黒き聖杯の中で

「ううぅ・・・くぅ・・・・・・」
バーサーカーがやられてしまった。巨大な力を持つサーヴァントの魂を取り込むたびに、苦痛が体を走る。だけど、ここで自我を失うわけにはいかない。まだ私にはセイバーという手駒もあるのだ。おじい様の支配の手の内の中で、いかにそれを超える力を手に入れるか・・・・・・
「まだ、足りない・・・」
本来の聖杯であるイリヤスフィールを先輩に奪い返されてしまった。
ひとまず戦闘で消耗した体を休め、目を閉じる。
その時、予期しないサーヴァントの魂が私の中に入ってきた。



私も造られた聖杯とはいえ、倒されたサーヴァントの魂をこの体内に取り込むことができる。
アンリマユの闇の力に支配されたそこは一筋の光もない・・・・・・闇。
そこに、彼はいた。
「あなたは・・・・・・姉さんのサーヴァント・・・確か、アーチャーさんでしたよね?」
呼びかけるまでうなだれ両膝をついていた紅い弓兵は、私が彼の間合いまで近づくやいなや片腕しかないその手に剣を呼び出して斬りかかった。
「・・・天の鎖よ!」
ジャララ〜ガラッ、ガクン。
空間から幾重にも呼び出された黄金の鎖は、紅い弓兵の手足を左右に縛り上げる。
「フェイカー、いささか遊びがすぎるなぁ?まぁ、これはこれでいい光景だが・・・」
「ギルガメッシュ・・・、どういうことだ?」
紅い弓兵の疑問に私は答える。新しいマスターとして・・・
「ギルガメッシュも取り込んだんです。あなたと同じように・・・」
「くっ・・・・・・間桐桜、完全に反転してしまったか?。私をこのように取り込み動けなくしても、未熟者だが・・・衛宮士郎が君を止めるだろう・・・」
「そうかもしれませんね。・・・ギルガメッシュ」
私は視線でギルガメッシュに合図を送り、ひとまず現実世界に戻ることにする。
おじい様達の命令がひどくわずらわしく感じる・・・。
クン・・・ジャラ・・・
「ぐぅっ・・・」
ギルガメッシュの手の鎖が引っ張られ、鎖に縛られた紅い弓兵がうめき声をあげ、金色の王を睨む。
「いいざまだなフェイカー、これから貴様にこの聖杯の泥を飲ませてやる。すぐに済ませることもできるが・・・一瞬に終わってしまえば我が面白くないのでな、少しずつ・・・貴様がのたうつ姿を・・・んん?。これから貴様がどんな声で鳴くのか楽しみだ。」
「・・・・・・英雄王ともあろう者が、とんだ道化だな。貴様もその泥を飲んで配下に成り下がっただろうに・・・」
「我は英雄王なるぞ。我を支配するにはその3倍以上の・・・いや、もはやそのようなもので我が変わる訳がないのだ」
「ふっ、道理だな。」
「よかろう褒美だ、フェイカー。たっぷりと味わうがよい」
英雄王は鎖で身動きの取れない紅い弓兵のアゴを片手でこじ開け、泥を流し込み、呼吸が出来ないように鼻をふさぐ。
「・・・・・・ぐぁ・・・・・・うぅ・・・ぁあ・・・ぁ。ぐぅ・・・ぅぅ・・・」
泥を飲み下した弓兵の苦悶の声が鳴る。


「いい声だ、フェイカー。まだこれで終わると思うなよ。貴様が自我を失うまで、この闇を喰らわせてやるからな」
紅い弓兵の叫び声が響き渡る。この声が鳴り終わる時・・・彼は私の僕となるはずである。



どんなサーヴァントでも、この胎内に内包されたアンリマユの闇で侵せば、私の手足となる。
稼働可能なサーヴァントはその心を我が意の下におき、彼のように倒され魂だけとなったサーヴァントの魔力はこの胎内に取り込みその魂を閉じこめるだけで本来は十分なのだけど・・・。
セイバーがそうであったように、紅いアーチャー・・・いえ、ギルガメッシュによると彼はどうやら先輩のなれの果てらしい・・・先輩の行き着く先と知って、私は彼の心の奥に興味があった。
皆が存在してはいけないと口をそろえて語る闇、己を縛る理性を取りさらい、今まで目をそらしてきた欲望・・・ありのままの自分でいられる心地よさ。彼をこの闇で浸した後に聞いてみたかった。
先輩は私のことをどう想っているのだろう・・・手元になれの果てが手に入ったのだから、その答えの一端を、アーチャーに問いただしてみても悪くはないだろう。


闇の底に私は再び降りる。
そこには目に光りを失い、焦点が定まらないまま鎖でつり下げられた紅い弓兵がいた。
ギルガメッシュは役目を果たして飽きたのか、そこには居合わせなかったが、私の命令どおりアーチャーの心を完全に折りふせるまで、聖杯の闇を飲ませ続けたようだ。
「・・・アーチャー、私の声は聞こえますか?意識はあるはずです。」
紅い弓兵はうなだれたまま微動だにしない。
私は構わず言葉を続ける。
「あなたは・・・・・・先輩、のなれの果て。あなたも先輩なんですよね。」
「・・・・・・」
「先 輩、いくら抵抗しても誰もここに助けは来ませんよ。私は好きでこうなったわけじゃない。最初は私だって嫌だって、抵抗した。でも頑張っても、誰も・・・私 を助けてくれなかった。結局、周りの世界は勝手に私を悪だと決めつけ消そうとした。世界が私を否定するのなら、私も世界を否定するだけの話です。先輩も私 と同じ・・・立場、運命共同体になってみて、少しは私の気持ちを分かって頂けますか?」
否定されると思っていた返事は・・・
「・・・・・・君が、苦しんでいることに気づけなかったこと、君を間桐の闇から助けられなかったことは・・・・・・すまないと思っている。」
おもむろに紅い弓兵はこちらに顔を上げ、謝罪の言葉を告げた。
「・・・・・・先輩」
「だ が、救ってやる・・・というのはいささか私の思い上がりだったようにも思える。君もそうだろう?今更憐れみの情で差し伸べられる手など望まないのだろ う?。君のおかげで、俺は正義の味方などと馬鹿げたことで悩んでいたことに気づかされたよ。今は、もはや何もかも・・・どうでもいいと感じる。だか ら・・・君が望むなら、この身をマスターの渇きを潤す為に捧げるのもやぶさかではない。君にとって・・・私が、過去の私の身代わりだとしても構わない。 桜、この縛りを外してくれないかな・・・?」
例え同情でも構わなかった。私をこの地獄から連れ出してくれるのなら・・・だけど姉さんは無情にも私を切り捨て、私に救いの手を差し伸べてくれた先輩すら私から奪っていった。もう私には、何を信じていいのかわからなかった。だから・・・
「先輩、私と一緒に来てくれるんですか?」
闇の縛りでその意志が私に従わざるをえなかったとしても、問わずにはいられなかった。
「いいのか?も何も、それが君の望みなのだろう?私はそれに応えるまでだ。それにこれは正義というくだらないものに縛られていた私に自由を与えてくれた礼だよ。もし、この躰が

無事だったならば、衛宮士郎を殺せと言われたらすぐにでも殺しにいくものだが・・・・・・」
深い安堵と先輩から得られなかった救いを私はこの紅い弓兵から感じた。
私は紅い弓兵に絡まる鎖を一瞥し、英雄王に魔力にて命ずる。途端に黄金の鎖は紅い弓兵の体から消え去った。紅い弓兵は微笑みながら、私を抱きしめて口づけをし、残された片腕を私の胸に入れた。
「・・・あなたはマスターにそんな無礼を・・・働くの?」
「君が本当に嫌なら・・・俺を君の力で封じるといい。私が君の体の疼きを沈め・・・いや、率直に言って、俺は君が欲しい・・・桜、衛宮士郎でないと駄目なのか?俺が君に触るのは・・・嫌か?」
「・・・・・・・・・」
沈黙でもって、アーチャーに返答する。アーチャーはそれを許されたものと解釈した。
アーチャーの・・・先輩の唇は優しく私のそれを甘噛みし、ゆっくりと優しく胸を揉みし抱く。
望んでいた答えと優しく力強い抱擁に、私の官能も高められ・・・体が疼いていく。
「先輩・・・」


                            続き    

ヘブンズフィール桜ルートにて、アーチャーの魂がイリヤではなく黒桜に取り込まれたら・・・のifな黒桜とアーチャーのお話。

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