ラブ・コール
ラジオの生放送が終わった直後に、携帯が鳴った。
さんざんみんなに、『今時ピッチなんてさぁ…』と言われ続けた俺は、やっと買い換えた携帯を手にする。
「はい。洋ちゃんですよー。」
『解ってんだよバカ!!』
電話口の声は勢い良く言葉を叩きつけてきやがった。…まあ、いつものことやけどね。
「…バカはどっちだ。バカって言うヤツがバカだあ!っつうの。」
『うるせーんだよ、このバカ!!』
カチッ(怒)
俺の中で何かが切れる。
「でー?用件は何よ?くだらねー用なら切るぞー。」
『くだらなくねえ!!お前…さっきラジオで何言うのよッ!?』
「……………はい?」
ラジオで何言うのって?そりゃー喋るのは仕事ですからねー。何でも喋りますけど。なしたの?コイツ。
『お前ねぇ、…俺の寝起きがどうのとか、そう言うこと簡単にバラすなよ!!』
「あれ?ゴルゴ聞いててくれたのかい?」
『移動中に車の中でたまたま聞いてただけだよ…』
ちょっと声のトーンを落として呟くのが、なまら可愛いね。
「そっか、聞いてたー。ああーそうかそうか。いやあのね、しげ。バラすって、なんもバラしてないでしょ。
お前の寝起きがしゃっきりしてて寝ぼけてるかどうか解らないらしいって言っただけじゃないの。
別に大したことじゃーないでしょー?」
成る程成る程。洋ちゃん、コイツの言いたいことが解ってきちゃった。
『けど、あれじゃまるでお前…何か随分とハッキリ言っちゃっててさあ……
なんか目の前で目撃したみたいな口振りだったでしょうが。』
「――実際いつも見てんじゃんv」
思わずにやけてしまうわ。
『だからまずいって言ってんだべや!!』
「まずいなんて言葉、いっこも言ってないだろ、佐藤ー。」
『ああもう!!お前ってヤツはッ!!』
電話口で眉をきりきりとつり上げてるしげの顔が容易に思い浮かんで、俺はおもわずくっくっと笑った。
「なになに、佐藤さんわざわざそれで洋ちゃんに電話かけてきてくれたのー?もー、可愛いんだからなーv」
『……………いっぺん死にやがれ!!』
途端にプツっと音が途切れ、やがてツーッツーッ…と味気ない電子音が耳元で響く。
「あーらまあ。つれない態度だこと☆」
ふと気が付くと、訝しげにこっちを見ているハンサム1号。
「…何、佐藤?」
「そ。」
「へえ、佐藤からかけてくるなんて、珍しいんじゃないの?しかももうすぐここに来るじゃん、アイツだって。」
これからガタメの収録だから、全員ここに揃うわけで。
それを知ってる安田が更に訝しい顔をして首を傾げた。
「へっへっへー………ラブ・コールv」
途端に安田の顔が小馬鹿にしたような表情に変わる。
「そんなことあいつの前で言ってみろ。殺されっから。」
「ああ?大丈夫ー。何だかんだ言っても俺、なまらアイツに愛されっちゃってるもん。」
「………………あっそう。」
呆れ顔でくるりと背中を向けた安田にあかんべーをくれてやりながら、俺は満面の笑顔でスタジオを出て控え室に向かう。
愛しの佐藤くんはそろそろ局に着くだろう。
もしかしたら出会い頭に一発、噛み付かれるかもしれねーなー…、まあそれもまた一興。
………明日の朝も、また寝起きの様子を拝んでやろうっとv………
HOME BACK