「止めなさい!ジープ」
小さく細い舌が、八戒の耳朶をなぞってゆく。
快感の在り処を捜そうとでもする様に(事実耳
朶は八戒の性感帯なのだが)、そして、体の奥か
ら熱を引き出そうとする様に。
いつもとじゃれ付き様が違うと思っていたら小
さな舌に翻弄されていた。受身の快楽は悟浄との
生活で会得したもの。寧ろ受け入れ易い快楽だっ
たから苦ではない。問題は、其れを一方的に押し
付けられたくない、という八戒の「男」としての部
分だ。
其れは悟浄との関係にしても同じ。だからこそ
八戒もまた攻手の快楽を味わう事となった訳だ。
お互いの同意に基づいて。
デモ、コンナノハ違ウ!
そして八戒はふと冷静になって気付く。この劣
情を物陰から見つめる視線の在る事に。そして、
静かに呼びかける。
「悟空。いつもの仕返しのつもりですか?」
「違う。そんなんじゃ、無い」
戸惑う少年。
「でも僕は事実弄ばれていました。何時も弄ば
れている貴方にしてみたら…」
「違うっつってんだろ!」
悲鳴の様にも聞こえる叫び。
「只…ただ…八戒の感じる顔が欲しかったんだ。
何時も俺ばっか気持ち良くて、八戒は普段通り。
だからジープに不意をついて貰ったけど…俺の欲
しかったのは、こんなんじゃ…」
そして、泣き崩れる。
「不安、だったんですね」
優しく肩を抱く。彼の体を思うばかりに却って
不安がらせてしまった。彼の純潔が捧げられるの
は自分では無くて…。
「でも、其の為には三蔵にあげるのは『2度目』
になるかも知れません。それでも良いんですね?」
押し付けられた熱さが、答えだった。
「はっかい…はっか…いぃ…」
幼さの残る体に刻まれてゆく刻印。其れは単な
る所有の象徴ではなく、慈愛の象徴でもある。
「そう、声は我慢しないで…」
何時しか八戒の体も熱を帯びる。其の熱の塊を
悟空に押し付けると、熱を帯びた、でも或る決心
を帯びた眼差しが返って来る。
「やるよ。八戒なら、いーや」
「良いんですか、本当に?」
「俺だってこれが普通じゃ無いって知ってるも
ん。それで三蔵が嫌がったら、ずっと相手してく
れる?」
「その時になったらね」
でも、二人が結ばれたのは其の夜限りとなった。
『其れで良いんですよ。僕には…』
水を熱くさせるのは赤い炎、と相場が決まってい
るのだし。
(2000.12.20)