シアワセノカタチ
どうして俺はこんなとこにいるんだろう。しかも一人っきりで。
そもそもの元凶はアイツだ。
自分で誘ったくせして、なんで俺の方が先に着いちゃってるのよ…。
「明後日、佐藤くん空いてるー?」
おにぎりの収録の合間、ヤツは背後から身を乗り出してそっと耳元で呟いた。
「あ? 僕ですか〜? あー空いてないです、はい。もう全ッ然!」
顔も見ずに俺はキッパリと言い放ってやった。
本当は別に用事なんてないし、明後日も明々後日も普通に仕事が入ってるだけ。だがここで空いているといったら何をつけ込まれるか解らないので、当然お断りをする俺だ。
「おーや? おやおやあ? 佐藤さん、今日も相っ変わらずつれないお返事ですなー。」
意味ありげな目をして顔を覗き込んでくるので、さりげなく顔をそらしてわざとらしいストレッチをしてみる。
大体こんな人目のある場所で、な〜にをいきなり聞いてきやがるんだ。
今はロケバスで移動の最中。札幌に帰ろうという道すがら、立ち寄った道の駅でトイレ&煙草休憩と言ったところか。
喫煙者達が煙草を吸っている間、俺は何かいいものはないかと土産物コーナーで色々物色していた最中だった。
背後からぬーっと近寄ってきて、肩をつかんできた奴が大泉だと言うことは振り向かずとも十二分に解る。お馴染みの煙草の香りがふわっと背後から漂ってきたからな。
「つれないもクソもないね。俺は俺。お前はお前。ってことで、ベタベタしてんじゃねーよ大泉。」
土産物コーナーを出て俺は軽食の売店に向かった。名物とやらのソフトクリームを注文すると、金魚の糞みたいにくっついてきていた大泉が「おばちゃ〜ん、俺コイツと違うやつね〜♪」なんて、なまら気楽に叫んでる。
結局は外のベンチで肩を並べてソフトを食う羽目になってた。こんなとこ、あの麻美ちゃんにでもみっかったらま〜た『お二人とも…本当〜に仲がイイですよね〜…』なんて、ニヤニヤされるに決まってる。
「…あのな。もう少しあっち行け、お前。」
「あん? そんなこと言って、これ以上どけたら僕がベンチから落ちてしまうでしょー? しげ。」
平気な顔してソフトを舐めている。お互い大股を広げてベンチいっぱいに座っているから、確かにこれ以上移動できないのは解ってるけど…それでも俺はそう言いたかった。
だってコイツ、膝頭をぴったり俺の脚にくっつけてきやがるのよ。
………正直こんなに真っ昼間っからくっつかれると……なんつーか、恥ずかしいワケで。
「でねー、しげ。さっきの話なんやけどー。」
コイツ、俺が断ったっつーのに全然気にしてねえでやんの―――
「俺んちの親が今、兄貴達んとこ行って留守なんやけど…佐藤くんさあ……」
「なんで俺が行かなきゃならんのよ。アンタ一人で勝手に寂しくやってりゃいいじゃないよ!」
言いかけた言葉を塞ぐようにして先に確信を付いたら、いつもの機関銃みたいな反論が帰ってこない。
「……………」
「…あ……れ、大泉……?」
慌てて横を向く。大泉はソフトクリームを持ったままいつになく真面目な顔をしていた。
「…んだよー……なんで黙ってんですか…大泉ってばぁ。」
大泉は俺の方を見ようともせず、ただ黙ってる。そんな奴の表情に俺はいたたまれなくなって、ついその言葉を言ってしまった。
「…いやー、解った。ハイ、解りました! 行くから!! だからな? 機嫌直せー、なぁ大泉ぃ!!」
―――我ながら、意志が弱い。つうか、思いっきりコイツに弱いと思う。
でもさあ…コイツにあんなカオされたら誰だって言うこと聞いちまうと思うわ。
だって、なんか………何とも言えなくグッとくる表情なんだもんなぁ………。
俺がそーっと横顔を覗き込んだら、やっと大泉は顔をこちらに向けてきた。でも、まだ真面目なカオをしてる。
「やだなー大泉さん! そんな、気にするこっちゃないべ? ほら、まあまあ機嫌直してさ。ね? あ……俺のソフト喰ってみ? 美味いからホラ。」
一生懸命笑いかけてソフトクリームを差し出したら、真面目な顔のまんまで奴はぱくっと食いついた。
「……………………美味い。」
「だろだろっ? …………んー、じゃあ大泉のも喰わしてよ。俺、喰いたいなーv」
何で俺、こんなに必死なんだろう。
やっぱり大泉は笑ってバカ言ってないと嫌だから? それとも……………
半ば混乱しながらも、無表情なままで差し出されたソフトを食った。
俺が注文したのはバニラだったが、大泉のはモカ。
「おお、モカもいけるな! なっ!? 大泉!!」
…って俺が必死になって話しかけても何しても、大泉の顔は微動だにしなくて、俺は段々苛ついてきた。
「なんだよ大泉ぃ!! そんなに怒るこっちゃないべや!!」
気が付いたら立ち上がって叫んでいた。流石にハッと我に返り、慌ててベンチに座る。――――うわぁ、何かみっともねー……俺ってば。
「……………………」
ギギギ…っと音がしそうなくらい機械的に首が動いて、大泉がこちらを見た。そして、にぃーっと笑う。
その瞬間、俺はしてやられたことを悟ったわけだ。
「……佐藤さん、簡単に引っ掛かりすぎですわー。」
にまにましながらこっちを見てから、大分溶けてきたソフトを美味そうにばくばく喰い始めた。
「ちっっっっっっっっくしょーーーーーーーーーーーー………………」
見事にやられた。引っ掛かった。なんでこんなくだらない事で俺ってば取り乱してんのよーーーーーっ!!
「いやー、かーわい〜ぃ、しげちゃんってば!」
どっぷりと自己嫌悪に陥っている俺に更に追い打ちをかける馬鹿野郎が憎らしくて堪らないのに、やっぱり憎みきれなくて…俺は力なく笑ってしまった………。
『仕事が終わったら直接来てくれやー。』
と言われ、鍵を渡されていた。
大泉は『今日の仕事は早く終わる筈だから家で待ってる』と言いつつ、一応保険として。まあこの業界の仕事は時間が押すのが常なので、当然と言えば当然か…
しかしこんなに簡単に他人に自宅の鍵を渡しちまっていいのかよ………と思って、ふと気付く。
そういやぁ俺も大泉に家の合い鍵、渡しちゃってるわ―――と。
何回か来ているから見慣れているとはいえ、流石に扉の前で俺は緊張していた。なんつーか、こんなのって随分と新鮮な感じで……ドキドキしてしまう。
呼び出しブザーを鳴らす。…が、暫く待って反応ナシ。
もう一度眺めに押す。やっぱり無反応。
これは、やっぱりあれか。大泉のヤツ、仕事がまだ終わっていないと言うことで…と言うことは俺がこの鍵で中に入って待っていなきゃいけないって事か……?
携帯に連絡しようにも、当然今は仕事の最中だろうから電源を切っているだろうし。
長い間玄関前に立っていたら不審者と間違われるので、仕方なく俺は渡された鍵を使い中に入る。流石に中はしーんとして、他人の家特有の自分の知らない匂いがする。
「おじゃま……しまーす…」
そっと言いながら上がり込んだ。勝手は知っているのでそっと居間に入って室内を見渡した。
誰もいない居間はがらんとしていて、不思議な感じだ。今にも奥からアイツの母親がべらべら喋りながら出てきそうでいて――――でもやっぱり、誰〜もいない空間。
取り敢えず買ってきた飲み物や食い物を冷蔵庫にしまわせて貰って、俺はソファにどっかり座り込んだ。
他人んちの冷蔵庫を開けるって言う作業も、なんか気恥ずかしい感じだよなー…。しちゃいけないことをこっそりやってるような罪悪感に近い。
テレビをつけて、買ってきたペットボトルの一つに口を付けながら、俺はどうも居心地が悪くてそわそわしていた。今にも玄関ががちゃりと大きな音を立てて、騒がしい声でアイツの両親なんかが帰って来ちゃったりしたら、今の俺………なーまら立場がないしなあ。
考えがどうしても変な方向に向かっていって落ち着かなくなり、やっぱり帰っちゃおうかなーなんて逃げ腰になっていたところに、やっとヤツが帰ってきた。
「ごーめんごめん佐藤ぉ〜、結構待っちゃった?」
「…おう。待ったよ。」
嘘である。本当は30分くらいしか待っていないけど、こう言うときは大袈裟に言っとくべきだと俺は思う。
「いーやーぁ、藤尾の野郎ま〜た寝坊して遅刻してきやがってよー。アイツ抜きで収録しちゃおうって言ってもなかなかみんな聞いてくんなくてねー、まぁ〜ったく嫌になっちゃうべや!」
ガンガン言い訳をしてくる大泉をわざと睨み付けながら、俺は適当に話を切り上げさせた。
「いいからメシ食おうぜー大泉。俺、待ちくたびれて腹減ったのよ。」
「あ、ああそーだねー。じゃちょっと待っててなー。」
そう言って大泉のヤツはいそいそと奥から何かを持ってきた。
「はいこれ着けてねー、しげ。」
「………? 何よこれ。エプロン?」
手渡されたのは真新しいエプロンで、しかもご丁寧にヤツが手に持ってるのと色違いになってる。
とっとと手際よくエプロンを着けた大泉が、戸惑って茫然としていた俺の手からエプロンを奪い、いそいそと着せ始めた。
「ちょちょちょ…っ…………何ですかこれぇ? 大泉さ〜ん…………」
すっかり装着させられてから、やっと俺は我に返った感じ。これはつまり二人でメシを作ろうって…こと?
「あんなーしげ。全っっ然言ってなかったけど、今日のテーマは『新婚』さんだからv」
「いやちょっと待て! なんだお前、テーマぁ!? しかも新婚さんっ…て………」
半ば絶句気味の俺の手を引いて、大泉はさっさと台所に入る。
「まーまー、いいからいいから。折角俺んち丸ごと使えるんだからさー、遊ぼうや☆別に裸エプロンとか要求してるわけじゃねえんだからいいべや。」
「…ばッ…馬鹿かお前は!? 裸エプロンなんて、そんな間抜けな格好…俺にさす気だったのかよぉッ!!」
「ごちゃごちゃうるせえって。」
―――――なまら嬉しそうに笑いかけてくるコイツに、俺はまたもや負けを喰らった。ていうかさ……もしかして俺、一生コイツに勝てねえのか………――――
冷蔵庫にあるだけの材料で特上のあんかけ焼きソバを作ると張り切っている大泉シェフは、見事な包丁さばきで野菜や肉をザクザク切っていく。俺はと言えば、包丁は握らせて貰えずにひたすら野菜を洗ったりしている。
「いーか、しげ。包丁はこうやって使うんだって。ほらちゃんと見てろって。お前だってちゃんと出来るようになって、俺に美味いもの喰わせてくれるようにならなきゃ…な?」
新婚ごっこに夢中の大泉は、亭主関白めいた口調で俺に話しかける。俺は適当にはいはいと相づちを打ちながらも、段々とこの『ごっこ』の世界に入ってしまっていた。
「じゃあ私、次は何をしますぅ? アナタぁv」
なーんてこと言っちゃって、二人で大笑いしながら大馬鹿な会話を繰り広げていた。多分他人に聞かれたら完全に『こいつらマジでヤバい…?』と思われるのは間違いなしだろう。
さんざん遊んでげらげら笑っていたら目から涙がこぼれてきた。あきらかに俺、笑いすぎ。
「ああほら……まったくなんて顔してるんだ、お前は。」
「いや、大泉。もう勘弁! これ以上やると笑いすぎて俺、死ぬ!」
慌てて涙を拭おうとしたところを捕まえられて突然抱き締められた。
「こんなにいっぱい涙流してまあ。いやー、お前ウケすぎだわ。」
いつもの口調に戻ってるのに、何だかさっきの亭主ぶりを何処かに残したまま、大泉が俺の涙を指先で拭う。
「おおいず………」
名を呼び終える前に唇を塞がれていた。随分と強引に、しかもこんなメシを作ってる最中だってのに…俺は何故か自然にそれを受け入れてしまっている。
大泉の手が自然に首筋や肩を撫で回し始めて、俺は慌てて少し身を引いた。だがヤツの手はするすると肩から胸元に下りてきて、エプロンの上からまさぐろうとする。
「…………こらぁ、大泉…………メシの支度してんだろ…………」
いやらしく動き回る手を握って、動きを止めさせた。
「メシより…今、お前喰いたいんやけどなー………」
名残惜しそうな目で見つめてくる。いや……それは俺だって一緒。何だか無性に身体が火照って、今すぐにでもどうにかされたいような気分だ。
でも流石にそれはあまりにも気が引けて、なけなしの理性で大泉を遮った。
「あとでな。あとで。今はメシ作って喰っちゃおうぜ………な?」
自分で言ってて何だかなまら気恥ずかしいので、わざと何もなかったようにでかい声を張り上げてみた。
「さあほら、ぱーっと炒めちゃおうぜー! 今日こそは美味しーい食いもん、俺に作ってくれるんでしょ? 大泉さんっ!」
随分と時間がかかって出来上がったあんかけ焼きソバはまあまあの味。大泉シェフは料理の腕を少しだけ上げたようです。
途中ふざけて『あ〜んv』なんてやってやったら、なーまら嬉しそうな顔して口開けやがった。
「美味しいかー? 大泉ぃ。」
「おいひーーーーいv 佐藤さんサイコー!」
満面の笑みを浮かべるコイツがなんかえらく可愛くて、ちょっとドキドキしてしまう。
「ほらほら、佐藤くんもー、あ〜んv」
流石にやられるのはなまら恥ずかしい。必死で俺はいいって断ってるのに、大泉は強引に口許に焼きソバを突き付けてくるから……またもや俺の負け。
「洋ちゃんの愛情焼きソバ、美味いやろー。」
悔しいことに、美味く感じちゃうから困ったもんだわ…俺。
食後、二人して並んで後片付けをしている。こうしてると本当に新婚夫婦みたいで、結構不思議な感覚。
男同士の俺等で新婚もクソもないだろうに…って思ってるのな…俺、変なのー……
「いよーーっし☆洗い物終〜了〜! さーしげ、風呂入るぞー!!」
「!?」
ヒトがせっかくこの雰囲気にドキドキしてるってのに、突然大泉が元気良く叫び出すからビビってしまった。
それでもってやや暫くしてからやっと、ヤツの言葉を理解出来た。
「…風呂……ぉ?」
「そー風呂。さっき焚いといたから、一緒に入るべ。」
「………なんで一緒よ。狭いべや。」
「狭かーないですよ! 俺んちの風呂はローマ風呂だぞー! ライオンの口からお湯が出てくるんだっつーの!」
いつまでこの嘘をつき続けるんだろうね。全くこの男は……
「いーからいーから。」
いくねーよ! と思っても結局脱衣所まで連れてかれた。
大泉はさっさと湯加減なんか確かめちゃって、とっとと着ていたものを脱ぎ捨てた。俺が唖然としてる間に、あっという間に風呂場に入っていってこう叫びやがった。
「ほーらーぁ、佐藤くん早く来いってー!」
何とも無邪気なものだ。
「何照れてんだよーお前はーッ!! 早く来いってえ!」
あ。ちょっと切れ気味でやんの。
仕方なく俺はもそもそと服を脱いだ。別にロケの時とかにしょっちゅう一緒に入ってんだから、何もこんなご家庭風呂でぎゅうぎゅうになって入ること無いと思うんだけど……ホンっっっトに! 我が儘だよな。
浴室の扉を開けて中に入る。まあ思ったよりは狭くない。と言うか、俺んちの浴室が狭いからそう思うのかもしれないけどさ。
「はいどーも。アンタの仰るとーり、一緒に入らせて頂きましたけどー……」
多少の抗議を込めてじろっと見ながらかけ湯する。
「バーカ、そんな言い方があるかよ! お前。……今日は俺達新婚夫婦でしょー?」
「うわっ、まだ言うか。」
「はいはい、いーからほらーこっち来いって。」
ぐいっと引っ張られて身体が密着した。そのまま抱きすくめられて暫く唇を奪われた。
もう既に下半身に当たる大泉のモノが元気いっぱいに反り返っている。かくいう俺も、大泉の舌で口の中を蹂躙され続けて、もうかなりヤバい状態になっちゃってる。
俺はぎゅっとしがみ付いて、身体の昂ぶりを伝えた。
「あらぁ……佐藤さん、エッチねー………まだ触ってもいないのに。」
「お前、ヒトのこと言えんのかよ………この欲情魔。」
大泉は俺の顔をじっと覗き込み、にっと不気味な笑みを浮かべた。
「今日も洗いっこ……するべ。な?」
そう言って棚にあったボディーソープを手に取り、泡立て始める。当然、俺の手の上にもたっぷりとソープをぶちまけてくれている。微妙にこの色やとろとろ具合が何かを想像させるなあ…おい。
ともかく俺達は手で泡立てたソープでお互いの身体を弄ぐりながら洗い始めた。もう慣れっこと言えば慣れっこだから手際よく身体中を洗って、最後に一番敏感な下半身へ…。
こうなってくるともう夢中になっちゃうんだよね、俺達。
「…大泉……ぃ…………………」
「…何よ。」
こいちはちゃんと解ってるくせに……あくまでもすっとぼけて、俺を焦らすんだ。
「……解ってる…べやぁ………」
もう、喋るのも億劫。理性なんてどっかにぶっ飛んで、欲しいのは決定的な快楽の波。
「いやいや、まだまだですなv」
そんなことを言いやがって大泉はひょいと身体を離した。ヤツのアレだって相当限界っぽいのに、思いっきり無理しやがって………
ああ…頼むから―――もう―――勘弁して…………
茫然と佇む俺の身体に、勢い良くシャワーの湯がかけられた。泡が洗い流されて、俺の下半身には欲望顕わな男のシンボルがそそり立っている。
「助けてや………お願いだって大泉ぃ…………」
声が震える。じわじわと下半身の息子から先走りの液体が滲み出てくるのを感じて、狂いそうになってる俺をヤツは暫く楽しそうに見つめてから、やっと行動を起こしてきた。
「…うわッ!?……」
浴室の壁に突然ぐいっと背中を押しつけられた。しかも………ちょっと萎えちゃったべや、いきなりヒヤッとしたからさぁ………
そんなことはあんまり気にしてないのか、大泉の野郎は俺の目の前に跪いて片脚を自分の肩にかけさせて――――――そっと自分の唇を押し当ててくる。
待ち焦がれていた愛撫に、俺の身体はみっともないくらいびくびくと跳ねた。
柔らかな唇が押し当てられては、舌先が僅かずつ俺のモノを舐める。頭がおかしくなりそうなほど焦れったくて…甘い刺激が脳髄に染み渡り、俺は気付けば自分でも驚くくらいいやらしい吐息を吐いていた。
徐々に舌が彼方此方を這い回りだした。最初は根本から……そして、次第に先端へと。
窄めた舌先で先端から滲み出るものを舐め取られて、思わず喘ぐ。あまりの気持ちよさに。
「……なんて声出してんだよー、しげぇ………やっぱりキミはエッチやね………」
そんな言葉が耳を擽ってくる。でも、今は何を言われたって感覚を煽られる媚薬。
「だってさぁ……………俺…………もう……………イきそ……………ッ………」
「…もっと………もっと聞かせろや………お前の可愛い声………じゃねーとイかせてなんて…やんねえよ……………」
荒い息づかいの合間、大泉がそう呟いては俺のモノに口付けてくる。
「…………おおいず…っ……………お願…い………ッ…………」
決定的な刺激が欲しくて―――――狂っちまいそうだよ、俺。
「もっと………もっと…欲しいよぉ………………お願いだってばあ………」
大泉の髪の中に手を差し入れて、髪の間を弄ぐる。もっと――――お前に、して欲しいから。
「どうして…………欲しい?」
冷たく問う声。お前のなまらいい声。俺を狂わす―――魔性の響き。
「お前の口で…………………めちゃめちゃに………………ッ………………」
今まで点でしか与えられなかった刺激が突然、激しい波になって俺を蝕む。
ねっとりとして温かい口腔内で俺のモノは上下に扱かれていた。
決して激しい勢いじゃないのに、あっという間に俺は昇り詰めていく。もう絶対に我慢出来ないッ!!………そう思った瞬間身体中から力が抜けて、頭の中が真っ白になる。
心地よい解放感と達成感で、ただただ俺はずるずると壁際にへたり込んでしまっていた。
「…く…ッ!!……」
大泉の小さなうめき声。
と同時に顔や首、胸元にどろりとした液体が降ってくる。
―――――このときになって初めて俺は、大泉が俺に奉仕しながら自分のモノも扱いていたことを知った。
きっと耐えきれなかったんだろうな。俺がどんどん昇り詰めてく様子をオカズに、自慰行為しちゃったわけだ――――
唇に降りかかっていた大泉のモノをぺろりと舌で舐め取りながら、俺はくすっと小さく笑っていた……………なんだか、随分と愛されてるなぁって……そう思ってさ…………
暫くの間、いちゃいちゃと口付けを交わしていた。なんか……なまら幸せな気分満喫って感じで。
さんざんベタベタしあってから、俺はまたお湯をかけられた。しかも今度は頭から。そのままシャンプーを振りかけられて子供みたいに髪を洗われてる。
大泉のでっかい手でガシガシと洗って貰うのは、正直なまら気持ちが良かった。
「…次、大泉の頭洗ってやるわ。ほれ、そこ座れ! お前俺より背ぇ高いんだから。」
やられたらやり返す。それが俺の流儀。良いことも悪いことも。気持ちのいいことだって当然、50%50。お互い同じだけじゃないと俺は嫌なんだ。
頭からお湯を勢い良くぶっかけ、シャンプーをちゃんと掌で泡立てた。
こうみえたってコイツにはかなり気を遣ってやってんだぜ、俺は!
「おっし、綺麗にしてやっから待ってろ。」
丁寧に、しかもきっちりと力を込めて地肌をマッサージしながら洗ってやる。これ以上大泉の髪がピンチになったら、俺だって当然嫌だしな。俺の大泉洋はやっぱりこのままばきーーーーっと格好良くいて欲しいと…やっぱ思うもんよ。
「いーや〜…佐藤さん、最ッ高。すーげえ気持ちいい〜ぃv」
幸せそうな声出しやがって……子供みたい、ホント。お前ってヤツはさ。
きっちりと洗い上げて、お湯で流したらほらサッパリ。洗い立ての大泉さん登場〜。
「よっしゃ綺麗になった!! 男っぷりも上がったんでないかい? 大泉さん。」
「そらーあんた、元々がいい男だもんねー洋ちゃんは☆」
何だかこんな事してたらマジで新婚夫婦みたいでねえの………いやあ恥ずかしい――――くすぐったいわ。
二人して湯船に浸かる。最初、膝を抱えて真っ正面を向いたらな〜まら笑いがこみ上げてきて、思わず俺達、風呂場で大爆笑しちまってた。
だってさ、あやしいワケよやっぱ。大の男が脚を縮こまらせて向かい合わせで湯に浸かってる姿って。
「しげ、お前あっち向け。これじゃー笑ってしまってどうもならんわー。」
げたげた笑いながら俺の向きをくるっと変えて、後ろから長い腕で抱き締めてくる。
「もっとこっちこいや。」
お湯の中でぐいっと引き寄せられて身体がぴったり密着した。大股を開いた大泉の身体の間にすっぽりと収まって、胸元や腹が俺の背中にビタッと押しつけられてる。当然―――――アレも。
「いやあの、大泉さんね………これじゃあ…ゆっくりあったまれねえって。」
首や肩に絡み付いた異様なまでに長い腕にしがみついて、一応は引き離そうと試みてみる。無駄だったけど。
折角筋トレして腕の筋肉増やしたって、結局こんな時は全然敵わねえのは何故だ。濡れ場の馬鹿力なのか?
「まあまあ、まーしげ、落ち着け落ち着け。」
そんなこと言って耳朶をちゅっと吸ってくる。こんなことされて落ち着ける訳ねえだろうよ……馬っ鹿野郎。
「大泉、待て………ちょっと待って…………続きは上がってからにしようや……」
このままだったら確実に、お湯の中で最後までやられちまいそうだ。
「あん? …いーからいーから。お前は何も気にしなくてえーから、な?」
「な? じゃねーってえ!」
もう既に耳から首筋、鎖骨あたりまで口付けの集中攻撃をあびている。時折生暖かい舌先でくすぐられて、俺の身体がびくっと跳ねた。
動きを封じるように絡み付いていた腕が一旦するりと離れたと思ったら、やっぱりヤツは次の攻撃に移ってきた。後ろから両手で胸元をやんわり弄くってくる。大きな掌がお湯の中で生き物みたいに肌の上を這う感覚に、温かい筈の全身がぞくぞくと総毛立つ。
「………は…ぁ………んッ……」
指先が胸元の突起を捉えては執拗に弄くるから……耐えようと思っても耐えきれずに、口から思わず吐息を漏らしてしまった。
「佐藤さ〜ん……乳首感じやすいですねー今日も。えらいイヤラシイ声出してくれちゃってるわー。」
いつものくすくす混じりの囁き。耳元で甘く響いてくるのは、嬉しそうなお前の睦言。
指先で摘み上げられ捏ねられる度に、身体から力が抜けて大泉にしなだれかかってしまう。今やすっかり身体を預けてされるがままの状態だ。
「あらあら。すっかりまた元気になっちゃってまー…」
片方の腕が胸元を這い下りて、下腹部に触れた。
「いや……それはかなり………………マズイ……………」
これ以上は洒落にならない。
「何がよ。いっこもまずい事なんてないって。」
困ったことにヤツの腕は人様よりちょいと長く伸びている訳で……抵抗しようにも易々と俺の息子に指を忍ばせてくる。
「駄目だって……これじゃ……お湯汚しちゃうべ?…………大…泉ぃ……」
何を言ったって聞きゃしないんだろうけど、やっぱりこのままハイそうですかと為すがままになるってのは、性に合わない。駄目と解ってても精一杯の抵抗は試みないとさ、やっぱ。
「うるせーって……お前、もうこんなになってんのに、文句ばっか言ってんじゃねーよ。」
きゅっと握り込まれて、俺は身体を硬直させた。アレもアレの下にあるものも、大きな掌に包まれてやんわり愛撫される。
「……ほらぁ。お前、お湯の中でだってもう濡れちゃってるべや………もう今更汚すとか言ったって無駄なんだっつーのー!」
人差し指で先端を捏ねられる。そこからはじわりと先走りが染みだしているようだ。
ゆるゆると掌で扱かれ始めると段々お互いの息が荒くなって、またもや身体のスイッチがどこかで切り替わる。徐々に快楽を追うことに夢中になっていく。
背後にぴったりとくっついている大泉のモノも熱く硬く反り返って、その存在を誇示し始めた。まるで『早く挿れさせろ』と言わんばかりに。
股間に張り付いている手がするするとその下まで降り始めてきて、俺は少し身体を緊張させた。
ヤツの長い指が俺の入り口をそっと撫でさすっては軽くノックしていく。その度に俺の身体はビクビクと跳ねた。
「やっぱこのままじゃ……辛い…………かな?」
そう言われた途端ひょいっと身体を持ち上げられ、あっという間にその場に立たされていた。
「しげ、壁に手ぇつけ。」
言われるままに壁に手を這わせた。何をされるかは―――――多分解ってる。
思った通り、両脚の狭間にじわじわと指が這ってきた。俺の中心に触れ、そこを開かそうとするために。
「んー……お前、もうちょい脚開けや。」
太股の間にぐいっと手を差し込まれ半ば強引に開かされると、今度は指ではなく生暖かくて柔らかいものが忍び込んできた。大泉が俺の後ろで膝をついて双丘の間に顔を突っ込んでいるからだ。
ぴちゃ…ぴちゃ……
唾液にまみれた音が下から響き始めた。まだ固いはずの部分に尖らせた舌を少しずつ差し込んでくる。
「………あ。ひくひくしてるわ、佐藤さーん……」
多分俺、どんどん顔が赤くなってる。壁に付いた指先にぎゅっと力が籠もってるのは、恥ずかしいのを必死に耐えてるから。
――――そして、背筋を這い回るような快楽に身体を震わせているから――――
舌特有のざらつきに翻弄され、焦らされ続けている。本当はもう…………中を解して欲しくて、身体が震えているのに。大泉は執拗に入り口ばかりを弄くるのみで。
でも流石にその次にして欲しい事を俺の口から言うのは、どうしても自分自身抵抗があった。だってやっぱ……言えねえよ。
『早く挿れて……』なんてそんな、女みたいな言葉なんか――――――
焦れて、狂わされて、俺はただ喘ぎ声を必死に噛み殺しているしかなかった。
「………辛そうやね、しげ。」
そう言って一旦顔を離し、太股にきつく吸い付いてくる。ほんの少しの刺激にさえ、俺の中はきゅっと収縮した。
「………俺…もう……死に…そう………」
そんな言葉を吐くのが精一杯だ。
「よしよし。じゃーちょっと待っててなー。」
上機嫌で何かを手に取る気配。………うわぁ、ちょっと待て。風呂場に何を用意していやがるんだよ! 大泉の淫乱魔神めぇー………
恥ずかしくってまたもや顔が赤くなっている俺には気付かず、大泉の指は慣れた手つきでローションを塗りつけてきた。やがて指先がぐちゅ…と嫌な音を立てて中に入ってくる。その感触に思わず指先に力が籠もる。
「……ッ………ぅ…………」
甘い衝撃がじわじわと襲ってきて、身体から力が抜けそうになるのを必死で耐えた。指がゆっくりと確実に中に侵入してきて、くちゅくちゅと淫らな水音をたてながら蠢いている。
「…………ぁ……………ああ………ッ……………ん…………ッ…………」
閉じている部分をこじ開けられる圧迫感と、与えられる刺激を快楽に変えてしまう感覚が、俺を責め苛む。
壁に着いていた手から力が抜け始め、俺はズルズルと上体を崩し始めた。
「おっとっと! しげちゃんってば最近本当に感じやすいわv ってまー俺がそうしたんやけど。」
大泉は崩れ落ちそうな俺の身体を背後から支えるように抱き締めてきた。そのまま壁に押しつけられ、執拗に中を解され続けた。
中から与えられる刺激は、ただでさえ下腹部で勢いを増していたものを更に煽る。ギリギリの状態まで反り返って、鈍い痛みすら感じていた。
「そろそろ…いいかなー…………」
ずるりと指を引き抜かれ、俺は身体を反らせてうめき声を上げた。
腰の当たりに押しつけられていた大泉のモノが俺の太股の間にねじ込まれると、ぐっと力を込めて割り入ってくる。さっきからずっとずっと欲しかったモノが、挿れられている―――――俺の中に!
「…お…………いず……みぃ………」
苦しくて涙が自然に溢れるのに……その苦しさの中には言葉では言いようのない快楽が含まれている。
出し挿れされる度に痺れるような感覚に捉えられて、もっと奥まで貫いて欲しくなる。
「しげぇ……気持ち、いいかー?」
そんなことを耳元でそっと囁いては、ぐいっと突き上げた。
何度も抽挿を繰り返されて、すっかり根本まで収められると、大泉はぎゅうっと抱き締めてくれていた。
「可愛いなあ、お前は……絶対に誰にも触れさせたくないわ………マジで。」
「……っ…………な…に……?………」
「…いーんだって………お前は俺のもんだって事だぁ………今も、これからも………」
情熱的に腰を打ち付けてくる。もう俺の身体は蕩けておかしくなりそうだよ。
緩急をつけて打ち付けてきていた腰がいきなり動きを止めた。何かと思って振り向こうとした俺に顔を近付けてきて、大泉はねっとりといやらしい口付けをくれる。
「あー…イイ顔してるわ……佐藤さんってば……」
挿れていたモノをずるりと引き抜かれた。
「……ッ………!?…………」
また何か焦らされてしまうのかと困惑している俺の身体を掴んで、大泉は正面を向かせた。
「こんなに色っぽい顔してんのにあんまり見えねえっつーのも…勿体ないやろ?」
目尻から零れ落ちている涙のしずくを舌で舐め取ってから、身体をぴったりと壁に押しつけられ、片脚を大泉の腕にかけられる。この状態って……何とも恥ずかしい形で身体を開いていることになっちまう……。
壁に手をついて、大泉は再び俺の中にアレを埋め込んできた。慣れた身体は易々と穿たれた楔を呑み込んで、耐え難い充足感を呼び起こす。
すっかり埋め込まれた途端に突然身体が上に持ち上げられた。貫かれた一点と背中に重力が集中して、あまりに辛く不自然な状態に、小さな悲鳴を上げてしまった。
「や……うわ…ッ………何!?…………何してんの大泉…ぃ…ッ………」
身体が浮いたままもう片方の脚も腕にかけさせられ、完全に不安定になってしまっていた。
「……やめッ……降ろして…助けて…ぇッ……」
「ばーか、そう言われたって止めねえって…滅多にこんな格好でエッチなんて出来ん事でしょーが。」
ぐいぐいと突き上げられ、身体がガクガクと上下する。
「……や…ぁ……あ…………やだ…ッ……………や……あ…ッ…………」
苦しくて、辛くて。それでいて気が狂いそうなほど――――――気持ちがいい。
少しでも負担を減らそうとして大泉の肩に縋り付いた。そのまま夢中で首の後ろに手を廻して抱きつく。
「…いやじゃねーだろ……お前ん中、すーげえ締め付けてきてるっつーのに…なあ?佐藤さん。」
「…違っ…………や…………ああ…ッ…………大泉ぃ…………」
上下に揺さぶられたかと思えば、ねっとりといやらしく掻き回され、頭がおかしくなりそうな快楽に脳まで冒されてる。
「いい〜カオしてるわー……しげぇ…………素直に言ってみろや、気持ちイイって。」
いやらしい言葉で嬲られるのさえ、感じてしまう。
「ばか…っ………馬鹿…やろ………ッ………」
「へへっ…まーいいわ……そろそろ本気出して佐藤さんをもっともっと……善がらせちまいましょうかー!」
狂ったように特定のポイントをめがけて身体の中を掻き回され、楔を打ち付けられる。
荒々しい息づかいと俺の悲鳴みたいな喘ぎ声、それに淫らな粘着系の調べだけが浴室内に響き渡っていた。
上気したお互いの肌からは幾筋もの汗が雫となって滴り落ちていく。
――――もう限界が目の前だった。身体と身体の狭間にある俺のアレが、もう後一歩で暴発しそうだ―――
「…お……いずみ………もう……………………………………………………………イ…く………ッ……」
なんとか必死で伝える。言葉はもう既に掠れて微かな声にしかならない。
「おーしおし………いいよー………イっちまえや…………」
最後の力を込めるようにもの凄い力で弱い部分を攻め立ててきた。
「……もっと……言って…ッ………大泉ッ………」
「イけ! しげ!! イっちまえ!! 全部吐きだしちまえ…ッ…………」
多分ほぼ同時だっただろう。
俺が身体の間に白いモノをぶちまけたのと、大泉が俺の中に注ぎ込んできたのは……
意識が朦朧とする中、ずるずると俺達の身体が崩れ落ちて温かい湯の中に身体が沈んでいくのが……心底、心地よかった。大泉の膝の上に乗っかったまま、しかも首に抱きついたままで、しばらく惚けて余韻を楽しむ。
結局、湯船の中は俺が放った液体で汚れちまってる。でもまあ今となっては、あまり気にしなきゃいいんだよな。今はただ、この時間が幸せなんだし………
「しげー…平気かー?」
ぼそっと呟いてきた。
「…ああ、なんとかな……」
脚を目一杯開かされるわ、変な体位でされるはで身体がギシギシ言いそうだけどよ。
「喉乾いたし、出るかー」
ひょいっと立ち上がって俺を抱きかかえる。いやー、大泉さん……やっぱ見かけによらず力持ち。
二人してシャワーで身体を流した。その最中に俺は身体の中にぶちまけられた体液を掻きだして洗い流す。
「うっわ…佐藤さんエロティックな格好〜v」
―――――お気楽なもんだよ。出すだけ出してコイツは全く。後始末しないと後が大変なんだっつーの。
下半身にバスタオルだけ羽織って、居間のソファに座ってビールを飲む。正直声の出し過ぎで、喉がカラカラになっていたので、染みいる美味さだ。
大泉はあまり酒か強くないタチなので、ビールをチビチビやっている。
こうやってこの広い家に二人っきりで過ごしてると、マジで夫婦みたいだなぁ…なんて、やっぱり思っちまう。ま、やってることは男女の身体の違いはあれ、さほど変わらないし。
「大泉さーん、ビールもう一本下さ〜い!」
精一杯可愛く言ったつもりなのに、隣に座ってる大泉はちろっとでかい目玉でこっちを一瞥して、そのまま無視。
「あれ。あれあれあれ? なんで? 出してくれないなら勝手に出しちゃうかんな。」
ソファを立ち上がって数歩歩いたところで、大泉に捕獲された。手首をぎゅっと握って引っ張られる。
自然に膝の上に座る形になってしまったので、大人しく抱きついた。
「何よ? もう一本くらい飲んだっていいべや。」
ちゅっと軽く額に口付けて説得を試みる。
「―――――あのなぁ、佐藤さん。これ以上飲んだら駄目やっつ〜の、場の雰囲気で解りません?」
ぶすっと言い放つ。なんでよ!? と言おうと思ったらがっちり抱き締められて、突然胸元に舌を這わされた。
「……うわ…っ……!?」
唾液たっぷりに乳首を舌で転がして、大泉はあっという間に俺の中のスイッチを切り替えてきた。
「何……突然…………」
さっきまでの余韻もあってか、簡単に俺の身体はすっかり受け入れ態勢だ。
「だってお前………なまら綺麗だったんだもん。」
暫くソファの上で身体を舐られていた。もうタオルの下に隠れてる息子だって、三度勃ち上がっちゃってる。
すかさずタオルの下に手を突っ込んできて、俺のモノにまた指を這わせてきた。
「うわ、すげえ! ………なまらぐっちょぐちょ。」
先走りの液を指先に絡み付けて、音をわざと立てさせる。
液体で滑りの良くなってるそこをあくまでも緩く、指と掌を使って扱かれ始めた。
「……や………お前………ここはマジでやばいって……………お前んちの親に……悪いよぉ……………」
「ああまあ、それはそうやね。」
にっと笑顔を浮かべて大泉は俺の身体を抱き上げた。
正確なリズムで身体が揺すぶられている。
規則正しい律動で抽挿を繰り返しては、確実に俺を狂わすポイントを攻めてくる。
月明かりがうっすらと差し込む和室で、俺は再び大泉に抱かれていた。
辺りは脱ぎ散らかした服や雑誌やゴミなんかが散乱していて、いかにもコイツが寝起きしてますって感じの部屋。万年床みたいな布団の上で脚を大きく開かされ、大泉を受け入れている姿はちょっと気恥ずかしい。きっと普段は俺の部屋でしかやってないからなんだろうけど。
…ぐちゅ…ぐじゅ……
淫らな調べが静かな室内に響き渡る。荒々しい息づかいと一緒に。
俺はと言えば、大泉が突き上げてくる動きに沿って自然と口から喘ぎ声が漏れてしまっていた。
必死で声を噛み殺そうとして唇を噛みしめるのだが、一向に効果はない。
「……無理すんなって………逆にもっと啼いて欲しいくらいなんだしよー……」
ニヤニヤしながら言って、俺の息子に指を絡みつらせては緩く扱く。
「……ん…っ………や…めッ………」
「こんなに腹びっしょびしょに濡らしちまって……しげってば、いやらしい身体だねーぇv」
透明な液体は後から後から染みだして、俺の腹の上を汚していた。
「…触ったら………も………我慢出来……な………ッ…………」
「じゃあ、イけよ。」
突き上げられ、鎖骨に舌を這わされながら指先でほんの少し弄られていただけで、俺は呆気なく達してしまう。
「……おおっと、えらい勢い良く出たわー佐藤さん。」
俺がイッただけでは解放されるわけもなく、そのまま行為は続行される。やがて一旦身体が離れると、腰を掴まれてひょいっとひっくりかえされ、布団の上に俯せにさせられた。
腰だけを僅かに浮かせられて、熱く痺れている部分へ再び大泉が侵入してくる。
「…後ろから見るお前も絶品〜v」
背中に柔らかい唇が降ってくる。口付けられるたび、身体がびくりと小さく跳ねた。
そんな些細な愛撫にすらコイツの愛情が込められてる気がして、なんだかこそばゆい気分。今や道内で随一の超有名ローカルタレント・大泉洋の全てを、自分が今独占しているって…なまら変な感じさ………。
「大泉…ぃ………」
ふと聞いてみたくなる。どれだけ自分を好きでいてくれているのか。
「なしたぁ…?」
身体の下に手を滑り込ませ後ろからぎゅっと抱き締められたら、なんだか言いかけた言葉がどうでも良くなってくる。
「………ん……なんでもない………―――――わりぃ…………」
身体中で感じる気持ちの前では、言葉なんてやっぱり無意味なことなのかもしれない。今、こんなにぎゅうっと抱き締められていて、それ以上の表現なんか必要はないよなー…なんて。
「おお、なんだ……言いかけて止めるの、反則じゃーないですかー? 佐藤くんってば。」
抱き締めていた手が胸元を蠢き始めて、固く立っている乳首を指先で捏ねてきた。
「……ぁ……ッ……」
「続き言わねーと、もっといいことしちゃうぞーおらぁ…」
さっき達したばかりのアレをまた指先で弄くり回して、勃ちかけているモノをさらに確実に煽る。
「まーた硬くしちゃって……ほれぇ…」
いやらしい言葉で責められながら、身体をまさぐられ続ける。勿論その間も俺の中は掻き回されっぱなしだ。
「……んな……大したことじゃ…………ッ……」
「いーから言えってえ……」
もの凄い陶酔感に溺れそうだ――――肌が粟立つ快楽に。
「お……いずみ…………………好き…ッ……」
この言葉を言うのがもう精一杯。
「あらー…しげちゃんってば………」
首筋に口付けをされ、後ろを振り向かされて唇を貪られた。何度も何度も口付けられて、想いを重ねてくる。
「キミ、今日は本当に可愛いねえ……流っ石、俺のヨメさんだわー………」
そんなことを何度も囁いてくるが、もう俺の耳にはちゃんと届いてはこない。
「…ん……っく………ッ………」
いきり勃ってきたモノを扱かれ、気が狂うほど貫かれて、身体がガクガクと震える。
「……ぁ…ッ………や……ぁあ………ッ…………」
「―――お前ん中……なまらすげえ…。いや〜、いっぱい感じてくれてんだねえ……」
しみじみ呟いて、首筋に口付けをひとつ落としてきた。
「そろそろ………イこうや、しげ。一緒に……」
辛うじて届いてきたその言葉に、俺は微かに頷いた。
「……よしよし、いい子にしてろー。」
身体を弄ぐり執拗な愛撫を繰り返していた手がするりと離れ、俺の腰をしっかりと掴む。息を一つ吐く間に大泉は今まで以上の力を込めて確実に俺を突き上げてきて、あっという間に俺は限界まで追いつめられていた。
シーツを握りしめ、身体を仰け反らせる。
大泉の全てを身体中で受け止めて、俺は歓喜に身体をうち振るわせながら欲望をぶちまけた。
奥底に注ぎ込まれた熱いものを感じながら―――――
あれからそのまま気を失っていたらしかった。
気が付くと裸のままで後ろから抱きかかえられている。流石に疲れてしまったのか、大泉も裸のままで眠りこけている。
「……おーいず…みい………風邪、ひいちまうぞー……お〜い。」
ヤツの重たい腕をどけて身体の向きを変えた。目の前に、またしても半開きのでかい目ん玉。しかも白目。
「おらぁ……起きろってえ。」
「んー………ああ…………」
辛うじて返事はするものの、起きようとはしない。
仕方がないし、俺も眠たいからそのままヤツの腕の中に潜り込んで、身体を密着させた。取り敢えず布団は被ってるし、まあいいか…なんてさ。
幸せそうに耳元で寝息を立てて……ちょっと五月蝿いところだけど、やっぱりまぁいいや。
そっと手を伸ばして顔を引き寄せ、ちゅっと口付けてから俺は気恥ずかしい程の幸せ気分を味わいながら目を閉じた。
………ホントにヨメさんになった気分だわ…………
彩香様のリクエスト。甘々の43と言うことで
勝手に新婚風味で味付け。
でもワタクシが書くモノなのであくまでも「ごっこ」の域を出ませんな〜(汗)
幸せ満喫の43を味わっていただければ幸いですv