールとかそんなに好きじゃないから。
だってめんどくせーし。
別にさー、さびしいとか、1人になりたくないとか、そういうんじゃないんだけど。
でもなんか、一緒にいたいんだよね、オシタリと。
オシタリといるのは楽しいし。
どうでもいい事とかくっちゃべってるだけなんだけどさ、なんか、いい。
でもさー男が男に「もっと一緒にいたい」とか言うのってきもいじゃん?
きもい、よな。うん。きもいよ。
あと5分。
携帯が鳴らなけりゃ、や、鳴ってもいんだけど、
オシタリが時間やばいって事に気付かなければ。
どうせここからじゃ、うちまで歩いて1時間はかかるんだし。
…別におれ、ホモとかじゃないけどさ。
「え?いやーもう帰れねーよ、終電逃しちった」
離れたテーブルから知らない人の、でっかい声が聞こえてきた。
オシタリは急いで携帯を取り出して
「あー、やってもうた」
時間を確かめて、肩をすくめた。
「えっ、うっそマジ!?」
ホッとしながらあわてるフリって、けっこう難しいもんだよね。
たまには友情ネタ
先日耐久ファミレス中に思いついた
(こんな事考えてましたごめん、N)
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