ゆらゆらと空に上がり、夜空に大輪咲かす打ち上げ花火。

ぼくの想いもあの夜空に打ち上げて。


Star mine T


「!!」
最初、ソレを見たときぼくは自分の目を疑った。
シアターからの帰り、夜道を一人で歩いていると、五番街の前でサニーさんがいるのを見たからだ。
いや、サニーさんだけだったら、きっとそんなに驚いたりはしなかった。
むしろ挨拶をしにかけよったかもしれない。
けれど、それが出来なかったのは・・・
サニーさんがとても綺麗な女性をエスコートしていたからだ。
腰までサラサラに伸びたブロンドで、煌びやかなドレスを着た女性。
2人の間は親密そうで、そのままぼくに気づかず、ネオン輝く五番街へと姿を消した。

どうして今まで気づかなかったんだろう。
サニーさんは男で、ぼくも男で。
サニーさんはあの若さでセントラルパークに豪邸を持つほどの大金持ちで、頭もきれて、かっこよくて、人を喜ばすことが大好きで。
そんなサニーさんがもてないわけないじゃないか。
どうして今まで気づかなかったんだろう。
サニーさんがぼくを抱くのは、ただの気まぐれだったんだってことに・・・。

「ただいまー・・・って、誰もいないんだけど」
あのままぐるぐると色々なことを考えながらやっと着いたアパートの部屋を開ける。
玄関の向こうは真っ暗で、ぼくの声とドアの音が小さく響く。
「おかえりー、おそかったじゃないか」
「は?!」
パチンと部屋の電気をつけたと同時に聞きなれた声が耳に入る。
ぼくは驚いて声が聞こえた方に顔を向けると、ベッドに彼が笑顔で座っていた。
それも片手にはワイングラスを持って。

「・・・あの」
「んー?あ、勝手にお邪魔させてもらったよ。このワインはボクの手土産。って、大河君はまだお酒飲めないんだったね。」
ぼくの心情を知ってか知らずか、サニーさんはぺらぺらと話を進め、足元にあった紙袋からワインやらジュースやらおつまみを取り出した。
「まぁ、ボクが言うのもなんだけどさ、とりあえず座ったら?」
「・・・はあ。」
ぼくは思わず上司の目の前でため息をついてしまった。
サニーさんに促されて、ぼくはサニーさんの隣に腰をかけ、ジュースをもらう。
あの五番街で一緒にいた女性とはどうしたのだろう。
こんなにすぐに別れてぼくのアパートにいるってコトはただのお客さんだったのかな。
それともサニーさんの大切な人なのかな。
あんなに楽しそうに歩いていたし。
そしたらぼくは・・・

「あのっ・・・五番街で一緒にいたひとは・・・」

またぐるぐると嫌なことを考えてしまって、ぼくはうつむきながらサニーさんに聞いた。
きっと今、酷い顔をしている。

「・・・そっかー、見られちゃったかー。」
「っ!やっぱり・・・」

あの女性はサニーさんにとって大切な人で、ぼくはもういらないってこと?

「うん、それなんだけどね」
「・・・聞きたくないです。そんな・・・サニーさんの大切な人のことなんて」

「は?」

「だって、サニーさん、大切な人がいるんでしょう?だからぼくはいらないんですよね?!そんなことっ!聞きたくないっ・・・」
「ちょ、ちょっとまってよ、大河君、キミ、何か誤解してないかい?」
「誤解ってなんですかっ!」
「ボクとあの人とのことだよ。大河君と付き合っているのに、なんで他の人と付き合うのさ」
「え?だって・・・」
サニーさんの以外な言葉に、ぼくはぽかんとしてしまう。
一方のサニーさんは・・・・・・なんというか、呆れているようだった。
「えーっと・・・」
「で?キミはボクが浮気をしているんじゃないかと思ったわけだ?」
「う、浮気って・・・そんな」
にこりと笑顔でサニーさんが問う。
表面上では笑顔だけど、内心、すごく怒っているのが分かった。
「キミからみたボクはそんなに軽い男に見えるんだね」
「うぅ・・・ごめんなさい!」

トスンッ

いつのまにかぼくはサニーさんに押し倒されて、ベッドに仰向けになっていた。
目の前には少し怒ったサニーさんが・・・。

「これはちょっとお仕置きが必要だよね、大河君。」

静かにワイングラスを置きながら、ぼくに馬乗りになった。



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