「…俺が、これを付けるのか?」 共に監獄島の最深部を目指そうとしたクルースニクに、ジュードが差し出したもの。 彼は、それを身に付ける事に少々躊躇いを覚えていた。 そんな彼の心中を知ってか知らずか、ジュードは更に彼に促す。 「そうだよ。さあ、早くっ。先を急がなくっちゃッ!」 「先を急ぐだけなら…何故こんなものを身に付ける必要がある?」 「だって、これ付けておいたら大概の魔獣は一発でしょ?」 「………」 そう、「差し出されたもの」とはドッグチェーン。 先程合体攻撃を習得した彼らにとって、非常に有利に戦闘を進められる便利なバッジだった。 しかし、ものがものだけにクルースニクはこれを差し出したジュードの意図を邪推せずにはいられない。 (これは新手の嫌がらせか…?) ブリューナクという組織の"犬"であった、自分に対しての。 思わずそんな事を考えてしまったクルースニクだが、目の前の彼からはそんな嫌味さは感じられない。 考え過ぎか…とは思うものの、彼は少々神経質になっていた。 「これならば、別にお前が身に付けてもいい筈だろう…」 「ええッ、ダメだよッ!」 「何故?」 別に効果は変わらない筈だろう…とクルースニクがジト目で見ると、 ジュードはもっともらしい反論を持ち出して来た。 「だって、僕ローレルクラウンとキャットハンドを付けとかなくちゃ…」 「………」 2人だけの道中、回復は主に素早いジュードがアイテムで行っていた。 またクルースニクに比べて攻撃力の劣るジュードが、攻撃回数をアップさせるバッジを装備する事は納得出来る。 納得出来るのだが…。 「お前…俺に押し付けてないか?」 ドキッ。 クルースニクに図星を指されて、ジュードは肩を強張らせた。 (だって、何か嫌なんだもん…大した理由は無いんだけどさ…) 犬小屋に繋がれた犬の意匠。 何かに束縛されている事を象徴するようで、ジュードはこのバッジがあまり好きでは無かった。 黙り込んでしまったジュードに小さく溜め息を吐いて、クルースニクはそのバッジを胸元に付ける。 「どうした?先を急ぐぞ…」 「クルースニク…?あ、待ってよッ!」 ジュードがクルースニクを見遣ると、彼は既に背中を向けて歩き出していた。 (まぁ、ここは俺から折れてやってもいいか…) 先程機を逸して、手を繋ぐ事が出来なかった代わりに。 これは不器用な彼が見せた、ささやかな歩み寄りの証だった。 ドッグチェーンの押し付け合い。こんな時位は「大人」な所を見せて下さい、兄さん。 …ところで、皆さんはどっちに付けました? (付けてる事前提かよ!や、でもみんなやる、よね…?) 私はストーリー中は兄さん、そこだけやり直してみた時はジュードに付けてました。 バッジだからいいものの、本物だったら怪しすぎ…だからアクセサリー扱いじゃなかったのかッ!?(考え過ぎ)