「はい、これ あなたの分よ? 」
翡翠のように澄み切った瞳を持つ五大魔法を操る稀代の大魔術師トオサカ リンが、オレに注がれた紅茶を渡す。
「ありがと う、トオサカ。」
受け取った紅茶の味も当然美味かったが、何よりトオサカ リンから紅茶を渡してくれる…そのことが何より自分には嬉しい。
 自分は何のとり えもない・・・普通の人間であり、ただ少しだけ魔力を有しているだけで、幸いにもSE.RA.PHにて聖杯戦争の参加権を手に入れることが出来たにすぎな いのだが、そんなことは気にもかけずこの麗しの美少女は何かとオレを気にかけ話しかけてくれた。

 そして、ついに…お茶を一緒に飲まないか?と誘ってくれる 仲にまでなった。これは逆ナンパと受け取ってしまってもいいのだろうか? そんな冗談を言えば間違いなく彼女のガンドを食らうだろうから、自分は黙って紅 茶をすする事にしている。

 オレがトオサカにしてやれることは、彼女の話をひたすら聞いてやることだけである。 彼女を目の前にすると、自分がこの優秀な魔 術師に返せるものがあるのだろうか? と心苦しくて、つい気後れしてしまうからだが、そんなオレの心中などおかまいなしに、トオサカ リンはオレに聖杯戦 争の仕組みと魔術の知識を雑談混じりに話してくれる。

その話題の中には、ハーウェイ財団の世界支配の是非についても含まれていたのだが…。
「全ての人間に 安寧と平和を…とは聞こえのいい理想論! 、息の詰まる抑圧された世界支配は人の心から笑顔を奪っていくでしょう? ほんのわずかな人間が静かにこの世界 をそんな風に塗り替えようとしている…私はそれが許せないのよ! 」
 そう語る、トオサカの表情は実に生き生きとしていて見ていて飽きない。ハーウェイ財 団…そういえば、レオはハーウェイの御曹司だったなと、ふと思い出す。
 レオの言う理想的な平和も、トオサカの言う自由な世界も、両者のどちらの言い分にも 自分にはよい面と悪い面があるように思えて、どちらが正しいとは言えなかった。だが、少なくともトオサカの声を聞くのは自分にとっては楽しい。だから、こ うして彼女の話を喜んで聞くことにしている。

弾む会話の中で、自分が紅茶をすすっていると…後ろから突然男の声がした。
「ほぉ〜、SE.RA.PHの男ど もはどいつも玉なしだと思っていたが…、お前なかなかやるなぁ! 」
振り向くと蒼い髪とボディスーツに身を包んだ…赤い瞳を持つ騎士が楽しげにこちらに話 しかけてきた。
「ランサー! あんたを呼んだつもりはないわよ? 邪魔だから消えていなさい! 」
「マスターも隅におけないなぁ。男がいるならいると、 黙っていないでオレに教えてくれてもいいのによ? 」
「あ・ん・たは、黙っていなさい! 」
トオサカはおもむろにランサーと呼ばれる男にありったけの魔力 をこめてガンドを放つ! 
蒼き騎士は、こんな惨事は慣れているのだろうか?、平然とそのガンドを避けていくが、どう見てもオレが受けたらただでは済まない 威力である。避けながら、蒼き騎士はこちらをちらりと視線を向ける。

「それにしても、坊主! お前のサーヴァントはどうしてるんだ? 」
「オレの…って、 アーチャーのことですか? 」
「そうそう、あの野郎は元気にしているか?」
「大丈夫ですが、…それが何か? 」
「ああ、マスター同士で仲がいいことはいい ことだよな? あいつにそう伝えておいてくれ。」
「あっ、はい、わかりました。」
この蒼い騎士は見かけによらず、浮いた話が好きなのだろう。

 そのアー チャーと言えば、あいつはオレがトオサカと話すことは魔術の知識の向上にもよいから「行ってくるがいい、マスター」と言ってはくれるのだが、お前をトオサ カに紹介したいと言ってもあいつはそれを嫌がるのだ。別に嫌ならオレはそれ以上はあいつに立ち入ったりするつもりはないが……。

回想についふけっている と、目の前のトオサカとそのサーヴァントの痴話喧嘩も激戦になりつつあった。

……今、オレはこの状況をどうしたものかと途方にくれている。







*アーチャーは並行世界たるEXTRAのリンと現実世界にいる凛が別の存在だと知っています。マスターの保護者的な立場なので、トオサカリンがマスターに 危害を加えるような人物ではないとわかっている以上、マスターとトオサカリンが関係を持つことに関与するつもりは全くありません。
ただ、アーチャー自身は 自分がトオサカリンに深くは立ち入るべきではないと判断しているので、挨拶程度の浅い関係で済むように行動をしています。

トオサカリンからは、主人公の サーヴァントは「飼い犬は飼い主によく似た者ね。何も言ってこないから、気にしないけど…」程度の認識。
ランサーはマスターリンに一切よけいなことは言い ません。何故なら、それがサーヴァント同士(アーチャーに対する)の仁義だと心得ているからです。しかし、トオサカリンと主人公の仲はからかいの種として 遊ぼうとはしますが……。



お茶会

男主とリンのお茶会。ランサーが乱入します。(笑)