弄ばれる言葉

 犬神夜叉少年には、どうしても不可解な事があった。
 九十九十九が彼にとって大きな謎であると言う事は
当然だとして、何故「彼の頼むホテルのサーヴィス係
が何時も決まった人物なのか?」と言う事だ。
 話は、彼が不眠閃考を開始した二日前から始まる。

 「ハイ、フロントです」
 なんともはや。受話器から聞こえてきたのは流暢な
日本語である。これは好都合だ。余計な手間を省いて
推理の走り出しが出来るというものだ、と内心ほくそ
笑み、夜叉少年はルームサーヴィスのサンドウィッチ
とコーヒーを頼んだ。無論ポケットマネーである。自
分の頭脳の為の投資だと思えば安いものだ。
 程無くしてボーイがワゴンを押して来た。其の声を
聞いて軽い驚きを覚える。先程注文を受けたのと同一
人物ではないか!念の為、業務に差し支え無い程度の
雑談を仕向けてみると間違い無くそうだった。何でも
探偵小説が心底好きらしく、かの高名なツクモ・ジュ
ーク氏の部屋からルームサーヴィスのお声が掛かった
のでとるものももとりあえず駆けつけたのだという。
 「残念ですが、恐らくルームサーヴィスの注文は余
が主にすると思いますよ?」
 「どう致しまして!こちらはツクモ氏の部屋を訪れ
たと言うだけでも名誉な事です」
 「彼が聞いたら困惑しつつも喜ぶでしょう。伝言し
ておきますよ」
 お互い名刺は無い。夜叉少年は名乗りを上げ、ボー
イ氏は名札を示す。ローマ字で「KIM」と読める。

 其れが発端で、夜叉少年は度々ルームサーヴィスを
利用する事になるのだが、何時電話しても決まってK
IM氏が電話を執り、KIM氏がワゴンを押してくる。
其れこそ、夜叉少年の不眠閃考と時間サイクルを同じ
くする様に、だ。一つの可能性としてKIM氏が双子
だったら、と考えては見たものの、其れでは何時も雑
談を交わして余りにぴったりと一致するあの整合性を
どう説明すればいいのか判らなくなる。
 もしもKIM氏が自分と同じく不眠術を会得してい
るのであれば?非常な驚きであり歓びである。探偵に
携わる意思の在りや無しやは別として、大いなる連帯
感の生じるのは間違いない。
                  
 と、此処まで話を聞いた九十九十九は困った様な微
笑を返す。目の前の愛すべき少年探偵に十九の知り得
た真実を話すのは簡単だが、其の所為で彼の不眠閃考
の矛先が鈍るのを恐れたのだ。
 でも、些細な問題が気分転換になればよいが、メイ
ンテーマになっては困りますね。
 そう思って、掌を開いて見せる事にする。

 「夜叉さんは、真実の手前で方向転換してしまいま
したね?」
 困った様に笑われて、思考をもう一度回転させる。
 「余は何処で間違ったのでしょう?」
 「KIM氏が双子では無いと否定した時点です」
 「ですが其れ以外に…」
 「私の同僚の龍宮君、知っていますね?」
 「存じ上げてます」
 「彼の思考方法を少し借りました。何の事は無い。
洒落の問題でした」
 「洒落、ですか…」
 夜叉少年はまだ腑に落ちない様だ。
 「KIMとは漢字で金と表記します。…さて此処で
日本史の初歩的問題ですが、所謂「大名行列」として
知られる徳川時代に各藩に義務付けられていた年中行
事を、何と言いましたか?」
 何を初歩的な…と考えてみて、あっと考え至る。そ
して、思わす眠りに落ちたくなる。
 「いい気分転換になったかも知れませんね。さあ、
本腰を入れましょうか?」
 事件解決まで、まだまだ道程は長い。

 一寸待て。九十九が導き出した洒落は一体なんだっ
たのか?
 怒らないと約束して戴けますね?
 KIM氏は、「三つ子」だったのですよ。兄弟一緒
に同じホテルのボーイとして就職し、偶然にも3人と
も九十九のファンだったのでこの様な悪戯を思いつい
たのですな。
 つまり。
 「三」人の「金」の「交代」。
 参勤交代、と言う訳、ですな。どっとはらい。
《コメント》
JDC表物として…恐ろしく強引ですな^^;
このシリーズを図書館で借りて読んでパロを
書こうとした葡萄瓜が浅墓でした。
本屋に走ろうかと思います。お金が出来たら(苦笑)

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