駱駝の探求

 火村英生は不運であった。
 誰が何と言おうと不運であった。
 その日一緒にいた私、有栖川有栖が言うのだから
間違いは無い。
 無論私はその不運の理由を詳しく説明する事が出
来る。お約束戴きたいのは余りにも些細な理由なの
で呆れずにお付き合い戴きたいと言う事だ。
 それは、先週の日曜日の事だった。

 「在ったか?」
 「…スマン、見つからん」
 「いや、お前の所為じゃ無い。無いんだが…」
 何時もなら此処で憎らしい毒舌の一つも出て来る
所だが、今日は流石に出て来ない様だ。無理もない。
潤滑剤が無ければ元々重い口も開き難かろう。
 そう、彼にとっての潤滑剤であり沈黙の友、"CAME
-L"が切れているのである。しかも、販売機を隈なく
探したにも拘らず…最後の1本が灰になって3時間
経った現在、未だに発見に至っていない。
 「《MILD》は在る。《LIGHT》も在る。せやのに
なんで元々のんがないねん!」
 「…悪いな。予測して買い置きしておくべきだっ
た」
 私に対しての謝罪表現が出て来る所を見ると愈々
補充の必要がある。そもそも、他の外国銘柄は厭と
言う程目にする…時には葉巻まで見掛ける程だ…の
に、御丁寧に"CAMEL"だけが無いのだ。せめてBOX
タイプの物でもいいから置いていてくれればいいも
のを、BOXすらない。
 特に高級品と言う訳でもない。高級品と言うなら
ば男性向けブランドでも有名な銘柄を初めとした英
国勢が優勢だ。そのDと言う銘柄も御丁寧に販売機
では扱われていた。
 何故"CAMEL"オリジナルだけが無いのだ。
 私達が訪れた販売機は既に50を数え、間の悪い
事に煙草屋は閉まっている所が殆どだった。
 「アリス…もう1時間辛抱するよ。後1時間で道
は開ける」
 「行けるか?」
 「一寸自信ないけどな…間に合わせは吸いたくな
いしな」
 本当にしょぼんとしている。

 それからの事である。火村が"CAMEL"の予備を最
低限2個携帯する様になったのは。
 又、何処で情報が廻ったのか、彼がフィールドワ
ークに出る際に、現場の誰かが必ず"CAMEL"を携行
する様に、なったとかならなかった、とか。 
《コメント》
これは、葡萄瓜の実体験に基づきます(苦笑)
葡萄瓜はヘビースモーカーではないのですが、
時として無性に吸いたくなる人間なのですね。 
そう言う時にお目当ての銘柄が見つからない…
これは悔しい。
其の体験をもSSにするとは…我ながら無駄
が無いなぁ(呆れ)                  

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