一体あの怪物はなんだというのだ?
新都に進入してくる使い魔を狙撃し続けながら、アーチャーは影のようにも見える使い魔のその正体について考える。
不気味な人のようにも獣のようにも見えるその姿が、己の放った矢に打ち抜かれる瞬間に、影のように霧散していく様は、高層ビルの頂上からでもアーチャーの鷹の目にははっきりと見えた。
だが、毎夜いくら打ち抜こうともその数が途切れる様子もなく、夜が明け、その黒い影がいたはずの場所にいけどもその正体の痕跡すらつかめなかった。
使い魔の正体が全く見えないことにいらだちを感じるのは正直否めなかった。
射撃方向を理解する前に打ち抜いているはずなのだが、その影が時折こちらを嘲笑うかのような視線を向けている気がするのは己の錯覚なのだろうか?
不気味に新都を徘徊する使い魔達の狙撃が何時間何日続こうとも、自分はその集中力を欠かすことなどありえないが・・・・・・
さあ、今夜も始めよう、聖杯戦争を。
このゲームを終わらせない為に、中心たる衛宮士郎を殺す。
殺すことに喜びを感じるのは自分だけではなかったのだろうか?こみ上げてくる笑いが止まらない。
いくら打ち抜こうとも自分は無限にいるのだから意味がないだろうに・・・。
自分を打ちこむ矢が飛んでくる遙か遠方のアーチャーが見えるかのように、影はその方角を見やる。
己の姿を影としか捕らえられないだろうアーチャーのその姿をアンリマユは嘲笑う。
もっとも己の姿は、契約者、もしくは全てを喜びでもって殺す・・・怪物という属性をもつ者でなければ、影としか見えないが・・・。
オレと同じように衛宮士郎を起源とする者、アーチャーのサーヴァントよ。
生きるもの全てを殺すことを喜びとする自分とは、真逆の、届かない理想を追い求める者よ。
オレとアンタはいわば光と影だ。
アンタにオレの姿は永遠に見えないだろう。
同じものを起源として始まったはずなのに、理想も考え方も違いすぎて、すれ違うことすらない。
放っておいてもゲームの邪魔にはならないだろう・・・アヴェンジャーは早々とアーチャーに見切りをつけて、ゲームを再開した。
さあ、天の逆月を回そう。