カツカツカツ・・・ 日が完全に落ちた夜のハーレムに一人の女性が道を歩く。 漆黒の髪をアップにまとめ、同系色のスーツを着こなし、背筋を伸ばして堂々と歩く姿はとても様になっている。 この女性、名をサジータ・ワインバーグと言う。 彼女はハーレム・・・いや、紐育で知らぬ人はいないと言っても過言ではないほどの敏腕弁護士だ。 今日も紐育の大手企業を相手に裁判をしてきたところだ。 もちろん結果はサジータ・ワインバーグ氏側の勝訴。 しかし、相手は紐育の大手企業。 簡単に尻尾を出すことも無く、勝訴してからも不満を上げていたので、きっと控訴してくるだろう。 それを見越してこんな夜更けまで彼女は次回の裁判のために資料集めに走り回っていたのだ。 カツカツカツ・・・ 静まり返ったハーレムの町にヒールの高い足音が響く。 彼女は舌打ちをした。 幼少のころからここで育った彼女にとって、ハーレムはもはや家と言っても良い。 しかし、それは明るい時間帯や、バーやケンタウロスの仲間が賑わっている時間の話だ。 こんなにハーレムが寝静まった時間帯での女の一人歩きはいくら元ケンタウロスのリーダーだとしても危険だ。 それを彼女は知っている。 彼女は自分の法律事務所兼部屋に向かい早歩きで急ぐ。 カツカツカツ・・・ ペタペタペタ・・・ 「・・・」 カツカツカツ・・・ ペタペタペタ・・・ 「(くそっ)」 何者かが自分の後ろを歩いてくる。 振り切ろうと歩くペースを速めても相手も速度を速め、一向に振り切れない。 サジータはいつの間にか走っていた。 カッカッカッカ・・・ タッタッタッタ・・・ けれども相手も同じ速度でサジータの後を追う。 荒い息が背後から聞こえる。 どのくらいこの夜道を走っただろう。 彼女は人工的な光が少ないこの道を走りながら、街灯をもっと増やさなければなどと見当違いなコトを考える。 息はあがり、足はガクガク、シャツは汗を吸って心もち重たく感じた。 しかし背後に迫る荒い息使いの主との距離は縮まるばかり。 とうとうサジータが足を止めたとき・・・ 「クゥーン・・・」 寂しそうな声が耳に響いた。 振り返ったサジータが見たものは、なんと小さな白い犬だった。 犬はサジータに近寄り、体を摺り寄せる。 「わわわ・・・っ」 サジータに疲れとは違う別の汗が吹き出る。 冷や汗だ。 「キャン!」 「うわー!!くるなー!!!」 愛くるしい顔をする犬を置き去りに、彼女は再び走り出した。 いままで走り回って疲れていたのが嘘のように。 それを見た犬は構ってくれているのかと思い、彼女の後を再び追いかける。 その後、紐育で知らぬ人はいないと過言ではないほど有名なサジータ・ワインバーグとやけに人なれしている白い犬の深夜の追いかけっこは朝まで続いたという。 END |
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