束の間

 ふとした拍子に思い出す何気ない仕草が、時々足止めを
喰らわせる。
 護りきれなかった悔しさと、包み込まれていた暖かさが
ない交ぜになって、俺を追憶へと誘うのだ。
 連中にそんな顔を見られたくない、な。

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 「大分、上達したようですね」
 一仕事終えて僧衣を整えようとしていた俺に、静かに声 
を掛ける。
 「きっと、お師匠様の教え方がいいんでしょう?」
 意地悪く返した、つもりだったが其れはお師匠様の方が
上手。
 「役割からすれば、本能が手助けをしているのは貴方の
方ですよ。私は其れを受け入れるだけ」
 いつもと変わらぬ飄々と優しい口調で言われては、こっ
ちはぐうの音も出ない。
 最初もそうだった。
 其の時はまだお師匠様と布団を並べて寝ていた。
 そして夜中、体だけが本能に目覚め、自らを慰めようと
していた俺の目の前で、お師匠様は体を開いたのだ。
 「お師匠様?」
 「其の苦しみからは人間一生逃れられませんよ。逃れた
といっている人も、目を逸らしているだけですから」
 体は雄弁に其れを裏付ける。
 だから…抱こうと言うのか?
 失望しかけた俺にいつもと変わらぬ口調で微笑みかける。
 「建前ならば還俗させた上で事に及ばせるべきなのでし
ょうね」
 言いながら後の双丘を片手で押し開く。
 「私の体でよいのならば、まず貪ってみなさい。それで
鎮まるかどうかは判りませんが、私にもこれ以外に方法が
見あたらないのですよ」   
 説法を求められた時の、困った様なくすぐったい様な微
笑。
 肉欲ではない何かに誘われて、お師匠様と体を重ねた。
        
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 お師匠様が去って以来、誰とも肌を重ねる事は無かった。
 重ねる気が第一起こらなかったし、喪うものならば手元
に繋ぎ止めるような真似は御免だ、と思った事もある。
 あの行為で俺がお師匠様に教わったのは単純な事。
 小賢しい謀なぞ、無駄だと言う事だ。
                           
 「欲の晴らし合いだと、思っておきなさい」
 珍しく抱いてしまった事への背徳感に苛まれる俺に掛か
った天の声。
 「賢しら顔で女人の許に通っているのを隠し果せている
と思っている連中よりは良い心掛けですが、却って修行の
妨げになるよりはいいでしょう」
 「いいんですかお師匠様。又肩身が狭くなりますよ?」
 「貴方の芽を摘むよりはいいでしょう」 
 「…参りました」

 本当に護りたい存在だった。だから、喪った後の穴は、
とても一人じゃ埋まらない。
 でも、此処で留まっているとしたら…
 「其れは、貴方の望む事ではないでしょうね?光明三蔵様」

 さあ、生きてみようか。人間として。

                    (2000.12.10)
《コメント》
いきなりの第1作パロが裏もので其れも江流×光明…
自分の脳の構造をこの目でみたくなりました(苦笑)
葡萄瓜には光明様というお方は三蔵よりも性質が悪く
見えるのですね。其れこそ模範生が平然とアウトロー
行為をして、周囲が見て見ぬ振りをする、みたいな。
締め括り、少し気に掛かります。精進します。
              

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