いつも心にぬくもりを
相変わらず皆、忙しかった。
仕事が順調なのは良いことだと思う。毎日が充実しているし。
俺達は役者として舞台に立つ傍ら、テレビのレポーターなんかのタレント業もこなし、合間にトークショーなんかのイベントもあったりして。
とにかくゆっくりと休みを取る暇もなかった。
それどころか仕事が立て込んでいるせいで、常に早朝から深夜までというハードスケジュールが毎日の当たり前になりつつある。
どうしたって自分達の自由な時間というものは、少なくなってきていた。
仕事で毎日毎日、好きな奴と顔を付き合わせているんだから、まだマシなんじゃないの? という意見もあるだろう。
でも、俺にとっちゃそれはマシでもなんでもないっつーかさ、これが。今も俺の隣に座って身体をビタっと密着させてきている図体のデカい奴。いや、図体ばかりではなく態度もなまらデカい男、大泉洋が子供のように甘えてくるたび…俺は身体の奥で疼く感覚を思い出しては、針のむしろの状態になってしまうから。
ロケの最中、人目を忍んではそっとキスをする。
だけどいっつも…そこ止まり。
当然だよな、俺達。身体を重ねられる時間的余裕なんて、全くと言っていいほど皆無だもの。
特に大泉。こいつは俺よりも殺人的なスケジュールをこなしている。しかも時折体調を崩しては病院のお世話になっているのだって、これだけ傍にいるんだから俺が一番良く解ってる。
そんな男の貴重な睡眠時間を、俺の我が儘で奪うわけにはいかない。
時々、気が狂いそうな想いに苛まれながらも…いつも俺は平然としているフリをして大泉をあしらった。
だって…みっともないじゃない。
そんなに大泉のことが好きだなんて―――悟られちまうのは、心底悔しいもの………。
今日は珍しくラジオの仕事の後、何も予定が入っていない。どうやら俺はこのまま帰れそうだ。
あまりにも俺達が忙しくて、NACS全員が揃うことは希有となってしまった『NACSガタメ』は、今日も全員揃わず。俺の他はもーくんと、大泉の三人。安顕と音尾は別番組の収録やらでここには居なかった。
「いやあぁぁぁ、流石に今日も疲れたなあ! なあ、大泉い!!」
もーくんが、それでも満面の笑顔で話しかけている。
「何、リーダーもう上がりかい?」
大泉はぶすっとしながら荷物を手に、スタジオを出るところだった。
「おお、今日はこれで終わり。帰ったら次の芝居の台本もあるからなあ、俺。」
「あらあ…いーわねーぇ、洋ちゃん、ま〜だこの後に残ってるのに。あーあ、俺も帰りてーーーーーッ!」
がっくりと肩を落として大きな溜息を吐いた大泉は、その後ちらりと俺を見た。勿論、もーくんには気付かれないように…
やっぱり疲れた顔…してんな、お前。
しかも随分とすまなさそうな顔しやがって……そんなツラ見たら、何だかか切なくなるだろ? 大泉さん……
「じゃあ大泉、俺も帰るから。…まあ、頑張れや!」
どうしていいか解らずに、俺はへらっと笑ってからすぐに顔を背ける。
気恥ずかしいのと切ないのとがごちゃごちゃになって、無理して上を向いて歩きだした。
今、下を向いたら寂しさが込み上げてきそうだったから。
鍵を開けて部屋に入ると、俺は真っ先に浴室に向かった。
浴槽に熱いくらいのお湯を張り、着ているものをその辺にぶちまけて湯船に浸かる。
引っ越す前までは浴室が狭かったせいか風呂よりもシャワー派だった俺だが、今はゆっくりと風呂に入るのが心地いい。
でもお湯の中でぼーっとしながら、ふと考えてしまうのはやっぱり………大泉のこと。
このマンションに引っ越してきてから、アイツ一体何回ここに来れたっけか? なんて考えて、ドツボにはまりそうになった。
折角広くなった風呂も、大枚はたいて買った自慢のテレビも、アイツ―――まだちゃんと味わったことないんだよなあ。忙しすぎて。
考えれば考えるほど切なくなってきて、ざぶっと湯船に潜った。
冷蔵庫からビールを出してきてやけっぱち気味に喉に流し込みながら、取って置きのエロものをデッキに突っ込む。大画面に映し出されたその映像で、溜まった欲望を処理しようと思ってさ。
でもいい加減虚しさが募ってきて駄目だわ、俺。綺麗な女があられもない姿で喘ぎまくるのを見て欲情するのにも、完璧に飽きてしまってるみたい。
―――本当は、大泉が欲しい。抱き締めて、頭が変になるくらい犯して欲しい。
その気持ちを腹の底に溜めながら、いつもいつもこうして俺は自分を慰めている。
テレビの中ではAV嬢がクライマックスを迎えていた。だけどいまいち乗り切れてないから、俺の欲望は中途半端なまま。
結局辛くなって停止ボタンに手を伸ばし、床に座り込んで茫然としていた。
身体はこんなにも疼くのに。滾る欲望で苦しいくらいだっつうのに。
どうして全然イけないわけ? …俺。
ふと視線を部屋の隅に移した。窓際に置いてあるベッドの下を見つめる。
ベッド下の隙間に押し込んである箱を暫く見つめてから、俺はそっと手を伸ばしてみた。
箱の中身は―――大人の玩具ってヤツ。
別に自分で欲しくて買った訳じゃない。それは胸を張って言える。
以前やっていたラジオの企画で大人の玩具屋に行ったことがあって、その時のオンエアを聞いたリスナーから後日、俺宛に送りつけられてきた代物。最初に箱を開けたスタッフが馬鹿みたいに大笑いしていたっけ。
『要らねえ!』って言っても無理矢理押しつけられて、結局持ち帰っては見たものの中も見ずにどっかにしまい込み、その存在すらすっかり忘れていたってのに。
こないだの引っ越しの時に何だかも解らず荷物に突っ込んで、後から荷ほどきした時は――正直なまらビビりました…。
で、結局どうしようもなくて慌ててベッドの下に突っ込んだんだよね。
…って、そんなものを俺は一体どうする気よ。
頭ではそう思ってる。必死でそれを否定する。
でも身体は意思と全く逆の行動をとり始めた。
…………やべえよ俺、何する気よ…………
顔から火が出るほど恥ずかしい事だって、解ってはいた。でも、何だか押さえきれない焦燥感と切なさに突き動かされていた。
恐る恐る箱を開けてみると、中には思ったよりも色んなものが入っている。エロビデオでよく見かける定番のものもあるが、謎の物体も幾つか入っていた。
取り敢えず一番分かり易いバイブらしきものを手に取って、眺めてみる。綺麗なパールピンク色をしていて、意外に大きくはない事に少し安心してからそれにローションを塗りつけた。
こんな事…したくねえって思っている自分と、大泉が欲しくても得られない消失感に揺さぶられて、俺はあまりの情けなさに目をぎゅっと閉じた。
下だけ脱いだ状態でベッドに寄りかかり、脚を大きく広げる。
指先で入り口を探り当ててからそこにもローションを塗りつけ、手にしているモノをそっと宛って、ふうっと息を吐いた。
いつもアイツにされる時みたいに、力を抜いて。
頭の中にアイツの顔を思い浮かべた。
切なくて、情けなくて……どうしようもなくて。
ぐいっと押し込むと、思ったより容易にそれは俺の中に入ってきた。ローションが冷たくて、異物感が少し気持ち悪かったけど、それがかえってリアルな感じ。
俺はいつも大泉にされていたように、ゆっくりとソレを出し挿れして奥まで収める。
呑み込まれていく異物が俺の中を刺激して、忘れていた快楽がじわじわと身体を蝕み始める。
「………っ…………ぅ…………」
知らずに声が漏れていた。
出来るだけアイツを思い出す。大泉に抱かれているのだと…自分に錯覚させたくて。
でも身体は冷たいままだよ。
誰も俺を抱き締めてくれてはいないもの。これはただの「代替行為」でしかないから……。
ぐちゅぐちゅと無機質に響く水音の中で、いつしか俺は目頭が熱くなるのを感じていた。
慌てて手の甲で目を擦ってからそっと目を開ける。
―――バッカじゃねえの? 俺。何でオナニーしてて泣いてんのよ―――
自分自身に呆れ果て、ふっと身体から力を抜いたその時。
俺の目の前に、ぬうっと立ちはだかった男は………紛う方無き、大泉洋。
「…………え………………あ………………っ!?」
咄嗟のことに言葉が出てこなかった。
顔から火が出るほどの羞恥に襲われる。
「……何してんのよ、お前……」
大泉の言葉は静かだった。かえってそれが俺には―――――怖い。
「………お……………いず………」
必死で声を絞り出し、何とかこの状況から逃れようと頭を巡らせるが、何も言葉が浮かばない。どだい何を言ったところでこんな格好を目の前にされて、何を言ったって通用はしないのは解っていたんだけど。
「イイ度胸してんなあ……しげ。お前が寂しがってるかと思ってさあ…こっちは必死で仕事終わらせて、せっかく来てやったっつーのに、なんだあ!? これはよおッ!! お前こんな事して許されっと思ってんのかー? ええ!?」
徐々に声が荒々しくなる。その顔には怒りの表情がありありと浮かんでいて。
「ち………違っ…………」
「ああ!? なーにが違うよ!?」
怒りのあまり逆上した大泉に、勢い良く床に押し倒された。フローリングに身体が勢い良くぶち当たり、彼方此方が痛い。
「随分とーイイコトされてるじゃあありませんか!! お一人でねえ!! 楽しそうじゃーないの!!」
目玉をギョロつかせて大泉が俺の上にのし掛かる。
「大泉ッ……ちがっ………違うって…ッ……」
必死で否定しようとするのに、言葉が出てこない。一番見られたくない姿を見られてしまって、俺はパニックを起こしかけていた。
「うーるせえよ! 黙ってろバーカ!!」
そう言っていきなり俺の中に入っている物に手を伸ばしてくる。
「折角だからもっと楽しそうなところ、見せて貰いましょかー? おら!!」
いきなり鈍いモーター音が響き、俺の中に収まっている異物が奇妙な動きをし始めた。
「……ッ!?…う………あああ…ッ……………」
身体の奥底で機械的に蠢く物体に翻弄され、俺はどうすることも出来ずに悲鳴をあげた。
「おやあ……佐藤君、随分と気持ち良さそうに泣くねえ。さてはさぞかしコイツで楽しんでいたのかなあ?」
意地の悪い言葉を投げつけてくる大泉が憎らしくて……半泣きになりながらも必死で睨み付ける。
「……何よ。」
そう呟いた大泉の目は何とも言えない色をしていた。
怒っているような、笑っているような。背筋の凍るような冷たい“獣”の目だ。
「…たす……ッ……」
それでも哀願せずにはいられなかった。蠢く機械に、痛みと快楽が入り交じった気持ちの悪い感覚を呼び起こされ、本気で気が狂いそうになる。
「冗談きついぞー、しげ。もっともっと泣かせてやるって。おもしれえモンも見つけちゃったしな…。」
床の上でのたうっている俺を面白そうに見つめながら、大泉は近くに置かれていた箱の中から不思議な物を取りだして俺の顔の上に翳した。
「な……によ、それ…っ…」
そう言うのが精一杯の俺に対して、大泉は口許をつり上げて薄ら笑いをする。
「イイモノ……。」
白い色をした妙な形の物体だった。
最初に箱の中を見た時、使用目的は自ずと解っても一体何処にどう使うのかが、全くもって理解できなかった物だ。
大泉はそれにたっぷりとローションを塗りつけているらしかった。そして喘ぐ俺の両脚を持ち上げ、大きく開かせる。勿論、開かれたその場所にはまだぐにょぐにょと機械的に動き続けるバイブが挿入されている。
カチッ…と音がして、急に動きが止められた。
身体からすうっと力が抜けてゆく中、それはずるりと引きずり出される。内蔵が引っ張り出されるような嫌な感触に、思わず呻き声を上げてしまう。
「…ん? 痛かったかい?」
少し優しい声だったので、そっと大泉を見てみた。右手には変な物を持ち、左手にはぬらぬらと光るパールピンクのバイブ。
その光景に思わず全身に寒気が走る。
「……まさか……それ………」
バイブの代わりにその白い物を挿れられると直感し、身体を捻って俯せになった。四つん這いで逃げようとしたところを易々と捕まえられてしまう。
「大人しくしとき……」
声だけは優しい。けど―――――有無を言わさず上から押さえ込んで、横向きに寝かされた。
両脚は折り曲げられて膝頭が胸元にくっついていた。何で一体こんな格好を!?
「おおい…ず……ッ………」
奴の名を呼ぶ俺の言葉は、虚しく宙に消えた。
身体の中に再び異物が入ってくる。しかも妙な態勢で、妙な物体がだ!!
ローションをたっぷり塗りつけられたそれは、ほんの少し埋め込まれただけで容易に俺の中に呑み込まれてゆく。
「力、抜けや。もう少ししたら面白いことになるからなー。」
大泉が俺の前髪を掻き上げ、唇にキスをしてきた。
…………やっと、キスしてくれたのに。
こんなとんでもない状況で。
俺が欲しかったのは快楽じゃなくて、ただお前だったのに!!
悔しくて涙が出そうになる。
大泉はなんにも解っちゃいねえ――――俺が何であんな真似をしていたかを。なんで恥を忍んであんな物を使っていたのかを!!
それでも唇を貪られて舌が柔らかく絡んでくると、俺の中で何かがざわめき立ってしまう。
ぞくりと沸き上がる感覚に思わず身体の奥底がじわりと蠢いた瞬間……突然いつもとは違う快楽に襲われていた。
「ひ……ぁ………ああッ…!………や……………あ…んっ……!!……」
口からはただ悲鳴とも喘ぎともつかぬ声が漏れる。気が変になりそうなほどの快感と羞恥に、もうどうして良いか解らない…。
「おお…すげえなーおい。あっちゅー間にイきそう。」
その通りだった。
埋め込まれた物が時折勝手にぴくぴくと身体の中で振動を繰り返し、まるで内蔵を掻き回されているような気味悪くなる程の快楽が全身を痺れさせる。
バイブで勃ち上がりかけていた俺の息子はあっという間にギチギチに張り詰めて、今にも暴発しそうな勢いだ。痛いくらいに反り返って床や俺の腹を濃い先走りの液で汚している。
でも――――イかない。
いや。正確に言うと、意識的にはイきそうなのに、射精出来ずにビクビクと身体を痙攣させてしまう。
「……やめて…おねが…いッ…………も…死ぬ……ッ……」
喘ぎ声の合間に何とか言葉を絞り出し、ぎらついた目で上から面白そうに眺め続ける男に哀願した。
「何でやめて欲しいのよ。お前、すーげえ善がってるべや…」
着ていたシャツをたくし上げられて、指先が身体を弄ぐり始めた。煽られるたびに俺の身体は敏感にそれを受け止めて、奥底を収縮させてしまう。
そしてその度に今まで体験したことの無い愉悦の波が襲いかかって……悲鳴をあげる。ただ、それの繰り返し。
「聞いちゃーいたけど、やっぱすげえのなー、コレ。」
何を言っているのかももう解らない。狂い死にそうな程に苦しくて、気持ちが良くて。
でもこんなに張り裂けそうに切ないのは………それが大泉に抱かれてるわけじゃないから。
身体中を丁寧に舐め回され、感じやすい部分を責め立てられて、どんどん追い詰められていた。
身体に触れてくる大泉に必死で縋り付き、哀願の言葉を何度も何度も呪文のように唱えた。この理解しがたい狂乱の中からどうにかして抜け出したくて。
「…お願いだから……イかせてや…ぁ…っ………頼むから……ッ……」
涙がじわりと溢れ出て、眦から床に流れ落ちていく。
「―――もう、限界かい?」
髪を掻き上げられ、額や瞼に執拗な口付けをされて、そう囁かれる。俺は苦しい中で懸命に頷いてみせた。
「仕方ねーな…そろそろ許したるわ。流石にお前が可哀相になってきたしなあ。」
身体を仰向けにされ、脚を曲げたまま大きく開かされた。その中心には張り詰めたまま放置された俺の息子と、更にその奥にはひとりでに蠢いてしまう謎の物を埋め込まれている。
情けなくて、涙が出た。
なんて情けなくて屈辱的な事をされているのか――――この場から消え去りたい程の恥ずかしさで、きつく唇を噛みしめてしまう。
「なんちゅー可愛い顔してんでしょうねー? 佐藤さんってばー。」
ほっとけバカ野郎。
お前なんかもう絶対に好きなんかじゃないわ。
大ッッッッッッ嫌いだ!! 疲労で死んじまえよ!!
そうやって頭の中で繰り返す悪態も、現実にはひとっつも言葉になんてならなくて。
ギチギチに張り詰めて破裂しそうなアレに、ぬらりと生温かい刺激が走る。
大泉がゆっくりと舌を這わせてきていた。生き物のように這いずり回っては唇を押し当ててくる度、いつもの愛撫以上の快楽が痺れるように全身に絡み付く。
その動きは決して早くはなく、むしろ物足りないくらいのものなのに……口からはいやらしい喘ぎ声が漏れてしまう。
―――こんなに感じてしまうのは………あの変な物で中を犯されているからだろうか?
そう思った瞬間口では言い表せないほどの激しい波が襲いかかり、俺はひっきりなしに喘ぎながら臨界点を超えてしまう。
駆け上がってくる爆発的な快楽と開放感が目の前を真っ白に霞ませ、俺はそのまま意識を手放していた。
ギシギシとスプリングの軋む聞き慣れた音で、目を覚ました。
頭の中が痺れているようで、咄嗟には何がどうなっているのか全く思い出せなかった。ただ、身体が酷くだるい。
もの凄い倦怠感と罪悪感のようなものが頭の隅にこびり付いていて、記憶がうまく呼び起こされないままそっと目を開けた。
目の前には大泉がいた。いや、正確に言うと俺の上に跨って、着ていた服を脱ぎ捨てたところだ。
ヤツの生々しい裸が視界に入ってきて、途端につい先程までの痴態を思い出す。なんだか否応なしに思い出させられたような感じもするが。
あの瞬間からそんなに時間は経っていないんだろうか、この感じだと。
だって俺の上に跨っている大泉の息子が、臨戦態勢で元気にそそり勃っているもの。
どうやら俺は、気を失っている間に床の上からベッドの上に移動させられたらしい。
「…あ、目ぇ開けた。」
人をなんだと思ってるんだコイツは。そんな言いぐさがあるかよ。
「マジでしげ、死んだかと思ったわ。」
すっと顔を近付けてくる。
触れ合うギリギリまで近付いた顔は、少し顔色が悪いけどやっぱりいつもの大泉の顔だった。
久しぶりにまじまじ見ると、何だか切なくなってきて…俺は何も言わずにただ大泉の両頬を両手で挟んで力を入れた。
もっとこの素っ頓狂で滑稽な顔を近付けたくて。
どうしてこんなヤツが好きなんだろう。
どうしてこんなにも、唇を合わせたくなっちまうのよ…俺。
「何よ……そんなツラしやがって。 ………バーカ……」
嬉しそうに目を細めて呟いてくる悪口も、への字にまがった唇も、何も彼もが愛しくてたまらない。
もっと綺麗で、もっとずっと可愛い、もっと大人な対応してくれる俺にピッタリのねーちゃんがそこいらにゴロゴロいるっていうのに…どうして俺ってばこんな図々しくて我が儘でずぼらな、しかも同い年のおっさんなんか好きになっちゃったのよ……。
「久しぶりだからってそんなに嬉しがることないべや、しげー。」
鼻先でそんな事を囁いてから、大泉がゆっくり唇を合わせてきた。
なまら柔らかくてあったかい口付けだった。
大泉に縋りついて、無我夢中で貪ったり貪られたり。
だって…今日ばかりはこの続きはお預けなんて事、無いんだもんな。
いっつもいっつも、キスだけで離れていく身体は切なくて寒くて……心がどうにかなりそうなくらいに悲しかったよ。
そんな気持ち、お前知ってた?
俺が誰かにこんなにも夢中になっちまうのって―――マジで信じられないことなんだって、ちゃんと解ってくれる?………
抱き合いながら身体を弄ぐり合って、肌の感触を確かめ合った。狂ったように何度も唇を求めあいながら。
すべすべで柔らかい温もりを身体中で感じる度、例えようもない至福感に包まれて、俺ってなまら愛されているんだなあ…なんてつくづく感じてしまう。
さっきまであんなに攻撃的で鬼みたいな形相だった男は、今はただただいやらしい顔でねっとりと俺を見つめてきていた。
………そっか。俺ってばやっと今気付いたよ。
きっと大泉だって同じだったんだよね。
お前だって同じような想いを抱えてたのに、忙しくて…どうにもならないほど身体は疲れていて。
でも、このままずっとお互いすれ違いだと心が干涸らびてしまうから。
だからせっかく睡眠時間を割いてここまで来てくれたのに、肝心の俺が一人でいたしていたら、そりゃあきっと腹も立つさ。
………ごめんな、大泉。俺が馬鹿だった。
お前が欲しくて欲しくて、お前の代わりを探してた。でもお前じゃなきゃ、絶対にこの凍えは癒せやしないわ………。
俺の両脚を大きく開かせて、大泉が股間の猛ったモノを奥まった部分に擦り付けてきた。
硬く勃ち上がったソレは先走りでぬらりと淫らに濡れていて、俺の中に入るのを今や遅しと待ちかまえてる。
膝の裏を持ち上げられて腰を高く掲げられ、ぐいっと押し入って来る異物を如実に身体で感じたら……肌が粟立った。
――――そう。欲しかったのは何ものでもない、この感触。
俺の中にお前が呑み込まれて、一つになるこの感覚が………狂おしくて。
「お…いず………みぃ……」
愛しいから、名前を呼ぶ。
「おお…しげ、すげけえやらしい顔してまあ……」
そう言われるのも本当はどこか嬉しくて。俺は無我夢中でヤツに縋り付く。
「やっぱ久しぶりのせいかね…お前今日は大胆じゃーないの。」
お前はビックリしながらも平然と腰を使い、突き上げてくる。
「だって俺……ずっとアンタを待ってたんだもん。すげえ切なかったよ…一人で慰めるのは。」
耳元でそっと囁いてみた。もっとビックリさせたかったから。
案の定大泉はビックリして目をまん丸くしてから、にや〜っと笑う。
「おやまあ、天下のハンサムツーが俺にベタ惚れとは……それは洋ちゃん、男冥利に尽きるってモンですなあ。」
結合部からぐちゅぐちゅと響いてくるいやらしい音が、その言葉を皮切りに更に速度を増した。
「…ぅ………ぁっ…………んあ………ッ………」
思わず喘ぎ声しか出なくなってしまう。大泉のアレが的確に俺の中を刺激してくるから。
「ありゃ……さっきあんなに感じまくっていたくせに、もう早やーらしい声出してー。こんな淫乱さんはどうしてくれようか?」
身体と言葉で楽しげに責め立ててくる。
こんなんじゃ…あっという間に俺、イっちゃいそう―――。
「…………っく………ッ………は……………あ…んッ…………」
「…なんて声出すのよ…お前……」
ちょっと奴の声がマジになったかと思ったら、案の定腰を持ち上げられて更に早く腰を打ち付けてきた。
「また……イっちまえや……なあ、しげ……………今度は俺に犯されてイっちまえ。最っ高に気持ち良くしてやっから……」
耳から入ってきた大泉の声が俺の意識を奪い取って、じわじわと甘く痺れさせる。
お互いの肌がぶつかる音と淫らな水音を辺りいっぱいに響かせながら昇りつめ、俺達はほぼ同時に熱く滾ったマグマみたいなドロドロのものを吐き出していた…。
汗だくで倒れ込んできた大泉をしっかりと抱き留めてから、そっと目を閉じてみた。
そうすると耳だけが研ぎ澄まされて、荒い息づかいや心臓の音なんかが良く聞こえてくるようになる。
時折首筋にちゅっと口付けてくる微かな音も聞こえてきたりして。
気だるい余韻に浸りながら、そんな事をひっそりと楽しんでいた。
「何笑ってんだよ…お前。」
大泉が囁いてくる。
「笑ってねえよ。」
「嘘つけや…ニヤニヤしやがって。」
目を開けて大泉を見た。
って…お前こそニヤニヤしてんじゃねーかよ。
「あのねえ大泉さんさあ、人のこと言えないじゃない。随分と笑みを浮かべていらっしゃいますが。」
じろっと見てやったら何とも子供っぽい顔をして更に笑うから…全くもって憎めない男だよ、キミは。
――――もう少し、抱き締めてて欲しい。
明日になったらこの温もりは俺の傍にはないから。だから今だけ………お前にくっついてたいわ。
そんな事を考えながら大泉の首に両手を廻していた。
時折唇を重ねたり身体を弄ぐり合ったりしながら、ベッドの上で絡み合う。時々憎まれ口を叩き合っていた俺達はいつしか無言になり、荒くなってくる息遣いと共に再び生まれてきた熱を感じ始める。
舌先でぴちゃぴちゃと弱い部分を舐め回され、堪えきれずに吐息を漏らしながら…焦れったさに身を震わせていた。
「……もう………俺…っ………」
必死でその言葉を吐きだした。身体の奥がじわじわと蠢いて、俺の理性を蝕み始めていた。
さっきあんなに激しくやったのに―――こんなにもまた大泉が欲しいなんて。
「おや…珍しく佐藤さんギブアップかい?」
嬉しそうに囁いて、俺の太股の間に手を忍び込ませてくる。指先が蠢き始めた入り口に宛われ、ずぶ…と中に侵入してきた。
「ぅあ……………ッ…!………」
異物感よりも先に、身震いする程の痺れが背筋を貫いた。
「うっわ…すっげえ……なーまら欲しがっちゃってまあ。」
ぐちゅ…ぐちゅ…っ…
うっとりするほどいやらしい音が響いてくる。俺の身体の奥から。
「よーし、しげ……ちょっと待ってろや。」
そう言ったかと思うと、大泉の長い指がずるりと引き出されてしまった。物足りなさに唇をきゅっと噛んでいたら、ヤツにはお見通しだったのか唇に一つ、口付けをくれた。
「お前可ー愛いわ、ホント。」
腰を持ち上げられ、くるりとひっくり返されて四つん這いにさせられる。腰を突き出してのお強請りのポーズみたいになっちまうのが流石に悔しくて、ちょっと抵抗しようとしたけどあっさり上から押さえ込まれた感じ。
そのまま背中に一つ、また一つと唇が押し当てられて…焦れったさに背中を仰け反らせてしまう。僅かな刺激が、切ないほど気持ち良くて……。
唇の愛撫がゆっくり、背中から下へと降り注ぐ。腰に……そして、欲しがっているあの部分に。
優しくというかいやらしくというか、ともかく執拗に唇を押し当てられてから、舌先でちろちろと狭間を舐め回された。
「……ん……あ…っ……」
つい、声が出てしまう。
大泉の舌は入り口の辺りをぬめぬめと這いずり回って、更に俺を焦らし続ける。それがまた切なくて、気が付けば俺は必死で喘ぎ声を漏らすまいと堪えても、結局我慢しきれずに啼いていた。
「…おねが………い……だから…ッ……焦らすの…………やめ…ッ………」
言葉と言えばそんな哀願しか出てこない。
「じゃー挿れて下さいって…言ってみれ。」
ヤツの言葉は………まるで悪魔の囁き。
言ってしまえばきっと楽になる。けど、自分の口からそんな事を言わされる屈辱が悔しくて…シーツに顔を埋めた。
「今更恥ずかしがったって仕方ないべや、お前。ちょっと言ってくれれば許してやっからぁ…」
ちゅ…と敏感な部分を吸い上げて、わざと身体を疼かせる。その度に俺の身体がびくりと跳ねるのをきっとアイツは楽しんで見てるに違いない。
「お………いず………っ………………も…………我慢……………できないって…ぇ…………」
奥底が疼いて、気が狂いそうだ。刺激が欲しくて頭が変になりそう。
「ちゃんと可愛く言ったら、いっぱい気持ち良くしてやっから…なー? しげぇ……」
俺の息子にも手を伸ばしてきて、ゆるゆると掌で扱いてきた。
―――もうそろそろ、駄目かも。
我慢出来そうにない。
「…………くださ…い…ッ…………」
消え入りそうな声しか出なかった。恥ずかしいのと情けないのとで、身体が小刻みに震えてしまう。
大泉はほんの少し間をおいてからぼそっと呟いて、腰を持ち上げた。
「意地っ張りな佐藤さん…大好き。」
疼いている場所に大泉のモノが押し当てられ、先走りとローションの混ざり合った液体が擦り付けられた。そしてゆっくりと俺の中に硬く怒張したソレが押し入ってくる。
「……んっ…………ああ…ッ………ぅ………」
欲しかった刺激が背筋を駆け上ってきて、押さえようとしても声が自然に漏れ出た。最初はゆっくりと出し挿れされ、やがて力強く奥まで貫かれる。あまりの快楽に俺はただ、淫らな喘ぎ声をあげる事しか出来なかった。
「なあしげ……ちょっとお前、窓の方見てみれや!」
ゆるく腰を使いながら大泉がそう言ってきた。何かと思ってそっと顔を横に向け、言われたまま窓を見てみる。
俺の部屋のベッドは、下の川が良く見渡せる窓際に設置してあった。そして、その風景を楽しむために俺は敢えてカーテンというものをまだ付けていなかった。
朝は気持ちの良い朝日がさんさんと差し込み、夜は遠目に見る街中の夜景が随分と綺麗だったからだ。
せっかく無理して最上階の部屋を借りたんだし、目の前は川が流れているから中がそう易々と覗かれる心配もないわけで。
そんな窓には今日も黒々とした夜の川があるだけだ…と、ただ漠然とそう思っていた。
――――実際には違った訳だけど。
暗い窓は鏡のようにくっきりと、明かりを消していない部屋の様子を映し出している。
勿論、俺と……俺を後背位で淡々と犯し続けながら、ガラス越しにこっちを見てにやついている男を。
「……い…ッ………!………」
慌てて顔を背け、シーツに突っ伏する。
「バカお前!! なに…っ……何考えてんの…よぉ…ッ……」
恥ずかしくて涙出てきそうだよ。いくらなんでもこんなにハッキリと視覚で見せられちゃうと………辛いってば。
全くなんて顔してんだよ…俺ってば。もう絶対最悪。
マジで女みたいな顔して蕩けた顔しちゃってるもの。大泉に突っ込まれて善がっちゃってさ。
「何がよ? カーテンもなんも付けてないキミがいけないんでしょ? お陰で堪能させて貰っちゃってますけどv」
なんつー嬉しそうな声だすのよ………こっちは恥ずかしくて死にそうな思いしてるのに。
「おお何だ、そんなことして顔隠したら面白くないぞーしげ!」
何を言われたって絶対に顔を上げるもんか!! 冗談じゃねーって!!
必死でシーツに顔を埋めていたら突然ぴたりと大泉が動くのを止め、埋め込まれていたものをあっさりと引き抜かれてしまう。
「……うっそ………おま…ぇ………」
また焦らされてしまうのかと身を竦ませる。俺の身体はまだまだ熱を抱えたままで、物足りないことこの上ない状態だ。
顔を上げようかどうしようか迷っていたら、後ろからがっちりと抱き締められた。
俺の背中に大泉の胸元がぴったりと密着して、これはこれで少し嬉しいんだけどね。でも、俺は続きが欲しいよ…大泉ぃ。
なーんて思っていたところ、あっという間にもの凄い勢いで抱きかかえられてベッドの上にぺったりと座らされた。背後から大泉にぎゅっと抱き締められたまま。
呆気にとられ、つい茫然としている俺の耳元で悪魔が再び囁いてくる。
「ハイ、ちょっと暴れないでねー佐藤さん。」
するりと延びてくる長い両腕。それらが俺の太股から徐々に下がって、膝頭を撫でさする。後ろから首筋や肩に口付けを落としてきながら、膝を撫で回されて…身体から力が抜けていくのが解った。だってさ……な〜まら、気持ちいいの。
つい後ろの大泉に背中を預けてしまい、うっとりとしていたら今まで膝を撫でていた指先がその後ろ側に伸びてきて、ぐいっと力を篭められた。
暴れる間も無く、俺は後ろから大泉に抱き上げられていた。
これは―――――この格好は、まるで逆駅弁スタイルのような……。
「いやー佐藤さんってば軽いねー、やっぱり。さて、ちょーっとゆっくり…息吐いてみれ。」
いつもの口調の中に有無を言わせぬ迫力があって、俺は言われたとおり息を吐き出して身体から力を抜くよう務めた。
下から相変わらず猛ってそそり勃っている大泉の息子が、俺の入り口を軽くノックしてくる。
くるな…と思った瞬間、俺の身体は胡座をかいて待っている大泉の上にゆっくりと降ろされた。
ぐちゅ…と、いやらしい水音がやけに耳に飛び込んできた。そして俺達の荒々しい息遣いがそれに続く。
「すっげ…ぇわー……しげ。」
俺の中はさぞかしいやらしく蠢いていたに違いない。思いっきり嬉しそうな声出して、耳元で囁いてくるから、ちょっと照れちまう。一体誰がこんな身体にしてくれちゃったのよ……。
穿たれたモノをすっかり呑み込んだら、奥底からじわじわと充足感が沸き上がってきた。甘い痺れが腹の底から溢れて、本当に蕩けそうだよ、大泉。
ゆるゆると上下させられ、あまりの気持ち良さに声を漏らしていた。出し挿れされる度に自然と上がってしまう。
またもや俺の大事な大事な息子は、元気を取り戻して天を仰ぎ始めている。何にも触れられてないのにさ。
「しげの顔…見えねーなー、これじゃ。」
ぽそりと呟いて、大泉が動きを止めた。
「…え…や…………ちょっとまさか……………」
はっと思い出したのも後の祭りで。
思いっきりヤツは身体を横にずらし始めた。俺を貫き、膝の裏を持ったままだ。
ベッドの僅か30p横には、あの窓。カーテンも何も無い、鏡みたいに部屋の中がよく映るデカいガラス窓―――。
案の定窓には真っ正面での全身が映り込んでしまっていた。
あられもない格好で抱えられて、下から大泉のモノを銜え込んでる姿だ。
……我ながらなんてまあやーらしい格好してんだろうね。泣きそうだよ、恥ずかし過ぎて。
「……しーげーぇ………お前なんちゅー顔してんのよ。今更恥ずかしがったって仕方ないでしょ?」
ガラス越しに見つめてくる視線はじっとり絡み付いてて…いやらしい。それだけで気恥ずかしくなるってのに。
そんな事をされても尚、俺の息子はますます元気になってる。ぐちゅぐちゅと淫らな音を立てて俺の中に出し挿れされるところも、今にも泣きそうなツラしてるのにどこか熱に浮かされたみたいな顔してる自分の顔も、もう全てが快楽を高める為の刺激でしか無い。
内側を大泉のアレが出入りする度、女みたいに切ない喘ぎ声を漏らしていた。傘が中で微妙に引っ掛かって、身震いする程気持ちがいい。
もう俺の息子は先走りでぬらぬらと鈍く光っている。そんな様子が目の前に映し出されていた。目を閉じようとしても閉じることも出来ず、さらけ出された淫らな自分から目を逸らすことが出来ずに見続けた。
耐えきれなくなり、とうとう俺は自分から下半身に右手を伸ばしてしまう。いつもみたいに強制されているわけではなく、自ら進んでだ。どうしようもない愉悦に脳まで冒されて、最早俺はいつもの俺じゃない。
今ここに居るのは気が狂うほど犯されていたい…一匹の獣だ。びくびくと身体を震わせて、さらに快楽を貪ろうと欲している獣欲の塊そのもの。
硬くそそって血管の筋を浮かせている息子を、手の中でゆっくりと扱いてやる。
後ろから前からと襲いかかってくる痺れに、心底陶酔しているとしか言いようがなかった。
「今日は随分といい子だねー…お前。もっと乱れさしてやろうと思ったら、あっさり自分でやっちゃうか、キミは。」
「……だって…もう…………我慢出来ねえ…んだもん………」
精一杯言葉にしようと努力してみた。頭がぼうっとして、本当は喋ってられる余裕なんて全然無い。
「…じゃあこっちも弄くっちゃえよ、もっともっと感じてれや。」
そう言って俺の左手を胸元に宛ってくる。
ガラスに映る俺は左手で自分の胸元を弄りながら右手で息子を扱き続けていた。
蕩けた顔して……大泉に揺さぶられ続けながら。
でも昇り詰めそうになる度、大泉は動きを止めてしまう。その度に俺は目に涙を溜めて苦しそうに喘いでいるよ、ガラスの中と外の世界で。
そんな事を何度も何度も繰り返された。
その度にイってしまいたくて、掌の中のモノをどんなに愛撫しても……何故かイくことは出来ない。
結局焦れて、途切れ途切れにお強請りの言葉を口にする。
もう、限界。
お願いだから決定打を頂戴よ。
お前のアレで嫌っていう程掻き回されて、イってしまいたいんだ。
このまま焦らすのは―――勘弁してよ。
馬鹿みたいに泣き叫いてお強請りを繰り返したら、やっと大泉が俺の身体を抱き締めてきた。
もの凄い力でぎゅうっと抱き締めてきて…後ろから耳朶をやんわりと噛んでくる。
「ごめんな…あんまりお前可愛いから、ちょっと焦らしすぎたわ…」
そんな事を囁かれてかっと顔が熱くなった。
抱き締められたまま俺は再びふわりと宙に浮いてから、その場に四つん這いにさせられた。気が付けば目の前には窓だ。
大泉の意図していたことが解って、俺は乞われるまま両手を窓ガラスに伸ばし、掌をぴったりとくっつけた。
鏡のような窓の前で俺は尻を大泉に突き出して犯されている。ガラスに手を付きながら。
大泉が緩急をつけて俺を突き上げ続ける。目の前にはそんな狂乱の様子もありありと映し出されていた。
汗を滲ませながら俺を犯す大泉の姿にさえ欲情し、両脚の狭間で揺れ続ける俺のモノは膨張しきって破裂しそうだ。
頭の中はイかせて貰うことで一杯。
このまま貫かれながら最後まで昇り詰めたくて。
「………ん…っ……ぁ……んッ……………も……イきたいよぉ………ッ…」
喘ぎながら懇願の言葉を呟く。切なくて、もどかしい想いの全てを込めて。
「………了解………!」
低く響いてきた声が全身に染み込んでくる。
―――好きだよ。大好き。大泉………。
お前が恋しくて、たまらない。
甘く囁かれる声も、俺を乱してやまない悪戯な指先も、情熱的に打ち込まれるアレも。何も彼もが俺を捉えて離さない。
気が付けば悲鳴みたいな善がり声を上げて、俺は奥まで貫かれる悦びにうち震えていた。
激しく抽挿を繰り返され、身体の奥底まで叩き付けられるように突き上げられて……背中を仰け反らせた瞬間、例えようもない大きな波が俺の意識を呑み込み、究極の開放感をもたらしてくる。あまりにも甘美な一瞬の快楽。
「……しげ………最ッ高…ッ…………」
腹やシーツの上に白く熱いものをぶちまけながら、身体の中に注ぎ込まれてくる体液を感じて更に歓喜に酔いしれていた。
勿論、そんな表情すら目の前にはしっかりと映し出されていたわけで………。
湯船に浸かってただただぼんやりと過ごす。
時刻はもう丑三つ時を過ぎ、そろそろ早朝と言ったところだ。
大泉に横抱きに抱っこされて、冷めてしまった少し温いお湯の中で微睡むのが…凄い心地いい。
「おい、さみーからもっとくっつけって、しげ。」
言われるまま首もとに手を廻し、ぴったりと密着した。濡れた手で癖ッ毛の髪を掻き上げ、何度も軽く口付けては時々にんまりしてしまう。
今日くらい、いいよな? もう少し甘えたって。
また朝になれば忙しいもん、俺達。だから今日だけはベタベタしてようぜ、大泉。
「なあしげー…」
「ん? なしたの、洋ちゃん。まだ寒い?」
広くなったバスタブの中で密着して微睡んでる男二人。しかもなまら甘い雰囲気で。あら、なんかすげえ図だわね〜、これ。
「お前ね、前から言おうと思っていたんだけどさー。」
両手でぎゅうっと抱き締められて少し息苦しい。
「あんまし大下とかと仲良くすんなや、これ見よがしに…」
………ちょっとばかり呆気に取られる。
夜明け前の…疲れてくたくたの脳味噌にでも、流石にその言葉はダイレクトに響いてきた。
「――何よ、お前。ヤキモチ焼いてんのかよ?」
可笑しさが沸々と込み上げてくるけど、必死で呑み込んでみる。
マジ? 大泉ってば。もしかして最近ずっと気にしてたの!?
「…だってしょっちゅうアイツ、ココに来てるらしいやないのー。妬いてる訳やないけど流石に心配になるっちゅーもんでしょ?」
「いや…それは妬いてるって言うのよ、大泉さん。」
とうとう堪えきれなくて俺は吹き出しながらそう言った。
「バっカ! そんなんなじゃねーって!! ただ俺としてはやっぱりなー、その…」
もごもごと口ごもる。いやぁ大泉さん、いっつもそんなんだったらさぞっっかし可愛いのになあ。
「……心配しなさんな! アイツはパソコンのこと詳しかったりするから俺が教えて貰ってただけ。そうじゃなくったって可愛い事務所の後輩な訳でしょ? ちょっとは面倒見てやらにゃーさ! ね?」
ぽんぽんと後頭部を軽く叩いて、子供をあやすみたいにゆっくり話しかけてみた。
大泉ってね…子供みたいなのよ、時々。
だから憎めないんですけど。
まあコイツに言わせりゃ俺の方が数倍お子様なんだろうけどさ……。
「ちょっと温まってきたし、そろそろ上がろうや。でさ、朝までくっついてよーな。な? 大泉ぃ。」
額にキスをして、俺は精一杯の笑顔を浮かべた。
もう。笑顔の大サービスだぞ!!
また明日から、忙しい日々が始まる。
今度はいつこうやって過ごせるか解らないけど―――でも、俺はずっとお前だけ見てるよ。
お前のこの温もりを想い出して、心の中であたためてるから。
だから俺が凍えてたら、時々でいいから抱き締めに来て欲しいわ。
そうしたら俺、きっとずっと笑顔でお前の隣に居られるからさ…。
………いつまでも一緒に、笑っていたいからさ………。
キリ番、4343を獲得なさいましたユミカ様からのリクエストで御座いました。
今回は玩具使用、鏡、背面座位などのご希望がありまして
こんな感じになりました。
最初から最後までエッチしっぱなしになっちゃいましたのは、ワタクシが久しぶりに濃厚なものを書いたため
やり過ぎちゃったことが原因です(笑)
しかもシゲが甘ったれの寂しがりやで、まるで恋する乙女のようになっちゃいまして
非常に甘々で御座います(汗)
どうぞ砂吐きに、ご注意をv
そうそう、バイブの後に使われてしまった物体は、エ○マ○ラと言う器具です☆
アレを使いこなすのは相当大変らしいのですが、
普段から洋ちゃんに開発されまくっている姫なら、余裕でオッケーかな?
な〜んて思って使ってみました。 あしからず。