朝まで…?

               蒼がおねむである。
               正月早々京介に寄りかかって、本も読みかけ…「銀の檻…」…どんな内容               なんだろう?…にして、うつらうつらとしている。
               「どうしたい?夜更かしでもしやがったか?」
               そりゃ、蒼だって夜更かしはするでしょうよ。神代先生。可愛い顔つきを               していたってもう大学生ですよ?一応酒煙草解禁の年齢でもあるし。
               「夕べゲームでもやりすぎたんじゃねぇのか?」
               深春、あんたも違う。蒼がTVゲームに夢中になってたのはあんた達が学               生だった頃まで。それ以降はその手のゲームはやってない。大学じゃ囲碁の               サークルに入ってるし。
               「社会勉強してたんですよ、朝まで」
               …京介、爽やかな顔して爆弾発言するんじゃないの。御覧、純情な大人二               人が一瞬にして凍り付いてしまったじゃ無いか。

               「社会勉強?」
               「ええ、社会勉強です。其れが何か?」
               驚愕を何とか押し殺して神代先生が問い掛ける。こう言う時にはもう深春               は役に立たない。こう言う方面にはどう言った所で結構純だから、もう日本               海溝の底辺りまで沈んでいる。多分埴輪の方がまだ生き生きしてるかも知れ               ない。
               問い掛けながら観察すると、蒼の瞼が幽かに腫れぼったい。目尻にはうっ               すら涙の後。
               「泣いた、みてぇだな」
               「ええ、其れはもう」
               だから…何故そんな爽やかな顔をして際どい台詞を平気で言うのだ京介。               見ろ、深春のあの恨めしげな顔を!あんたに嫉妬しているのか蒼に嫉妬して               いるのか知らんが…鳶に油揚攫われて、其の序でに梢の上から叩き落された               ツキノワグマみたいじゃ無いか!

               「泣いた?怒ったの間違いだろ?」
               あにゃ?先生、何を仰るんで?
               「あれは泣けますよ。朝までなんだから」
               「早良さんだよな?」
               「…いいえ?」
               何二人で以心伝心してるんです?これが師弟の絆…いや、親子の絆って奴               ですかい?
               「おめぇ達が一緒に観たのは、『朝まで』だろ?」
               「ええ、そうですが」
               「あの激論を見てて欠伸が出るか怒るかの選択は判るが(←オイ!)、               …泣けるかぁ?」
               「ああ」
               合点が行った様に京介が手を打つ。
               「先生、多分チャンネルが違うんです」
               「『朝まで』って言えば早良蝶市郎がやってるアレだろ?」
               「僕達が見ていたのは門野民さん司会の『朝まで思いっきり生電話』です               よ。世田谷の煎餅屋の奥さんの打ち明け話に蒼が泣いて困りました」
               澄ました顔で答える京介。そして思わず畳の上で平泳ぎをする神代先生と               深春であった。どっとはらい。

                  《コメント》                      結城咲羅さんからお年賀イラストを戴いたお礼に、                      サイドストーリーを付けて見たもの。                      ご本人にもうけて戴いてホッとしてます。                      モデルになった番組、判りますよね。司会者の名前、                      前者は捩り、後者はアナグラムになってます。



結城咲羅さんの絵に

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