父の良い思い出だけを胸に抱いていられるように、私たち親子は
沖縄へと飛び立ちました。後悔はしていません。だって、あんなに
がんばったんだもの。お父さんも、きっと、わかってくれるから。
冬なのに、コバルトブルーの海が私たちを迎えてくれました。
こんなにきれいな海を見たのは、何年ぶりでしょうか。
熱帯魚のような魚が舞い、珊瑚が光っていました。
もし、天国があるならば、ここはそこに近い場所のような気がしました。
こんな海は、外国だけだと思っていました。しかし、そうではありませんでした。
砂浜は、珊瑚が砕けたさらさらのパウダーで、きらきら光っています。
日差しは強く、夏を思わせます。
長袖のハイネックのセーターが暑くて、Tシャツを買いました。
鍾乳洞の中は、比較的温かく、着た革の上着が暑く感じられました。東洋一の鍾乳洞は、
まさしく、黄泉の国のようで、少し、怖かったです。浜辺は、昼間は暑く、海水は、
生ぬるかったです。温かい、優しい感じに包まれました。
その他、世界遺産に登録された遺跡を見て、観光地を廻りました。くたくたになるまで歩いて、
もう、食べられなくなるほど食べて、思い出して泣いて、笑って・・・思う存分楽しんできました。
ホテルは、大きなリゾートホテルで、ゆっくり休めました。プール、大浴場、マッサージ、
何でもあるので、ゆっくりとした時間を過ごすことができました。
***********母と話したこと**********
母とは、大きな誓いを立てました。
「決してめそめそ泣かないこと。泣くんだったら、旅行中だけ。」
守れるかわからないけど、こんな気持ちで暮らしていこうって誓い合いました。
そして、この旅行を機会に、前向きに生きることを誓ったのです。
父のお墓が完成してからと言うもの、母は、一日おきにお墓に行って、お花を取り替え、
お墓に語りかけたり、ぼんやりと座り込んでいるということでした。
これは、兄から聞いたことです。母自身は、そのことを私に隠しています。
そんな寂しい姿を私に見られたくなかったのでしょう。
でも、そんなことをしていて、父は本当に喜ぶのでしょうか。
寂しがり屋で、でも、いさぎのよいさっぱりした父は、最初に大腸に出来物ができたときも、
「悪いものは、さっさと取っちゃえば、さっぱりしていいよなあ。」って言って切除手術に臨みました。
泣いたり、わめいたりしないで、できる限りの笑顔を振りまいて。
そんな父がそんな母を見たら、きっと、「さあ、さっぱりして、がんばって生きてくれよ。」って言うに、
違いありません。必ず・・・。だから、私たちは、父の意志を汲んで、強く生きなければならないと思います。
誓いが、いつ、破られるかはわかりません。でも、これには罰則なんて、ないんです。
がんばろうっていう気持ちだけで、いいと思うんです。
「がんばって、生きようね。お父さんの分まで。」
私たちは、固く、誓い合いました。
***************************