そして、マスターとの剣の打ち合いが始まった。


マスターは冷たく無表情に俺に向けて剣を振り抜く。
マスターから振り出された剣は、ただの人間の少女から繰り出されたとは思えないほどの力だった。そしてその一閃一閃は素早く、気を抜けば、瞬く間にこちらがやられてしまう。俺も全力で剣をマスターめがけて振り抜き、彼女の制服も余波で斬り乱れていく。
剣戟の合い間に時折、マスターから魔法弾が飛んでくるが…それをかわしつつ、俺はマスターからの刃を捌いていった。

戦いながら、マスターの戦力を心眼で分析すると、自分の推測はこうだった。
マスターの動きは、剣戟の力や魔法弾による魔力の強さこそ…恐ろしいほど強化されていたが、剣を操る動作自体は単純な動きであり、俺の攻撃を避ける動きも攻撃の先の先を予測した回避ではなく、目先を単純に避けるものであった。
だ から、マスターの行動の一つ一つがいかに素早く繰り出されようとも、俺は心眼を研ぎ澄ましてその刃をぎりぎりまで引き寄せれば、マスターの行動の点と点の つなぎ目に隙を見つけ出してなんとか応戦できるように感じた。それは一歩間違えば、一撃で自分の体に致命的な傷を負うことになる訳だが…リスクは承知の上 だった。

だが一つ気になるのは、あれだけ強力な一撃一撃を繰り出しながらもマスターの動きには淀みがなく疲労の様子は全くみられないことだった。こちらは、次第に疲労が溜まっていき、マスターからの魔力供給が止まって回復できないでいるというのに……。

恐 らく、ムーンセルはマスターの自我の遮断と私への大まかな攻撃を行動指令としてプログラムしておいたのだろう。そしてそれを実行するには足りない攻撃能力 を上げる為に、契約したサーヴァントの技のコピーと単純な魔法弾の手段を付与し、必要なエネルギーは外部から供給しているだろうことがうかがえた。ムーン セルが再現する世界であるSE.RA.PHから供給されるのだ、そのエネルギー源は無限に違いない。

そうだとしたら、このままでは自分が先に動けなくなることは明白だった。
俺は……いつまでも……ずっと、マスターとこうしていたかった。
例えそれが、仮に刃を向け合うことだったとしても、、、

だが自分が動けなくなる前にマスターを止めなければならない。
意を決し、マスターの剣を払い隙を見つけ…そこに俺の干将・莫耶を滑り込ませる。
『許してくれ・・・マスター』
心の中で、マスターにそう呟き、彼女の首元に剣を振りぬこうと掲げた、その瞬間。

「アーチャー?」
ふいに…マスターが、ウィルスにおかされる前に戻ったかのような、不思議そうに以前の温かい笑顔で俺の名を呼びかけ……、俺は振り抜くはずだった手を動かすことを…つい…忘れてしまった。
ガキィン!!!
「うぐっ!!」
次の瞬間、マスターの表情はいつもの冷たい表情に戻り、掲げられた剣はマスターの剣によって払い落ちていった。
そしてマスターの剣が俺の胸の前に構えられ……そのままそのまま降ろされようと……

………、マスター。
いいだろう、君に殺されるならば、本望だ。
もはや何度目になるだろうか?やってきたマスターからの剣の次の一閃をついに俺は…受け入れようと、、、した。


その時、、、
「アーチャー!!!彼女を抑さえなさいっ!」
全てを諦めた忘我の狭間で……、かつて立ち往生していた私を叱り飛ばし…励まし…そして憧れた…あの…懐かしい声に……、俺は正気に戻され、マスターからの剣の一閃を反射的に横に転がることで避けた。

「あなたが諦めたら、誰が彼女を救うの!!!彼女を抑えてくれたら、後は私がなんとかするわ。」
ああ、凛。…相変わらずの気の強さだな。思わず笑みがこみあげる。
「そうだったな…。全く君の言うとおりだ。」

再び思考を回転させ、状況を整理してみる。
今のマスターに剣戟でまともに応戦しても、生きたままマスターの動きを止めることはできないだろう。そして彼女のエネルギーは外界から供給されていて…限りがなく、逆に俺の魔力は尽きようとしている。
残された今の俺の魔力で打てる攻撃手段がないことは既に見えていた。

……だが、凛が言ったのだ。マスターを止めれば、後はなんとかすると。
ならば、どのような手段を取ろうとも…その期待には応えなければ…なるまい?


俺のこの体が消えるのが先になるのか、それともマスターをこちらに引き戻すのが先なのか……



                       続く     戻る    

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