混乱する日乗

 「其れ」を場内の廊下で発見した時、八百鼡は心底
ギョッとした。見慣れていないから驚いたのではない。
否が応でも見慣れたものだから余計にギョッとしたの
だ。
 しかも落ちていた其れを手にした兵士が徹底した検
分をしそうであったので、慌てて我に帰って歩み寄る。
 「あ、八百鼡様!」
 「お役目、ご苦労様です。時に、其の手にしている
物は?」
 「今この場にて拾いましたが…お心当たりでも?」
 「ええ…まァ…」
 声をかけたはいいが、どう言ってこの場を切り抜け
ようか。其処まで考えるのを忘れていた。問題になっ
ている物体が物体だけに、まさか本当の事は言えない
だろうし…。
 「あ、此処に落としてたんだ!」
 「ひ、姫様?」
 いきなりの登場に畏まる兵士に対し『苦しゅうない
って』と声をかけながら李厘が其の物体を自分の手に
移動させる。
 「八百鼡ちゃんにも探して貰ってたんだぁ…。アリ
ガトね」
 「姫様の持ち物でしたか。可愛らしいご趣味で…」
 確かに兵士の納得するのも判る。其の物体…表紙に
二頭身の擬人化した子猫の描かれた日記帳は、彼の妹
もまた愛用している品であった。
 「エーと、あんた確か妹さん、いるんだったね?」
 「ご存知でしたか」
 「いつもオイラを気に掛けてくれるもん。後でお礼
の品、渡すからさ、一度妹さんと会っといでよ」
 「宜しいんですか?こんな時に?」
 「いーのいーの。ほんの気持ちだし」
 感動に打ち震えている兵士をその場に残し、二人は
静々と…やがて駆け足でその場を立ち去った。
 「…助かりましたわ、李厘様」
 「其れ、お兄ちゃんのでしょ?八百鼡ちゃん」
 「…ハイ」
 だから言えなかったのだ。人もあろうにあの紅孩児
がこんな日記帳を持っているという事実は…まあ、持
つのは自由だが、所謂『士気に関わる』という奴だ。
 「羅刹女様から最初に戴いたのが同じ物だったそう
です。それからずっと同じ物を買い足されているとか」
 「…良いね、其れ」
 寂しげに、ポツリ。
 「オイラ、母上とはそんな思い出無いや」
 「李厘様…」
 寂しさがなまじ判るだけに、何も言えなくなる。

 「お気を付けになって下さいね?」
 「…済まんな、八百鼡」
 「独角、貴方もです。…李厘様のものという申し開
きはもう出来ませんし」
 「と言っても…一応俺にしてもこれは唯一の思い出
の品だしなァ…」
 顎を掻きながら愛しげに撫でたものは…何故か擬人
化された三頭身の鼠の絵の付いた鍵付き日記帳だった
りする。
 因みに八百鼡サンはどんな日記帳なのかって?彼女
はぐっと渋く巻物形式である。但し、最初は拡げる手
間は掛かんないが最後の方を書く時は…偉いこっちゃ
で在るが。

 「悟浄、いい加減に電気、消してください」
 「すまねぇ、八戒。後一行書き終わるまで!」
 其の手の中には確りと其の兄とお揃いの日記帳が抱
え込まれていた。
 どっと払い。
                 (2001.1.12)
《コメント》
…とうとうお馬鹿路線をここでもやってしまった。
王子様の持っていたのは「ハローキティ」で御座います。
沙兄弟は「ミッキーマウス」(爆)
取り合わせを考えた時、思わず吹き出してしまったけど…
つい筆が滑ったんですぅ〜;-;

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