臙脂色の悪夢?

 今にして思えば、あの時に自分が迂闊な事を言わなければ
こう迄苦しむ事は無かっただろう、と珍しく、龍宮城之介は
自らの迂闊さを責めていた。
 事の要因は極めて明白なのである。自分が一言拒絶の言葉
を口にすれば用意に片が付くのである。しかし、其れが出来
ないで居るのは、彼等が生業としている「探偵」の「推理方
法」の否定に繋がるからである。
 事の発端は、密室卿事件の最中、氷姫宮幽弥とJDC本部
五階職員食堂で昼食を摂っていた時、何気なく発した城之介
の一言であった。

 「この赤ダシはいけるな」
 「へえ、おおきに」
 まさか帰って来るとは思っていなかった相槌に驚き、ふと
隣を見る。
 「おや、四万十川氏ではないか。今日は貴君が調理場に居
たのか」
 「そうです。今日は龍宮さんが褒めてくれはりましたなぁ」
 ふくよかな顔で微笑むこの男、れっきとしたJDC第3班
所属の探偵である。四万十川等史朗、元来和菓子屋の若主人
であったが其の探偵としての能力を見込まれ、総代・鴉城蒼
司直々のスカウトで一旦は第2班に納まった。
 しかし、
 『私の推理はここでは出来まへん!』
 と、逆噴射。そこで降格し、改めて彼本来のスタイルで推
理させたところ、其の方が遥かに効率が良かった。元々彼は
サポート形式の推理を得意とし、アドヴァイザーとしての性
格が勝っていたのである。
 そして今現在、彼は週に3回は職員食堂の調理場で腕を振
るう。和菓子が本職とは言え、其の腕前は変幻自在で、時に
料理人としての出張も在るほどだ。
 「今日は、と言うとこの味付け、以前にも出した事が?」
 そして何とも臍曲りな話なのだが、等史朗の出す味噌汁の
味はいつも微妙な変化があって楽しいと言うのがJDC職員
の大半の共通見解だ。わざと変化を付けているのだ。
 『同じ味がよければインスタントをどうぞ!私はロボット
やおへんから』
 微妙な変化のある方が日常も愉しい。そう言う屁理屈だと
笑う。其の彼が以前と同じ味付けの汁物を出すとは珍しい。
 「へえ…ピラミッドが…褒めてくれましてな。懐かしくな
って造って見ましたんや」
 班も同じなら入ったのもほぼ同期。お互いにフォローを欠
かさぬ名コンビとしても知られていたものだ。
 「そうか、この味が彼の好みか。出来るだけ覚えておく事
にしよう。時に、其のワゴンは?」
 そう、しんみりしてばかりも居られないのだ。現在は事件
を抱えている最中であり、等史朗も探偵、其れもサポート形
式の推理者である。更に言えば、彼の推理には常に副産物が
生じるのである。決して外れないだろう悪い予感から目を逸
らしたいと願いつつも、つい聞いてしまう。
 「本日は皆さんに洩れなく食後の牡丹餅を強制サービスさ
せてもろてますねん。一寸根を詰め過ぎましてなぁ」
 四万十川等史朗の推理技法は「餡中模索」。和菓子職人で
もある彼ならではの推理法であり、もしも鴉城蒼司が甘党で
彼の店に通ってぜんざいを時折食べると言う事実が無ければ、
等史朗は市井の相談者として過ごしていただろう。

 そして現在、城之介と幽弥の机には連日の様に和菓子が並
んでいるのである。
 「…氷姫宮氏、姉上への土産に持って帰らないか?」
 「…此処で食べて帰りましょう。確か今日は良い紅茶の葉
が入ったと言う事でクッキーを都合されている筈ですから」
 「そうか。まあ…四万十川氏の造った物だから量も利くが
…」

 二人の机から和菓子が消えたのは、九十九十九が帰国して
から程無くであった。どっと払い。
《コメント》
本当に葡萄瓜はこのシリーズが好きなんだろうか?
と思えるほどの馬鹿馬鹿しさ。推理技法名を書きた
いが為のUPです。笑ってやって下さい^^;

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