八戒に、不意に呼び止められた。
「どしたの?」
「ドサクサ紛れとは言え…ジープ、許してやって下さいね」
あ、あの春巻きか。
「いーっていーって。ジープなら腹立てたって仕方ね―もん」
「でも、愉しみにしてたでしょ?実は」
うっ…図星。だってさー、すっげー美味かったもん。
他のもんなら仕様がね―つって悟浄に譲っただろ―けどさー。
第一さ、俺と悟浄の喧嘩って、照れ隠しなんだよな。悟浄って、
こっちが甘えると調子に乗るから、だから喧嘩すんの。
「別口で埋め合わせしたいんですけどね」
「?」
「悟浄には内緒でね。今夜、僕の部屋で」
「…え?…」
其れって…別口でって…えーっ?
で、俺ってば結局来てるのな、八戒の部屋に。其れも夜中。
灯りは月の光だけ。なんか懐かしい、満月の光。
俺…何かこの光に
思い出が在った様な…?
「悟空?」
「なんでもね。まさか身体で埋め合わせ、なんて…?」
「嫌いじゃないでしょ?若いんだし」
「でも、其れって浮気じゃん。余計悟浄に…」
「ああ、相手は僕じゃ無いですから」
へ?
やや膨らみ加減のシーツを勢いよく引っ張る八戒。
その下に居たのは…。
「誰?」
「この姿を見たのは、悟空、初めてでしたよね。自分のした
事は、自分で後始末して貰おうと思って」
「ジープ、…なの?」
こっくりと頷いたのは、真っ白な肌とお揃いの髪の、俺より
少しちっちゃい感じの男の子だった。瞳は、本当に燃える様な赤。
其の肌に所々浮かび上がる、鱗…下着も何もつけてね―じゃんか。
「後は二人でどうぞ。僕は別口の方を慰めてきましょう」
其れにしてはうきうきした足取りで、悟浄の部屋に向かってね?
「え…と…」
どうしよう、俺…自分からするのって、考えたら初めて
なんだよな。教えて貰ったけど、あん時は悟浄がリードして
くれたし…第一、ジープが初めてだったらどうすんだよ!
『ダイジョウブ』
あ、頭の中に響く声。
「ジープ?」
『ウン。ボクカラ八戒ニ頼ンダカラ』
「俺?」
『スキダヨ』
唇がぶつかって…後はもう、なる様になれ!って感じ。もう、
確りフルコース。
「熱いよなー、ジープの中って」
『クス』
「其の姿って、妖術?」
『満月ノ光ヲ浴ビルト、コウナルンダ』
其の顔を見て…又何か思い出しそうになる…満月とは反対の…
重くて嫌な記憶…。何故だろ?ジープは俺達の仲間なのに。
「ねぇ、もう1回、いい?」
嫌な思いを消したくて、俺はジープにねだった。
(2001.2.2)