現状打破



この行動で何が変わるか、と言えば、何もかもが変わるのだろう。
そんな事態を自分が引き起こすということに、畏れを抱かずにはいられなかったけれど。
もう、既に逃げられなかった。
焦点が合うか合わないかの微妙な距離。それが今の伊作と文次郎の間にできている距離だった。
――殴ってでも、止めてくれればいいのに。
けれど、彼の外見や口調から想像されるほどには理不尽な乱暴さを持っていないことを伊作は知っていて、だからこそ相手の行動から今の現状を打破することは不可能だと分かっていた。
いや、却ってこのような時だからこそ、文次郎は動けないのだろう。
いっそ甘い言葉でも囁いてやれば、容赦ないこぶしが自分を見舞うのであろうけれど、伊作もこんな時だからこそ愛の囁きはおろか一言も発することができない。
要は、自分もやめるつもりはないのだろう。
こんなに怖がっているくせに、自分から引くという考えに至らない己に、心の中で自嘲する。
気を抜いたら震えそうなこぶしは、文次郎の体の脇に。
下手に変えたら情けなくなりそうな表情は、無表情のまま。
微妙な距離を自分たちの顔の間に作ったまま、伊作はそれを詰められない。
「伊作」
ああ、そんな声は逆効果だ。
自分からは動こうとせず、理由を文次郎に押し付けたまま、伊作は文次郎に身を寄せる。
距離を詰めようとする伊作に、ずり、と音を立てて、文次郎は後ずさる。
明らかに、自分の知らぬ雰囲気を作り出す友人を、彼は怖れていた。
「……伊、作」
殴ってでも、止めればいい。
こんな、明らかにおかしい雰囲気で、今まで隠していた牙を未だに見えないと言うならば、いっそ痛い目を見ればいい。
どん、と壁に背の当たる音が聞こえる。
狭い長屋の部屋の中、どんなに逃げようとすぐに終わりは来る訳で、二人はすぐに逃げ場をなくした。
「いさ、く」
こんな状況になってさえ、逸らされない目線に、腹の底がぞっと熱くなるのを感じた。
殴って、止めてくれ。
望めない拒否を頭に浮かばせながら、伊作は顔を少しだけ傾ける。
こうなった以上意図は見えるはずなのに、文次郎は拒否を見せない。
それをいいことに、伊作はそのままゆっくりと顔を寄せる。
――その柔かさに。
伊作はざっと立ち上がる。
そのまま文次郎に背を向け、ぱぁん、と音を立てて障子を開け、足音高く。
逃げ出した。
こうなっては、手持ち悪いのは文次郎の方である。
障子も開かれて見えた庭を、目つき悪く半眼で見つめ、
「……馬鹿野郎」
部屋に残された男は、ひとり呟いた。






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保健委員長はこれくらいのヘタレさでいいと思う。
<先日「6年の中で一番男前」みたいな発言したのは誰だ。
<それとも皆これよりヘタレなのか。
<答えは出ていません(笑





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