薬屋喜遊曲K−4番 Sweet or...

 和やかだった食卓が、座木の挙動一つであっという
間に凍りついた。
 「座木…美味しいか?」
 「ええ、とても。皆さん何を凍り付いているんです
?」
 「だって兄貴、それって…。柚之助は知ってた?」
 首が勢いよく横に振られる。
 「話には聞いていたが…見たのは初めてだな」
 珍しく招きに応じて柚之助と共に来訪していた零一
が呟く。
 「僕は…認めないぞ」
 地の底から這い出さんかの声色の家長・深山木秋の
御言葉。
 「例え座木に台所を任せているからと言って、これ
は認めないぞ」
 パチン!
 指を鳴らして召還したのは醤油の卓上瓶と、酢の小
瓶。返す手で座木の手元にあった瓶を消す。
 「脳の活性化の為にも良いと思うんですが」
 「味覚が容認出来ればね」
 冷たい火花を散々散らせる秋と、やれやれと言わん
ばかりの座木。そして、呆れて二人の遣り取りを見て      
いる残り一同。
 食卓を囲む一同各々の前には、切子の碗に品良く盛
られた心太。座木の分には黒い蜜が掛かっている。

 座木が日本に来てから秋と出会うまで約30年。そ
の間彼の生活拠点は関西にあった。関西と関東の食生
活はまず味覚の根底基準からしてが異なっている様だ。
単純に薄味濃味で片付けられれば苦労はしないのだが、
其れだけではない何かが潜んでいる様である。
 今日の騒動もその味覚の差が原因。座木にとって心
太は黒砂糖の蜜を掛けて食すもの(関西風)だったの
だが、秋以下の一同にとっては酢醤油と溶き芥子を添
えて食すもの(関東風)だったのである。
 彼等が妖怪であるとはいっても、矢張り生活地域に
よる味覚の差と言うのは、如何ともし難い様だ。 

 「あ、結構美味いです!」
 均衡を崩したのは…予想通り食いしん坊のリベザル
であった。
 「本当?」
 「柚之助も食ってみてよ!甘くてつるつるしてて、
結構面白い!」
 「面白いって…食べ物に遣う言葉じゃ…あ、ホント
だ」
 「だろーっ?」
 笑いあう子供二人を見て、零一が呟く。
 「餓鬼の順応力って、逞しいよな」
 そして、冷戦の二人を見て、長い溜息。
《コメント》
季節で無いのに心太(ところてん)(苦笑)
強引なネタ卸ですよね、我ながら。
葡萄瓜は関西人ですが、両親が東北と九州の為、
長い事心太を醤油で食してきました。
最近になって黒蜜で心太を食すのですが、結構
美味いです。豆と果物抜きの蜜豆と言った感じで。
                 

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