こちらの方が戦闘力が高かったはず・・・。
何故 戦況がこうなっていったのか、、、わからない・・・。
この戦いの結果の先・・・勝敗・・・バーサーカーの敗北だけが自分の脳裏に明瞭に見える。
私のバーサーカーは敵サーバントに破られるだろう。
師ゆずりの錬金術を駆使して、計算した結果 得られた未来は、バーサーカーの敗退。


聖杯戦争の勝敗の結果は自らの生死に直結する。
この結果に対して、焦り、怒り、悲しみ、絶望・・・人の恐れる負の感情、そんな人間らしい感情が湧き上がらないことははたして幸なのか不幸なのか・・・。

私の名はラニ=VIII。
聖杯の奪取、師の望みを叶える為に、私はここにやってきた。
そしてその時に確か・・・もう一つ、あの時 師は私に大切な言葉を残されていたような・・・気がしたのだが。
「人の心を学びなさい」、哀しそうな顔をしながら自分に語りかける師のその言葉の意味は未だに自分には理解出来ないが…、目の前の事態に今 それを考えている余裕は・・・ない。
聖杯の奪取その目的の遂行の為に全てを賭けることが自分の唯一の存在理由なのだから。
それを成すことが出来ないというのであれば、・・・聖杯・・・月ごとそれら全てを無に返し・・・

「命令の遂行は困難。よって、魔力炉の起爆を開始します。」
後ろから主のそんな無機質な声が響いた。
自ら契約したサーヴァントたる自分のことを彼女は恐らく視野にないのだろう。
一度も視線を交わさずに、自らの主たるラニは決断していく。

しかし、この主と最期を共にしよう・・・契約した最初から自分はそう決めている。
私は、人間らしさのない・・・透き通った無色の心を持つこの少女が・・・この命よりも、大切なのだから。

私の名は呂布。
私の生前の人生は裏切りの連続だった。これまで自らの武勇の限りをつくし中国の王将達に仕えてきた。
そして、自分はその場その場で最善をつくしてきたつもりだが…結果的にはそれは主君の裏切りとなっていった。ついには周囲の誰にも信頼されなくなり、最期は…処刑されるに至った自分。
どんな人間も自分の裏切りの前科を恐れ、信じてはくれなかった。
そしてもし、二度目の人生があるのならば、ただ一人の主に仕え守りきる真の武人として自分は生きてみたいと願っていた。
だがサーヴァントとしての生が与えられようともマスターとなるべき魔術師からは幾度も、、、契約を断られ・・・

そして・・・ラニ様と出会った時に、この方だけは自分を猜疑の目で見ずに、自分が唯一誰にも負けないと自負することが出来たこの力をその真っ直ぐな目で信じられ・・・ついに契約するに至った。




人中の呂布、馬中の赤兎
じんちゅうのりょふ、ばちゅうのせきと

生前、「人の中には呂布がおり、馬の中には赤兎がいる」と評されるほど、我が武力は比類なき強さを誇っていた。

例え・・・その契約がバーサーカーとして、私の意志を奪うことになろうとも…己が誇るこの力をさらに強化させ信頼し武人として生かして頂けるのならば・・・私は、私を信じて頂いたこの主の為に、命を捧げよう。それが再び生を得た自分の武人として望んだ生き方である。

主の胸にある炉の魔力がもう後戻りできない域にまで高められていく様子を、私は静かに見守る。
もう、自分には主に語りかける言葉など必要ない。私の出来ることは…ただ、主が決められた言葉を叶えさせる為に私の残り全ての力を使って・・・・・・次に来るであろう青き槍兵の抑止を止める・・・のみ。




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