誰が何と言おうと…

 こてん。
 最初は猫が横になり、
 ドスン!
 その傍らに熊が座り、
 とすん…。
 そして天使が凭れ掛かるのである。

 「深春ーっ、あーづーいーよーっ!」
 「…我慢しろ我慢を!折角の人の楽しみをッ…」
 「昨日の内に食べたんだと思ったんだい!」
 蒼と深春が何の争いをしているのかと言えば、1本のアイスキャン
ディーを巡ってである。嵩がアイスキャンディー、と馬鹿にしては
いけない。ハッキリ言って今年はその1本こそが貴重だったのである。
何しろ、外気温が人間の体温を更に2度上回られた日には…なんでも
良いから冷却の材料を欲しがったとて、誰に2人を責められようか。
 「ZZZZZZZZ」
 その傍ら、蒼が寝転び、深春がその傍に座り、その深春の背に凭
れ掛かっている京介は、いとも心地良さ気に熟睡している。しかも、
汗の一滴もかかずに、である。

 何故彼等がこうして3人揃って暑い夏の日に冷房もあまり効かない
部屋でゴロッチャラしているかといえば、偏に神代教授の所為であ
る。と言って何かを言いつけられた、と言うからではない。正確を
期する為にもう少し言葉を補おう。
 彼等は神代教授宅の通いの家政婦の松代さん(60歳)が甚平のサ
イズを直してくれるのをひたすら待っていたのである。
 甚平…、まさしく日本男性にとっては夏の風物詩であろう。浴衣
も確かに良い。しかし浴衣の難点は着付けが下手だとすぐに崩れて
しまうのである。男の着崩れた浴衣姿…温泉地を連想されれば良い。
余り見ていて気持ちの良い物ではない。良い男なら兎に角として。
しかも浴衣の場合、特に男は…体型を選ばれてしまうのだ。痩せぎ
すではいけない。さりとて、筋骨隆々の浴衣姿も、余り美しい物で
はない。
 甚平は…その難点をとりあえずは補ってくれるのである。少なく
とも夏に近所を歩く程度の外出着としては通用する。
 その日、あまりの暑さにうだっている3人を見かね、松代さんが
気を利かせて神代教授御用達の呉服屋で吊るしの甚平を見立てて、
買ってきてくれたのである。蒼には浅葱色、深春には鶯色。京介に
は利休鼠。
 それでも、やはり彼らの体型は体型だったので、若干の修正が必
要となり…こうして待っているのである。うだりながら…。

 「京介、暑くないのかな?」
 「汗一筋もねえな。汗腺が退化してるんじゃねェか?」
 熊と猫の漫才が聞えているのかいないのか、天使はすやすや熟睡
中。
 …甚平の仕立て直しが終わったら、久しぶりに神代さんも交えて
4人で祭りにでも行こうか…。
 そんな優しい夢を見ながら。
《コメント》
domonnさんのサイト18000キリ番(KARIKOさん所蔵)を見て
1時間で書き上げた代物であります。
葡萄瓜も甚平を愛用してますが…いいものです。
最近はかなりファッション的にも優れたデザインも
出回っている様で…

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