紫の向こう

 相手が一息ついたのを見計らって強請ってみる。
 眼の前で、掌をひらひら。
 「何ですか?」
 「手持ちが切れた。1本寄越せ」
 「…ご存知でしたか?」
 「甘く見るな。大猫被りが!」
 「酷いなァ。貴方よりましでしょう、三蔵」
 苦笑いして見せながら…そう大して気にしちゃ
いまいが…、上着を探って隠しポケットから平べ
ったいケースを出して、恭しく差し出してきやが
った。
 「妙な所で凝るな?」
 「滅多に喫いませんから」
 ライターは…まあ、良い。まだこっちは手持ち
で充分だ。
 「妙な匂いだな?」
 「まあ、ね」
 言いよどむ八戒を尻目に、一仕事の後の一服を
深く吸い込む。…!何だ、こいつは?
 「●■※△○★…」
 「大丈夫ですか?三蔵」
 「んな訳ねぇだろうが!こいつは一体何だ?」
 「ハーブを巻いた『煙草』ですよ。医薬用じゃ
なくて、ちゃんとした喫煙用です」
 咽た俺の指から其れを引っ手繰って、ゆうゆう
と吹かして居やがる。……様になってるじゃねぇ
かよ、随分。
 「健康の為か?」
 「まさか?そんな柔な理由じゃないですよ」
 笑いながら、でも眼差しが遠くを彷徨いだす。
 「花喃が最初に買ってきてくれてから、此れに
なっちゃったんです。それだけですよ」

 ………我ながらとんだ地雷を踏んだもんだ。
 男同士だから割り切ったつもりでいた。まして
やこいつや悟浄は…俺や悟空と違って女の居るの
が当たり前だった世間に居たんだ。俺達ははそう
言う愁嘆場なんて、知らない。
 俺を抱いて、昇り詰めさせた手で、こいつは実
の姉を抱いていた。其の罪の味を承知の上で。だ
から、余計に忘れる事が出来ないんだろう。滅多
に喫わない煙草迄、思い出に支配されている所を
見ると。 
 「三蔵」
 不意に呼びかけられて、唇を奪われる。微かに
甘い煙の名残。
 「嫌だったら、僕が銘柄変えましょうか?」
 「……平気か?」
 「本当は少しキツイですよ。でも、今目の前に
居るのは貴方ですから」
 抱きしめられて、首筋に向かって囁かれる。ふ
と見ると、耳朶が赤い。
 「じゃ、変えるな」
 「え?」
 「こう言う移り香は悪くないからな。…男では
俺が初めてだろう?」
 「ええ…」
 「其れに滅多に見れないレアなものも見れるか
らな」
 そして、奴の吸いさしを奪って、ゆっくり喫っ
て口付けてやる。
 「……っく。無茶しますね?」
 「ニコチンは無いんだろ?変なトリップも無い
な?」
 「貴方でトリップしてるのに、これ以上してど
うするんですか?」
 「其の一言に免じてやろう。……もう一度、来
い!」
 「じゃ、お言葉に甘えて…」
 太腿に当った『八戒』が、再び熱を持ち始めた。
                (2001.5.8)
《コメント》
『ゆ・ら・ゆ・ら』の反響から導き出した
裏偽典です。八戒さんがリードしてる訳です。
具体的なシーン…入れようかとも思ったん
ですが、結構あざとくなったし、いいですよね?

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