雪長夜
yukityouya
〜It is among a LOOSER rehearsal now〜
「…いやー…駄目だ。いっこも覚えらんねえ……」
苦し紛れに呟いてみる。
だが誰一人として俺の言葉に耳を傾ける奴はいない。いや、そらぁ当たり前なんだ。仕方がない。
誰もがみんな、自分のことで手一杯になっちゃってる。
だって本番間近だっつーのに、モリの脚本は全〜然ッ、あがってこない。やっとあがってきたと思ったら、これからまた後半丸々書き直しで、せっかく覚えた台詞もあちこち変わっちまうっちゅう寸法だ。
これじゃあみんな、余裕っつーものが有るわけもなく。
本番一週間を切った俺達の稽古場は、禍々しいほどの殺気に満ち溢れていた………。
何とかテレビとラジオの仕事をこなして稽古場に着いたのが、最早深夜に近い時間帯。外はまたもや、雪。
「お疲れ〜…」
ぽそっと呟きながら扉を開けて中に入れば、今日もまたモリ以外の三人は頭を抱えながら台詞合わせをしていた。
「おお、大泉。お疲れ〜……」
窓際に置かれた資料まみれのテーブルの上でノートパソコンと格闘していたモリが、寝不足にも程があるべやと突っ込みたくなるような死んだ目をして、声をかけてきた。
っちゅーか、お疲れなのは………アンタだ。
「どう? そろそろあがりそうかい?」
雪まみれのコートと帽子を脱いでほろいながらパソコンを覗き込んだが、画面上にはラストとはほど遠いであろう場面の情景が書き込まれていた。
「………なんも言わんでくれ。」
モリは真っ赤な目をこっちにちょっとだけ向けてから、消え入りそうな声でそう言った。
「はいよ。んじゃー俺、あっちで台詞覚えてるから。」
改めてこの場所をぐるりと見渡すと、めいめい自分の仕事を終わらせてから稽古にやってきたバカ共が三人。
サカナはモリが自宅から持ち込んだソファを占拠してブツブツと台詞を読み込み、変態は隅っこで床に胡座をかいたまま、微動だにせずに台本を見つめている。
そして我が愛しきお姫様はいつにも増して凛々しいお顔で、丸いちゃぶ台の前に正座して台詞を諳んじていた。
そのアンバランスさが可愛らしくて、ついつい弄りたくなってしまう。
だからそっと近寄ってみた。
「よ〜う、ハンサム。随分とまあ可愛らしく座っちゃって。ちゃぶ台がお似合いじゃーないの。」
「るせえ大泉、あっち行け! っつーかお前、ただでさえ台詞覚えてねーんだから、俺に構ってる場合じゃねーべや。」
愛しい愛しいお姫様は思いっきりごもっともな意見を吐き、俺の顔を一瞥してから冷たく背を向けた。
「へいへい。」
オーバーアクションで両手を上げて俺はその場を立ち去り、そのまま空いているテーブルにどかっと荷物を置いて、椅子に乱暴に腰をかけた。
「悪いけど俺、一旦帰るわ。今まで書き上がった分は印刷してくから、各自やっといてくれや。」
モリが腫れ上がった瞼を擦りながら、言う。
でもこの人、帰ってまた近所のファミレスに詰めて台本つもりなんだろうなー。たまに場所を変えないと書けない人だから。
「解ったよ〜、リーダー。俺らで出来たとこまでやっとくから。」
音尾がやっぱり腫れ上がった赤い目をしながら、モリに手を振る。
「さ…。じゃ、リーダー居ない間に俺達だけでもちょっとやっか! 今までのとこは大体台詞覚えたべ?」
しげが指を絡ませた両手をぐいっと上に伸ばして、気合いを入れた。
……安田は役作りのため日焼けさせた顔を黒光りさせながら、黙って頷いている。
で、俺は―――――苦笑いをしていた。
じつは台詞、まだ全然頭に入ってねえんだって………………。
時間はいよいよもって丑三つ時。
取り敢えず出来るところまでで立ち稽古を続けてはいるものの、そろそろみんな帰らないと明日の仕事に差し障りが出そうなので、稽古もお開きになりそうのだが……正直なところ、今帰っちゃうと俺はまた台詞が抜けちゃいそうだな……。はっきり言ってこれはやべえわ、マジで。
「ホラ、そろそろ帰んないと……あんた明日マジで遅刻よ、大泉さん。」
しげが肩をぽんぽんと叩いてくれた。どうやら心配してくれてるらしい。
「ああ〜そうやね〜、そうなんやけどね〜……今帰っちゃうとせっかく覚えかけた台詞がまたどっかにいっちゃいそうなんだわ、しげ。」
しげの心配も嬉しいが、台詞が全然頭に入っていないことには流石の洋ちゃんも少しばかり不安であるからして。
結局俺だけ居残りしてくことにした。
しげは「あ…そう」と、実に素っ気なく言い放って俺の傍を離れていく。
ま、奴も仕事と稽古で疲れ切ってるし、それが至極当然な態度かもしれん。
「じゃあ俺らは先に帰るよー、大泉。残るんだったら、電気ちゃんと消して戸締まりしてけよー!」
音尾が疲れきった顔をしながらも、笑って手を振った。で、その背後から安田がますます土気色になった顔を覗かせて、「じゃ…」と、呟いた。
―――いやー…怖ぇなぁ、安田。相っ変わらず音尾の背後霊だ―――
そんなことを思いつつ、俺はソファまで移動すると座り込んだ。
コピー用紙を束ねた台本を片手で持ち、残った片手で膝を叩いてリズムを取りながら台詞を口に出して読んだ。
『………私の方が弱い……』
そう言った途端、頭の上から声がしてきた。
『……俺の方が弱い!』
しげの台詞だった。見上げると、余裕の笑みをかましながら立っている。
「あれ、お前……まだ帰らねーの?」
てっきり帰ると思っていたので、素っ頓狂な声で聞いてしまった自分につい笑いがこみ上げてくる。
「帰ろうと思ってたけど、お前まだ全然台詞入ってないって言うからさ……ちょっとだけ付き合ってあげちゃおうかなー、なんて。俺はもう全部入っちゃってるし。」
「明日また遅刻しねえか?」
恐る恐る尋ねると、しげは口の端をきゅっと上げて子供みたいな笑顔を見せた。
「何とかなるって! 第一それはあんただって一緒でしょ。さ、合わせてやっから少しでもやっちまうべ!」
驚異の記憶力を誇るしげらしく、余裕綽々なのでちょいと気に障るが――でも、それ以上にこいつの気持ちが嬉しかったりして………。
今、二人だけで稽古している場面は、この前書き直されたところだ。丁度俺としげとで絡むラスト近くの重要なシーンだが、もしかしたらここも後でバッサリ書き換えられるんかなあ…なんて思いつつ、とりあえず台詞を頭にたたき込んだ。
『山南…!』
そう叫んでしげを見る。しげの顔つきは、もうきっちり苦悩する山南の顔になっている。
「タンマ。ちょっと何か飲もうや、しげ。」
あまりにも繊細で切なげなその顔を見ていると、稽古中だというのに何か別の感情が俺の頭の中をさっと横切る。
………いや、それはあまりにも不埒過ぎる。せっかく睡眠時間を削って付き合ってくれてるしげに申し訳が立たないやね。
「んー…じゃ、ちょっとだけ休憩すっか。」
そう言っていつもの佐藤重幸の顔に戻った男が、テーブルの上に置いてあったウーロン茶のペットボトルを持ってくると、ぽいと俺に投げて寄越した。
そのままソファにどっかり座り込んだので、俺もその隣に腰掛けた。
お茶はかなりぬるくなっていたけど、渇いた喉にはそれでも結構充分だった。二人して無言でぐいぐい飲んでから、ふーっと大きく息を吐き出す。
「……悪いな、付き合わせて。」
照れ臭いけど礼を言ってみた。しげは案の定にかっと笑って『奢りな。スープカレーでいいから。』と、宣う。こんなところも可愛らしくて、俺はいつまでたってもしげに夢中だよ……。
経験不足の中学生みたいにどぎまぎしちまいそうで、慌てて別の話題を振ってみた。
「ところでさぁ、しげ。このシーンって……俺がお前を斬るんだよなあ。」
「……ああ、そうだね。バッサリ斬られちまうな、俺……アンタに。」
何気なく言った言葉だったのに、よくよく考えると俺はしげを斬り殺すんだよな…芝居の中とは言えど。
「斬るのか…………そうか。」
ぼそっと声に出してしまった。改めて考えてみると、誰かを刀で斬ると言うことは、命を奪うということであって……それが誰であろう大切な人間だったら。たとえどんな大義があったとしてもそれはやっぱり――――きっともの凄くやるせなくて、辛いんだろうなあ…なんて柄にもなく考えていた。
「ん? どしたの、いつになく真剣じゃないの。」
しげはにやっと笑って横目で俺を見た。
「あ? バーカ、俺はいつだって真剣だ!!」
いつもの口調で返しながらも、心の中は別の思いで一杯だった。
「何、大泉。どしたの?」
不思議そうに顔を覗き込んできたしげの目は、やはり寝不足で充血している。
「いやー、なんかさ。ちょっと考えちゃったワケよ。大義や誠の為に、もししげを斬らなきゃならんくなったら、きっともの凄く辛いんだろうなあなんてさ。……いや、忘れてくれ。ついついそんなこと考えちまったべや。」
「……ああ、今回のテーマはもの凄く重いからねー……俺も時々マジで考え込んじゃうもん。」
そう言ってしげは…ほんのりはにかんで笑った。
外はしんしんと雪が降っていて、もの凄く静かだ。
この稽古場、かなり街の真ん中にあって繁華街にも近いせいか普段はこの時間になるとかなり五月蝿いんだが、流石にこの天気では酔っぱらい達も出歩かないのか、それとも全ての音が雪に吸収されてしまっているのか。
とにかくしんと静まり返っている。
聞こえてくるのは自分の呼吸音や心臓の音だけだ。
「さてっと。…もう少し、やる? 大泉。」
しげがなんの気無しに此方を振り返った。疲れているので片目だけ三重になってしまってはいたが、そんなところも妙に可愛らしい。
………ヤバい。どんどん自制心がきかなくなってる。っちゅーか、もともと俺にはそんなもんは無いのかもしれんな、しげに対しては。
「どしたの大泉。お前…疲れすぎなんじゃないの? そろそろ帰っか?」
心配して覗き込んできたしげを両手で思いっきり抱き締めたくて、その身体をぐいっと引き寄せた。
あっと言う間に華奢な身体が俺の腕の中にすっぽりと収まる。また何とも抱き心地のイイ奴なんだわ、こいつ。
「あらちょっと、やめてくれる? 大泉さんってば。これかなり鬱陶しいって。」
身体をくねらせて脱出を試みているようだが、こんなことくらいで俺がお前を手放すわけねーべや。
「佐藤さんこそやめて下さいよ。俺がせーっかく気持ちよく抱きついてるっつーのに、逃げようなんて考えおこさないでー頂戴。」
逃げようとする身体をますます強く抱き締めて首筋にそっと唇をくっつけると、それまで暴れていた身体がぴたりと動きを止めた。
微かな汗の匂いに混じって、嗅ぎ慣れたしげの匂いが鼻先を擽った。何とも言えないその香りはますます俺を誘惑してくる。
首筋にキッスするだけに留めておこうかと思ってたけど……どうやらマジでエンジンかかっちまったらしい。
「……やめっ………お前、んな事してる場合じゃ…………」
しげが動きを止めたまま睫毛を振るわせて呟く。こいつ、本っっっっ当……感じやすいな。
………ま、そうなった原因はまず殆どが俺なワケなんやけど。
「あら、佐藤さん。首筋が随分とお弱いようで……」
そんなことを言いながらふっと息を吹きかけると、しげは小さな声を漏らして身体を仰け反らせた。
―――そんなことされたら、もうたまんねえって。
腕に力を篭めてしげを抱き締めた。首筋に這わせていた唇をちょっとずつずらしては攻め、耳朶に到達したところでやんわりと噛んでやる。
「ば……ッ…………………………やめ………………」
口ではそう言いながらもしげの息遣いはもう普段のそれではなくて。奴も臨戦態勢バリバリっちゅーところですな。
柔らかな色の髪を掻き上げながら何度も甘噛みを繰り返し、耳元でぴちゃぴちゃと湿った音をわざと立てては舐め回してやる。
「…………ん………っ……………あ…………」
甘い吐息が俺の耳を擽りだす頃、それを遮るように唇を重ねた。
最初は啄むように。やがて、ねっとりと深く。何度も何度も重ねては貪る。
薄く開かれた口の中に舌を差し入れて、舌を絡ませては唾液を絡め合った。
頭の中はもう真っ白になってて、明日の仕事のこともあと数日後に確実に迫っている初日のことも、殆ど覚えていない台詞も、何も彼もが吹っ飛んでいた。
ただ、しげが欲しかった。
ここ暫く触れることの出来なかったしげの身体が、いや心も何も彼も全てが……今、欲しくてたまらない。
ゆっくり唇を離すと、お互いの口許に唾液がすうっと糸を引いて微かに光っていた。そんな光景もやけに淫靡で。
困惑の表情を浮かべるしげの頬を両手でぎゅっと挟んで、額にちゅっと音をたててキッスしてやる。
「……お前、何考えてんのよ………」
潤んだ目でそんなこと言ってきたって無駄だよ、しげ。余計に美味しそうだもの、お前。
「別になーんも。」
それだけ言ってしげの身体に再び手を伸ばし、両脇に手を突っ込んでひょいっと抱き上げてみた。相変わらず軽いから、わりと勢いだけで持ち上げられちゃう。
慌てるしげをそのまま引き寄せるようにして抱え上げ、俺はまんまと奴を膝の上に乗せた。勿論顔をこちらに向けさせて、だ。
途中からはしげも諦めてくれちゃったのか、素直に俺の膝の上に跨ってくれたようなもんだけど。
「何してくれんのよ。俺はガキじゃねーってば。」
ばつが悪そうに、膝の上のお姫様が呟いている。
「いいべや、たまには。」
しげの腰の辺りを支えるようにしていた手をさわさわと動かして、あちこち撫で回してやる。
何せ膝に跨っているわけだから、手の届く絶好の位置にいてくれちゃうわけで、俺は思う存分撫でくり回して熱を持ち始めた身体を更に煽った。
最初は衣服の上からだったそれは、気が付けばシャツの裾から中へと潜り込み肌に直接触れていた。
「おま…っ…………何かいつもよりやらしい触り方……してる………」
すべすべの肌が心地よくて、ついつい念入りに撫で回していたらこんなことを言いやがる。
バーカ、俺はいつでもいやらしいわ!
調子に乗ってシャツもパーカーも一緒くたににたくし上げた。幾重にも着込まれた布地の下にある雪のような白い肌と、薄赤く色づく胸元の突起が何とも言えない艶めかしさを醸し出していた。
固く尖ったそれを指の腹で軽く捏ね回してからそっと舌を這わせると、びくり膝の上の身体が跳ねる。
唾液をたっぷり絡ませた俺の舌がいやらしい水音をたてて這い回るたび、しげの身体は一々それに反応してくれていた。
「……大…泉……っ……」
すげえ甘ったるい声を出して、しげは俺の頭に両手でしがみついてくる。引き剥がしたいのに剥がせないような何ともまどろっこしい手つきで、俺の癖毛の中に指を差し入れてきた。
「――――はいよ。」
ちゅっと突起を吸い上げると、小さな悲鳴。こんな甘くていやらしいお前の声……いつもながらしみじみ思う。
大好きだなーって。
そろそろヤツの自慢の息子も焦れて涙を流している頃だろうと思い、右手をズボンの中に差し入れてみた。
稽古の為にわざわざジャージに着替えていたしげにはそれが災いしたようだが、俺にとっちゃー幸いしたね。
案の定、俺の右手は易々とヤツの息子にご対面していた。
しかもやっぱり思った通り、勃ち上がって膨張しているソレは先端からじくじくと先走りの液体を零して泣いている。
指先にその液を絡めては、硬さと大きさを固持しているソレを弄ぐってやる。
「……ん…………ぁ……………………あ…っ……………」
舌と唇で胸元を舐め回しながら更に手の中にすっぽり包んで軽く扱くと、しげは極上の喘ぎ声を漏らした。
「しげ………イってもいいよ。我慢しなくていいから。」
疲れがピークにきていた身体は、ほんのちょっとの刺激であっさり限界を迎えてしまいそうだ。
半泣きで震えながら我慢しているのも、それはそれで可愛いんやけど。でも今日のところはこの辺で勘弁してやらんと、まだまだ先は長いってことで………。
「う…っそ……………も………………イっちゃうよぉ……………」
愕然とした表情のまま、しげは俺の右手で達してしまっていた。
さっと強張った後、徐々に力が抜けてくる身体を片手で抱きかかえながら俺は囁いた。赤い顔で悔しげに唇を噛みしめるしげって、いっつも思うけど…なまら可愛いんだよな。
「一段と感じやさんだったなー、今日は。」
「…………んだよ、うるせえよバカ…………」
シゲはまだ軽くへこんでいる。
「何お前、まだ気にしてんの? ま、いいけど……」
まだ股間に有る右手をちょっとばかり移動させて、例の場所に指の先でそっと触れる。
「ちょっとだけ、腰上げろや。」
シゲはますます顔を赤くしながら俺の首にに抱きついてくる。
「あーあ…やっぱり………やんのかよ……」
諦めの混じったような言葉と共に、小さな小さな溜息が漏れた。
いや、言いたいことは俺も重々解る。けどなーしげ、だって俺ら全くの二人っきりってここんとこ随分久し振りだし、やっぱ俺も少しは心の潤いっちゅーもんが欲しい訳よ。
そんな事を思いながら中指をほんの少し中に差し込んだ。俺の右手にはつい先程しげが出した液体がたっぷり付着しているので、くちゅ…と湿った音を立てて容易に呑み込まれていく。
「……んっ……く…………っ………」
しげは何とも言えない淫靡な声を漏らした。
そのまま中指はゆっくりと奥まで呑み込まれた。慣れたしげの身体は、あきらかに俺を欲しがっているようだ。
粘膜をやわやわと刺激してやると、自然にしげの腰が浮いてより俺に抱きついてくる。
―――なんだろなあ、おねだりしてる猫みたいな感じやね。いや、俺にとって猫は天敵なんだが………。
「あら、佐藤さん………かなりイイ感じ。」
そんな言葉にますます耳まで赤くしながら、しげは必死で俺に抱きついてくる。じわじわと中を掻き回される快楽に身を震わせながら。
くちゅくちゅといういやらしい音と、噛み殺しても漏れてしまう甘やかな吐息が俺の耳をさわさわと擽ってくる。
いやもうたまんねぇな……これ。既に俺様の三本目の刀が疼いて大変だわ。
「やべえわ、しげ。俺ももう我慢出来ねえかも……」
そう言うが早いか、俺は慣れた手つきでしげのジャージの下を膝のちょっと上くらいのところまで引き下げた。
で、自分のベルトに手をかけ、素早く俺のモノを解放する。
中からずるりと指を引き抜くと、その感覚にしげが身体を仰け反らせていた。
「ああ悪ぃ………痛かったか?」
「………んん、平気。大丈夫だから………」
困惑顔で俺を見てから、慌てて照れ屋な俺のお姫様は顔を必死になって背ける。俺としてはもう少しそんな可愛らしい表情を拝みたかったが、それは後からゆっくり拝ませて頂くとすっか。
両膝を俺の二の腕にかけて体勢を整えたところで、いきり勃ったモノを秘所に宛ってみた。俺の大事な刀は既に思いっきり臨戦態勢で、先走りの液に塗れたままぐちゅりと音を立てて中に侵入する。
「………ッ………」
しげは脚をMの字に開かされ、半ば仰け反った体勢で俺のモノを突っ込まれていた。額から汗を滲ませ、唇をぎゅっと噛んで衝撃に耐えている。
ゆっくりと出し挿れ死ながら徐々に奥まで収めていく。その度に綺麗な薄紅色の唇からは小さな喘ぎ声が漏れてきた。
なんとか収めてしまうと、下から確実に突き上げていく。しげの中は最初はかなりきつめだったが、出し挿れを繰り返す度に俺のモノをしっかりと受け入れて収縮し始めている。
まとわりついてくる粘膜と、なまら色っぽい喘ぎ声が――――もう、最っ高じゃない。
いやらしい水音と肌のぶつかる音が稽古場に響き渡る中、時にゆっくりと、時に早く楔を打ち付けては中を掻き回し、知り尽くしている弱い部分をピンポイントで攻め立ててみた。
その度にゾクっとするような甘い悲鳴をあげ、しげは身を震わせて俺のモノを締め付けてくる。
俺もそろそろ限界だが、こいつもまたイってしまいそうやね。屹立したモノが綺麗に割れた腹筋にぴたりとくっついて、鈴口からたらたらと透明な蜜を垂らしているのがまたたまらなく愛しい限りで。
「……く…………………ん……っ…………………………ぅ………ッ…………」
半開きになった口からは艶めかしい旋律が漏れる。
閉じられたままの目からはうっすらと涙が滲み、口許には扇情的に一筋の唾液を滴らせていた。
こんなしげ見てたらますます俺のも弾けそうになって、必死でしげを引き寄せた。身体を密着させて唇を重ね、愛しいしげの分身を指で弄くり回して更に煽ってやる。
「あ…!……………や…っ………………やめッ………………」
更に快楽の淵に追い詰められて、しげは半狂乱で身体をひくつかせながらも逃れようと懸命に足掻きだした。
いや、お前この期に及んで往生際悪すぎだわ………。
「……いーから。いいから暴れんなって。」
強く抱き締め、抉るように弱い部分を狙い打ちした。
「……おおい…………ず…ッ…………」
目に涙を一杯溜めて、しげは恨めしげに俺に縋り付いてくる。大きすぎる快感の波にもみくちゃにされながらも、こんな表情を見せるのがお前らしいよ、本当。
「いいから、イけや。おら………ッ………………ほら、イっちまえ! しげ。」
強情っ張りで負けず嫌いな照れ屋のお姫様は、『もういいよ』って言ってやらんと限界まで我慢しちまう。俺がイきそうになるまで必死で堪えて耐えちまうから、これはお決まりのキーワード。
案の定、そのおまじないを囁いてやったら、しげの身体からすうっと力が抜けてくる。
「……いいこだねー、しげ。」
俺も最後の一突きと共にここんとこ溜めに溜めまくっていた濃いヤツを、しげの中にぶちまけていた。
ぐったりしたまま抱きついているしげを再びぎゅっと抱き締めながら、汗と涙でぐしょぐしょの頬や瞼に唇を押し当てて髪を掻き上げる。
久し振りにこの腕の中に居てくれるお姫様は、この上もなく愛らしかった……。
暫く膝の上に乗せたままだった身体をそっとソファの上に移し、横たえさせて俺は床の上に座った。しげは上半身のシャツやパーカーは半分以上たくし上げられ、下はジャージを膝下まで脱がされた状態という全くもっていやらしい格好だ。その上、汗と体液に塗れている。これが稽古着でなかったらちょっとこのまま帰すわけにはいかんくらいの惨状だ。
「なんでお前はそう………我が儘なのよ………」
ぐったりしながらしげが呟いた。
「いやー、信じらんね…………明日動けなかったらお前のせいだ。完っっっ璧、お前のせいだからな。」
ぶつぶつと文句を言っている。
そりゃあまあね。こんな切羽詰まったときに我慢出来んかった俺も悪いとは思うけど、でも仕方がないっちゅーもんでしよ? 俺、ずっと我慢してたんだし。
そう思ったら思わず売り言葉に買い言葉。
「なーにがよ。誰かさんだってちゃんとソノ気になってたべや。」
しげは顔をかーっと赤くしてそっぽを向いたが、まだ気はおさまらないようだ。
「……うっさいわ! お前が見境無くサカるからだろ!?」
「……………見境無くサカってなんかいねえって! 誰でも構わないみたいな言い方すんなや。」
ソファのシートに埋めていた顔を両手で掴んで、ちょっとばかり強引にこっちを向かせる。
「―――だってお前にとっちゃあどうでもいいかもしらんが………俺はいつだってお前が欲しいよ、しげ。」
我ながらくっさい台詞だなあ……俺。
だけどやっぱりこればっかりは本気だから、つい口が滑ってしまったぞ。
しげは上目遣いでこっちをじいっと見つめたまま、それに対しては何も言わなかった。時折バサバサの黒くて艶々した長い睫毛を動かしては、黙ってこっちを見据える。
やや暫くの沈黙の後、やっとしげはぽつりと一言。
「……どうでもいいってことは―――――ないわ、大泉。」
小悪魔がにぃっと口許に小さな笑みを浮かべていた。流石に自分で言った言葉に照れてしまったのか、またもや顔を背けてくれやがる。
いやー、なんだ。こんな可愛い仔猫ちゃんっぷりを発揮してくれちゃうと………俺、また盛りあがっちゃうかも。
「あらぁ…そうなの?」
こちらも口許に不穏な笑みを浮かべながらわざとあっけらかんと言ってみるが、しげはあっちを向いている。
「し〜げちゃん……」
顔を近付けて耳元で囁くと、しげの耳は真っ赤に染まっていた。その耳に唇を突き出してちゅっと音を立てて吸ってやった。
「……お前ぇッ! まだ懲りてねえのか!?」
慌ててこっちを向いてしげは赤い顔で怒鳴りつけてくる。でも、もう遅い。
「いいべや。」
「いくねえッ!! 全っっっ然、いくねえぞ大泉ッ!!」
流石にびびったのか、しげは俺の顔をぴしゃっとひっぱたいて大慌てで身を起こした。でも慌てすぎてソファから上半身が勢い良くズリ落ちる。それでも必死になって這って逃げだそうとしていた。
そんな様子をほんの少し眺めてから、四つん這いになって逃げるしげの後を俺は余裕綽々で追った。
で、易々と捕まえる。腰をひっ掴んで後ろから抱えたままその場に座り込んだ。
大体ジャージを脱がされかけたままの格好で、しかもいくら稽古場が広いからって俺から逃げられる訳もねえっつーのに、相変わらずコイツは諦めが悪いのかただのおバカさんなのか…よく解らん奴だな。
「逃げられるとでも思ってたのかい、ん?」
「はなっ………離せバカこの! 俺はもう帰るんだよ! くっそー、仏心出してお前の稽古になんか付き合うんじゃ無かった!!」
実に往生際が悪いヤツだ。一回やんのも二回もこうなりゃ大して変わらねえだろうに。
暴れるしげの身体を後ろから両手両脚でがっちり固めて、俺は首筋に舌を這わせた。案の定それだけで動きが止まっちゃうのは感じやすいしげならでは。小さな悲鳴をあげてひくひくと震えながら、動けないままでいる。
そんな様子が可愛いからついついこうやって苛めてしまうんやけど。
そしてこうなってしまえば、もういっこも逆らうことも出来ずにどんどんと従順になるのはいつものことだ。
パーカーをたくし上げて、やっと汗が乾き始めたばかりの肌に再びあの手この手で刺激を与えてやる。
掌で弄ぐり、指先で擽りながら耳や首筋を舌先で舐ればあっと言う間に極上の吐息を漏らしてしまう。
拘束するために回していた俺の両腕は、今はもうただただ後ろからしげを撫でくり回している。胸の凝った突起を指の腹で捏ねてはつつき、痛痒さに漏らす声に煽られては更に這い回る。
馬鹿みたいに夢中だよ、俺。
首筋にむしゃぶりつきながら華奢な身体を抱き締めて、弄くり回して。愛撫の一つ一つに感じてくれるお前に気が狂いそうなくらい欲望を滾らせてる。
そろそろ綺麗に割れた腹筋を辿ってその下にも手を伸ばそうと思った矢先、耳元でしげが今までとは違う素っ頓狂な悲鳴をあげた。
「何よしげ………いきなりでかい声出してくれちゃって。」
「は………離して大泉っ…………やだよ俺こんなん……………」
ふと気付は今まで必死で目を閉じていた筈のしげが真っ正面を見て青ざめていた。
俺もしげの視線を追って真っ正面を見てみる。
…………あらぁ。
これは気付かなかった。っちゅーかアホか俺は。目の前のしげに夢中で何にも気付いてなかったけど……ちょっと離れた目の前の壁には大きな鏡。んでその中にはやっぱり見るも無惨な格好のしげと、背後から抱きついて好き勝手なことをやってる俺が思いの外ばっちり映っていた。
そういやあ此処、今までのグッズが入った段ボールやら小道具やら色んな物が乱雑に詰んであってすっかり忘れていたけど、一応稽古場だから壁の一部は鏡張りにしてあったんだっけ。全く気にしてなかったけど。
「……ああ、気になる?」
鏡越しにわざと悪魔の笑顔を浮かべて視線を合わせる。
「ちょ…ちょっと……やめて……………いや、マジでやめてや……………」
半分怯えた目でしげは俺を見てきた。そりゅーゃあもう顔を盛大に赤くして。
「いんや。……………やめてやんない。」
これは好都合とばかりにしげの下半身に手を伸ばし、お目当てのモノに触れるとしげの両腕がそれを阻止しようと腕に絡み付いてくる。だけどこの状態でお前に勝ち目があるわけねーべや、しげ。
「……ば……かっ………やめれ…ッ…………」
止めてくれと言うわりに、しげの息子はちゃんと律儀に勃ちあがっている。
触れるか触れないか程度に指先でなぞり、根本から先端までを何度も行ったり来たりを繰り返しながら鏡の中のしげを見ていた。
流石に顔を背けてしまっているお姫様は、焦れったい愛撫に身体を震わせながらほんのりと甘い吐息を吐いている。
「しげ……前、見れや…………」
耳朶をやんわり噛みながら囁く。でも当然ながらしげは無反応。
「なんで今更恥ずかしいのよ……見てみれって、すげえやらしい格好してっから。」
そっぽを向いた顔が鏡の中できっと唇を噛む。綺麗な切れ長の目もぎゅっと瞑ったままだ。
「そんなに素直じゃないと、ちゃんと触ってやらんぞー……」
滴りだした蜜を指先に少しだけ絡ませてほんの少しだけ弄くってやると、しげはびくっと身体を震わせて息を荒くした。
「これ……なまら垂れてるって。」
くちゅ…と音を立てながら先端の辺りを指先でつつけば、鈴口からまた新にじわりと滴り落ちてくる。爪先をそっとめり込ませて更にそこも弄くってやる。
「……ぁ……ッ……………やめ…っ…………………お願い、大泉ぃ……………」
耐えきれずに懇願の言葉が出てきた。ここまでくればあと一押しってとこだな。
手の中に包み込んでゆっくり扱いてやる。
「あ……………は……………ぁっ…………………ん……ッ………っく……………」
ほんの僅かな愛撫を、しげの身体は敏感に受け止めている。
「ほら前向いて……そーっと目ぇ開けてみれってば。」
何度も繰り返し耳元で囁いているうち、とうとう根負けしたしげが俺の言うとおりに鏡の中の痴態を自分の目で見つめた。今にも泣き出しそうな顔をして、唇をへの時に曲げて屈辱一杯の表情で。
「ほーら、凄いべ…しげ。お前こんなに感じてくれちゃってんのよ、俺に。」
掌はますます滴ってくる蜜でぐっちょぐちょになっている。それをしげは熱に浮かされたような目でぼんやりと見ていた。
このまま俺の手でイかせる様子を見せるのもなかなかにオツなものだとは思うのだが、やはり既に早朝に近い時間帯。そう悠長にもやっていられない。
すっかり無抵抗になったしげを四つん這いにさせ、ついさっきまで俺のモノが収まっていた場所に指を這わせて入り口に指を数本差し入れた。
指は容易に呑み込まれた。そして中からは白い液体が少しずつ糸を引いて滴っては太股を伝っていく。
暫く指先で中を掻き回して、もう一度やんわりと解してから指を引き抜いた。しげの中から俺の指の間にすうっと糸を引く白い液体がなまらいやらしい。
昂ぶっている俺の息子をそこに宛い、ぐっと押し入った。
そこいらの女の子よりも細いのに、筋肉はしっかりとついている。そんな均整のとれた細腰をがっちり抱えながら奥へと突き進めると、中はしっとりと濡れていて思わず溺れそうになる。
腰を使う度にぐちゅぐちゅと淫らな水音が響く。
しげの中はまだ俺の残した液で満たされていた。
「……すっげ…………なまら気持いい………」
夢見心地で呟きながら、俺は目の前の鏡を見る。そこにはこのままで保存して残しておきたい程素晴らしい光景があった。
背後から俺に犯されているしげ。俺がゆっくりと突き上げると、唾液でぬらりと光る赤い唇から切ない喘ぎ声を漏らしては肩を震わせる。
うっすらと閉じられた瞼は黒い睫毛で覆われ、汗と涙の雫により一層艶やかさを増していた。白い肌に張り付いた明るい色の髪の毛も、艶めかしい。
最っ高にいやらしくて、最っっ高に可愛らしい……俺だけしか知らないしげがここに居た。
時折中を緩やかに掻き回しながら、俺は確実に弱いポイントを狙って腰を打ちつける。
いわゆる前立腺と呼ばれる部分を刺激してやると、しげは耐えきれずに息も絶え絶えの善がり声をあげてくれた。
「……ひ……っ…………あ…………ああ…ッ………………は………ぁん…………ッ…………」
なんてイイ声で啼いてくれるんだろう、こいつってば。
蕩けるほどに甘い調べにうっとりしながら、緩急をつけて出し挿れを繰り返した。
「…そ………んなに…………したら…………………………………ちゃう…って…ッ……………」
「何? なした?」
言いたいことは解っているけど、でも意地悪く聞いてみる。しげは涙と汗でぐしょぐしょの顔を鏡に映しながら、もう一度苦しげに唇を動かした。
「………出…………ちゃうよ…………ぉ………」
ひくひくと小さな痙攣を繰り返し、イきそうになるのを堪えている。
「だーめ。まだイかしてやんないって。」
俺は腰に回していた手を前の方に滑らせ、充血して張り詰めたモノをやんわりと掴んだ。ヤツの自慢の相棒は硬く反り返って先端を腹筋にくっつけそうな勢いだ。
「や…………やめ…………止めて………………やだ…ッ……………」
息子の根本をきゅっと握り締めてイかないようにセーブしながらその下にあるものをやわやわと指先で触ってやると、イきたい感覚とイけない感覚が入り乱れて混乱してしまうのか、しげは実に切ない声をあげてくれる。
「何よ………我っが儘だなーお前。ほんとに止めてちゃってもいいかい?」
鏡の中は項垂れたまま力なく首を横に振る。
「んじゃ、いいべや。」
尚も中をピンポイントで刺激してやりながら、背中や首筋に舌を這わせた。その度にしげ仰け反って身体をひくつかせた。
そんな事を繰り返しながら、確実に俺の目の前にも限界の文字がちらついてくる。ねっとり絡み付いてくる内壁に時折屈してしまいそうになりながら、目の前の愛しいお姫様を攻め続けた。
「……ぅ………っ……………あ…………………んぐ…ッ………………」
お互いの肌がぶつかり合う音に混じって、結合部から漏れ聞こえてくるぐちゅぐちゅという粘液の音。切ない程に甘く喘ぐしげの声。荒々しい自分の息遣い。
そのどれもが俺を煽っては感覚を追い立てるから、確実な決定打が欲しくて気が狂いそうになる。
深い泥沼に堕ちていくようなあの快楽が欲しくて、俺は後ろからしげに抱きついて身体をピッタリと密着させながら尚も中を抉り続ける。
でもそれでも飽き足らなくて、一旦身体を離すと華奢なしげの身体を持ち上げるようにして仰向けにさせた。
下半身だけを露わにして稽古場の床に仰向けにされたしげは、うすく開けた唇を唾液で濡らし、虚ろな瞳で俺を見上げている。切れ長で黒目がちの瞳は、いつにも増して艶めかしい色を湛えていた。
たまらずその上に覆い被さり、口付けを繰り返す。激しく情熱的に舌を絡め合い、お互いの腕で身体を抱き締めてはまた唇を重ねた。
暫くの間そんな口付けを堪能し、俺は改めて身体を離して上からしげを見下ろすと、両脚を抱えて大きく開かせた。
膝の裏を抱え、露わになった秘部に再び俺の荒ぶる雄の象徴を突き立ててぐいっと押し込めば、しげの中は俺を再び呑み込んで収縮を繰り返してくれる。
いやらしい水音を響かせ、俺はしげの中に雄を穿ち続ける。何度も何度も正確に例の場所を狙い、しげが悲鳴と嗚咽に身体を震わせる様を舌なめずりしながら見続ける。
もう鏡なんか全く見ちゃいなかった。ただただしげばかり見ていた。
「……たす………け…っ………………おねが……………」
半開きの目から涙を零して哀願する様、なまらいじらしいよお前。
「つらい…って………………大泉ぃ…っ…………も………………たすけて………ッ………………」
俺の二の腕に必死でしがみつき、達しそうになるのを泣きながら堪えている。
どろどろの快楽に溺れてしまえばいい。頭の中が真っ白になるまで。
稽古のことも仕事の事も、今だけは何も彼も全部忘れちまって。
「……ひ…ッ……………ぁ……………ああ…ッ………………は…ッ………………」
俺達の身体の間に挟まれたしげの息子が今にもはち切れんばかりに反り返って、透明な蜜で自身をもぐっしょりと濡らしていた。
何も弄ってやらなくてもここまで感じてくれているしげが、愛しくてたまらない。
上半身をもぴったりと密着させ、俺はラストスパートの体制に入った。しっかりと筋肉のついたしげの肩をがっちりと掴み、耳元に囁きと口付けを繰り返しながら臨界点に向かって激しく下半身を打ち付けては、中を抉るように俺のモノを穿つ。
しげの喘ぎは最早悲鳴だ。
時折俺の名を呼びながら、掠れた悲鳴をあげて善がる。
「………そろそろ、イくか……しげ。」
「……ぅ…………っく………………」
しげは目に一杯涙を浮かべて、辛うじて首を縦に振った。
「おーし………了解ですよー、お姫様。」
狂ったように楔を打ち付け、しげの名を呼んだ。
この世で一番大切で、一番愛しいから。何度も何度も呼んでやるよ。
愛してるって何度も囁いてやる。
だから一緒にイっちまおうや、しげ。
ほら――――――目の前が、真っ白になる。
「…おお…いずみ…ッ……………」
甘い声でそう小さく叫んで、俺にしがみついてきたお前を……俺はきっと一生手放せないな。
強烈な浮遊感と開放感に包まれ、ゆっくりと俺達の身体から力が抜けていく。
立派に役目を果たし終えた俺の雄はビクビクと律動を繰り返しながらしげの中に全てを吐き出し、しげもまた自分の腹の上を同じように濡らしていた。
重なった身体の間が生暖かくてぬるりとした感覚に覆われる事に最高の達成感を得つつ、俺はそのまましげの上に身体を預けて酔いしれていた。
しんと静まり返った舞台の上。
俺は勢い良く刀を振り下ろす。
目の前には……山南敬助。裏切り者の新選組隊士。
刀を振り下ろすことに事にほんの一瞬躊躇したが、俺は彼を斬り捨てる。
全ては誠の為、新選組の為に。
死んでいった芹沢局長の思いを無駄にしないが為に。
―――――だが、この胸の痛みは何だ。
そして最後の出番。
そこは北風が身に染みる海の上だった。
『冷えるなあ…鉄之助。』
俺は精一杯の優しい笑顔でそう語りかける。市村鉄之助に。
鉄之助は何とも可愛らしい笑顔を満面に湛えて、笑っている。
そしてこの俺はもう気付いているのだ。
―――この鉄之助が、以前自分が斬り殺した山南だと言うことに。
心が張り裂けそうになる。
鉄之助はあまりにも一途な目をしているから。
あの時の事を全てぶちまけてしまいたくなる。
………だが、それは決して許されない事。俺はただ笑って薬の存在を仄めかすだけしか出来はしない。
ライトを浴びて舞台に立つ鉄之助。主役のしげが演ずる最後の人物。
そして俺は………土方歳三。新選組の終焉を一身に背負い、いずれ散ってゆく男。
…………いやー、俺……なまら馬鹿だ。
こんな事を考えて役に入り込んでいたら、不覚にも毎度毎度ラストシーンの土方に自分を重ねて、鉄之助や山南にしげを投影しては何度も泣きそうになっちゃってた。
勿論必死で涙を堪えたけど。
我ながら本気で馬鹿だなーと思うわ。
でもさ、きっとそれでいいんだよな……きっと。
しげの中に鉄之助が生きていて、俺の中に土方が居る。
必死で台詞を覚えたにわか仕立ての舞台ではあったけど、俺にはきっとずっと忘れられない。
さあて。
次の舞台も頑張るとすっかー…………。
随分とお待たせしてしまいました。
壱万打を獲得されましたRAJAHサマよりリクエストいただきました
『LOOSER稽古中』のヒトコマで御座います。
本当はもう少し調教なり開発なりといった事も考えていたのですが
切羽詰まった状態の設定にしてしまったので
鏡の前でのえっちくらいになってしまいました。
そのかわり出来るだけ甘い雰囲気には致しましたので
楽しんで頂ければ幸いです。。。
どうでもいいけど真夏の、しかも連日かるく30℃を越している時期に
雪のタイトルって。。。謎過ぎ(笑)