「おはよッ、クルースニクッ!」 そう言って俺のベッドにダイブして来たのは、俺の恋人(…だよな?確認はしていないが)の ジュード・マーヴェリックだった。 「ねえねえいい天気だよ!たまにはさ…ハリムに行かない?」 にっこりと笑って爆弾を投下するジュードに、俺は意地でも起きるものかと心に決める。 …冗談ではない、あんな恐妹―そんな言葉があるのかは知らないが―がいる村へなど、 誰が行くものか。
(ジュード…俺とユウリィが今どんな状況なのか、お前は分からないのか…?) 目のコイツを巡って対立している俺達。あの可愛い妹は一体どこへ行ってしまったのか…。 エ・テメン・アン・キでの一件を聞いたクルースニクは、 「いっそあのユウリィも偽者なんじゃないか…?」という都合の良い疑惑に逃れようとしたが、 現実とは残酷なもので。 度々家に押しかける彼女と、彼女の思惑も知らずに喜んで家に上げてしまうジュードの両方に、 彼は眩暈を覚えていた。 (天然というのは、時に非常に厄介なものだな…) 自分もそこが可愛いと思っているから、尚更タチが悪い。 毛布を引っ被って眠っている(フリをしている)クルースニクに焦れたのか、 ジュードはベッドに上ってそっと毛布を捲った。 ちゅっ。 「な、な、な、な…」 「あ、起きた?おはよう、クルースニクッ!おはようのちゅーだよっ」 (おいおいおいおい…。) ジュードの方からキスされるのは嬉しいけれど、 一体どこでこんな事を知ったのか彼は問い詰めずにはいられない。 「ジュード、そんなの一体どこで覚えて来たんだ…」 「え?アルノーがさ、こうしたらクルースニクが喜ぶぞって。 アルノーも?って聞いたら、そうだって言うから僕…」 「もういい、もういいから言うな…」 その後どんな展開になったか容易に想像がついてしまった。 思わぬ伏兵に、彼はまた頭を抱える。 (…というか、俺は本当に「恋人」なのだろうか。分からない…分からないな…。 しかしあの男、ジュードの兄貴分かと思って放置しておいたのがマズかったか…?) 即行でアルノーの名前をブラックリストに入れて、彼は起き上がった。 「あ、出かけるの?クルースニク」 「……ハリムはまた今度だ。今日は森へ行かないか?」 途端に嬉しそうな顔をするジュードに、我ながら愚かだな…とは思っても、 彼のこの表情には勝てない。 しかし、しっかりと行き先を変更する事だけは忘れないクルースニクだった。