手に収まる程度の乳房を吸ったり舌で乳首を転がしたり、そんなに膨らみがないのに楽しいもんかと静岡は不思議に思う。まして彼は特殊嗜好があるわけでもなさそうだ。

「悪ぃけど、ちょい足広げて」
「うん」

静岡は態勢を変えて両足を広げる。神奈川は未発達の秘部を指で優しくなぞり筋を舌先を滑らせた。わざと水っぽい音を立てながら、人差し指と中指を揃えて挿入していき、膣壁の上を抉るようにぐちゅぐちゅと掻きまわす。

「しず」

優しい声と同時に静岡は唇を塞がれる。唾液を啜り、歯の並び、頬の内側の柔らかさを確かめる様に舌を滑らせる。息を吸う暇も唾液を飲み込む暇もなく、2人の唇の端から唾液が零れ落ち、輪郭の線ををなぞりながら滴る。

「んっ、んっ………」

口から断続的に甘い声が零れて、静岡の声が不意に上ずった。腰が痺れて、全身に刺すような鋭い快感が襲ってくる。

「な、なんかびりびりして、ほわっとしてくる」
「ん?なんだって?」
「………なんでもない」

男女で感じ方は違うのだ。それを口頭で説明するのは限界があるのだから、懇親説明してもしょうがないだろうというのが静岡の判断。

「なんだよ、言えよ」
「………カナちゃん」
「ん?」
「好きー」

静岡はなんとなく甘えたくなって、神奈川の頬にちゅっとキスをする。

「だいすきだよー」
「しず、ほんと可愛い」

顔と顔を擦り寄せてひっついて、そしてまた首筋、鎖骨にキスを降らす。「しょーがねーなー」と言う割には甘い声の神奈川。

ふと、静岡は神奈川の逞しい胸板(訂正、やや逞しい胸板。要運動。)に目を奪われる。寄り添って寝ると安心できる神奈川の胸が静岡は大好きだった。その胸を円を描くように撫でて、ちゅうっと乳首を控えめに吸うと神奈川の唇から息が漏れた。

「………気持いいの?」
「不覚にも」
「ふーん?男も気持いいもんかね。ちょっと気になる」
「俺で試すなよな」
「んじゃ、誰で試せばいいの?山梨?愛知?長野さん?それとも東京さん?あれ、愛知ってどっちだっけか」
「………わかった、俺で試せ。気のすむまで試せ」

俺一人の犠牲で済むのなら本望だ、と少し影のある横顔を計算された角度で静岡に見せつける。何カッコつけてんのーと静岡はけらけらと笑い転げた。

「ところでカナちゃん。うちはさっき思ったんだけん、ほら男にも当然お尻の穴ってあるだら?」
「さー嫌な予感しかしないからこの話はこれくらいにして再開すっぞ」
「いやいやカナちゃん、男に二言はないって言うでしょー。それでカナちゃんってうちのお尻好きだよね、うちはあんまり好きじゃないんだけど」
「ん?しずは嫌か?嫌なら言えっていつも言ってるだろ」

神奈川が後ろを責めるときは必ず丹念にほぐしながら、ねちっこくありとあらゆるところを愛撫する。そして傷をつけないようにお腹を痛めないよう、彼は最大限の努力をしている。少しずれている気がしないでもないが。

「嫌じゃないよ、後がちょっと大変だけど」
「だろ、でもいいだろ」
「うんうん。ほんで、カナちゃんのお尻も気持ち良くなれるかもしれないってわけだ」
「おい」
「問題はうちなんだよねぇ。カナちゃんみたいにうまくできればいいんだけん、まだ自信ないからなぁ」
「まだってなんだよ、まだって」
「今、試しちゃ駄目?」
「今は平成だぞ、衆道はもう昔だぞ」
「そっかー平成かー。じゃあ後ろにこだわらなくてもいいよねぇ。後が大変なんだよねぇ。それにうちだけが大変なんだよねぇ。でもねぇ、カナちゃん優しいから、心を痛めているんじゃないかと心配で………」

さあ追い詰められた神奈川。静岡は別に追い詰めているわけではなく単なる好奇心なのだが、結果的にそうなる。神奈川は覚悟を決めた顔で静岡をじっと見つめる。静岡は頬をぽっと赤く染めて「やだっ…カナちゃんそんなに見ないで…」と目をそらす、ということはしなかった。

「………本当にやりてぇのか?」
「えーとね。色々意地悪言ったけど、もちっとカナちゃん喜ばせたいなぁって思うだけだよ。マンネリ化しちゃうのはよくないら」
「馬鹿かよお前は。んなの、お前が気にすることじゃねーだろ」
「そうなの?」
「十分しずは魅力的なんだよ」
「………。あとね、あともう一個聞くけど、素股って男の人は気持いいの?」

必ずしも毎回最後まで行くというわけではない。素股や口淫で済ませたりすることは珍しくはない。どちらも神奈川は達しているわけではあるが静岡としてはやはり気になる。男女の体の構造や働きは違う。「よかった、マジで」とかなんとかやけに澄んだ声で囁かれても、具体的にはわからないのだ。

「あー、素股?結構いいけど」
「そっかー。うちはそんなんでもないんだけん」
「え?マジで?やべ。しず、ごめんな」
「なぁにいってんの。カナちゃんは上手だに」
「うっせ」

もし相手が下手で、感じてるフリなんてしたとしてもお互いすぐにわかってしまう。数年、数十年の付き合いではないのだ。

「じゃあとりあえずカナちゃんの肛「しず、愛してる、愛してるから、いつもの三倍頑張るから勘弁してください」

「この通り、後生だから」と頭を下げる神奈川に、静岡は「そんなにいやなのー」とくすくすと笑った。

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