今日も学園での情報収集を終えて、アリーナに向かう前にキャスターに話しをしてみようと思い、マイルームに戻ることにした。
部屋に戻ってみると……
「ただいま、キャスター。」
「おかえりなさいませ、ご主人様」
いつものようにキャスターはかしこまって私を出迎えてくれる。
英霊と聞けば、恐れ多くて近づきがたいという印象があるけれど、聖杯戦争という生死を賭けた戦いの中で不安を感じても、キャスターになら心置きなく何でも相談することが出来た。
何故なら、かいがいしく契約者である私を待って、私と一緒に喜んだり怒ったりしてくれるキャスターには親近感を感じるし、何事も私を最優先で考えてくれるキャスターにはSE.RA.PHにいる誰よりも信頼することができたからだ。
それでも英霊故に長い時間を生きてきた経験あってなのか、時折私がわからないことにも勘を働かせる彼女には驚かされるけれど…普段は微塵もそんなそぶりは見せない。
そんな彼女が私のサーヴァントであってよかったと心底そう思う。
そのキャスターはいつも座っている赤い聖骸布の敷き布の上に、湯のみときゅうすを置き、お皿に乗っている黒く直方体(長方形)の塊をいそいそと切り分けている。
「キャスター? 何してるの?」
「お茶の準備です。いつも頑張っているご主人様に、たまにはお茶でも飲んでもらおうって思って、、、あっ、お茶にあう和菓子も添えましたよ。ご主人様は甘いものも好きですよね?」
「ありがとう、キャスター。頂くわ」
学園で走り回っていて、疲れは感じていたところだ。
これからアリーナへも行く予定なのだから、甘いもので糖分を補給しておこう。
「この羊羹、とてもおいしい。緑茶と相性がとてもあうね。」
「そうでしょう、ご主人様。ただ、緑茶と聞くと私…どうも…あの嫌なやつを思い出すのが玉に傷なんですけどね。」
「ほんとね、キャスターは狩人である彼のことは苦手だものね。」
「苦手どころじゃありません! 顔も見たくないです。」
「全くね、ふふっ」
「えへへっ、ご主人様おいしいですか? 」
「うん、小豆の香りが生かされていて…とってもおいしいよ。」
ふと、キャスターの隣を見ると、羊羹を包んであった包装紙が見えたので手にとってみる。
「へぇ〜とらやの羊羹なのかぁ。あの羊羹はあんこがおいしいのよね。キャスター、よくこんないい羊羹手に入れられたのね? 」
購買には焼きソバパンのようなジャンクフード並みの味の食べ物なら売ってあったけれど、こんな高級な味のする代物は確か売ってなかったはずだけど……。
「はい、職員室の奥にあった冷蔵庫からもって来ました。」
「ごほっ」
キャスターの返答に思わず咳き込んでしまう。
「職員室って…まさか、先生の…」
「いいじゃないですか、ご主人様。先生方だけで食べているってずるいと思います。黙っていたら…わかりませんよ?」
そういえば…マイルームに戻る前に、大河先生…探し物があるって慌てていたなぁ。私を見ても、頼もうとしなかったのは、そういう訳か…。
取っておいた羊羹がなくなって、哀しそうな大河先生の表情が目に浮かぶ。
先生には悪いけど…せっかくキャスターは好意で持ってきてくれたんだからここはありがたく羊羹を食べてしまうことにしよう。
「ありがとう、キャスター。でも、もう二度とこんなことしちゃ駄目よ? 」
「えへへ、ご主人様に叱られちゃいました。」
キャスターとの楽しいお茶会も終わり、羊羹は私達のお腹の中へと消えてしまった。
お腹もいっぱいになり、少し食休みも兼ねてキャスターの様子をみると……キャスターものんびりとしたいのだろうか? 尻尾がゆったりと目の前で揺れていた。。
ふさふさとやわらかそうな毛に包まれたキャスターの尻尾。
それが、手を伸ばしただけで触れられる位置にある。
その尻尾にさわると、一体どんな感触がするのだろう・・・
(ちょっとだけなら・・・いいよね?)
キャスターの尻尾に触れてみた。
「あっ、ご主人様?」
振り向くキャスターに、ごめんねと笑顔で謝りながら、その尻尾をゆっくりと撫でていく。
「キャスターの尻尾ってふわふわだね。」
驚くキャスターに、ここで触るのをやめるべきかも・・・とは思ったけれど、見た目以上にふわふわとやわらかな毛に包まれたキャスターの尻尾の感触をもう少しだけ感じていたいと思ってしまい、手が止まらなくなってしまった。
「ご主人様、気に入りましたか? もしよかったら、もっと触ってもいいんですよ? タマモはもっと撫でてくれると嬉しいです。」
いきなり触ったのに、キャスターからは快く承諾の返事が返ってきた。
「いいの? じゃぁ、お言葉に甘えて・・・」
今度は遠慮せずに、尻尾全体をゆっくりと撫でてみた。
触る度に、尻尾は今のキャスターの気持ちを表すかのように楽しそうに揺れる。
そのさわり心地はふわふわと柔らかく、暖かくて・・・もっと触りたい、彼女の尻尾を思わずぬいぐるみのように抱きしめたい衝動にかられる。
キャスターの表情を見ると、「いいですよ? ご主人様」と言っているかのように笑顔で私を見つめてくれるので、今度は彼女の尻尾を頬に当ててみる。
手と違い、皮膚が薄い頬の部分は敏感に尻尾の感触を伝えてくる。
まるで、羽毛に撫でられているようでとても心地いい。
だからその感触が離れがたくてずっと尻尾の感触を味わっていたら、……突然尻尾がくるりと私の首に巻きついてきた。
「えっ? キャスター? 」
「えへへ、ご主人様、気持ちいいですか? 」
「うん、キャスターの尻尾って、とても気持ちいいね。ずっとこうしていたい。」
「ご主人様さえよかったら、いつでも私の尻尾を触っていいんですよ?私の尻尾はご主人様のものですから! 」
「キャスター、ごめんね。ありがとう。」
「気にしなくていいですからね、ご主人様。タマモもその方が嬉しいです。」
それ以来、私はことあるごとにキャスターに尻尾を触らせてもらっている。
聖杯戦争の中で不安になっても、彼女のおかげで私は元気になることが出来た。
キャスターの尻尾にくるまれながら、彼女の優しい声を聞くと、次第に心が落ち着いていき、私は独りではないと感じられるから。
「ご主人様、タマモはいつでもご主人様の傍にいますからね。」
キャスターの尻尾
女主&キャス狐 キャスターの尻尾はふわふわです。モフモフしたいです。