「…ちゅー訳で、物語を暫く進行して戴きたい。
何か質問は?ご一同」
この振りを待って居たかの様に右手が三本上がる。
「悟能が適役だとは判るんですけど…何故私が男
装しなければいけないんでしょう。おまけに悟能と
…役柄上とは言え十歳齢の差が有るなんて」
「花喃さん、あんたはまだ良い。…何故この俺が
事も有ろうに女装せにゃならんのだ?必然性が何処
にある?」
坊主とお姉さまにすれば矢張り理不尽だろうと思
う。
「俺も聞きたいんだけど」
G1の挙手に皆耳を欹てる。こう言う時の彼の質
問というのは、大抵皮肉っぽかったから。
「リト小父の役回りが胡散臭い御隠居だってのは
良いんだけど、何で清さんが八戒の親代わりな訳?」
「それは…」
「それは?」
「…つまり…」
「つまり?」
演出担当の胤瓜汎太の言葉に其の場一同の耳目は
集まった。
そして、大きく深呼吸をして一言。
「僕の趣味ですが、何か?」
胤瓜の頭上に金盥が降り注いだのは、言うまでも
無い。
「幻想魔伝」の放映が(とりあえず主要局で)終
了して一ヶ月。一応秋に次回シリーズ放映が決まっ
ている、とは言うものの、はっきり言ってメンバー
は暇を持て余していた。何しろ退屈だったら死んで
しまうだろうと言う程動き回っていた連中である。
そんな中での悪魔の誘惑。
短編ミステリをベースにした学園青春風四時間ド
ラマ…二時間ではない。二時間ずつの前編後編構成
だ…をこのメンバーで撮影したいと言う話が運悪く
舞い込んだ。
「面白そうじゃん」
最初に乗ったのはG1。見かけに因らず暇有らば
ミステリ三昧。オフの時に眼鏡を掛けているのも、
実は其の所為だったりする。
「ま、演じるってのもな」
引き摺られたのは悟浄。G1とのコンビは「ミス
テリおたく」として一部では大変有名だった。噂に
よると系列局のサスペンスドラマの監修をしたとか
しないとか。この二人のお陰で紅孩児が某妖怪作家
に嵌ってしまい、黒ずくめの服装になってしまった
と言う傍迷惑な逸話も残っている(因みに李厘はと
いうと…三人組の妖怪小説に嵌ったらしい)。
「ま、退屈凌ぎに付き合ってやるか」
「そうですね」
……と、主役連が腰を上げたばっかりに、こう言
う顛末になった訳である。
「似合うじゃないですか、三蔵」
「涼しくて、ウザイ!もう少し短くならんのか!
このスカート丈は!」
「……別の意味でやばいから勘弁してくれ!もう
少し髪、黒い方が良いか?」
「悟浄、ネクタイもう少し緩めとけよ」
ブレザー姿も初々しい主役連を遠めに見ながら、
一応の脇役連は清氏の淹れたお茶で和んでいた。
「花喃さん…又旨く化けたってェか…」
「この前髪ボサボサと猫背って言う設定は助かり
ますね。独角さんこそ、髭が似合ってません?」
「あいつにも言われましたよ。良いのやら悪いの
やら」
「リトさんもまた随分怪しげな御隠居で」
「清さんには言われたくないですな。おや?目の
下に隈が」
「下町言葉を覚えるのにほぼ徹夜ですよ。…危う
く舌を噛んでしまう所でした」
そして、無常にも撮影開始時間は迫るのであった。
(2001.6.24)
(2001.7.1加筆修正)