心拍数・酔っぱらい子猫ちゃん編




『悪いんだけどさぁ…迎えに来てくれないかーぁ?』
やけに陽気な声が携帯の向こうから響いてきていた。

 珍しく仕事が深夜にまで及ばず、ちょっと浮かれ気分でこれから美味い飯でも食べに行こうかと考えていた矢先、携帯が鳴った。無視しようかとも思ったがやはり何かしら都合が悪いこともあるので、一応出てみて…先程の言葉である。
「…ぁあっ? 何でぇ俺だよ! バカこけ〜? この!!」
何故いきなりアッシーにされねばならんのだ、と北海道が誇る大ローカルタレント様、大泉は少々お怒りを顕わにしていた。何があったか知らないが、そう言った時にはマネージャーってものがいるだろう。
『いや、居ないんだってば! 今、電話してみてたんだけどさぁ…何でか誰〜も捕まらないワケ☆』
「ワケ☆…じゃ、ねぇだろ〜がよ!! オマエ、俺、今仕事が終わって飯も食ってねぇーんだぞ!」
『きゃははははは! なぁにぃ? シゲちゃん誰としゃべってんのぉ?』
明るくて張りのある声が笑い声とともに近付いてきて、いきなり電話の相手が代わる。
「……き、北川……。」
『ああ〜! 洋ちゃんだぁ☆ 何、何? シゲちゃんのお迎え〜?』
電話の向こう側では少々五月蝿いとも思えるくらいの笑い声。どうもこの様子…
「北川てめぇ! 電話先で笑うなウルサイ! しげに代われっ!!」
遠ざかる笑い声。続いてほんわかした様子のシゲが出る。
「しげ、お前! ラジオ終わってすぐに飲んでやがんのか??」
『ううん、違う違う。本番中から北川さんと飲んでたのさ。』
楽しそうにけらけらと笑っているシゲの様子から、相当に飲んだに違いない…。
で、マネージャーも誰も捕まらないから俺に迎えに来てくれと、そう言っているわけだ……大体の事情を悟って、大泉は軽い目眩を覚える。
仕方が無く車に乗り込んだ。幸い、ヤツの居るスタジオはここからさして離れてはいなかった。

 「ほれ! しっかりと歩けっ、しゃんとしろぃ!」
ぶつくさ言いながらシゲを抱えて駐車場まで連れていこうとするが、シゲはふらふらして足取りがしっかりしない。
「一体どのくらい飲んだのよ? お前ってば仕事中に〜。」
「えー、あー…っと、紙コップで飲んでたからな〜…?」
「何をぉ?」
「ワイン。空気に酸化させると美味くなるからって実験でさぁ。」
普段酒には強いと豪語するシゲがワイン程度でこんなに酔うわけはないと、大泉は不審に思った。だが今はそれよりこの酔っぱらいを何とかせねばならない。
思い切って大泉はシゲをえいっとばかりに抱き上げた。まるで子供を抱きかかえるかのようにしてすたすた歩き出す。シゲは軽いから、こんな芸当も朝飯前だ。
「おわっ! 何しやがんだよっ。」
「何もクソもあるかい。お前がちゃんと歩かね〜からだよ☆ あー、この方がよっぽどラクだわ
車の前まで来ると、すとんとシゲを降ろしてやる。
 「ありがとね、大泉ー。俺も飲酒運転で帰るのヤだったしさー…ホント、ありがとね〜。」
助手席でぽつりと呟かれると、怒るに怒れなくなる…。
大泉はシゲに惚れているのだから。
「しげ、腹減ってねぇ? 俺すっごく減ってるんだけど…何処かで美味いメシ食っていかない?」
「あー…いいですねぇ。って、俺、朝から何にも食ってないのよ。空きっ腹なワケ。」
………そりゃ、酔いも回るだろうよ。
大泉は呆れ返って怒る気にもなれない。どうせまたダイエットだとか言って絶食してるんだなーと、あっさり察する。
俺に比べりゃ全然細いし軽いしリバウンドだって大してしていないと思うんだけど、完璧主義者だからねシゲは…なんて考えつつ、車を穴場のお店まで走らせていた。
 店は隠れ家的な雰囲気で、なかなか居心地がいい。空腹の大泉はメニューに釘付けだが、もっと空腹な筈のシゲはまず酒を頼んでいる。
「しーげ! もう飲むなよ!!」
……これ以上飲まれては、この先にちょっと障害アリだ。
咄嗟に大泉は制止するが、シゲはニコニコしたまま、ちょっとだけな♪ と、のたまった。
「…いいけど、じゃ今日お前の奢りな。」
「あー…送って貰っちゃってるし……よし、今日は俺の奢りだ!」
「当〜然! 俺はお前のアッシーじゃないっつーの。」
もうそんなに怒ってはいないのだが、わざと機嫌を損ねているポーズ。このあと、シゲにはきっちり支払って貰わなければならないのだから。
「僕はデザートまで頂いちゃいますよぉ? 構わないね?」
「おう! まかしとけぃっ!!」

 「さて、そろそろ行きますか。」
大泉が席を立つとシゲは慌てて伝票を持ち、大泉の後を追った。
「あれ? デザートまだ頼んでないよ、いいの? 大泉。」
「んーー…とりあえずいいや。」
相変わらずふらふらと心許ない足取りのシゲ。大泉はさりげなく腰のあたりを支えて歩いた。空腹も満たされ、酔いも手伝って上機嫌で喋るシゲを、大泉はやっぱり可愛いと思ってしまう。
「ほい! 乗った乗った!!」
助手席に乗せて車をスタートさせる。大泉の心臓は先程からどきどきと高鳴っていた。
隣のシートのシゲは気持ちよさそうに目をつぶって軽い寝息をたて始めている。端正な横顔、鼻筋がきりっと通った、なんとも雅な二枚目顔がすぐ横にあった。
大泉はシゲの顔を眺めるが好きだ。シゲは大泉の憧れで、どうあがいても決してなれない存在。大作りな自分の顔と違って、繊細に出来た細工のようなシゲに焦がれて仕方がなかった。
決して女性のような繊細さではない。華奢で線は細いが、しっかりとした体つきだし、眉もきりっとしていて凛とした雰囲気を纏っている。
男らしい造作の中に垣間見せる華奢さが、きっと好きなんだろうな…などと考えながら眺めてしまう。
 何も考えず酔うにまかせて、無防備に寝顔をさらしているこの凛々しい子猫ちゃんを、この後どうしてやろうかな〜っと大泉は先程から舌なめずりしていた。
もうじきヤツの家に着く…。


「佐藤〜、佐藤く〜ん。着きましたよーー!」
ぴたぴたと頬を指先で叩くと、シゲは目を覚ましたようだった。 だが動かない。寝起きがいい方では無いので、しばらくうだうだしてしまう質なのは良く知っている。
「出ねぇっつーんなら、こっちにも考えがあるぞぉ…」
無理矢理シゲの脇腹から背中に右手を突っ込み、すかさず左手はヤツの膝の下に突っ込んだ。
「………え? あ…? 何だ何だぁ?」
ふにゃけているシゲにはお構いなしに、よいしょっと抱きかかえた。いわゆるこれはお姫様だっこと言うもの。
「いい! いいから!! 大泉…自分で歩くからぁ!」
聞かないふりをして可愛い子猫ちゃんを抱えたまま、大泉は自慢の長い脚で助手席の扉を蹴り、器用に閉めた。
「降ろせ! おーろーせーーーーーーっ!!」
まぁ良い声で鳴くものだと、感心していた。酔っているせいか声に張りは無いが、艶っぽい声質にぞくぞくとそそられる。
「んー? 心配しなくても大丈夫だよー♪ オマエ軽いから、余裕で抱っこ出来ちゃう
「ち、違う! 違う! そーじゃないだろーッ!?」
大泉はシゲの部屋の扉前まで余裕で歩いて行き、すとんと降ろした。ほっと一安心し、下から大泉を恨めしげに睨んでくるシゲの顔もまた可愛いものだと思いつつ、慣れた手つきでポケットから合い鍵を取り出す。大泉の必須アイテムだ。
これが無ければ、今まで何度もシゲを抱く事なんて出来やしなかっただろう、大事大事な宝物の鍵。
 カチャリ。
乾いた音がして、まさにカギは開かれた。思わず笑みが漏れるのを堪える。
「…ありがとうなー…大泉。送らせちゃって悪かったわ、ホント…」
酔いが醒めていなくて眠そうな目をしている。幼気な子猫ちゃんのように。
大泉はどきどきと心拍数を高まらせながら、獲物を駆る虎の気分で見つめていたが、酔いどれ子猫ちゃんは気付いていない。
 扉を少し開けて足先を差し入れる。開けて貰ったのだと勘違いして入ろうとしたシゲの隙をついて、えいやっと抱きかかえた。再びお姫様抱っこ…。
「うわあぁ…ッ!」
足で器用に扉を大きく開き、中にさっさと入ってしまう。シゲは呆気にとられたのと怖かったのとで、顔を引きつらせたまま大泉の首に両手を回している。
「お…お…いずみ?」
抱きかかえられてベッドに運ばれ、どさりと降ろされてからやっとシゲは状況を理解し始めたのだった。
「礼を言って貰うのはまだちょっと早いなぁ…佐藤くん。」
この時点になってやっと、シゲのアタマの中には
『うーわーッ!! バカ! バカ! 俺は大バカだーーーーッ!!!』
なんて感じの悲惨な悲鳴が響き渡るが、実際にはろくに声も出ない。
そして今になって激しく後悔し始めていた。
仕事が終わってすぐ、自分はタクシーで帰れば良かったのだと言うことを。何も大泉に送って貰う必要は必ずしも無かったのに、ついマネージャーに送って貰うような感覚で、この送りオオカミに頼んでしまっていたのだ。
…じゃ、何か?さっきこいつが言ってたデザートって……もしかして……?
シゲの思考が賢明に記憶を反芻し、何とかして打開策を見つけようとするが、どうにも良い考えなんて浮かびはしない。
「やめ…止め……ようよ、なー? 大泉くん! 俺、ほら…酔っぱらってるし……なッ?」
「んん? いや、べっつに〜。僕ぁ全然構わないですよ。」
「お、お…オマエッ!! 俺が構うんだよッッ!!」
酔いも醒めそうな勢いで叫ぶが、上から見下ろしているデカイ男は一向にお構いなしでベッドに腰をかける。
「うーーーーーーん、そーだなぁ。かえって酔ってた方が、しげが暴れなくて良いかも♪」
「……!!……」
思わず絶句するようなことを、つらっと大泉はのたまった。
大きな目がきょろきょろっと動いて、いかにも楽しそうな顔だった…。



 唇を塞がれて、シゲは喘いだ。
大泉は唇を何度も舐り、貪ってくる。舌が忍び込んで自分の舌に絡み合わされる。両肩を捕まれてベッドに押し倒され、思うがまま舌の蹂躙を許している自分に腹が立つが…どうにも抵抗は出来なかった。抵抗なら昔から試みては失敗している。大泉にはいつもこうやって強引に組み敷かれてしまうのだ。
 しばらくキスを楽しんでいた大泉が、やっとシゲを解放する。
慣れたキスがシゲのカラダにじわりと何かの感覚を与えていた。酔いも手伝ってかその妖しい感覚に取り込まれて、半ば放心状態でベッドの上に体を預けている。
大泉の指がシゲのシャツに触れた。もどかしげにボタンを外されながら、シゲはぼんやりとその光景を見ていた。
―――何で、俺なんか抱きたがるんだろうなぁ―――
大泉はよく俺のことを好きだという。だがあまり信用して良いものか解らない。オンナの代わりに好きだと言うことなのかもしれないし、体の相性がいいからやりやすいと言う類の「好き」なのかもしれない。
考えていて途端に悔しくなってくる。どうして自分がこんな想いを抱かなければならないのか…理不尽な怒り。
あまつさえ、自分だって大泉のことが好きだと思っているのは、都合が良いからじゃないのか? と言う疑問符。
「やっぱ、やめよーぜ! …な?」
 ちろりと睨み上げてくるシゲの表情が色っぽいと、大泉は思っていた。こういう怒り顔が綺麗って言うのは貴重だよなー…なんて。つい嬉しくなって小さな笑いを漏らしてしまう。
「やーだねえ。俺はデザートまでちゃんと食べて〜もん。こーんな美味しそうなしげちゃん、食べないのなんて勿体ねぇって☆」
ボタンを外してシャツの前だけはだけさせた。すべすべの肌はアラバスターみたいに滑らかで、しっとりと大泉の手に吸い付くようなきめの細かさ。
左の首筋にあるやや大きめな黒子の辺りに思わず唇を押し当て、ぴくんと反り返る様を眺めた。舌でぺろりと舐め上げただけで、シゲは体を硬直させてしまう。
左手をそっとシャツの中に差し込んだ。滑らかな肌の上を滑らせながら、目的の突起に僅かずつ触れてゆく。
「……ぁ……」
小さな、吐息にも似たシゲの声。
「うーん ぞくぞくっとくるねえ、きみの甘い声。なーんで声までイイかなあ…」
露骨に嬉しそうな顔をしている大泉を、シゲは赤い顔で精一杯睨み上げた。
「な〜んて顔してんだよ。ココ、嫌いだったかい? しげは。」
「…ん……っ…」
びくっと体を強張らせる。大泉の指先が突起を軽く捏ねたからだ。だが、今度は声を出さないように必死で耐えてみせる。
「意地っ張りなとこも可愛いんだよなー。」
大泉は本当に可愛くてたまらないと言った表情で、シゲを見つめている。子猫ちゃんは今日もまた顔を精一杯背けて必死で声を堪えようとする。抗っても無駄な抵抗だというのは、シゲ本人さえ重々解っているのだが…。
 耳を甘噛みし、舌先で優しく舐りながら、右側の突起だけを執拗に弄んだ。
シゲは必死に唇を噛んで耐えようとしている。
「…あ…ッ…!」
柔らかくて生暖かい舌先が、今まで全く触れなかった左の突起に触れていた。時折唇を押し当てては舌先で転がして、ゆっくりと舐ってやる。
「や……やめ…ッ…」
胸元に吸い付いて刺激を与える大泉を、何とか退かそうとシゲは両手で頭を抱えたが、抵抗は虚しい。酔いのため、両手に全く力が入らないのだ。
自然にそれは、指が大泉の髪の中を彷徨う羽目になった。
「気持ち良さそうじゃん
ちゅっと啄むようなキスを繰り返しては舌を這わせる。その度にシゲは切れ切れに甘い吐息を漏らした。
 するりと左手がシャツの中を抜け出して、ジーパンの上からシゲ自身をさすり始めた。大泉の体の下で、いつものように暴れ出すが、今日はアルコールが回っているのであまり抵抗の効果はなさそうだった。
「あーしげ、もう勃っちゃってる♪ 流石、感じやすい質だなぁおい。」
「さ…わんなッ……頼むからぁ…ッ…」
「ばーか! 触んなって言われてハイそーですかって止めるヤツ、どこにいるぅ?」
爪先が行ったり来たり、何度もそこを刺激する。厚手の布の上から間接的に与えられる刺激は、甘美な媚薬のようにシゲを蝕んでゆく。酔いも手伝って、いつもより早くシゲは大泉の愛撫を受け入れた。
髪の中に差し入れられていたシゲの右手が、大泉の左手の上に重ねられる。それはさらなる刺激を求める無言の合図であることを大泉は熟知している。意地っ張りなシゲの、この時点での精一杯。
「…触って欲しい?」
紅潮した顔が僅かに頷く。悔しげなのがまた扇情的だ。
「しげ、泣きそう
泣きそうと言われてきっと睨み付けるシゲの眦にはやっぱり少し涙が光っていて、とても可愛らしかった。
 ジーパンのボタンを片手で器用に外して、そうっとジッパーを降ろした。そこには愛しいシゲの分身が息づいてる。
トランクスの隙間から指を忍び込ませてそれに触れると、しっとりとした液体が絡み付いてきた。わざと塗り広げるようにして、触りながらやんわりと握る。
あ…と小さな声が聞こえる。体を一旦は強張らせながら、シゲは覚悟を決めたのか大泉の愛撫に体を預け始めていた。
指先で弄って高めた後、大泉は手を離した。与えられる刺激に酔いしれ始めていたシゲが戸惑う中、シゲの細い脚を掴んで大きく開かせる。その間に自分の体を入れるためにだ。
膝を立てさせて開脚させた中にすんなり顔を埋めて、ジッパーの中にあるものを口でまさぐりだした。わざと手を使わずに口だけでトランクスの中から目的のものを出して、羞恥を煽るのが目的。勿論ジーパンを脱がさないのも同じ事だ。
「おおい…ずみッ……おま……何やって…だよォッ!」
両脚をがっちりと腕で抱えて、まるで犬のようにシゲのそれを探し、咆える。荒々しく貪る様は大泉の期待通り、シゲの羞恥を十二分に煽った。
「止せ…っ……て…バカやろーッ……」
荒い息の下で必死に抵抗を見せながらも、シゲは興奮してしまう自分に気付いていた。そしてそれに嫌悪感を抱いてしまう。
ぴちゃぴちゃと唾液の音が響き、舌や唇が別の生き物のように這い回った。先端から溢れてくる体液を塗り広げては口付けた。唾液と体液が下着やジーパンをじんわりと濡らしていく様は、とても淫らだ。
「……ぃず…みぃ…ッ……」
苦しげに名を呼ぶ。限界が近いらしい。大泉はより一層の熱情でシゲを追い立てた。…まるで獣のように。わざと淫猥な水音を響かせては、顔を上下に動かす。歯を立てないように細心の注意を払いつつ、荒々しく貪り尽くす。それはむしゃぶりついていると言った表現が、一番当てはまるのかもしれなかった。
「!…イっちゃ………あ…ッ…!……」
びくびくと体を強張らし、大泉の口の中でシゲが体液を放出してしまっていた。
それを飲み下してから、大泉はふっと笑った。愛しくてたまらないといった優しい眼差し。
「簡単にイっちまったじゃねーか…しぃげ〜ぇ
「う、う、うるせーよっ……お前が変にエロい事すっからだろー……が…」
泣き出しそうな消え入りそうな、何とも可愛らしい動揺しているシゲの声。
「あーもう、たまんねぇなー佐藤くんのそんな声。もっと苛めたくなっちゃうねえ…」
体勢を起こして、シゲの上に覆い被さった。シゲは諦めて従順に大泉の背中に手を回し、口付けの嵐を素直に受け入れる。舌を絡ませると自分の体液の味がするが、いつものこと。この状態では、それさえ次の欲望を煽り立ててしまう。
しばらく抱き合って体をまさぐり合いながら、互いの熱を確認しあっていた。シゲの下半身には、スラックスの上からでも確認できるぐらい堅くなっている大泉の雄が当たっている。それにそっと手を伸ばしてシゲは怖ず怖ずと触った。
「しげ……」
甘い声が耳元で響く。優しい中にも拒むことを許さないような、強い響きを含んだ囁き。
「大泉……我が儘…」
くすりと笑ってシゲは大泉のベルトを外した。続いてウエストのボタンを外し、ジッパーを下げる。そろりと手を差し入れると大泉の雄は、先走りの体液を下着に染み込ませて猛っていた。
「気持ちいい? 大泉…」
自分で慰めるときいつもそうするように、シゲは指を絡ませて緩くさすった。自分の上の大泉は息を荒くしながらシゲに口付けを繰り返す。
―――気持ちいいんだな―――
シゲはこのまますぐにでも、大泉を自分の中に入れたいような気がしていた。今日はいつもより思考が大胆になっている。 今、イったばかりでも体の熱が引かずに、次の刺激を求めている。
 唇に口付けていた大泉が更にシゲの耳元で何か囁く。途端にシゲが大泉の顔をきっと見据えた。真っ赤な顔で睨み付けると凛々しい眉毛がより一層、シゲの鋭角的な顔を彩った。
「ヤダね。」
「いいじゃんよォ…な?」
「ヤダっつってんだろーがぁ!!」
半泣きで声を荒げながら、さすっていた雄を軽く握ったので、大泉がうっと呻いた。慌ててシゲの手を引き抜かせる。
「バカてめえ!! いっきなり何しやがんだよ!」
「オマエが変なこと言うから悪ぃんだよ! ……ったく……」
真っ赤になって顔を背けるが、大泉はその顔を両手でガッチリ掴んで正面を向かせる。
「お前、自分の立場解ってる? 今日は俺の美味しいデザートちゃんでしょぉ?」
「デザートちゃんって言うな! 絶対言うなッ!!」
「じゃ、子猫ちゃん♪」
「………」
最早絶句しかない。立派な男で、しかもいい歳して子猫ちゃんもクソもあったものじゃない。シゲはこの男の思考に刃向かっても無駄な事を、改めて悟った。
 絶句したままのシゲを抱え起こして向かい合わせに座らせる。シゲは赤い顔をして視線を逸らす。
「しーげ…もう、何でそんな泣きそうなのかな〜?」
頭をがっしりと抱え込まれてシゲは何度も何度もいやらしい口付けを受けた。舌が絡み合っては離れ、また貪られる。前髪を掻き上げられ、耳を指で弄られて感覚を煽られながら、逃れられないことを実感させられていた。
 大泉の手の導くまま、頭を下げた。それにつられて四つん這いにさせられる。
目の前には猛った大泉の雄がある。どうしていいか解らぬまま、唇を押し当てた。
シゲのさらりとした髪の中にある手が、すっと髪を掻き上げて顔を顕わにさせた。シゲがいやらしい事をさせられているその様子を上から見ていたくて。泣きそうな顔で舌を這わせだした、シゲの奉仕の様を。
それはあまりに卑猥な光景だ。屈辱的な表情で舌を使っているのも愛しい。狂おしいほど愛しくて、でも泣かせたくなる…サディスティックな欲望をそそるシゲの姿。
 ぴちゃぴちゃと舐めているシゲの後頭部に手を添えて、いきなり口の中に自身を突き立てる。驚愕の表情をしながらシゲは呻いた。いきなり口の中に突っ込まれて、泣きそうだ。
「しげちゃんは……可愛いねぇ…」
ゆるゆると顔を動かし、必死で大泉の雄を咆えていた。 初めて味わわせられるそれを、恥辱に震えながら賢明に受け入れる。うっすらと目の端に涙らしきものが浮かんでいた。何ともいやらしい雰囲気を纏った涙だ。
シャツを乱してはいるものの、ジーパンを脱いでいるわけでもなく、ただ四つん這いでいるだけでシゲは艶っぽい。シャツの下から覗く薄赤い突起が堅くなってきているのは、どうやらシゲもこの屈辱的な行為に感じてしまっているらしい。
あまりさせていると初めてのシゲは疲れてしまうだろうなぁ、と、大泉は自分からも腰を使って突き上げる。夢中で絶頂をを目指し、腰を使った。
必死に上下させていた顔をいきなり離された瞬間、シゲの顔にどろりとした液体が降り注がれ、しばし呆然としてから、やっとそれが大泉の体液だと気付いた。
「すっげぇ、気持ちいい……」
大泉はうっとりと笑みを浮かべながら、シゲの顔にかかった白い液体を手で拭った。ある程度綺麗になってから、そっと自分の舌で清めてゆく。眦に浮かんでいる涙もそっと舌先で舐め取ってやった。
「……オマエぇ…何してくれんのよ………」
その言葉が精一杯で、後は声にならず目に涙を浮かべている。
「色っぽいしげ、見たかったんだもん、俺。」
そう言って、シゲの腰に手を伸ばした。立ち膝にさせて自分の首に縋りつかせ、先程、前だけを開けて貪った跡が如実に残るジーパンをずるずると引っ張って脱がそうとするが…引っかかる。
「あら佐藤くん 勃ってますよぉ♪」
「るせーっ! ほっとけッ!!」
下着と一緒に引き降ろして、下半身だけはだけさせてから体を抱きかかえた。ベッドの上に仰向けにさせる。白っぽいシャツだけ身に纏っているその姿も、非常に大泉を刺激する。
「ほい! 脚、開いて!! 閉じない閉じない♪」
何とかして脚を閉じたがるシゲにはお構いなしで、大泉は細い両脚を掴んで自分の肩の上にかけさせた。
再び元気を取り戻しているシゲ自身にはノータッチで、大泉はその奥にある奥まった部分にそっと指で触れてみた。びくりと体が強張る。何度か指先で触ってから、そっと舌で舐めてみる。
「…ぁ……」
シゲは困ったような声を小さく上げた。可愛いなぁと改めて感動しつつ、唾液をたっぷりと秘部につけた。
小さく体を捩って嫌がっているが、逃げることは当然出来ない。何度も何度も舌で潤して、びくびくっと硬直する反応を存分に楽しんでいる。
 大泉は手を伸ばして専用のローションを取り出した。普段からそれを使ってシゲと交わる。
シゲは見るのも嫌がっているが、大泉は勝手にそれをこの部屋のベッド下に置いてあった。それをたっぷりと人差し指に付けて、そうっと秘部に差し込む。
「……ッ……」
慣れているのでそんなに痛がらなくはなった。ただ、違和感があるらしい。何せ異物が侵入してゆくのだから多少の違和感や圧迫感は当たり前だろうなと思いつつ、指先をくちゅくちゅっと動かす。
小さな喘ぎ声が上がる。続けてもう少し奥まで差し込んだ。
ゆっくりとシゲを焦らして、淫らに喘ぐシゲを堪能したい。そんな思いで大泉は一本、また一本と指を増やしては内壁を弄んだ。
 「おぉ……ずみ…ぃ…ッ……」
シゲが焦れて声を出した。でもまだ決定打はあげられない。まだもう少し乱れて欲しい。
シゲの弱い部分に狙いを定めて動かしてやると、小さな悲鳴が上がる。ほんの少しそこに刺激を与えるだけで、シゲが再び絶頂を迎えそうになっていた。
「………イきたい……?」
首を僅かに縦に振り、辛そうな目で大泉を見上げてくる。
「いいよぉ…しげ……イっちまえ…」
再び口にそっと咆えてから、指先で刺激を与えてやると簡単に昇りつめてしまった。どくどくと白い精を吐き出して、ぐったりとしている。
「ハイ、よく我慢しましたねぇ……可愛いよー、しげ。」
瞼の上にちゅっと啄むような口付けをして、大泉は嬉しそうに笑った。
シゲが大泉の顔を見る。しっとりと潤んだ目が色香を帯びていて、大泉はもう自分も堪えられなくなってきているのを感じた。
「そろそろ……俺も限界だなあ…」
呟くように言うと、来ていたシャツを乱暴に脱ぎ、スラックスと下着もさっさと脱ぎ捨てた。再び上に覆い被さって、シゲの弱い首筋や耳たぶに唇を押し当てては舌を這わせ、手は滑らかな肌をまさぐった。
片脚を脇に抱えると、もう片方を肩に掛けさせた。先程唾液とローションで潤した部分に自分の雄を宛い、更に自分の先走った液体を塗りつけてから、そっと中に押し入った。
「あ……ぁ……ッ……」
辛そうでいて、艶味を帯びたシゲの声が麻薬のように大泉を蝕んでいく。ゆっくりと抽挿を繰り返しながらシゲの中に押し入った。丹念に解されたそこはしっとりと大泉に絡み付き、まとわりついてくる。
「うわ…すげえわ、お前ん中………すげぇ気持ちいい……」
耳元でそう囁きながらゆっくり突き上げていた。
シゲは答える余裕も無いらしく、荒い吐息だけがその口から漏れる。
「好きだよぉ…しげ……お前…大好き……」
呪文のように囁きながら腰を使った。汗で張り付いた茶色い髪を時折梳いてやり、形の良い額や、魅惑的な唇に何度も口付けながら。
 一旦体を離して、大泉は上半身を起こし、シゲの細い腰を引き寄せた。
再び律動を始めるが、それは先程より細かな動きで、比較的浅い部分を集中的に責め立てる。
「や…ッ…止めっ……ダメだ……ってぇ………!」
「何言ってるのさ、シゲぇ…えらい感じてるぜぇ……ここ。」
先程指先で攻めた部分を雄で細かく攻めていた。シゲは涙を滲ませて叫び声をあげる。 
「駄目ッ…駄目だってばぁ…ッ……やだ! 止めろよぉ……」
シゲの両手が宙を藻掻き、腰を支えていた大泉の腕を見つけてがっちり掴んだ。何とか退かそうと爪を立てている。
「止めねえ。だってお前こんなに感じてんじゃん……」
ほんの少し前に達したばかりのシゲ自身が、また堅さを持ち始めている。先端からとろりと甘い蜜を漏らしながら…。
「嫌…やだぁ………やだってばぁ……」
「可愛いなあ…お前。しげの泣いちゃう顔、僕ぁ大好きですよー…色っぽくてさ。」
「ふざ…けるな…ぁッ…」
必死で爪を立てるシゲの抵抗も虚しく、大泉は腰に添えていた手を片方、刺激に飢えた自身に触れ、やんわりと扱きだしていた。
最早シゲは何を言っているのか解らない。悲鳴にも似たそれは泣き声とも、喘ぎ声とも取れた。
 そろそろ限界を感じ始めた大泉が、再びシゲの上に覆い被さり、体を密着させて突き上げを早める。片手をシゲの背中の下に入れ、もう片方は暴発しそうなシゲ自身を弄びながら。
「大好きだよ…しげ……お前が、大好きだ……」
繰り返される甘い呪文にシゲが精一杯答えようとする。大泉の両肩を掴んでいた腕が背中や首の後ろに回され、しっかりしがみつく。
「…しげ…しげぇ……」
荒い息の下で何度も名前を呼んだ。愛しくてたまらない者の名前。
「…………」
「もう一度…言って…しげ。」
嬉しそうに頬に唇を押し当てて、大泉が言った。
「……れも……だよ…ッ……」
絞り出すような、苦しげな囁き。
大泉はその言葉を聞き終えると、更に激しく腰を打ち付けた。シゲが小さな悲鳴とともに手のひらの中に体液を吐き出した直後、大泉もシゲの中に全てを送り込んで果てた。


 「お前、だいぶ酔い醒めたんじゃねえ?」
「…そりゃあ、あれだけ無茶苦茶されりゃあね。酔いも醒めますよ…」
呆れ気味で呟いたシゲの唇を大泉は指先でなぞった。
「人聞き悪ぃぞ佐藤…僕ぁ、酷い事なんてひとっつもしてないですって☆」
「言ってろや嘘つき…」
ころんと大泉に背を向けたシゲ。華奢な背中のラインすら愛しいが、やっぱり顔が見たいので慌てて向き直させた。
「ふくれっ面しちゃってえ。ハンサム台無し。」
「余計なお世話だよ!」
「んーーー。シゲちゃん大好き
ぎゅっと抱きしめて肩口にちゅっと口付けると、薄赤い跡が浮かんだ。
「あらあ、ゴメンゴメン! せっかく目立つトコには付けないようにしてたのに、こんなとこにやっちまったぁ。」
「バカこの! どーしてくれんだよぉ…」
シゲも大泉もタレントで、体が資本なので目立つ場所にキス・マークなど言語道断、以ての外。見つかれば社長&副社に大目玉だ。
「ま、大丈夫でしょ。辛うじて服で隠れるって、多分。」
ははははと困ったように笑って誤魔化した。
「近いうちに“おじゃ街”で風呂入る事があったら、そん時は間違いなく! てめぇぶっ殺すからな…」
「はいはい その時はこの辺に転がってるエアガンで撃たれる覚悟、しておきますよー。」
 大泉は黙っておいた。
おじゃ街の取材のことは全く頭になくて…風呂に入れば間違いなくばれてしまうであろう場所に付けてしまった、いくつもの痕跡があることを………。

――――その時は逃げよう――――

心密かに誓う大泉だった。


Fin

    

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