ねえ・・・俺達は、傷つけあうために生まれてきたのかな?
君はどう思ってる?後悔している?俺と会ったこと・・・出会ってしまった事
ああ・・・美しい旋律が聞こえる・・・
また・・泣きながらヴァイオリンを弾いているの?
ねぇ、泣かないで・・・俺はそばに居るよ・・・。
君が居ない天国よりも・・・君と共に堕ちる地獄を・・・俺は選ぶよ・・・。
『罪と罰』 ACT.1
青い空・・・澄み切った空気・・・快晴!
俺が自分のゆりかごを・・・無限の城を捨てたのは・・・そんな日だった。
「無限城を出たのはいいけど・・・どーしょう・・・住む所とか探さないとなぁ」
青いシャツに薄汚れたジーンズ、日を浴びて煌く金の髪。
天野 銀次 18歳
そして、この晴れた日に君と出会ったんだ。
フォン・・・
「!」
風邪に乗り、美しい透明な旋律が聞こえる。
「綺麗な曲・・・」
美しく心に響く曲…心を奪われそうだ。
ズキッ!
「っつ!」
胸が痛い…美しい曲なのに…何だろう?胸が痛い…
胸を抑えたまま、銀次は足を止め顔を上げると、そこには古びた洋館が建っていた。
新宿という町の外れにある洋館は、少々不気味な雰囲気を漂わせている。
「?この中から?」
気付いたら、銀次はその高くそびえ立つ塀の上に飛び乗っていた。
音に惹かれるまま、誰が弾いているのだろうと辺りを見回すと、黒髪の少女が目に入る。
白い肌、細い体、細い顎…胸は見た感じ小さ目だが、絶世の美貌を持っていた。
「・・・・・・」
その美しさに心を奪われ、その動きを目で追う。
何て綺麗な人なんだろう・・・でも・・・
パキン…
「!?」
「あ!」
思わず身を乗り出したせいか、隠れていた木の枝が小さな音を立てて折れた。
音に反応し、少女がこちらを見上げる。
その瞳に…釘付けになる。
何て美しい、パープルアイ・・・。
「ご・・・ごめん…つい…えっと…あ!待って!?」
しどろもどろに言い訳を探していると、少女はまるで風のように室内に入っていってしまった。
「誰なんだろう?あの子?」
確かに…美しい旋律だった…でも…
「泣いていた」
音が…心が泣いていた…なぜ?
「君は・・・誰?」
「こらぁ!!」
「うわぁぁ!」
ドサ…
怒鳴り声にビックリして、足を滑らせ屋敷内に入ってしまう。
盛大に尻を打ち、痛いとさする銀次の前に、華奢な女が立った。
全身から殺気を滲ませながら・・・。
「え・・・と」
「答えなさい!」
「わっと!」
理由を話そうとした瞬間、木刀が振られ思わずそれをヒラリとかわし少女の後ろに立つ。
「危ないなぁ…女の子がそんなの振り回しちゃだめだよ!」
こいつ・・・
「不法侵入してきたのはそっちじゃない!」
「あ〜…そういえばそうだよね?ごめんね」
ヘラヘラとしている癖に…隙が無い!
「本気でいくわよ?」
「へ?」
セリフと同時に女が消えた!
「な?」
次の瞬間、鼻先数センチの所に、彼女の顔が現れる。
「速い!」
「散りな!」
「奇羅々!」
「!?」
木刀が、銀次の頭を砕く寸前で止まる。
「何を騒いでいるんだい?」
「お…お館様…」
凛と背筋を伸ばした老女がこちらに歩み寄ってくる。
白髪が混じった髪、細いからだ、細い腕…深々とかけられたサングラスの奥から感じる強い眼差し。
一見頼りなさそうに見えるが、不思議な威厳のオーラが滲み出ている。
「お婆ちゃん誰?」
銀次が首をかしげると、奇羅々が真っ青な顔をして、木刀を再び突きつけた。
「お館様に向かって!お…お…おば…」
「いいんだよ、奇羅々。よく見れば、年端も行かない子供ではないか?お前、何故この屋敷に入ってきたんだい?」
「あ…音がしたから」
「音?」
「ヴァイオリンの綺麗な音がして、それで・・・つい・・・」
怒られた子供のように首をしょげてしまった銀次に優しく老女は語り掛ける。
「ヴァイオリンの音は、心に響いたかい?」
「…綺麗な音だった…でも…」
「でも?」
「悲しい音だった…」
何故『悲しい』などと思ったのか、自分でもわからなかった。でも、彼女は確かに泣いていたのだ。
「アハハハ!」
「!?」
「お…お館様?」
「フフフ…面白いじゃないか?」
声を立てて笑うと、銀次の顔を覗き込むようにその頬に触れる。
「お前…名前と年は?」
「銀次…天野 銀次…18歳」
「そうかい、では銀次…お前は何をしてるんだい?」
「あ…っと…自立しようと思って…仕事と住む所を探していま…す」
『元々住んでいた場所を出た』などとは何となく言いづらく、言葉を濁しながら告げる。
満足そうな笑みを浮かべ、銀次の頬を放す。
「なら、ここで働けばいい」
「お館様!!」
「おだまり、奇羅々!どうだい?銀次?」
「そ…それは助かるけど…いいんですか?」
「あぁ、こっちがお願いしているのだからね。年もあの子と同じだし…話し相手になってやっておくれ」
「あ!ありがとうございます!…でも、あの子って?」
「紹介するよ…私の孫を」
優しい祖母の顔をする老女に手を引かれ、屋敷内に入っていく銀次を奇羅々は苦虫を潰したような顔で見ていた。
コンコン…
「はい…」
「入るよ?」
連れられて来た部屋に入るとそこにはさっきの少女が椅子に座っていた。
美しい黒髪を、使用人と思える女性にといでもらっている。
先程と違う所と言えば、美しい瞳を隠すようにサングラスをかけている事だ。
「紹介するよ…私の孫の…」
「さっきの女の子!」
その言葉に、一同がシン・・・と静まり返る。
「おばあちゃんのお孫さんってこの子だったんだね!」
嬉しそうに明るい笑顔を向ける銀次に、使用人の女性がクスクスと面白そうに笑っている。
「あ…あれ?」
空気がおかしい事にやっと気付き、頭を掻くと少女がゆっくりと歩み寄ってくる。
「あ…こんにち…」
「誰が女だ!ボケヤロー」
「グハ!」
挨拶をしようとした矢先にボディーに一発強烈なパンチが入る。
その場でうずくまってしまった銀次を指差し、自らの祖母を見上げた。
「オイ!コラ!ババア!何なんだよ!こいつは!?」
「ああ、今日から雇う事になった天野 銀次だ。お前の世話をしてくれるよ」
「なんだと!」
「年もお前と同じだし…いい話し相手だろ?」
「よ…よろしく…」
おずおずと言葉をかけるとギッと睨まれた。
「銀次、この子が私の孫の蛮だ。美堂 蛮」
「蛮…さん?」
「何だよ?」
「あ…呼んだだけ」
「用もなく呼ぶんじゃねー!」
「アイタァ!」
もう一発頭に拳骨をくらい、頭を抱えて再び銀次がうずくまった。
「あらあら…元気な子ですね」
使用人と思われる女性が、そっと銀次を起こす。
「こんにちは、銀次君。私はマリーア…この子の教育係兼お世話係よ。分からない事があったら何でも聞いてね」
「あ、宜しくお願いします。マリーアさん」
「それと、弥勒も紹介しなくてはいけないね」
「弥勒?」
「さっきの少女さ…彼女は弥勒 奇羅々。他にも6人兄弟が居る」
「6人も!うっわーvvにぎやかでいいですね!」
明るい笑顔を向ける銀次に、また一同がシン…と静まり返る。
「?…また…俺何か余計な事言いました?」
「にぎやか…と言われたのは初めてだ」
「!!」
真後ろに気配を感じ、銀次が飛びのく。
「?あんた?」
「夏彦!」
蛮が飛びつくと、夏彦と呼ばれた男は優しい笑顔を返す。
「はじめまして、銀次君。弥勒長兄 弥勒 夏彦と申します」
「あ…はい、天野銀次です」
「先程は、妹が失礼しました」
深々と頭を垂れる夏彦を見て、ブンブン!と銀次が首を振る。
「そんな!俺が勝手に入ってきちゃったのがいけないんですから!」
大慌てで、首と手を同時に振る銀次を見て、一同に笑顔が広がった。
「そう言ってくれると助かります」
夏彦が顔を上げると銀次も笑顔を返した。
「銀次、彼らは蛮の護衛をしてもらっている」
「護衛?」
「あぁ」
「不法侵入者…などからこの屋敷と蛮を守るために、私達は存在している」
夏彦がゆっくりと銀次に歩み寄る。
「君も…注意するといい」
「は…はい」
笑顔は先程の優しい笑顔のまま…でも、銀次には何となく違和感があった。
「さぁさぁ!一通り自己紹介がすんだ所でvvお茶にしましょ〜〜♪♪」
マリーアが右手を上げ、るんるんと提案する。
「あぁ、もうそんな時間かい?お願いするよ、マリーア」
「はい♪夏彦さんも手伝ってくださいます?」
「ええ、喜んで」
祖母と夏彦が部屋を出て行き、俺もと銀次が部屋を出ようとするとマリーアが引き止める。
「君は、手伝わなくていいから、蛮の傍に居てあげて」
「え?でも…」
「いいから、いいから♪」
再び部屋に押し戻され、バタンと後ろ手にドアが閉められる。
広い空間に二人きりになった。
「え…えっとぉ〜…」
銀次が会話に困っていると、蛮は我関せずの状態で椅子に腰掛けた。
「……座れよ」
ずぅっと立っている銀次に半ばイラつきながら蛮が椅子を蹴る。
「あ・・・うん」
椅子に座り、蛮と向き合うとおもむろに胸ポケットから煙草を取り出し火をつける。
あれ?…同い年…とか言ってなかったっけ?
「あの〜…」
「あ?」
「蛮さんはおいくつで?」
「18」
「えぇ!だめですよ!煙草は20歳からですよ!」
慌てて食ってかかる銀次に蛮は不快な瞳を向ける。
「…やめろ」
「え?」
「敬語とその呼び方!『さん』付けなんて気色悪い!蛮でいいぜ」
「え…う〜ん…」
「何だよ?」
「じゃあさ、『蛮ちゃん』って呼んでいい?」
「は?」
「何となく呼び捨てもいけない気がするし…だめかな?」
「別にいいけど・・・よ・・・何だか・・・」
「何だか?」
「そんな風に呼ばれたのは初めてだ」
柔らかく笑う蛮を見て銀次も太陽のように明るい笑みを返す。
その笑顔に一瞬釘付けにされる。
本当に変な奴…でも、何だか温かい…
「これから、よろしくね」
「…あぁ、よろしくな…銀次」
差し出された手をしっかりと握り返した。
「お館様…何故彼を迎え入れたのです?」
紅茶の用意をしながら、マリーアが問う。
「さてね…何故だかは私にもわからんよ…でもね」
「でも?」
「感じたんだよ…何となくだがね…あの子には銀次が必要なのさ」
「銀次君が?」
そう、あの時確かに感じた…
彼に触れた時、彼の真っ直ぐな瞳を見た時・・・
彼こそが、蛮の救いになると…
願わくば、誰もが幸せになれればいい…でも、そんな事はむりだとわかりきっている。
呪われた宿命を持つ大事な可愛い孫…
どうか、あの子の光になっておくれ…呪われた道を照らす道標になってやっておくれ…
銀次…お前なら…きっと…
「用意ができましたvv2人を呼びにいってきますわ」
「あぁ…」
台所を出て行くマリーアを見送り、祖母は一足先にとリビングへと向かう。
柱の影から、夏彦が気配を消して祖母の後姿を見つめていた。
「お館様も何を考えてられるのか…」
面白いと言わんばかりに口元を歪ます。
数奇な運命の糸が絡まりつつある。
解けた先にあるのは天国か?地獄か?
今はまだ幸せな時が過ぎる…
コメント
はい、『罪と罰』のACT.1ですvv初めての連載小説!!しかも!”裏”!初めてはせめて表でできるものがよかったかなとちょい後悔(・・;)(笑)しかも、初パロディだけに何だか設定がごちゃまぜになっちゃった(←おいおい)質問がある方は遠慮無しに言ってくださいね(笑)
さて、次はACT.2ですね(^.^)どんどん暗くなっていくから!そしてエロも…(笑)銀次×蛮サイトなのについに蛮ちゃん総受けになっちゃった(・・;)笑って許してやって下さい。_(._.)_