「ハイ、カットォ!今の表情良いねぇ」
「そうっすか?でも違和感ねぇかなぁ?」
「三蔵、如何でした?」
「……一寸した違和感込で合格。兄弟でも
微妙に違いは出るな」
「でもよく似てるよなー。ま、双子だけど
よ」
「まーね。何か思いっきり兄貴に巻き込ま
れた気がする」
「まあまあ、ダッシュ、お茶でも飲みませ
んか?」
「清さんのお茶?…いい、遠慮する」
「言ってくれますねぇ」
「あの時で味占めちゃったんだよね、俺」
ウーロン茶のグラスを傾けながら話すのは
孫家の兄弟の内双子の弟・通称ダッシュ。彼
がそもそもこの世界に入ったのは、先に「幻
想魔伝 最遊記」に出演していた長兄・通称
G1に引きずり込まれてだった。
「お兄さんの二役でも良かったような気が
するんだけど?」
ショートサン出版のインタヴュアー・真野
仁が問い掛ける。そもそも彼が抱いた些細な
疑問を起点として今日のインタヴューは成立
している。即ち、冒頭で再現してみたのは猪
八戒の過去を清一色に攻撃される一連の話の
中の場面、偽悟空が三蔵の銃で撃たれるシー
ン撮影部分であるが、その撃たれた場所とい
うのが彼の抱いた疑問だった。
「まあ、そう思うでしょ?普通。でもあの
時兄貴結構体力落ちてたし、マジで骨折して
たんですよ。で、俺、その日偶々予備校の授
業無かったんで付き添いがてら現場に行って
…したらいきなりですもん。清さんが演技指
導熱心にしてくれて、演技もなるべく少なめ
に変えてくれたから助かったけど」
「あの役の基本イメージはやっぱG2?」
「ちゅーか、元々こいつに来た話だったん
ですけどね、この役」
話に滑り込んできたのはメインの悟空役を
遣っていた長兄G1。彼の手の中にはコーラ
が納まっている。勿論その傍には末弟のG2
も居る。オレンジジュースのグラスを持って。
「そもそも台本の基本的な姿勢というのが
少年の成長ものだったんですよ。原作は多分
視点が少し違うでしょうけど。其れを元にす
ると…こいつしか残らなかったんですね」
G1もダッシュも、普段は理性的に喋る。
「只、あの面々の中に明らかにお子様が混
じってるのもおかしいってんで、先ず俺に声
が掛かったんですよ。彼女にも説得されちま
ったし」
「彼女って?」
「……*--*…李厘」
「え?マジでつきあってんの?」
「…あいつ、結構地のまんまだから」
「こないだ李厘ねーちゃんとバトルゲー遣
ってさー、すんげー面白かった」
やっと割り込む隙を見つけて、楽しそうに
会話に混ざるG2。
「もう食ったんか?もう一杯か?」
「まだ食っていいの?」
もう瞳がきらきら輝いている(笑)
「真野さん、良いですよね?」
「あ、ああ…」
(経費で落ちるかな…点心300点なんて
…まあ、いいか…)
「李厘ちゃんとこも兄妹出演だよね」
「紅孩児も巻き込まれですね。まあ、あい
つのシスコンも実際まんまだから。マザコン
かどうかは知りませんけど(苦笑)だから付
き合うのって結構勇気要りましたよー!」
「2人共通のダチだったから身代わり作戦
も出来ないし。入れ代わり経験はあの時が実
は初めてでした」
「でもそれ以降結構遣ったよな?」
「主に俺が暴れ役(爆)」
これはダッシュの台詞。
「最初がもう完璧汚れでしたから(爆)吹
っ切っちゃったんですよ。ストレス解消にも
なるし」
「アレは結局如何した訳?」
「撃たれたのは其れこそ額のど真ん中、金
鈷の繋ぎ目なんですよ。まあ、勿論演技だけ
ですけどね」
「撃たれた瞬間はダミーとの合成映像で、
倒れてゆくのはこいつの演技です。あん時何
回NG出したっけ?お前」
「あの倒れだけで10回駄目出しされたな
ー。でも兄貴は兄貴で大変だったろ?」
「あん時だけは俺がメインで良かったと思
った。G2になんかあったらなぁ」
「俺等ブラコンですから」
「真性ブラコン。G2に彼女できたらもう
大変だと自分で思いますもん」
「彼女、居るよ」
「何?」(ユニゾン)
「うっそだよ〜ん」
はらほろひれはれはらほろひれはれ。
思い切り弟に振り回される兄2人であった。
(2001.4.16)