今日からテスト期間だ。
いつものように、はホットコーヒーを買ってきてから教室に入った。
何せ明日の科目はどうしようもなく嫌いな数学。嫌いだ何だと文句を言っていられるほど、三年生は甘くない。
「やだなあ……ったく、明日がなくなっちゃえばいいのにさ!」
特に成績が悪いわけでもない。
テスト勉強をしないわけでもない。
なのに、どうしてか、数学だけはダメなのだ。
「数学なんてなくなっちゃえー!」
一人でぷんぷんしながら、はコーヒー缶を開けようと、爪を立てる。
―――すると。
「…大声を立てるな、みっともない」
「ん?」
声の主に振り返ると、そこには校内でも名高い手塚国光が立っていた。
質問の帰りだろうか、小脇に参考書を抱えている。
「何だあ、国光か。勉強しなくてもいい点取れるのに、ホント相変わらず努力家だね〜」
「当たり前のことをしているだけだ」
の言葉に、手塚は相変わらず素っ気無く切り返す。
一年のときから同じクラスだったには、それが彼の照れ隠しだということが、何となく分かっていた。
の隣の自分の席に座ると、彼は真面目に参考書とノートを開き、勉強に没頭しだした。
それに刺激されてか、もぶつくさ言うのをやめ、教科書をめくる。
…………。
……………。
「………すう…………」
「…?」
流れていた沈黙に不似合いな音が聞こえ、手塚はふと顔をあげた。
誰も居ない。
そして隣を見て―――原因を知った。
開いたままの教科書に顔を落として、早くもはダウン。気持ち良さそうに眠っている。
端正な彼の顔に、呆れたような表情が浮かんだ。
「全く…」
根気がなさ過ぎる。しかも、どうやったらこの短時間で眠れるんだ?
理解できないことばかりが、彼の頭を駆け巡る。
しかし。
「んんー……」
「………………」
幸せそうなその顔を見ていたら、何もかもが気にならなくなった。
溜息混じりに立ち上がると、手塚は静かに自分のコートを持ってきて、そっとの肩にかけた。
「数学は、後で俺がみっちりしごいてやるからな」
聞こえないように呟いて、の頬にかかる髪を手で直し、元のように教科書に目を落とす。
しかし、その口元には、誰にも見せたことのない微笑が浮かんでいた。
…ほんっとうに何なんだろうね!!(汗)
二人は出来てんだか出来てないんだか(←多分出来てない)
部長の恋愛は不器用極まりないかと。
主人公に愛プッシュなのに気づいてもらえず三年間とか(笑)