◇ 2 ◇



    




 けだるさが心地いい。
まだ抱き合ったまま、何となく軽い口付けを繰り返す。
脚を絡め合い、唇を重ねて、無言のまま想いを重ね合っていた。
目の前の顔が露骨に嬉しそうな顔をしているから、ちょっと気恥ずかしいけど……たまには素直にしてるのも、悪くはないかな。
「しげー……」
ぼんやり幸せに浸っていると、小さな声で呼ばれた。
「何?」
前髪を掻き上げて顔を覗き込んだ。勿論、笑顔のサービス付きで。
目の前の大泉が少し黙った後、にっと小さく笑った。
「何よ、幸せそうな顔してお前は……」
照れ臭いので、つい指先でデコピンをしてしまう。
「しーげちゃん………あのな。」
勿体ぶって言葉を濁しながら、デコピンした手を掴んで寝転がったままの大泉の身体にぴたりとくっ付けられた。
――――――ちょっと、待て。
掴まれたままの手に当たるのは……これは、やっぱりアレか? 大泉…………。
きっと俺はあからさまに眉を顰めていたと思う。だけど大泉は嬉しそうにしたまま、俺なんかにはお構いなしのご様子だ。
「………もっかい、ダメ?」
ほんの少し前にイッたばっかりの筈だというのに、大泉の息子は元気を取り戻して俺の掌に当たっている。
疲れている時は勃ちがちだけどさー…大泉さん。あんた、本当〜に………可愛いよね、中身が。
そんなに嬉しそうに触らせなくたっていいってば、全く。
「―――やだっつったって、どうせやる気満々でしょ?……大泉さんってば。」
半ば呆れがちに言いながら、固くなりつつあるソレに指先で触れてみた。
つつっと爪先でなぞると、おでこに口付けをひとつ落とされた。
「しげのも…触らしてや………」
結局二人してお互いの息子を愛撫しあいながら、熱い吐息を漏らしていた。
どちらも先走りの液をたらたらと零して、掌からはくちくちと水音をさせている。
唾液を纏った舌を絡め合い、息苦しくなる程絡み合いながら、理性をかなぐり捨てていった。
 そろそろ……俺の中がまた疼き始めたようだ。
さっきあれほどに愛された俺の身体の奥が、再び大泉を欲して切ない程に蠢いている。
「…大泉……もう………俺、ヤバい…………………」
どうにか、微かな声でそう呟いた。
「辛そうだね、しげ。」
まだ余裕の笑みを浮かべながら、大泉は動きを止めた。
「………欲しいなら…………………おいで。」
絡ませていた脚をするりと離して、突然俺の横で仰向けになった。
大泉の手の中には怒張して天を仰ぐようにそそり勃っている雄がある。今まで俺が丁寧に愛撫していたモノだ。
「………………マジ…で?」
「なまら、マジ。」
手首を動かしてぷるぷると自分のモノを震わせる。その光景に、俺は目眩を覚えた。
「嫌ならいいんですよー…佐藤さん。このまま自分で出しちゃうけど。」
わざと扱くフリをしながら悪戯な目で俺を見てくるのも、憎ったらしい。でも、結局はそんなところすら、愛しいのも厳然たる事実だしな―……。
「……どうすれってよ。」
何だかもの凄く恥ずかしくて、ついぶっきらぼうな物言いになった。だって、自分からってのは………ちょっと、ね。
「いーから来いって……」
こうなりゃもう仕方がない。今日は出来る限りのことをしてやろうって決めたんだし。
何度もそう言い聞かせて、俺はすうっと息を吸い込み、静かに吐き出した。心なしか少し落ち着いた気がする。
上半身を怖ず怖ずと起こし、寝ている大泉の身体を見、それから視線を顔に移した。
待て、おい。さっきまで半泣きだった男の顔とは思えないくらい、期待に満ちた面してやがる……。
意を決して大泉の身体の上に跨り、モノに手を沿えてゆっくり身体を落としていく。なるべく力を抜いて、呑み込みやすいように慎重に。
「……ん………っ………………」
襲ってくる圧迫感をどうにかやり過ごして、先端を受け入れた。それから加減して腰を落としていく。
いつもとは全く逆の、自分から大泉のモノを受け入れる動作はかなり恥ずかしくもあり、新鮮でもあり。
いつしか夢中で呑み込んで、すっかり中まで収めてしまった。
「…………すーげえ…………なまらしげ、えっちだ…………」
我ながら騎乗位何ぞをご披露するとは思っても見なかったが、睨め廻すように見つめてくる大泉の視線が心地いいとすら思える。
「そのままゆっくり………動いてみれ。」
言われるまま、ゆっくりと腰を使い抽挿を繰り返した。中に残ったままの大泉の精子がうまくローション代わりになっているようで、わりと楽に動くことが出来る。
俺は快楽を追うことにのみ集中した。出し挿れを繰り返すたび、痺れるような疼きが背筋を登ってくる。
部屋の中に粘液特有の音を規則的に響かせて、俺は動き続けていた。
 そのうちするすると大泉の長い腕が伸びてきて、俺の腰を掴んだ。
「支えててやるから、俺の目の前でオナニーしてみせてや……しげ。」
また、あの甘い響きだ。
逆らうことすら出来なくなる悪魔の囁きが、俺を蝕もうとする。
「………見せてくれないの? お前が乱れるとこ…見たいんやけどなー、洋ちゃん………」
おねだり上手の悪魔が尚も囁いた。
「…だって、お前これは………恥ずかしすぎる……っ………」
流石に顔が見られなくて、俯きながら何とか言ってみる。たとえささやかすぎる抵抗だとしても……。
「今更何を…」
腰を掴んでいた大泉の左手が、大泉の腹の上に置いてある俺の右手をがっちり掴んだ。
そのまま息子のところに強引に持っていく。
息子は俺が抽挿を繰り返すたび、天を仰いだままふるふると揺れていた。雫を涙のように垂らしながら。
それを掴まされ、扱くよう促された。
「ほら……下からこうしてあげるから……」
いきなりぐいっと突き上げられて、思わず悲鳴を漏らす。
「…ん…っ…………や………ぁ…ッ…………おおいず……っ…………」
ぐちゅぐちゅと音を立てて揺らされるたび、蕩けるような疼きに翻弄されてしまう。
「ほーら…こうするんやろ?」
大きな掌で包まれた俺の手が、意思とは反して上下に動き始める。大泉は下から嬉々とした表情で、俺を食い入るように見つめていた。
がくがくと揺らされながら、いつしか大泉の手助けを必要とせずに手の中のモノを扱く俺が居た。もう何が何だか解らなくなって、ただふわふわと気持ちがいい。
大泉のまとわりつくようないやらしい視線すら心地よくて、一心に手を動かしながら揺らされ続けていた。
「………可愛いわ……しげ………」
荒い息遣いの中で大泉が呟き、俺の胸元に手を伸ばしてきては固く凝った突起を弄ぶ。
掌で撫で回したり指先で摘んで、愛しげに弄くり回してくる。
「乳首は立たすはアソコは濡れまくりだわ………お前、本っ当〜に…えっちだね…………」
―――そうしたのは、全部お前だよ……大泉――――。
先端から泉のように溢れる雫がくちゅくちゅと音をたてる中、熱に浮かされた頭でぼんやり思う。

 一定のリズムで突き上げられ続けていた。イきそうになると大泉の動きが止まってしまう。
自分で慰めて達しようとすればその手をやんわりと遮られ、昇り詰める直前で快楽から突き放される。
………気が狂いそうだった。
「……もう勘弁……して…っ……大泉ぃ…………」
八方塞がりのまま、身体を震わせた。
頭の中はイかせて貰うことで占められ、ただ快楽のみを追っていた。
「解ったって……せーっかくいい景色だったのにな……こっからの眺め。」
そんな事を言いながらまた俺の右手の動きを遮る。
「じゃあね、佐藤さん。ゆっくり身体倒しておいで、こっちに。抜けないように気を付けてだぞ……」
言われるまま静かに大泉の身体に慎重に近付いて、出来るだけ上半身も重なるようにすると、大泉の腕がしっかりと俺の腰を支えてくれた。
シーツの上に両手を付き、腰を落とした様な四つん這いで大泉に跨ったまま、下からまた規則的に突き上げられる。
ああ…マジで………なまら気持ちいい。
永遠にこのままで居られたら俺、どんだけ幸せかな………。
そんな事を思いながら顔のすぐ下にある大泉の額に唇を這わせ、何度も想いを込めて唇を押し当ててから、口許に胸の突起を近付けた。
「……舐めて………大泉。」
普段だったら死んでも言えないようなおねだりたをしてみる。
きっと俺、今とんでもなくやらしい顔してるかもなー………。
 大泉はにやりと笑いながら、俺の胸元に吸い付いてきた。固いままの突起を口に含み、舌先で乱暴なくらいにしゃぶりつく。
それと同時に俺の中をぐいっと力強く突き上げては掻き回してきた。
「…ッ………ぁ……………ああ………ッ………………」
強い電流が流されたような、強烈な痺れに苛まれた。
大泉の雄が、本格的に俺の一番弱くて感じやすい部分を狙い打ちしてくる。
「……ん………ッ……………ぁ…………は……………ッ………………ぁあ…………ッ……………」
もう何も言葉なんて出てこない。ただただ、悲鳴のような喘ぎ声が漏れるだけだ。
確実に繰り返し繰り返し楔を穿たれて、次第に目の前が霞んでくる。もう何も見えない。
「………ん…………ぁは…ッ…………っく……ッ……………イ……………ちゃう…ッ……………………」
「…俺を呼んで……………しげ…ッ……………」
胸元から直接響くような囁き声に、ただでさえ敏感になっている身体がビクビクと震えた。
「お………いず………っ…………み…ッ……………」
気力を振り絞って名前を呼ぶ。もう何が何だか解らなくなりそうなのに。
「………イかせ……て……………ッ…………」
涙がぼろぼろと零れた。苦しくて、切なくて……何より大泉が愛しくて。
「………しげ………ッ………………!」
一際大きく突き上げられ、大泉の雄が俺の中の一番深いところにまで入ってきて――――動きを止めた。
大きな波にふわりとさらわれてしまったような浮遊感にとらわれ、俺も全ての動きを止めて大泉の身体の上に白いものを吐き出すと、ゆっくり崩れ落ちる。
それはまるで全てがスローモーションのようだった。


 ―――俺はどうやら気絶していたらしい。気が付いたら風呂場にいて、大泉に身体を丁寧に洗って貰っていた。
瞼を開けると目の前には大泉が居て、しかもやけに嬉しそうな顔してひとの身体を撫で回している。
「おお、やっと気が付いた。いやー…死んでたらどうしようかと……」
そんなことを言いながら、シャワーのヘッドを取り上げ、身体にさーっとかけて泡を流している。
俺は壁にもたれかけさせられて座らされていた。で、目の前には立ち膝で大泉。
「………危うく逝くとこした。誰かさんのせいで。」
ぼんやりと思い出し、苦笑いする。なかなかイかせて貰えなくて、本気で死ぬかと思った思ったわ、マジで。
「ばぁか、イッたからいべや。」
「大泉。かなり意味違うわ、それ。」
呆れて笑いながら、ただ身を任せてされるがままでいた。
あったかいお湯が…気持ちいい。
「しげ……」
大泉がシャワーヘッドを持ったまま顔を近付けてきた。
「…ん?」
ぼんやり微睡みながら見上げる。大泉の顔からまた笑顔が消えていた。
「なしたの? 大泉。」
濡れた手で大泉の頬に触れると、大泉の顔に少し笑顔が戻った。
「――――――――お前が居てくれて、良かった。」
はにかんだ笑顔で、ぽつりと言いながら尚も続けた。
「お前がいつも傍にいてくれるから……本当に感謝してる。」
何よ、お前。突然何を恥ずかしいこと言ってくんのよ。………ばーか。
「いいよ、気にしなくて。お前が辛いときは、俺、いつでもいてやるから。」
頬に当てていた手をするりと首の後ろに廻し、肩口にそっとおでこをくっつけた。
「辛いなら、いつでも俺に分けてくれればいいよ。それでも駄目なら、みんなで背負おうや、大泉。お前はいつだって一人じゃないんだからさ……」
無言でぎゅっと両肩を掴まれた。
「…………ありがとな……」
頭の上から聞こえてくる声は心なしか少し震えているみたいだった……。



 数日後。俺は大泉に呼び出されて、スープカレーを食べていた。
「それにしても本っっ当、良かったなー大泉。いや、大丈夫だと思ったよ、うん。」
メシは美味いし番組はこのまま存続するし、今はあの日とうって変わってお気楽なもんだ。
「まぁなー。だけど副社には随分迷惑かけちゃったから、明日は飛行機の中で最高級の土下座だわ、俺。」
冗談混じりに笑いながらも、半分真面目な顔をして呟いてる。
まずいまずい、話の方向を変えよう……。
で、口から飛び出したのはこんな言葉。
「しっかし…うちの副社は勝利の女神だねー。」
「……いやー、戦いの女神やろ。」
そう言ってけらけらと笑った。副社が聞いたら怒るかな、いや…馬鹿笑いするか。あの雄々しい女神は。
 とにかく本当に良かった。大泉はいつも笑ってくれてないとさ、やっぱ。
スプーンを口に運びながらそんな事を思い、しげしげと大泉の顔を眺める。そんな俺を見て、大泉が何やら含み笑いをした。
「ん? ん? …何? 大泉。」
何事かとスプーンを持ったまま聞くが、その後は答えてくれない。
――何だよ全く。
ま、いいけどさ。
 食い終わって店を出ると、外は雪だった。
さっきまで降ってなかったのに、今は僅かながらも空から降り注いでくる。
「さみーーっ。うっわ、早く車乗んないと死んじまう。凍り付いて死ぬ!」
店から少し離れた駐車場に向かって歩きながら、忌々しげに空を見上げた。
「しげー。」
後ろから呼ばれて振り返ると、大泉が優しい笑顔で片手を差し出している。
数歩程後ずさって、その手をしっかり握った。あったかい手だ。
指をきゅっと絡めて、無言で歩き出す。
吐く息は真っ白で、足元からはきゅっきゅと雪を踏みしめる音。
静かな冬の夜。芯まで冷えるような寒さだけど、繋がった手の温もりが少しだけ心地いい。
同じ速度で隣を歩く大泉は、明日からまた東京でドラマの撮影がある。本当はさっさと家に帰って明日の朝一の飛行機に間に合うように寝といた方がいいのに…何を考えてるんだか、俺ん家に来るって言い張ってきかない。
「お前明日の朝、早いんじゃないの? 送ってやっから、やっぱり実家帰ったら?」
そう問い掛けると、握っている手にぎゅっと力が籠もった。
「……あほ。俺は旅のエキスパートやぞ。手荷物一つで東京だろうが外国だろうが自在じゃ。」
そりゃーそうだろうさ。あのタフなおっさん達に付き合ってたら、そんな事もへっちゃらだろうがよ。
海パンでアラスカ、短パンで北欧まで行く荒くれ男ですもんねー、大泉大先生は……。
 結局大泉の意思は変わらず、大泉は明日俺の家から千歳に向かうつもりのようだ。
バカだなー……なんて思いつつもやっぱりどこか嬉しくて、俺はそれ以上は何も言わずに歩き続けた。
駐車場はもう目の前に迫っている。
「大泉…………次帰ってくんの、いつ?」
「ん…と、ゴルゴまでには帰ってくっから金曜の昼ぐらいかなー。」
そう言いながら大泉が足を止めて、俺の方を向き顔を覗き込んできた。
「………あらあらぁ、もしかして佐藤さんってば、淋しがってる?」
目の前で意味ありげに笑う顔が憎たらしいので、即座に頬をぴしゃりと軽く叩いた。
「…うっさいわ。なわけねーだろアホ。せいせいするわ!」
それでも大泉はにこにこしている。見ていてこっちが恥ずかしいぞ、大泉。
なんて思ったら、急に真面目な顔になりやがった。
「しげ…………ありがとな。」
突然何を言い出すんですか、このお方は。
びっくりしていると、ぐいっと引き寄せられた。
人通りのない道だとはいえ、一応ここは天下の往来。こんなところであからさまに、しかもな〜まら目立つオーラ全開の男に抱き締められるのは、やっぱりちょっとどうよ? って感じだけど、何だかあったかくて気持ちいいからいいや。
暴れるのはお預けにしとこう。
「お前が傍に居てくれるだけで、俺は幸せ者だってこと……なまら解った。」
「なーによ突然…」
そう答えながらも、数日前のことを思い出していた。
一人で背負い込もうとして、潰れそうになってたあの時のお前―――俺、一生忘れない。
だから俺に出来ることなら何でもしてやりたかったんだって。それだけだよ、大泉……。

お前が心に風邪をひいたら、俺は風邪薬になる。
心が挫けてしまったら……湿布薬持って駆けつける。
お前が書いたあの歌のように――――捻挫すれば、冷やしてやるさ。
……それこそイヤって言うほどな。

肩口に顔を預けながらそんな事を思い、絡めたままの指をもう一度力強く握り締めた。

「さあ、帰ろうぜ……大泉。あんまり遅くなっちゃうと、明日寝坊して副社にどやされんぞ、お前。」

俺達はまた笑顔で歩き出す。
肩を並べて…………同じ早さで―――――――。


    

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小林ぴぃ子様から頂きましたキリリクで御座います。
コンセプトは『落ち込む王子を姫サマがカラダでお慰め』で御座いました。
その他、泣く王子・自慰・レッツ激甘(笑) 
鬼畜テイストに玩具、そして恥じらい姫などのエッセンスを頂きました。



が!


ワタクシの都合で鬼畜テイストや玩具、恥じらいがどっかにぶっ飛んでいきました。。。(汗)


気が付けばとんでもなく積極的な姫サマがお目見えにッ!!



書いていると当初の設定から勝手に巣立っていくパターンが御座いますが
これはその典型ですなぁ。。。(涙)

因みに「甘い唇」も勝手にどっかに歩いていったタイプでしたわ(激汗)


ぴぃ子ちゃんごめん(泣)
玩具無しどころじゃなかったよ。。。(猛烈反省中…)





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