花びら…





 最近、苛ついて仕方がない。
何かをしていても、何もしていなくても………頭の中では常にその事を考える。
仕事中は当然いつもの笑顔をたやさない『洋ちゃん』でも、それ以外の時間の全てを費やして俺はヤツのことを考えている。
一体何を考えているか解らなくなってしまった……あの男の事を。



 今日の仕事はマジで最悪。またもやアイツと一緒のロケだからな。
しかも朝から晩までときてる。
俺は一体どうすりゃーいいってのよ? 大声で問いただしたくなるよ。
いや、実際何度も奴の前でそんなことはやってみた。だけどいっこも効果なんて、ない。
それどころか、あの冷たい目つきでじっと睨まれて――――――言葉少なに拒絶されるだけだ。
俺はそれが辛かった。
仮にも俺はアイツが好きで………限りなく好きだと思っている訳で。
理由もなくこのまま関係を終わらせてしまうことは、絶対に嫌だ。
なのにヤツは―――佐藤重幸って男は、平然と冷たくそれを語る。

『俺達、とっくに終わってんだろ。』
と。



 気を取り直して集合場所にたどり着く。マジで『辿り着いた』という表現がぴったりだ。こっちは今にも死にたいくらいのどんより重たい気分。
いつもの遅刻よりも更に遅く到着した俺に対して、ヤツは一瞥をくれただけで怒ることすらしやがらねえ。
何事もないかのように俺をあっさりと無視し、共演の麻美といちゃつき始めた。

――――そう、これが一番腹の立つことなんだよな。

まるで俺なんてその場にいないかのように、二人して仲良く喋ったりふざけたりしやがる。
麻美は時折俺を気にはするが、しげはまったく俺のことなど気にも留めずに無視し続ける。
ここ一・二週間ほどの俺達はカメラの前では普段通りでも、カメラが回らなければいつもこんなもんで。
それが俺を尚更苛つかせる。
『シゲさんと……喧嘩でもしたんですかぁ?』
最初の頃はそんなことを言って麻美も結構気にしていたが、今じゃ大分慣れっこのようだし。
………嗚呼、カミサマ。いるんならどーか教えて下さい。俺は一体しげに何をしたっていうんですか!? どうしてこんな理不尽な仕打ちをされねばならんのですか!? 俺は……どうすりゃーいいんですか………


 ロケバスの中は俺にとっては地獄そのもの。
カメラが回っている間は俺もしげも普段通り振る舞う。移動中はこの番組では殆どカメラが回っていることが多いので………俺はずっと仲の良い二人の演技をしながら、切なくて泣きそうになってしまう。
今まで当然だと思っていたヤツとの会話。普通にじゃれ合うことが出来たあの幸せな時間に、本当に戻れたような錯覚を起こしてしまうわ……俺。
でも一旦カメラが止まれば、しげは絶対に自分からは口を利かずに、そっぽ向いていやがる。
ある意味非常に解りやすい男だからさー……佐藤さんは。
スタッフ達も俺らの仲がここんとこ険悪なのは薄々勘付いてて、まるで腫れ物に触るような態度だし。
そうやって気を遣わすのもなまら心苦しくて、余計に気が滅入ってしまう。

 無事にロケを済まし、俺達は帰路に着いていた。今日はかなり遠出だったが、急げば何とか今日中に札幌には帰れる筈だ。
流石にみんな疲れて、しげも麻美も俺もずっとバスの中で寝ていた。
大概いつもこんな時は女性である麻美を前の席で寝かせ、男二人は後部座席で身を寄せ合って眠る。
今までだったらしげに膝枕をさせてみたり、肩を寄せ合ったりして、なまら幸せな気分で寝ることが出来たのに―――今はそんなわけにもいかないっつーのが何とも切ない。
隣で静かに寝息を立てるしげの横顔は、前と変わらずに綺麗だと思えた。
ちょっと手を伸ばして、前みたいに甘えたい衝動に駆られる。
でもそれは出来ない。
そんな事したって完璧に拒絶されんのが解っちゃってるのに、それでもやるような太い神経は今の俺は持ち合わせてねえ。
だけど、痛いほど心がヤツを求めてる。
 ………ジレンマに引き裂かれそうになりながら、無理矢理目を閉じて気持ちを押さえ込もうとした。
しげの態度が一変してからと言うもの、俺はまるで修行僧になったみたいに己の欲望をじっと押さえていた。
今だって下半身からふつふつとそんな感情が湧いてきている。
目一杯抱き締めて、グチャグチャに乱してやりたい欲望が俺の中で渦を巻く。

『……やってらんねぇよ……』

そっと小さな声で呟いて、しげに背中を向けた。両手でぎゅっと耳を塞いで、ヤツの色っぽい寝息を聞かないようにしながら、ただただ寝ることだけに集中していたその時…車は突如スピードを緩めていた。



 「…で、結局どうする訳さ。」
しげが憔悴した顔つきで、スタッフに聞いている。
 目の前の道路は交通事故により封鎖されていた。暫くこの状態は続くらしい。
遠回りではあるが別の道を使って札幌まで帰る案も出されたが、流石に深夜に差し掛かってきているし、ここは何処かに宿を取って朝に帰る方が無難であろうと言う結論に落ち着く。
何だかんだ言って、全員が朝からの遠出で非常に疲れていたのもあった。
 この近くにある小さな温泉宿を何とかみつけ、俺達はどっとそこになだれ込んだ。
もうカメラを回すのもそこそこに、全員温泉に浸かる。当然その中にはしげも混じっていた。
ヤツも相当疲れているのか、無言で湯に浸かっている。
お湯から覗く鎖骨に思わず目がいっちまう。だがしげは俺の目線を感じると、ぷいっと背中を向けた。
ここでスタッフがいなきゃ、泣こうが喚こうが無理矢理襲って滅茶苦茶にしてしまいたい気分やけどな……

 部屋割は最悪なことに、しげと一緒。しげと俺と、スタッフのADが一人の計三人。
何でこんな中途半端な部屋割りにしてくれんのよ、アイツら。これは蛇の生殺しってヤツやろ?
……………もう思いっきり、泣くに泣けない状況に突入しちゃってるよな、これは。
 しげはスタッフにはあまり気を使わせないように、あくまでも普通の態度でいる。ただでさえ疲れて死にそうな顔をしているADに、余計な負担をかけないように演技しているのだ。
だが普通のフリをしながらヤツは部屋にしかれた三組の布団の一番端をとっとと占拠し、俺に冷たい目線を送りながら顎をしゃくって反対側の端を差した。
俺が苛つきながらもそれに従って端に寝ると、ADが『ああ、やっぱりまだ二人は喧嘩してるのかな』くらいの顔つきをしながら真ん中の布団に入り込んだ。
明かりを消すとあっという間に真ん中の彼はいびきをかき始めた。
疲れていたんやろね………何せ随分な強行軍だったものなあ。
だけどやっぱり、俺は眠れなかった。
身体は疲れているのに、頭はくっきりと冴えてくる。眠りたいのに眠れなくて暫くの間悶々としていたが、気分転換に布団を這い出してトイレに行ってみた。

 暫く座ったまま頭を抱えていたが、トイレを占拠したところで何が変わるわけでもない。ましてこんな場所で不貞腐れたまま寝るのも何だかねぇ……
仕方がなくそこを出た。行灯型の和照明の明かりが柔らかいオレンジ色の光を湛えて、雰囲気の良い和室をぼんやりと浮き上がらせている。
そっと布団に戻ろうとして辺りを見回し、俺は暫し茫然としてしまった。
真ん中に寝ていた筈のスタッフは布団を蹴り上げたまま、俺の布団に浸食していた。

…………その瞬間の俺の気持ちが解るか?

しがらみや躊躇というものの何も可もが、いっぺんに弾け飛んでしまった俺の心の中が。

 音を立てないようになるべくそっと布団に戻り、熟睡しているらしいスタッフを元・自分の布団の方に寄せていた。幸いほんの少し力を加えると、彼は自らそちらに転がっていく。いやー…なんて有り難い男なんだ。これは感謝しないといけないなー。
何せこれから俺は、ちょっとばかり大胆な行動に移らさせて頂く訳で。
 空いた布団の上にそっと座り込み、壁側を向いて寝ている男をじっと覗き込んだ。やっぱり疲れているのか目を覚ますこともなく、非常に可愛らしい寝息を立てている。
洗い晒しの髪はさらさらで顔や首筋にさらりとかかっている。
閉じられた瞼は、長くて黒々とした睫毛で縁取られてて。
正直言って――――生唾ものの寝顔。
思わずごくりと喉を鳴らし、それでもヤツを見つめ続ける。
お世辞にもあまり寝相が良いとは言えないしげは、布団を腰の辺りまで下げてしまい、浴衣すらうっすらとはだけさせていた。
美味しそうな胸元や鎖骨が浴衣の袷からちらりと覗いているのが、また何とも言えずにそそられる。
俺はぺろりと舌なめずりをしながら、自分の腰に巻かれている浴衣の帯をしゅる…と、外して手に持つ。
無造作に投げ出されているヤツの腕を掴んだかと思うと、あっという間に帯で縛り上げた。
何が起こったのか解らずに目を覚ましたしげは、俺が布団の上から覆い被さって手首を縛り上げている姿に突然目を見開き、叫び声をあげようとした。
だがとっとと縛り終えた俺は、ヤツの口を手で塞ぐ。そして耳元でそっと囁いてやった。
「……バぁカ。騒いだら隣で寝てる奴が起きちゃうでしょうが。おとなしくしとき……」
しげの目が俺をぎっと見据える。あらん限りの怒りと異議を湛えた瞳だ。
でも俺はついその顔ににっこりと笑みを返した。だって今俺……嬉しくて仕方がねーんだから。
「あらぁ、いいザマじゃないの? 佐藤さん。キミ、油断しちゃったねえ…ちょっとばかり。」
そう言った途端、しげの口許を塞いでいた手にぎりぎりと痛みが走った。しげの野郎、思いっきり噛み付きやがったな。
「……痛ッ………いってえなーおい。何してくれんのよお前。」
そっと手を離すと掌にばっちり歯形が付いていた。
「………馬鹿かお前は! 悪ふざけも大ッ概にしやがれッ!!」
「しげー………だからさあ、でかい声出すなってば。今こんな格好見つかっちゃったりしたら、お前さんだって恥ずかしいべ?」
人差し指を唇に押し当てて諭すように言ってみたが、奴はその指もがぶりと囓りやがる。
かちんときて頬を両手で押さえ込み、そのまま無理矢理唇を合わせた。
想像したとおりしげの口は固く閉じられていたので、唇だけを乱暴に貪ってやる。
そうしているうちに本格的に俺の本能に火がつき始めた。縛り上げた腕を頭の上に持ち上げさせ、思うままうなじや耳朶に唇を這わせた。
しげは小さな声をあげて抵抗する。けど俺が慣らして開発しまくったこの身体は、些細な刺激にも敏感に感じてしまっている。
はだけた襟元に舌を滑り込ませ、ちろちろと肌を舐め回した。白い肌は相変わらず肌理が細かくて、ちょっと男の肌には思えないくらい心地いい。耳元で上がる小さな悲鳴も、更に心地いい。
ああ……どの位ぶりの、しげだろうか。
理由も解らず拒絶されてから大体二週間くらい。でもその前だってお互いなまら忙しかったから、ちゃんと会って身体を重ねる暇もなくて………よく考えたら、ここ二ヶ月近くは全く触れていなかった。
我ながらよく我慢していたと思うねえ。溜まりに溜まっちゃうわ、そりゃーさぁ。

 布団の下でしげの下半身が暴れている。
何とか上に乗っかる俺を払い落とすか蹴りを入れるかしたいらしい。………そうはいくかってんだ。
「降りろ! 止めろってこのクソ泉!! てめえなんぞに金輪際関わりたくねーんだよ俺はぁッ!!」
半狂乱で身体を動かして泣き叫ぶ。

…………言ってくれるじゃーないの、キミ。
一体誰のせいで毎日毎日毎日…悶々としてなきゃならなかったのよ? 訳もなく、いっきなり『終わってる』とか言われて、目の前で女といちゃつかれてたらおかしくもなるべや、俺じゃなくったってさー………

頭に来て浴衣の袷をぐいっと引っ張り、胸元を全開にしてやった。胸の前で縛られた手首を頭の上に固定しているので、胸元が綺麗に反り返る格好になっている。
胸元にある二つの突起はぷちんと立っていて………それすらも愛しく狂おしい。
「見られて恥ずかしくねーんなら、せいぜいイイ声だせや。じゃなきゃ必死で耐えれ。」
それだけ言って、尖らせた舌先でそっと触れてみる。それからゆっくりと、ざらついた面で舐め回した。
「………ん……………く…ッ………」
辛そうな喘ぎ声。必死で噛み殺して、何とか耐えようと足掻く様も愛おしい。
時折歯を立ててきゅっと噛んでみる事もする。小さな叫び声がすげえ可愛くてね。
「あーあ………佐藤さん、全然変わってないねえ。なぁに〜? このいやらしい身体はさー。乳首ちょっと舐めただけで、こんなに善がっちゃってまあ……」
わざとそう言うと、しげはなまら潤んだ目で、精一杯睨もうとしてくる。でも泣く直前の子供みたいな顔にしかなってないけどな。
「何よそのツラは。言いたいことがあんなら言ってみれ? んー?」
言いながらまた乳首に舌を這わせた。勿論この状態で、しげに反論なんて出来ようがない。
 そのうち飽き足りなくなって、俺は空いている方の手をしげの浴衣の帯紐にかけた。
細い腰に巻き付けられている帯紐をしゅるしゅると音を立てて外している最中に、俺はふと妙案を思いついて……唇の端にうすい笑いを浮かべてしげを見下ろした。
 今まで片腕で押さえつけていた手首の枷にその新たな紐を引っかけ―――――布団の近くに置いたままになっていた座卓の脚にしっかりと巻き付けて縛る。
立派な座卓は元々が重たい上に、その上にADや俺が色々な物を雑多に乗っけてしまってあり、そう簡単には動かないようになってしまっていた。布団からは少し距離があるものの、帯紐ってのは本来とても長い物であるからして………いやー、楽々届いてしまったよ。
 俺が紐を縛り付けているその間に、何とかして逃げようと試みて起きあがろうとしたしげは、あっさり座卓に繋がれて布団の上に引き戻され、反動で身体を叩きつけられていた。
「おーお…随分とい〜い格好しちゃってまあ。お似合いですよー、佐藤さん。」
上からしげしげと見つめてやる。
本当はこんな風に泣きそうな顔が見たいわけじゃない。
意地を張りながらも、仕方がないなぁ…って感じで俺を受け入れてくれるしげが、大好きだった。
でも、今は――――――――――

「大泉ぃ!! いい加減にしれって! 俺はもう二度とお前なんかと口を聞くのも寝るのもご免なんだよ!」
攻撃的な言葉が突き刺さる。
でも、いまだ俺の気持ちはしげでいっぱいで………こいつが欲しくて堪らない。
「おいおい佐藤さん…あんまり叫ぶとお隣の方、起きちゃいますよ。」
身体を右や左に捩って、何とかしてこの状況から逃れようと藻掻くしげを押さえつけ、耳元で囁いた。
ぐちぐちゃになってしまった掛け布団を剥ぎ取り、本格的にのし掛かってやる。
背けている顔をそっと覗き込み、前髪を掻き上げて……また囁いた。
「なぁ………本当になしたのよ? 俺、お前になんかしたか? ここんとこ忙しくてちゃんと会ってなかったけど………お前に嫌われるようなことなんて、してねーと思うんやけど。」
今までちゃんと聞こうとして、何度もはぐらかされてきた事をまた聞いてみた。この機会を逃せば、多分もう永遠に真相なんてあかして貰えない気がして。
「なあ………しげぇ。」
しげの目はぎっ…と、つり上がっていた。そしてじろりと俺を睨め付ける。
「るせえッ!! てめえで解らねーんなら俺だって知ったこっちゃないね!!」
それだけ叫んで唇をぎゅっと噛みしめる。言う気は更々ないらしい。俺に気付けって事かぁ? おい。
「ああそうかよ――――んじゃあ俺もお前なんか知ったこっちゃあないわ。お前が泣こうが辛かろうが……好きにさして貰うって事で、いいね?」
カッときて、しげの首筋にきつく口付けをした。明らかに跡が残るように、わざと。
「……ッ…!……」
それから同じように彼方此方に口付けを繰り返した。あとで仕事の時に困ろうが何だろうが知るもんか。せいぜい俺に付けられたキスマークだらけの身体を、カメラの前に晒せばいい。
 はだけた浴衣を纏った身体に執拗に口付けを繰り返す。ほんの少しの痛みと、じわりと疼く快楽を少しずつ与える為に。
首筋から始まり鎖骨、脇の下、胸元、脇腹と……ゆっくり下半身に向かって口付けを降ろしていく。
下着を無理矢理剥ぎ取って、下腹部にも幾つも付ける。そして太股にも。両脚を抱え込んで内股や付け根にまで万遍なく跡を残してやった。
今やしげの身体の上には、桃色の花びらが淫靡な色を湛えてはらはらと舞い散っていた。


 しげのアレはしっかりと勃ち上がっている。まだ何にもしてねえのに。
これもひとえに、今までの俺の調教の成果って事だ。
先端から透明な蜜を滴らせて、愛撫されるのをじっと待っているかのようなソレにはあえて触れず、その下にあるものをまず口に含んだ。そしてそのまま下まで這いずっていく。
奥底に潜む場所を舌でつついたりしながら、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め始めた。
「………ぅ……っ…………」
必死で声を出さないように耐えながらも、しげは困惑しているようだった。欲しい刺激なんていっこも与えられずに放置されたままなんだから、まぁ当然だわね。
それでも慣らされた身体はひくひくと蠢き始めていた。舌を尖らせて差し込むと、きゅっ…と収縮して異物を呑み込もうとする。
指先に唾液を絡ませてそこに宛い、ちょっと動かしただけでぐちゅ…と呑み込んでくる。浅く埋まった指を小刻みに動かしながら俺は身体を起こして上からじっくり眺めていた。
なんて情けない格好をさせられてるんだうね、しげ。多分今までヤった中で一番屈辱的だろう? …なんてぼんやり考える。
袖を通しただけの浴衣は、ただ身体の下に引かれているだけのようなもので、かえって扇情的だ。
そして手首は帯紐で括られて頭の上に固定されちゃってるし。下半身なんてM字の形に思いっきり開脚させられて、俺に抱えられちゃってる。
で、指で中を掻き回されて…………我ながら酷ぇ事してるかもなあ。しかも布団を挟んでとはいえ、隣には何にも知らずに寝てるスタッフまでいて―――気が気じゃないだろうねー、ホント。
そんな事を考えつつも止めてやる気なんざ毛頭なかった。どちらかと言えば更に痛めつけて、泣きそうな顔を眺め続けてやりたい気持ちが大きい。自分でも驚くほど、嗜虐的な気持ちで溢れている。

 入り口を掻き回していた指を引き抜いた。
そして自分のいきり勃ったものをそこに宛い、ぬるぬると溢れ出している蜜を塗りつけた。
しげは………信じられないと言った表情で、こちらを見ている。期待通りの泣きそうな顔で。
小さくイヤイヤをして、唇を僅かに動かした。でも言葉にはならない。
「諦めれって……」
それが合図のように、俺は思い切りよくしげの中に押し入った。
「……ひ…っ…………ぁ…………………んん…ッ…………」
悲鳴を上げようとして慌てて唇を噛み、辛うじて堪えている。殆ど慣らしもせずに入れたから、多分激痛が襲ってるに違いない。
唇にうっすら紅い血が滲んでいる。
閉じられた眦には数滴、涙が浮かんで下に滴り落ちていく。長い睫毛を小刻みに震わせて、しげは必死で耐えていた。
ゆっくり突き上げては出し、また突き上げる。潤滑用のローションも唾液も粘液も……今日は殆ど何もしていないから、えらい動きづらい。
俺はかなり苦労しながらそれを数回繰り返した。やっとの事で中まで収めると、しげの中がじわじわと蠢き始めるのが解る。中は俺の雄を根本から少しずつ締め上げて、ねっとりまとわりつく。
「佐藤さん―――相変わらず貪欲なお身体してますなあ。そんなに俺が欲しかったかい?」
からかうように言ってやれば、思った通りしげは目に涙をいっぱい溜めて睨み付けてくるのさ。だからお前のそんな顔も……なまらそそられるって。
「いっくら睨んだって無駄やっちゅーの。せいぜい声あげんよーに、必死で頑張ってろや!」
自分の雄から染みだしてくる蜜だけを頼りにゆっくりと突き上げる。相当にひきつれてやり辛いけど、動かす度に少しずつ滑らかになるから大丈夫。

 幾度も抽挿を繰り返すうちに、悲鳴を上げていたしげの口からは別のものが漏れ聞こえてくる。
甘くて、いやらしい………しげの吐息。
無理矢理突っ込まれて犯されてる筈なのに、もはやそんな感じの声ではない。
唇に血を滲ませて耐えようとしたって、突き上げられる度につい溢れてしまう……善がり声。
自分でも混乱してるのかい? 涙でぐっしょぐしょになった顔に書いてあるわ。
『嫌なのに、気持ちイイ』ってさ。
だからもっとしてやるよ。なまら滅茶苦茶にしてやるわ。お前のこと。
本当は身体中弄ぐって舐め回してやりたいけど、敢えてしてやらねえから覚悟しとき。
俺ので掻き回されただけで、イっちまえばいい! お前なんか。
散々辛い思いして、混乱して、恥辱にまみれてイけばいいんだよ。
ずっとそのザマを見ててやるから――――――――

 腹の下にはギリギリの状態で放っておかれているしげのアレが、苦しそうに反り返っている。
自らの先走りでぬめっている様は淫靡だった。
弱いポイントを確実に責め立てると、小さな悲鳴を上げて腰を引こうとする。逃げられないようにがっちり抱えて激しく責め立てると、身体をびくびくと反らせながら思った通り勢い良く白い精をぶちまけてくる。
腹や胸元、そしてしげの顔にまで飛び散っていく様子は……何とも言えず綺麗だ。
顔や首筋にかかったソレを丁寧に舌で舐め取りながら、俺は更にしげを犯し続けた。半ば意識を朦朧とさせているしげの身体を隈無く舐め続けながら、今度はゆっくりと抽挿を繰り返す。
室内には卑猥な水音が上からも下からも響いている。隣のADが目を覚ませば、さぞかし背筋を凍らせることだろう。幸いなことに彼は大の字になって寝ているが。
 いやらしい舌の動きで胸の突起を啄んでは舐めると、しげがイイ声で啼く。苛まれる快楽に困惑しながら。
俺もとうとう耐えきれなくなって、両手でしげのすべすべの肌を弄ぐりながら昇り詰めようとしていた。
今度はしげのモノを指先で触ってやる。さっき達したばかりなのに、もう既に硬さを取り戻して蜜を垂らし始めているソレを丁寧に捏ねたり扱いたりしながら、俺は動きを早めた。
駆け上がってくる快楽の波。限界ギリギリまで貪欲に欲する本能のままに、激しく抽挿を繰り返して俺はしげの中に溜まりに溜まったここ二ヶ月分の思いを吐き出した。それはもの凄い勢いでぶち撒けられ、しげの中を一杯に満たした。
そして俺の手の中には、しげの二回目のモノが吐き出されていた。



 引き抜くと、自分のモノと一緒に白い液体が糸を引いて滴り落ちてくる。
しげはもうぐったりとしていて、睨み付けてくることすらしてこない。いや、出来ないのかもしれないかな。
俺は手の中に吐き出されたしげの液体を、たらたらとしげの身体に垂らしてみた。行灯の明かりの中で浮き上がる白い身体の上に、とろりとした液体が滴っていく様も絶景だ。
全部垂らし終えると暫くそんな姿を眺めてから、丁寧に舌で舐め取ってやった。
わざと淫猥に舌を使い、ぴちゃぴちゃと音を立てる。
胸元の突起は特にお気に入りだからね。これ以上ないってくらい、ゆっくりと丁寧に舐めた。
「………も………………やめて……………」
哀願が聞こえるが、俺は一向に気にしない。
垂らしたものを綺麗に舐め取ってもまだ舌で肌を舐り、いつしか下半身にまで移動していた。
「……あのねぇ佐藤さんさあ………なしてこんなにいやらしいカラダしてるワケ? まぁ〜た元気にしちゃってさあ。」
ニヤニヤしながら昂ぶりに口付ける。
「や…………め…ッ…………」
びくっと身体を跳ね上がらせた。俺は尚も口付けを続ける。
先端にも、中程にも、裏側にも。ありとあらゆるところに慈しみと暴虐の口付け。
焦れた頃合いを見計らってそっと舌を這わせた。いやらしく舐め回し、先端の窄みに到達するとそっと舌を差し入れた。
音もなく溢れ出る蜜を舌先で舐め取っては、愛撫を繰り返す。
ここ何ヶ月も、頭の中だけで繰り返されていた光景と同じだった。この身体に触れたくて……触れられなくて。しげに飢えたまま、俺はいつも淫靡な表情で哀願する様を想像しながら、自分で慰めるしかなかった。
「ずっとずっと…こうしたかったわ。お前に触りたくて触りたくて……気ぃ狂いそうやった。解るか? しげぇ。この天下の『大泉洋』がですよ、毎日毎日……お前のことばっか考えて……全くどうしてくれんのよ。」
舌でシゲのモノを弄んでるうちに、つい俺は耐えきれずに本音を吐き出しちまった。
「……………嘘も大概にしてくれや……大泉さんさあ。」
上気させた顔が何とも言えぬ切ない色合いに歪んだ。
しげはそう呟いて唇をぎゅっと噛みしめる。
「嘘……ぉ?」
何故しげがここまで頑なに俺を拒もうとし、俺を信じていないのかが全くもってさっぱり解らない。
俺は顔を上げて縛られたままのしげを見つめた。顔を横に背け、微かに唇を震わせている愛しい男を。
「何で、勝手に決めつけてんのよ……」
しげはそれ以上もう何も言わなかった。
「……ったまきた……。何なの? お前!? 何考えてんのかサッパリ解んねえ!!」
俺はしげの身体を持ち上げると俯せで四つん這いにさせた。手首を上にもって行かれたままの状態なので、腰だけが上に突き出され、上半身は布団の上に伏している。
その上に覆い被さり浴衣を腰の上までたくし上げて、後ろから再び中に押し入ってやった。
辛そうにも善がっているともとれる喘ぎ声が小さくその口から漏れていたが、ずぶずぶと奥まで分け入りゆっくり俺のモノで掻き回してやる。
しげの中は先刻俺がぶちまけた粘液で充分に満たされ、思う存分奥まで突き上げることが出来た。
「や…ぁッ…………もう………やだ…………ぁ……………」
切ない哀願が更に俺を煽り立てる。
綺麗なラインを誇る腰や背中に、一つずつ口付けを落としては小さく吸って……こちら側にも桃色の花びらを散らす。
ゆっくりと抽挿を繰り返しながらその作業を繰り返すと、いつしかしげは甘い吐息と喘ぎに自ら塗れていた。
恐らくはしげの心よりもずっと正直な内壁が、穿たれた楔にまとわりついては更に呑み込もうと蠢き続ける。
「………いいザマですなぁ、佐藤さん。キミの身体があまりに正直すぎて、洋ちゃん笑いが止まりませんわ。」
その言葉にびくっと反応し、俺の顔を横目で睨みながら言葉を叩きつけてきた。
「……死んじゃえばいいんだ……ッ……お前なんか…………」
苦しげにそう吐き出して、しげは身体を震わせながらうっすら涙を滲ませた。
「――――ふーん。」
ぐいっとしげを突き上げ、満足のいく悲鳴を上げさせる。
「悪ぃけど俺、死ぬときゃお前も道連れにすっから―――――」
そう言ってから、狂ったように腰を打ち付けた。一気に昇り詰めるために。
「…あ…………ぁあ…ッ…………いやだ……………たすけ…ッ……………」
しげの叫びはやがて掠れた悲鳴になり、ビクビクと身体を震わせて太股や下腹部、そして布団までもを自分の体液で汚していた。
俺の二度目の精液を奥底にぶち込まれながら……………



 茫然としているしげの手枷を解いてやる。
思った通り、そこは赤い痣になっていた。
その部分に唇をそっと押し当て、軽く口付けをしてからベタベタの身体をティッシュで拭き、途中から埒があかなくなって洗面所でタオルを濡らし、拭き始めた。
しげはおとなしくされるがままになっている。まるで人形みたいに。
何度か唇に軽い口付けをするが、何も反応はない。
「しげ………やっぱ、怒ってる?」
汗で顔に張り付いた髪を手で掻き上げ、顔を覗き込んだ。しげの目はかなり虚ろだった。

こんな風に強姦したいわけじゃなかった。
本当は気持ちが欲しかった。
でも、お前はただただ俺を忌み嫌うばかりで。
俺の何が悪かったのか…何がお前を傷つけたのかすら、教えては貰えなくて。
愛しいと思う気持ちは全て、残酷な仕打ちに変わってしまう。

こんなに泣けてしまいそうになる程、お前が好きなのに――――


 しげの身体を抱き締めて、俺は込み上げてくる切なさに思わず身体を震わせた。
ただ、元に戻りたいだけなのに。
あの時の俺達に帰りたいだけなのに。
そんな事が今の俺には許されなくて。
思わず涙が零れそうになって、慌てて目元を拭った。
「……………何でお前が……泣くのよ。」
腕の中で、ぶっきらぼうに問い掛けてくる。
「泣きたいのはこっちだよ、馬鹿野郎。」
しげはぐいっと俺の胸を押しのけて、腕の中から脱出した。でもその顔はやっぱり泣きそうで。
「うるせえよ。お前が何も言わねえから悪いんだべや………なんでお前…………」
「言ったらどうなるってんだよ!!」
しげは睨み付けてくる。
「お前に彼女が出来ようと結婚しようと、俺にはどうせ何にも関係ないだろうよ!! 都合の良いときだけ抱けりゃ、それでお前は満足なんだろ!?」
―――――何だ、そりゃ。
「おいおい、ちょっと待て………お前何を………」
「うるせえ!! 俺は見たんだよ。全部知ってるんだからな!!」
しげは激高し、声を荒げた。
その声に隣で寝ているADがびくっと反応したあと、ごろりと寝返りを打って背中を向けた。
「見たって何をよ!」
俺も負けじと声を荒げる。
しげは暫く俺を見つめたあと、口を開いた。
「見たんだってば………お前がいつもの店で、女口説いてんのをさ。」
「は?」
しげの言ういつもの店とは、俺達がよくお忍びで使う隠れ家的な店で、そこへはいつも一人で食事に行く以外は必ず二人で行っていた。
だがしげの言う『女を口説いていた』と言うのがどうにも記憶にない。
「いや、俺あそこに女連れで行ったことなんてねーよ、しげ。」
しげはゆっくりと数回、首を横に振った。
「俺……見たもん。お前が絶対に俺の前でなんかしない顔してさ、なまら綺麗な女の子と寄り添って笑ってた。それ見たとき………正直、もう駄目だと思った。」
そこまで言って顔を伏せた。肩が小刻みに震えている。
「俺なんて………この先いつまでお前と一緒にいたって、世間的に認められる訳じゃねえし。どんどん醜く歳とって、ただのおっさんになっちまったら………もう本当にどうしようもねえし…………」
「……しげ。」
「それならとっとと今のうちに別れた方が、お互いいいんだと思ってて…………でもやっぱり………」
そこまで言ってしげは手首でぐいっと涙を拭った。
華奢な身体をもう一度腕の中に引き寄せて、震える身体をぎゅっと抱き締めてやった。
「あのなあ、しげ。それ、なまら勘違い……お前の。」
俺の声も震える。
「思い出したよ。きっとお前が見たのは、あそこにたまたま居合わせたファンの子だわ。普段はああいうの全部お断りしてるんやけどね。あの子、お店の関係者だったからちょっとだけお話してあげただけなの。」
あの店にはよくお世話になっていたので、断りきれずにほんの少しサービスしていただけなのに。しげは運悪くそれを見ちまったって事か………
「………だってお前………あの子に指輪渡してたのは、何なのよ?」
しげは泣き濡れた疑いの眼差しを、そっと俺に向けてきた。
途端にくすくす笑いがこみ上げる。
なんて可愛いんだろうなー、コイツ。愛しすぎて、俺までまた涙が溢れてきそうだって。
「あれはねー、しげ。あの子が元々してた指輪だ! 俺の大ファンでね、『一度でいいから指に填めて貰えませんか?』な〜んて言うから、大サービスしてあげただけ。どうだ。納得したか?」
腕の中でしげは口をへの字に曲げながら、俺を見つめていた。睫毛の先に涙の水滴をひとしずく、くっつけたままで。
「………んじゃ、俺…………馬鹿みてえじゃん。」
「おお、馬鹿だぁ。史上最強の大馬鹿だ!!」
髪の毛をぐしゃぐしゃと触りながら、俺は笑った。でも目の端から一粒、涙が零れ落ちてしまう。 
「泣くなぁ…大泉ぃ。」
また泣きそうな顔をして、しげが呟いた。
「ごめん。俺がちゃんとお前に聞けば済むことだった。」
しげは俯いて呟く。
でも、きっとそれはただのきっかけに過ぎなかったんだろう。
漠然とした不安がしげの中にあったからこそ、そんな辛い決断を下しちまった訳で。
俺にも責任はある。
この先いつまで一緒に居れるかなんて、ちゃんと考えてなかった。
今までもこれからも何となくこのまま一緒なんだろうと――――ただ、そう思ってた。
だから、今………ちゃんと言おう。
俺にはお前しかいないんだから。
この先は長いんだもんな。

「しげ………ごめん。せっかくこの際だから、もうハッキリさせちまうか。」
びくっとした後、しげは泣きそうな顔で俺の顔を恐る恐る見た。
「ごめんって………どゆことよ……………ちょっと……待って…………」
目が潤んでいく。絶望の表情を浮かべて、しげの顔が歪んだ。
「お前がどんなにおっさんになろうと、醜くなろうと―――俺はお前と別れる気なんて、更っ々…無いワケ。」
途端に呆気にとられた表情に変わる。
「でもお前はさあ、絶対に醜くなんかならないよきっと。なんつっても俺の自慢のハンサムだもん。見た目だって全然歳とらんで、ずっと若いままなんとちゃう?」
「は………い?」
俺はにっこり笑ってあげた。
「だから余計な心配すんなや、もう。心配すんならどっちかってーと………俺の方だ。」
しげはにやっと意地悪な笑みを浮かべた。
「僕も大泉さんが禿げようが腹が突き出ようが、チチが垂れようが……きっと変わらず好きですっ!!」
ちょっと待て、おい。
「しげてめえ!………腹出てるとかチチ垂れてるとか言うな! ましてや禿げとか絶対に言うなや!!」
しげはけらけらと笑っていた。無き腫らした目にやっと本物の笑顔が戻る。
ずっとずっと、死ぬほど見たかった正真正銘なしげの笑い顔。
子供みたいに無邪気で……あどけなくて。でもどこか意地悪めいた、この笑顔が大好きだ。

―――もう、演技なんていらないよな、しげ。仲いいフリして、無理に笑顔作んなくていいんだよな、俺ら。
いつも通り自然体で………バカばっか言い合って。腹抱えて笑っていられるよなぁ。

そう思ったら急に嬉しくて、俺の目頭はやっぱり熱くなっていた。
「何よ大泉………また泣いてる………」
しげはまるで子供でもあやすみたいに、俺の頭を撫でてくれた。
何だかもの凄く安心出来るわ、やっぱ。
そう思ったら急に睡魔が襲いかかってきた。
本当ならしげに甘えながら眠りにつきたいけど、朝になって隣の奴に大騒ぎされるのもご免だから――――――布団を整えてそれぞれ潜り込んだ。

でも、布団の下で手を握ってるのは…………ちょっとだけ内緒な。

どうせしげは寝相が悪いからすぐ離れちまうのは解りきってっけど、眠りにつくまでのほんのひととき……こうしているだけで随分と気持ちが落ち着くんだわ。俺ってホラ、無類の甘えん坊やさんやから。

おやすみ、しげ。

そう囁いて、ここ何週間ぶりに俺は安心しきって眠りに落ちていった………




 雰囲気がいつもと違うのが肌で感じられた。
今まで何となくよそよそしい感じで接してきていたスタッフ達が、皆総じて今は楽しげに話しかけてくる。
旅館の朝食をとっている時から、何となく安堵の表情が全員から見てとれる。

皆、俺達がギクシャクしているのを知っていたから。

そしてそれは、昨夜腹を割って話したであろう俺達の関係修復について、まんまと成功したという確信を全員が持っているらしい。やっぱあの部屋割りは―――そういう事かよ。
俺らと一緒の部屋だったADは何人かのスタッフに囲まれ、様子を聞かれている。
だけどそんな事したって真相なんかいっこもて出てきやしねえって。
だってアイツ、マジでいびきがうるさかったもん。それはもうぐっすりとおやすみになられてましたわ。
じゃなきゃ、あんなに激しくえっちなんて出来ませんっての。

俺らの仲直り方法は『腹を割って話すこと』じゃなくて『肌を重ねてするイイコト』だもんな。


 麻美がそっと擦り寄ってきて、そっと俺に囁いた。
「良かったですねー、シゲさんの機嫌が直って。あー、なんかいいなあ…男の人達って。あんっっなに喧嘩してても、いざとなったらこんなにあっさりと仲直り出来るんですもんねー。」
だと。だ〜れがあっさり仲直りなんぞ出来るかぼけぇ! と、一発殴ってやりたかったが、ここは我慢我慢。
にっと笑って『それが男なんじゃ。』と呟いてみた。ま、それも男の美学よ。
 ともかく。
全員がホッとした雰囲気の中で、俺達は札幌へと向かった。
これで万事解決って訳でしょうなあ。

………帰途、しげはしきりに身体中のキスマークを気にしては、時折恨めしげな目つきで不服の申し立てをしてきてたけどな。
これは俺の最上級の愛情のしるしやと思って、まぁ諦めてくれや。

襟元からちらりと覗く桃色の花びらを見ては俺はこっそり一人で含み笑いをし、しげが傍で笑っている幸せを噛みしめながら、昨夜の寝不足を解消すべく眠ることにした。
枕は当然、この世の中で一番寝心地の良くて安心出来る誰かさんの膝の上。
誰からも見えないようにそーっと髪を触らせながら、至福のうたた寝につくことにする。

……うーん、我ながら我が儘やね。でも今日くらいいいよな。久しぶりに甘えちゃったって。
だってこんなに幸せな気分、なーまら久しぶりなんだしさ。


俺のささやかな幸せは、しげのジーンズの上にしこたま涎を垂らして怒りの鉄拳を喰らうまでの、すげえ儚い命だったのだが―――――





Fin

またしても長くなってしまい、スミマセンです。
どうも短くまとめられずにだらだら書いちまいますな。。。

RAJAH様。いや〜大変にお待たせしてしまった申し訳ないです。
こんな感じで良かったでしょうか?

鬼畜としてはちょっとぬるいとは思ったんですけど
ヤバい場所でするのはアレが限界でした(笑)


結局ラストは甘々でゴメンナサイ〜。

どうぞ皆様、
存分に砂を吐いて下さいませ





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